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2019年12月28日

JARTAトレーニング4原則とは

トレーニング理論コースでお伝えしている「JARTAトレーニング4原則」の内容を公開いたしました。

トレーニングをパフォーマンス向上に的確に繋げる上で不可欠な原則です。
全身操作性 ・同時実行・反射利用・運動学習の4つの原則があり、あらゆるトレーニングに該当します。

トレーニング理論コース

2019年12月26日

スポーツトレーナーが上級者になっていくには?

文:岡元祐樹

 
 
ここ数年、インターネット等から簡単に情報にアクセスできるようになりました。
 
スポーツトレーナーとして必要な情報や知識もたくさん世に出ています。
 
それらは時に魅力的に見え「もっと知りたい」「もっと学びたい」と想わせるものも多くあります。
 
そうやって得た知識や技術を現場に持ち込み、上手く生かせたのであればそれはそれで素晴らしいことです。しかし上手くいかないことも多々出てくると筆者は経験上感じています。
 
新しく得た知識や技術というものは実用的で即使えるものもありますが、その一方汎用性が乏しくなることがあります。
 
言い換えると、パターンがしっかり当てはまれば効果を発揮するが、少しでもパターンからズレると対応できなくなるということです。
 
例えば「セミナーで習った肘の痛みが取れる施術をやっているのに、選手の肘の痛みが取れない」などが挙げられます。
 
このような事象には土台となる知識が抜け落ちている可能性が高いです。
 
そしてこのような時は原点となる『基礎的な知識』に戻る必要性があります。
 
『戻る』と言うと日本語的には後退するイメージがあると思います。しかし基礎に立ち返りながら新たな知識や技術を習得していくことは、スポーツでも勉強でも大事な上級者への道のりです。
 
 

【成功でも失敗でも感じる基礎の大切さ】

 
スポーツトレーナーとして目の前の選手に対応する際、基礎的な知識が重要であることは言うまでもありません。
 
先日、肘の痛みを訴えるバドミントン選手にその相談を受けました。
 
疼痛があるのはラケットを持つ利き手側である右肘の外側。上腕骨の外側上顆の部分です。手のグリップ動作でその部位に痛みが生じ、ラケットが強く握れずプレーできない状態でした。
 
勘のいい方であればこれは上腕骨外側上顆炎、通称テニス肘ではないかと推察できると思います。
 
しかしこの選手は病院を受診しておらず、そのような診断を受けた訳ではないので、筆者は現状で生じている現象だけを評価していきました。
 
・疼痛の既往
 
・上腕骨外側上顆の疼痛検査
 
・肘関節のアライメント評価
 
これらを聴取、評価して患部の状態を把握しました。
 
そして今回の疼痛が発生する要因を
 
・バドミントンの競技特性
 
・日常生活のパターン
 
・患部以外の手関節、肩関節、肩甲胸郭関節の評価
 
から推察し、それらを改善するセルフケアを指導しました。
 
これらはテニス肘のリハビリテーションの流れとしては教科書的な内容です。
 
しかしこれらが解剖学、運動学、生理学、バドミントンの競技特性、日常生活動作といった基礎的な知識を把握していれば、例えテニス肘という現象を知らなくても対応できることが分かると思います。
※もちろん知っていることにこしたことはありません。
 
テニス肘のリハビリテーションの知識を丸暗記して選手に対応するのと、土台となる多くの知識を統合しながら評価を進め「テニス肘に似ているかもしれないな」と対応するのとでは大きな違いがあります。
 
前者は学生で言うところのテスト前の一夜漬け状態です。丸暗記したこと以外は対応できません。後者はテスト当日に急にトリッキーな応用問題が出題されても対応できるタイプです。
 
筆者は学生時代はどちらかというと前者のタイプでしたが、今回の選手は後者的な対応を心がけ、公式戦に出場できるくらいには回復することができました。
 

 
 
同じように、失敗談もあります。
 
「股関節を曲げると鼠径部が詰まる感じがするから解消してほしい」
 
スポーツ選手のコンディショニングをする機会が多いと、この要望をよく言われることがあります。
 
そしてそれを解決してあげられなかったことが多々あります。
 
この鼠径部の詰まり感は、股関節を屈曲し骨盤の前傾により基本姿勢を取るような競技では競技動作の阻害因子になることがあります。要するにパフォーマンスの低下を招く可能性があるということです。
 
この症状を軽減するための方策はいくつもありますが、同時に症状の原因も多岐にわたります。ここで手技に走り、症状が出るに至った経緯や現状の評価が疎かになると症状は解消できません。
 
選手もトレーナーもモヤモヤしたままコンディショニングの時間が終わってしまいます。
 

 
 

【教科書は臨床に即さない?】

 
このような消化不良を起こさず、選手の課題に向き合い、解決するにはどうすればいいのでしょうか?
 
筆者は「自分の得た知識や技術を基礎的な部分まで分解し理解し直す」ことが近道ではないかと考えています。
 
理解していることの最低条件の1つとして『他者への説明がスムーズにできるか?』というのが大事であると筆者は考えます。
 
ここで言う『スムーズに』とは、言葉に詰まることなく、説明の対象となる相手が納得してくれるかということです。加えて、想定される質問に論理的に答えられることも含まれます。
 
そしてそれは必ずしも他者が必要という訳ではなく、シミュレーションでもある程度は可能になります。
 
新しいトレーニングを選手やチームに導入をする場面を頭の中で想定してみてください。その想定の中で、選手に動きや効果を説明し納得してもらえるか?どのような質問がくるか?それに答えるにはどのような知識が必要か?を考えます。
 
そして言葉に詰まる場面や答えに困る質問を発見し、解決していくのです。そしてそれらを解決していくために基礎的な知識が必要になってくるのです。
 
 
 
理学療法士でもある筆者は昔、解剖学や運動学のいわゆる教科書というものが「臨床に即していない」という思いがありました。
 
その教科書の文面を理解してテストで点が取れても、目の前の選手や患者に対応できないことが多かったからです。
 
その結果、施術のテクニックだけを学びを進めていた時期がありました。
 
しかしそれもすぐに限界がきます。
 
今スタンダードになっていたり、注目されている知識や技術はその土台に多くの基礎知識や基礎研究があります。
 
例えば股関節に対する施術であれば、股関節の構造、周辺の組織、運動学的な役割、生理学的な筋の変性など挙げればきりがありません。
 
その中から自分の知識が不足している部分を埋めていく作業をしなければ、その施術は効果を発揮しません。効果が発揮されないだけならまだしも、何故効果が出ないのか?という考察も不十分になります。これではトレーナーとして成長は限定的になります。
 
そしてそれは選手に対して、他の有効な方策を講じることができなくなってしまうという状態に繋がります。問題解決に必要な引き出しが少ない状態ということです。
 
様々な情報が受け取れるようになった今。自分の専門分野においては足りない、もしくは忘れてしまった基礎知識を確認する作業も重要になっていると感じます。
 
それができると元々持っていた、あるいは新しく得た知識や技術に汎用性が生まれます。
 
新しい知識や技術に出会った時、その本質や実態を正確に認識するために教科書(基礎)があるのです。
 

 
 

【一段跳ばしは遠回り】

 
できている。わかっている。理解している。大丈夫。
 
知らず知らずのうちにそのように思っている事象は数多くあります。そしてそれが落とし穴になってしまうパターンも数多くあります。
 
学生時代にテストでなんとなく点が取れていた筆者のようなタイプは、それを自覚し勉強方法から根本的に考えないといけないと感じました。
 
上級者への階段を昇っていくには、上ばかり見るのではなく、今までの道のりの再確認や振り返ることによる再発見も必要になるのではないでしょうか。
 
そしてそれは手間や時間がかかることです。どうやってその時間を捻出すればいいのか?
 
筆者と同様にそのような想いを抱いている方は少なくないと思います。工夫していくしかありません。
 
一段跳ばしばかりしていると、逆に遠回りになるかもしれないから。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年12月23日

JARTAサッカーキャンプ2019開催報告

文責:和泉彰宏

 
12月19日、20日に東京都世田谷近郊にてJARTA認定スポーツトレーナー がサポートしているJリーガーの合同自主トレを去年に引き続き開催させて頂きました。
 
今回の参加者は既にJARTAトレーニングを受けたことのある選手の参加で
一定の共通理解があるうえでの進行となり、
かなり踏み込んだ内容も実施されました。
 
 

 
 
 
内容(概要)

1)対人用上半身操作トレーニング

・腕と肩甲骨、肩甲骨と体幹の連動と強化
 
・体幹クロス連結・ストレート連結の強化
 
・上半身から下半身への力の伝達
 
・スライドポイントを使ったスムーズかつ分かりにくい動き出し
 
→シュート力や精度、スプリントや反応スピードなどパフォーマンス全般に波及させます。
 


 
 

2)イナシ系トレーニング(対人)

・コンタクトスキル強化
 
・イナシを使った軸/バランス能力の強化
 
・イナシを使った体幹強化
 
→対身体的に大きな選手戦略として有効です。
 

 
 

3)リロード系トレーニング(対人)

・バランスを崩したところからのリアクション
 
→バランスが崩れた状況からいかに次の動きにつなげるか。

 
サッカーは対人スポーツであり、バランスを崩されたり踏ん張ってしまったりは必ず起こります。
 
そうなった際の反応力を強化します。
 


 
 

4)軸足操作トレーニング

・上半身操作を土台として軸足コントロール
 
・トラップ能力向上
 
・動き出し能力向上
 
・対人スピード向上
 
→トップ選手の軸足に着目すると高頻度で使っていますのでぜひチェックしてみてください。
 
しかし上半身操作が高くないとうまく作用しないのがポイントです。
 
*トラップや方向転換、フェイント、動き出しなどで軸足操作は非常に重要となります。
 

 
 

5)目の強化トレーニング

・目の情報処理速度の強化
 
・反応速度向上のための目の使い方
 
・ボール到達地点の予測能力の向上
 
→目の機能が高まらないと、せっかく鍛えても反応の遅れなどが起こります。
 

 
以上のような内容のもと 2日間トレーニングを実施し、各々の課題や伸びしろと向き合う時間となりました。
 
サッカーのテクニックが先にあるのではなく、
 
テクニックの土台には
 
身体操作があるということ、テクニックを高める要因としての
 
身体操作の重要性を理解する改めて気づける機会となったかと思います。
 
 
 
 
また去年から1年ぶりに会う選手も
 
各々の担当トレーナーとともに成長した姿や、
 
自身の担当している選手の成長も客観的に俯瞰し感じとることができました。
 
 
 
このような光景を目の当たりにし、
合同自主トレの持つ意味や、今後の継続的な開催の意義を感じる機会となりました。
 
 
シーズン中は敵として戦う可能性のある選手と
 
同じ場でトレーニングを実施し、
 
よりお互いのパフォーマンスを引き出しあい、
 
来季のサッカー界を盛り上げてくれるであろうことを心の底から楽しみにしています。
 
今後の彼らの活躍に応援よろしくお願いいたします。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年12月20日

年末年始休業のお知らせ

いつもJARTA公式ページをご覧頂き、誠にありがとうございます。
 
誠に勝手ながら、2019年12月28日(土)〜2020年1月5日(日)を年末年始休業日とさせていただきます。
この間にお問い合わせのあったご連絡につきましては、新年1月6日(月)以降に対応させて頂きます。
 
皆様にはご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
 
 
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2019年12月15日

インターロックポジションとは

文責:赤山僚輔

 
いつもJARTA公式ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
 
今回はこれまでJARTA認定スポーツトレーナーコースでも毎回お伝えしてきて、新しいコンディショニングスキルコースでも引き続き残っているコンテンツである、”インターロックポジション”についてご紹介したいと思います。
 

インターロックポジションとは

症状に対して、局所と全身の関係性を評価する方法論であり、対象者や施術者自身のポジショニングや意識の向け方まで含まれます。
選手の症状は階層的な構造を持っているため、 同じ症状でも常に同じ原因ではなく、必ず複数の原因が影響し合いながら存在します。
つまり問題を解決するためには症状に対する複数の原因の関係性を評価し、それらを基にした施術プランを構築する必要があります。
インターロックポジションはそのような複数の要素と症状の関係性を見出すために生み出された技法です。
 

 

局所のインターロックポジション

ある筋肉の硬さを取ろうとした時に、その筋肉がよりリラックスした状態をその筋肉の付着などから考察しポジショニングを行うことが局所のインターロックポジションとなります。
 
それは単に筋肉の起始と付着を近づけるということも手段としては有効ですし、皮膚や筋膜が過度な張力を発生していない状態を設定するということも重要な要素となります。
その筋肉が関節をまたがっていれば、その関節の緩みの位置に設定するということも筋肉の施術を行いやすくする局所のインターロックポジションとなります。
 

全体のインターロックポジション

前述した局所のインターロックポジションは”インターロックポジション”という言葉を知らなくても操作したり設定している方は多いと思います。
ここからがJARTAでお伝えしているオリジナルの観点になります。
たとえば右の僧帽筋を施術する時に、対象者が上向きに寝ているとします。
その際の両腕の外転角度や、下肢の外転角度、また回旋角度によって僧帽筋の硬さに変化がでることはご存知でしょうか?
腕は影響はイメージしやすいですが、下肢の状態などは意識して評価しないと見過ごしてしまいがちです。
またそのポジショニングについては解剖学的なポジションが一番緩みやすいかというとそういう例ばかりではなく、その人にとっての楽な位置とは左右差があることも十分に考えられます。
 
また腰椎の硬さがみられる事例では、膝を立てるようにポジショニングを設定するだけで僧帽筋の硬さが変化することも多々あります。
そのようにここでいう全体のインターロックポジションとは、施術対象となる部位の硬さが改善する全身のポジショニングを考慮して設定していくことにあります。
またそれをJARTAでは経絡の流れなども考慮してより施術しやすいポジショニングの設定を学んでいきます。
 

 

施術者のインターロックポジション

最後にもうひとつだけ。
局所や全体のインターロックポジションを考慮できたら施術者側のポジショニングについても設定していくことをお勧めします。
たとえばすごく力が入った状態で施術すると相手へ緊張が伝播することは実感としても知識としても整理できている方は多いと思います。
それをもう少し具体的に施術行為に対して深めていくのです。
例えば右のふくらはぎを施術するとして、施術者が右脚で踏ん張りすぎていると対象者のふくらはぎの硬さも取りにくくなるのです。
施術者がどちらに重心が乗っているかも相手に影響を及ぼすということです。
座っている時と立っている時、どちらが相手の身体、特に対象となる部位の緊張が緩まるかを随時検討することも重要なことです。
もっというと施術者自身が硬さがしつこく残っている部位は無意識的に硬さがあるわけなので対象者の硬さを取りにくくもなってしまいます。
 
以前私は胸背部の硬さが気になる選手が多い時期がありました。
この選手も硬い
あの選手も硬い
サポートするチームでも硬い選手が多い。
 
よくよく考えてみると自分自身が根強い硬さが残る部位であったのです。
自分の硬さが残存する部位は自身に対して適切にセルフケア、ストレッチがなされていない部位とも言えます。
自分自身の硬さをセルフメンテナンス出来ないということは、対象者へ硬さを取る為の有効な手法を伝えられないということにも繋がります。
 
今は、私自身は特に自分自身のセルフメンテナンスが行いにくい部位はないので、偏って硬さかが気になるクライアントが続くこともありません。
常に施術者側のインターロックポジションを留意することは自分自身の硬さに対しても向き合うことになりよりよい状態でコンディショニングをするスポーツトレーナーの準備としては非常に有用であると考えています。
まずは上記のインターロックポジションを実戦でも考慮していただき、詳細を学びたい方は新しくなったコンディショニングスキルセミナーへのご参加をお勧めいたします。

現在募集中のセミナー


 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年12月09日

「〇〇を意識する」がパフォーマンスにどう影響するか

文:伊東尚孝

 
 
「〇〇を意識して」
 
トレーニングを行う際に一度は耳にしたことがあるフレーズです。
動きの質を高めようとする際に用いられることが多く、身体のある部位に意識を向けながらトレーニングを行います。
 
例えば、
「野球は下半身が大事だから、股関節を意識して動け」
と言った具合です。
 
その選手もしくはチームの動きに股関節の要素が不足しているのなら、「股関節を意識する」ようなトレーニングはパフォーマンスアップにつながる可能性はあります。
 
 
しかし一方で、
「意識することが難しい」
「練習で意識できても試合中はできない」
「なんで意識しないといけないのか」
という印象を持つ選手もいると思います。
 
一つひとつ丁寧に解説しながら指導できればいいですが、
限られた練習時間を有効に使うためにも、特に集団トレーニングであれば一人一人に時間を割いてしまうことは避けたいと思います。
 
時間を有効に使いつつ、動きの質を高めるための「意識」をどのように選手へ伝えるべきでしょうか。
 
私の実際の経験をもとに、一つの手段を述べていきます。
指導する際、またはご自身のトレーニングにも参考になれば幸いです。
 
 
 
 

意識することの弊害

 
 
ある部分を意識しながらトレーニングすることは、動きの質を高めより動きやすくするための手段として効果的です。
 
しかし、意識すること全てが良い訳ではありません。
意識することの弊害も考慮しておく必要があります。
 
 
 
例えば、脊柱の動きにフォーカスを当てたトレーニングを行うとしましょう。
 
事前に脊柱の柔軟性を上げるトレーニングを行い、できる限り脊柱を分離できるように準備します。
その後は徐々にトレーニングの構造を複雑にしていき、最終的には競技レベルの動きで脊柱の動きを意識しながらトレーニングを行います。
 
「最初に動かした背骨の動きを意識しながら」というコマンドを入れながら。
 
 
しかし、最初は意識できていた脊柱の動きは雑になっていき、競技レベルのトレーニングになるにつれて選手の頭の中が混乱している様子でした。
 
 
***
 
試合中の動きは、多様性のある連続した動きであることが多いです。
競技レベルの動きに近いトレーニングも、必然的に複雑な動きが連動していきます。
 
複雑な動きをしながら脊柱に意識を向け続けるように指導していると、かえって動きが硬くぎこちなくなるリスクがあります。
 
なぜなら、競技レベル動きのほとんどは「自動化」されており、身体の部位を意識しながら動くことがほぼないからです。
 
意識しながら動くことを例えるなら、全力でダッシュする時に身体の全ての関節がどのように動いているかを把握しようとする状態とも言えます。
さらに競技にも対戦相手にも集中して、、、
となると、自分の身体を意識し続けながらプレーすることは不可能に近いと思います。
 
***
 
 
そのリスクを最小限にしようと、あくまで「脊柱の動き」をベースにトレーニングして、意識の数を最小限にとどめようと試みました。
トップ選手の動画を確認し、また体性感覚の刺激が入力されやすいように脊柱を段階付けて分離させるトレーニングなども行いました。
 
それでも、獲得すべき動きまでには到達できませんでした。
 
 
“選手に伸びしろとなる部位を「意識させる」ことは必要。
でも「意識させる」ことで動きはぎこちなくなる。“
 
 
 
ここで悩んだ私は「意識する方法」を大きく変更しました。
 
 
 
 

意識させないという選択

 
 
上記でも述べたように、競技での動きはほぼ「自動化」されています。
そもそも「意識する」ことが動きを制限しているのではないかと考えます。
 
 
そのため「意識する」というコマンドを一切入れないようにしました。
 
 
考え方は単純で、「意識しにくいのであれば意識しなくても良い」
という思考に変換したのです。
「背骨を動かす意識」から、「この動きをすれば勝手に背骨が動いてる」
というトレーニングの構成に変更し、ひたすらそれを繰り返しました。
 
それと同時に、動かしたい部位のポイントを決めて「触る」方法も加えました。
今回の事例の選手は、どの動作においても胸を張りすぎる傾向にありました。
そこで、「みぞおちを触って柔らかくなるように」というコマンドに切り替えました。
動かしたい(意識させたい)のは脊柱ですが、みぞおちを触ることで結果的に脊柱にアプローチできているようにしました。
 
 
「意識する」というコマンドが余計な思考を与えることとなり、結果的に動きを制限することとなる可能性があると考えます。
そのため選手には「触って、繰り返す」トレーニングを行ってもらい、余計な思考が入ってこないように設定しました。
 
 

 
 
 
まとめると、
◯特定の部位を「意識しながら」トレーニングをし続けると、競技レベルのトレーニングでパフォーマンスが下がる可能性がある。
なぜなら、競技レベルの動きはほぼ「自動化」されているから。
 
特定の部位が結果的に動いているようなトレーニングの構成では、余計な思考を与えず獲得したい動きを高めることができる。
すなわち「自動化」に近い動きの学習ができる。
 
ということになります。
 
 
「意識することが難しい」
「練習で意識できても試合中はできない」
「なんで意識しないといけないのか」
これらの声は、トレーニング中に「意識する」というコマンドを入れ続けてしまったが故に生じたものだと考えます。
 
 
 
 

まとめ

 
 
今回の内容は全ての選手に当てはまるものではなく、私が関わる選手に当てはまる手段の一つにすぎません。
中には「意識する」トレーニングでパフォーマンスアップする選手も大勢いるでしょう。
 
 
つまり、「意識する」「意識させない」のどちらが正しいかではなく
目の前の選手に対して、どのように伝えるべきかを見極める必要があります。
 
 
トレーニングの質を高めるということは、今までの動きのパターンを変えようとしているとも言えます。
動きのパターンとは動きのクセでもあるため、一朝一夕で獲得できるものではありません。
 
しかし、継続すればパフォーマンスを上げることが可能になります。
いずれにせよ、トレーニングは継続しなければ効果は得られないということです。
 
 
パフォーマンスアップのためにトレーニングを継続し努力するのは選手自身です。
しかし我々がトレーニングの方向性を誤ってしまうと、選手が努力する方向性を誤ってしまう可能性があります。
 
それにより選手のパフォーマンスを下げてしまうことは、容易に想像できると思います。
 
ちょっとした言葉の選択やトレーニングの構成によって、選手のパフォーマンスに大きく影響することを、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
 
また今回の事例がパフォーマンスアップのヒントになれば幸いです。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年12月05日

系統発生を学ぶ意味

文責:真木伸一

トレーナーを目指す、トレーナーとして仕事をするあなたは、選手のコンディションを改善する役割を担いますか?選手の不調、痛みを解決し、より良いパフォーマンスへと導くために学んでいることは、解剖学、運動学、それとも治療スキルでしょうか。
刷新されたJARTAのコンディショニングスキルコースでは、学校では習うことのない、系統発生、比較解剖といった ヒトの進化を学びます。そこには、どのような意味があるのでしょうか。
 
東京で活動する真木です。
 
JARTAのコンディショニングスキルコースでは、これまでの内容に無かった「関節アライメント評価」や「科学的根拠の用い方」が加わり、選手の不調に介入するポイントを、よりメカニカルに考察して導く手段をお伝えすることになりました。
 
一方で、従来から提唱している「関係主義的な捉え方」はより深みを増し、選手の体に生じる不調の解決方法をより多角的に捉えることができるような内容となっています。
関係主義的に捉えるというのは、全体を構成する構造を常に考慮しながら、要素と要素の間に生じる関係性・相互の影響を考慮することです。
つまり、不調の原因を局所の問題のみに求めず、全体(身体や身体を取り巻く環境)を構成する構造のつながりを考慮して、原因にたどり着く事をお伝えするということです。
 
トレーナーとして働く、もしくは働こうとするあなたは、学校やもしくは独学かもしれませんが、解剖学、運動学、生理学などを学ばれて、外傷学や診断学ももしかしたらよくご存知かもしれません。
関節アライメントの評価も正確にでき、メカニカルストレスの原因を取り除くことも可能かもしれません。
ただ、それだけで選手の不調の本当の原因を取り除けない事があるのではないでしょうか。
何度挑戦しても元に戻る腰痛、繰り返す肉離れ、原因不明の頭痛。あげれば思い当たる問題はいくつも出てくると思います。
このような問題を解決するために、そもそも、生命がどのように誕生し、ヒトがどのような進化の過程を辿ってきたのか知ることは、本来その構造が持つべき機能を知ることにつながり、器官同士のつながりを考慮した考えに行き着くことができます。
 
三木成夫は、その著書の中で「生物一般の原型としての土管様構造(図1)」を提示し、体壁系と内臓系を分け、内臓由来の感覚が動物、とりわけヒトにとってどれほど大切かを説いています。

 
 
ヒトの表情筋は「皮筋」と呼ばれる一端または両端が皮膚につく筋肉で、体を動かさずに皮膚だけを動かすことのできる筋肉です(犬塚則久「進化の退化学より」。
この表情筋は鰓弓由来の筋で構成されていて、「内臓の前端が突出した形が顔(図2)」ということになります(三木茂夫「内臓とこころ」)。

つまりは、目の前に立つ選手の表情には、その日の選手の内臓の状態が表されていると考えることができます。
東洋医学の経絡においても、顔面には非常に多くの経穴が存在し、臓腑の状態を評価・改善していくことに用いられているのは面白い事実だと思います。
内臓感覚が大脳皮質に昇ることはありませんが、「個体維持」と「種族保存」を二大本能とする動物にとって、内臓の働きが自身のコンディションを大きく左右することは考えるまでもないことです。
したがって、選手の表情をよく観察することで、その日の選手のコンディションがどういう状態であるかを推察することができるわけです。
なんとなく浮かない表情をしているな、良いことがあったはずなのに表情が冴えないな、目の下が浮腫んでいるな、口角が下がっているな、など、その状態から何を推察するのかは、関連のある臓器やその臓器の持つ働き、その臓器を支配する高位と同部の神経節から出る遠心性の信号のエラーなどに考えを向けることが可能になります。
 
その結果、「背中の筋肉の硬さを取るために、夜寝る前に食事を終えてからどの程度の時間を置いているか」という問診が生じたりするわけです。
 
 
もう少しメカニカルな例を挙げます。主な機能として呼吸を担う横隔膜は、エラの筋肉由来です。
 
エラがあったところから胸腔の下方を仕切るところまで下がり、肺の下方で酸素を取り入れるために働いています。
 
だから、この横隔膜を司る神経は頚部から伸びています。
横隔膜に隣接する組織としては胃や肝臓があげられ、腰椎部では大腰筋との筋連結もなされています。
つまり、大腰筋の硬さや、胃の不調などは、横隔膜の機能低下を引き起こす可能性があります。
このような横隔膜の機能低下は、頚部周囲の筋の強張りを引き起こしても全く不思議ではないということです。
現代の解剖学では、あるがままの姿を解剖して「それが何であるか」を学ぶことをしていますが、もっとものの本質を知るためには、その「成り立ち」を深く知る必要があるのだと考えています。
 
 
このような理由で、JARTAの新しいコンディショニングスキルコースにおいては、「ヒトの成り立ち」「肩帯・骨盤・股関節の構造特性」などを系統発生、比較解剖といった視点から説明することを行います。
 
ヒトが現世に誕生するまで、そして誕生から現在まで、どのような機能を獲得しながら生きながらえてきたのか、その構造のもつ意味とはどのようなものなのか、理解が深まれば、不調に介入する際の関係主義的な考えに幅を持たせることが必ずできるはずです。
 
なるべく早く、本質にたどり着くために、我々と共に学びましょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

コンディショニングスキルコース


 

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2019年11月28日

投球障害から選手を守れ!―投球フォーム編―

 

文責;山内 大士

 
関西で活動する山内です。
 
投球障害シリーズの最後の記事となる今回は、投球フォームについてお伝えしていきます。
フォームは個人差の大きい部分ではありますが、たくさんの選手の動きのデータを集めることで、どのような動きが球速UPや負担軽減に繋がるのかを知ることができます。
 
これまでの研究で明らかになっていることをお話したうえで、投球フォームを改善させるためのトレーニングの一例をご紹介します。
 
※投球フォームの研究で用いられる用語は難しいものも多いため、現場で用いられるような平易な言葉に言い換えて表現しています。
 
〈目次〉
・投球フォームと球速
・投球フォームと肩肘への負担
・投球フォームを改善させるためのトレーニング
 
 

投球フォームと球速

投球フォームを分析する上で用いられる方法に、フェーズごとに分けるやり方があります。
分け方には色々あるのですが、本記事では私がわかりやすいと思う方法で分類していきます。キーとなるフェーズは以下の3つです。
 
・前足が地面に着地した瞬間
・投球側の肩が最大外旋した瞬間(MER)
・ボールが指先から離れるリリースの瞬間
 
まずは体重移動が開始してから前足着地までのフェーズを見ていきます。
このフェーズにおける球速向上のポイントとしては、軸足でしっかりと地面を押すことと十分なステップ幅をとること(MacWilliams 1998, Montgomery 2009)が挙げられます。
逆に、前足が着地した時点での骨盤の開きが大きい選手は球速が低くなる傾向にあります(Wight 2004)。
 
次に、前足着地~MERまでのフェーズを見ていきます。
このフェーズにおいては、前足股関節を支点とした骨盤回旋、及びそれに引き続く上半身の回旋速度を高めることが重要です(伊藤2000, Stodden 2006など)。この骨盤の回旋に大きく貢献する筋肉が内転筋であり、内転筋の疲労は球速の低下につながることが報告されています(Yanagisawa 2018)。
また、骨盤回旋と上半身の回旋がそれぞれ最高速度に到達するまでの差が大きいこと、いわゆる体幹部での割れができていることもポイントです(Matsuo 2001など)。このことは海外でも”hip and shoulder separation” と呼ばれており、投球フォーム指導において重要視されているようです。
 
最後に、MER~リリースまでのフェーズを見ていきます。球速が高い選手はこのフェーズにおいて、前足に体重を乗せられている・前脚の膝が固定できている・体幹を前に倒せているなどの特徴が挙げられます(Matsuo 2001, Stodden 2005など)。
上半身においては肩の外転角度を90度前後に保つことが重要です(Matsuo 2002)。
※肩の外転角度=体幹に対する上腕の角度
 
 
 

投球フォームと肩肘への負担

肩肘への負担が大きいフェーズはMER~リリースです。このフェーズにおける肩の角度は非常に重要です。報告により軽度のばらつきはありますが、肩外転角度は90度前後で、水平内転角度はMERで2度前後、リリースで5度前後が肩肘への負担が最も少ないとされています(二宮2007、駒井2008など)。
※肩の水平内外転角度=体幹の面と上腕が平行の状態を0度とし、上腕が前方にある状態が水平内転位で後方にある状態が水平外転位
 
現場で良く用いられる言語で表すと、
外転が少ない=肘下がり
水平内転が大きい=肘の突き出し
水平外転が大きい=腕が遅れる
このような感じで言い換えることができ、そのどれもが特定の部分に対する負担を増大させるリスクを抱えていると言えます。
 
しかし、こうした肩の角度は意識して作り上げるものではなく、それよりも前のフェーズにおける動作や下半身・体幹の動きの結果として決定される場合が多いです。
 
前足着地よりも前に骨盤・体幹が回旋し始める、いわゆる開きが速い選手はMER~リリースにおける肩の水平外転が大きくなり、負担が増大する傾向にあります(Aguinald 2009など)。骨盤の回旋が最高速度に到達するよりも前に上半身の回旋速度が最大になる選手、すなわち”hip and shoulder separation” ができていない選手はMERでの外旋角度が増大し肩へのストレスも大きいと報告されています(Oyama 2014など)。
また、リリースにおける体幹回旋の減速ができていない選手、すなわち踏み込み脚や体幹の固定がうまくできていない選手も肩の水平外転が増大します(Oliver 2009)。
 
水平外転角度やMERでの外旋角度が大きくなることは、一見ダイナミックでしなやかな動きに映り球速に貢献する要素もあります(Wang 1995など)。しかし、過度になりすぎると負担が増大することは間違いないので注意が必要です。
 
基本的には球速が高まると肩肘への負担も増大してしまいます。しかし、プロの投手はアマチュアの投手と比較し体幹回旋開始タイミングが遅く肩への負担が少ないという報告もあります(Aguinald 2007)。下半身・体幹を上手に使い動作を洗練していくことで、ある程度は球速と負担軽減を両立させることが可能となるでしょう。
 
 
 

投球フォームを改善させるためのトレーニング

どのようなトレーニングをすればフォーム改善できるのか、そこにはもちろん個人差があります。前回までの記事でお伝えしたような肩のストレッチや肩甲骨周囲のトレーニングも、場合によってはフォーム改善に直結します。肩甲骨周囲だけでなく、みぞおちの動きやもちろん股関節周囲のトレーニングでフォームが変わることも多々あります。
(参考;肩甲骨とみぞおちの関係が重要|プロ野球自主トレ
https://ameblo.jp/bodysync/entry-12343391053.html
 
そんな前提条件を踏まえたうえで、指導経験上及び自分自身でも効果を感じている2種類のトレーニングをご紹介します。
 
①前足着地時の姿勢作り

このトレーニングのポイントは、
・前脚も後脚も股関節外旋位を保ち(膝が内側に入らない)、内転筋を使うこと
・投げる方向への重心移動とグラブ側の肩を入れる動き並立させること
・投球側の肩を力むことなく胸の張りを作ること
です。
骨盤の開きを抑え、体幹の割れ“hip to shoulder separation”を獲得するための感覚作りと、このフェーズで求められる下半身・体幹の柔軟性の改善が期待できます。
 
②ランジリーチ


このトレーニングのポイントは、
・前脚の膝は踵の真上~やや後ろに保ち、股関節から身体を折り曲げる
・息を吐き腹部に力を入れ、腕を力ませることなく遠くまでリーチする感覚を覚える
です。
直接的にはリリース~フォロースルーの動作改善に役立ちますが、内転筋・大腰筋・腹斜筋・前鋸筋に刺激を入れられるトレーニングでもあります。このトレーニングは反対側も行うことをお勧めします。
 
 
 

まとめ

今回の記事では投球フォームについてお伝えしてきました。感覚的な言語で表現するだけでなく運動学に基づいた分析ができるようになれば、改善に必要なトレーニングも考案しやすくなると思います。
 
 
 
12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。
 
野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。
学生や学生トレーナーの方や、投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。
 
 
 
お申し込みはこちら
12/8(日)in大阪
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12/14(土)in東京
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最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年11月25日

投球障害から選手を守れ!―肩甲骨機能編―

 
 
 

文責;山内 大士

 
関西で活動する山内です。
 
前回・前々回に引き続き投球障害に関する内容をお伝えします。今回は肩甲骨について掘り下げていきます。
 
肩甲骨は肋骨の後ろに浮島のように存在しており、自由度も動きの幅も大きいことが特徴です。JARTAで肩甲骨と言えば”立甲”がピックアップされがちですが、これはあくまでも肩甲骨の動きの中の一つのバリエーションに過ぎません。
 
~参考~
・立甲ができることによるメリット
https://jarta.jp/training/4382/
・立甲についての考察
https://jarta.jp/training/15358/
 
投球障害を考える上では、立甲以外の肩甲骨の動きについてもしっかりと把握し、改善に向けての引き出しを増やしていく必要があります。
 
https://jarta.jp/seminar/17257/
<投球数以外に大切なポイント②肩甲骨周囲の筋機能>参照
 
〈目次〉
・投球動作における肩甲骨の動き
・投球障害と肩甲骨機能との関係性
・肩甲骨の動きと筋機能を改善させる方法
 
 
 

投球動作における肩甲骨の動き

 
投球動作の中にはキーポイントとなるフェーズがいくつかありますが、中でも特に最大外旋位(MER)は肩・肘にかかる負担が大きく、MERでどのような動きをしているかは重要なポイントの一つです。MERで綺麗な動きができている選手の投げ方は、しなやかで腕がムチのように使われているような印象を受けます。
 
MERの大きさは球速に貢献するという報告(Matsuo 2001など)もある一方、MERが大きいことは肩への負担が大きいこと(Werner 2001)も示されています。単にしなりの大きい投げ方をすることはある意味諸刃の剣とも言えるでしょう。
 
ここで重要となってくるのが肩甲骨の動きです。MERにおける肩甲骨の動きは「内転」「上方回旋」「後傾」です(Oliver 2015)。中でも肩甲骨の後傾の重要度は高く、肩甲骨後傾が大きいほどMERは大きくなり、また肩関節自体での外旋は小さくなることが示されています(宮下2009)。
 
つまり、MERで肩甲骨が後傾する角度を大きくすることができれば、十分なしなりと障害リスクの軽減を両立できる可能性があるということです。
 
 
 

投球障害と肩甲骨機能との関係性

 
次に、投球障害と肩甲骨機能との関係性を見ていきます。まずは肩甲骨自体の動きに着目しましょう。肩痛を有する小学生野球選手は、反対側と比較し肩甲骨が前傾している選手が多いことが報告されています(Otoshi 2018)。また、徒手的に肩甲骨を内転・後傾方向に誘導することでインピンジメントテストによる疼痛の軽減が見られるという報告(Tate 2008)もあります。これらの報告は投球動作における肩甲骨後傾の重要性を裏付けるような結果とも言えます。
 
次に肩甲骨周囲の筋機能に着目してみると、肩外旋筋力に関する報告が多く見られます。具体的には、肩外旋筋力が低下していることが肩障害発生のリスクとなることや、肘通を有する選手は肩外旋筋力が低下していることなどが報告されています(Byram 2010, Morifuji 2017)。
肩を外旋させる主な筋肉は棘下筋ですが、投球動作のように挙上位で肩外旋筋力を発揮するためには前鋸筋の働きが重要となります(Uga 2016)。実際に肩甲骨を安定させる機能が低下している選手は、挙上位での外旋筋力のみが低下することも示されています(Uga 2016)。
 
また症状のない大学野球選手においては、肩外転運動時の僧帽筋下部・前鋸筋活動の増加が観察されており、これは肩関節への負担を軽減させるための代償的なものではないかと考察されています。(Tsuruike 2016)。
 
以上を踏まえ筆者自身が投球障害を見る際には、
”肩甲骨の内転・後傾方向への可動性を高めること”と、
”僧帽筋下部・前鋸筋が十分に働く状態にすること”
を最優先にしています。
 
 
 

肩甲骨の動きと筋機能を改善させる方法

 
ここまで述べたポイントを改善させるために有効な方法をいくつか紹介いたします。
 
まずは前鋸筋のトレーニング。体幹トレーニングの姿勢(プランク)をとり、肩甲骨を背骨に寄せる(内転)→肘で地面を押して肩甲骨を背骨から離す(外転)、を繰り返します(Paula 2004)。

 
次に、僧帽筋下部のトレーニング。うつ伏せで腕を斜め上方に位置させたところから、体幹を回旋させながら腕を持ち上げます。

 
この時、指先を見ながら背中の筋肉を使うことを意識して行います。
体幹の回旋を加えることにより、ただ単に腕を持ち上げるよりも僧帽筋上部を抑制しながら僧帽筋下部を使えることが示されています(Yamauchi 2015)。
 
しかし、このトレーニングでもうまく背中の筋肉を使う感覚がわからない人も多いです。そんな時はこのトレーニングを試してみてください。

 
このトレーニングでは、広背筋のストレッチと前鋸筋・僧帽筋下部の収縮を促し、肩甲骨の後傾可動域を広げることができます。
細かい部分では、
・息を吐きながら行うことで腹斜筋〜前鋸筋を働きやすくする
・最大努力で肩関節外旋を行うことで肩甲骨の後傾と広背筋の伸長を強調する
といったポイントがあります。
 
最後に紹介したトレーニングは特に即時的な効果を実感しやすいものとなっています。試しに10回程度行ってみて、直後の肩の力の入りやすさやシャドウピッチングの感覚を確かめてみてください。多くの場合は、肩が安定してしっくりくるような感覚が得られることと思います。
 
 
 

まとめ

 
今回の記事では投球障害との関連が深い肩甲骨の機能を扱いました。
 
次回は投球障害シリーズのラスト。投球フォームと投球障害の関係性についてお伝えいたします。
 
また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。
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野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。
学生や学生トレーナーの方や、投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。
 
 
 
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2019年11月24日

人は完全には数値化できない。なのにデータを取る必要があるのか?

文:鳴海裕平

データを取る意味は果たしてあるのか?

 
学生のうち、体力測定を学校の授業の一環で受けない方はいないと思います。
しかしながら、例えば部活動の時間などで
筋力や柔軟性などを測定するということはあまり聞きません。
(野球部などで新入生のポジションの適正を見るために遠投したり、
短距離ダッシュしたり、柔軟性を確認したりといった位でしょうか。)
多くの場合、その時間があれば練習に使いたいと考える指導者が多いからです。
 
また、人間の能力を数値で表現し尽くす事は不可能です。
例えば遠投をする際には、ボールを投げた距離を測ることは出来ますが、
投げた人がどのようなフォームで、どれほどしなやかな動きをしたのかはわかりません。
 
 
筋力を測定できても、それを実際に必要な動きの中で生かせているかも別問題です。
筋力があれば全て解決するわけではないからです。
例えばですが、腕の筋力が強くても、倒立を出来ない人は意外にたくさんいます。
 
 
パフォーマンスを上げるのにデータを取る必要はないのではないか?
選手、指導者のみならず、実はそう思うトレーナーもいたりします。
 
しかしながらデータを取るのは大変重要です。
仮に測定を完了するのに時間がかかるにしても
練習1回分の時間を割くに当たるほどのメリットがあります。
 

データが選手、指導者、トレーナーへ与えるメリット


1.選手へのメリット
『選手をデータで全て表すこと』は不可能。しかし『選手≒データ』は可能である。
数値が必ずしもパフォーマンスに直結するとは限りません。
そして選手の全てをデータで表すことはできません。
 
しかし、数値が優れている選手ほど、優れている成績を残している選手が多いのも事実です。
データで選手の全てを表すことはできませんが、
データをみて優れた選手なのだと判断することは可能なのです。
 
選手側の立場からは自分の能力の現在地がわかりますし、
目標としている選手の数値がわかれば、それに向けて練習をする目安になります。
これは目標を立てて練習するに当たって、ものすごくわかりやすい指標です。
 
選手に自身の成長を実感してもらう機会は多い方が良いです。
試合の結果、その善し悪しでしか成長がわからないようでは
選手のモチベーションが保ちづらく、スランプに陥りやすいからです。
 
また、数値が目標値に達しているのに試合で結果がでない場合、
数値外の部分を改善すればよいと考えればよく、
問題点を洗い出すのがより簡潔になりやすいというメリットもあります。
(このときデータがなければ問題を洗い出すのに更に手間がかかり、
練習内容を改善するに当たって、見当違いの内容を採用してしまう場合があります。)
 
 
2、指導者へのメリット
信頼関係の構築や客観的な意見を伝える仲介役として有能な『データ』
 

指導者は選手に対して、指導者からみた客観的な視点で意見する事が必須です。
しかし、選手に意見するときに直接話すと、
言葉の取りようによっては誤解を生む場合もあります。
 
また気難しい選手に対して『〇〇だから〇〇した方が良い』と意見しても
選手は『私の事を何も知らないくせに』と素直に聞き入れないこともあります。
 
指導者には選手との間に信頼関係が必要ですが、
信頼関係を築くまでの間に選手に指導しなければならないことは多々あります。
 
しかしデータ上で出ていることを踏まえて話すのは、
事実として出ている情報ですので聞き入れて貰いやすいです。
よく指導者がプレイ中の動画を見せて指導するのも同様の意味合いです。
 
また、指導者が選手自身のデータを知っている事を
『選手に知ってもらうこと』は信頼関係の構築の一助になります。
 
信頼関係を築くには『指導者が選手の事を知ること。』
そして選手に『指導者は自分の事を知ろうとしている』と思ってもらうこと。
これが信頼関係の始まりです。
 
そして指導者は選手の事を正しく知る必要があります。
データを知れば『選手全て』の事を知ることは出来なくとも、
『≒』で選手の事を知ることできます。
たとえ『≒』でも指導者にとっては大変ありがたい情報です。
 
3.トレーナーへのメリット
選手、指導者と選手自身の問題点を共有しやすく、自身の成果を評価してもらいやすい。
 
選手の何が優れて、何が苦手なのか、数値で表されると
選手や指導者は理解しやすく、トレーナーの話を聞いてもらいやすくなります。
これもデータのメリットなのですが、それ以上に
トレーナーの実績として残しやすいというのが大きいかもしれません。
 
トレーナーの実績というのはとても評価されづらいものです。
仮に1年、選手やチームに帯同したときに、『〇〇さんは良くやってくれているけど、
どのくらい自分たちに影響をしてくれたのか正直わからない。』と思われれば、
来年からは必要ないと思われてしまいます。
 
選手や指導者に
実際に目に見えてパフォーマンスが変化している実感を得てもらったり、
選手の痛みをその場で取り除いたり、
緊急時に適切な応急処置をしたりするのも実績として素晴らしいですが
数字として残せればこれ以上にわかりやすい事はありません。
 
トレーナーが目に見える実績として、
例えば、
・チームで蔓延している怪我の発生率を下げた。
・実際に向上しているパフォーマンスを数値化してデータに残す。
(試合で結果が出れば尚良し)
などを残せれば選手や指導者にもわかりやすいでしょう。
 
トレーナーが一番してはならないことが、選手と関われなくなることです。
関われなくなれば、どんなに素晴らしい知識・技術を持っていても無意味ですし、
そこに悩みに悩んでいる選手・指導者がいても助けになることはできません。
 
そのためトレーナーは、
どんな手段を用いても選手・指導者に必要だと思ってもらわなければなりません。
データはそのための手段の一つとしても有用でしょう。
 
 
 

データは一つの手段、『≒』でも情報としてはとても有用

これ以外にもデータをとるメリットはありますが、あくまでデータは一つの手段です。
もちろん取らなくても選手のパフォーマンスを向上させていく事はできると思いますが、
『取らないよりは取った方が遙かに良い』と私は考えています。
 
データで選手自身、選手全てを知ることは不可能でしょう。
しかし『≒』でも情報としてはとても有用なのです。
 
選手のパフォーマンスを向上させるためにはあらゆる手段を使いますが、
その手段を増やしておくことも必要なのです。
 
すべてはパフォーマンスアップのために
最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 

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2019年11月17日

圧倒的な経験値を積むためには


 

文:伊東尚孝

 
 
「経験の差で勝敗が決まる」
「最後は経験の差がものを言う」
「ベテランの経験は違う」
 
スポーツにおいて「経験値」という、目に見えない力を比較することがあります。
 
そして「経験値」を比較する基準となるものの多くは「年齢」と「期間」です。
 
個人の年齢やチーム全体の平均年齢を、相対する選手と比較し「経験値の差」と表現することは、試合の解説などでもよく耳にします。
中高生アスリートでもその競技を経験している期間を比較し、その競技の「経験値」として評価されることがあります。
 
経験している期間が長ければ必然的に年齢も重ねるため、「経験値」が蓄積されていくことは決して間違いではありません。
 
 
しかしここで考えなくてはならないのが、
若手選手や経験が浅い選手は「経験値」が無いと判断してもいいのでしょうか。
また選手は、周りにそう判断されてもいいのでしょうか。
 
経験値の積み方を知っていれば、若手選手でも十分に経験値を力に変えることができます。
 
 
経験値という力をつけるためのプロセスを紐解き、どのように経験値を蓄積していくべきかを解説していきます。
 
 
 
 

経験値で比較するようになった背景

 
 
日本には年功序列という文化があり、年齢に応じて収入が増え社会的立場も上昇していきます。
この背景から、経験している期間が長い人の能力を「経験値が多い」と評価し、期間が短い人の能力を「経験値が少ない」と評価する傾向にあります。
 
経験値とは本来目に見えないものであるはずですが、比較対象として「年齢」や「期間」を指標にすることで可視化したのではないかと考えます。
そして、いつしか経験値=年齢や期間で判断されるようになったのではないかと考えます。
 
 
しかし私は、「経験値」=「年齢」や「期間」ではないと思います。
 
その理由は、「経験」と「経験値」は全くの別物だと捉えているからです。
 
 
 
 

経験値は、経験した期間ではない

 
 
では「経験値」とは、一体何なのか。
 
意味を調べると、
「経験によって成長した度合いを数量化したもの。経験の程度。」
とされています。
 
ここから読み取れることは、
 
単に経験をするだけでは「経験値」として蓄積されないということです。
 
 
その経験を経て、自分が成長するためにはどのような課題があるか、その課題をクリアするためには何が必要なのか。
と、考え実行することができて初めて「経験値」として蓄積されます。
 

 
 
一つ一つの経験を大事に扱い、自分にとっての課題を見つけることができてこそ、経験値として蓄積するための第一歩になります。
 
そのためJARTAでは課題に対してただ反省するだけではなく、
その後の伸びしろ(=新たな課題)を明確にすることを重要視しています。
 
 
 
 

さらなる経験値を積むためのコツ

 
 
経験値を積むためには、課題を見つけて自分には何が必要かを考え実行することが重要だと述べました。
それだけでもその経験は大きな意味を持ち、成長するための糧となるでしょう。
 
 
しかし、さらに上を目指すのであればここで満足していてはいけません。
 
若手でも経験が浅くても、周りの選手と圧倒的な差を生み出すための「経験値」を積む方法があります。
 
 
それは、徹底的に準備をすることです。
 
 
 
スポーツに限らず、どれだけ準備できているか否かでパフォーマンスに大きく影響します。
 
例えば、
*試合に向けて苦手なポイントを練習してきた
*緊張しないように事前に会場へのアクセスを調べた
*前日に持ち物を用意した
 
これらも立派な準備です。
簡単なことでも準備を怠ると、最大限のパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
 
では、このような準備を「経験値」へ変換するためには、具体的にどのような準備をするべきでしょうか。
 
 
 
 

準備はより広く、より深く

 
まずは「準備」というものを細分化していきます。
準備といっても膨大な量があり、その中身を把握した上で何を準備するべきかを具体的かつ明確にする必要があります。
 
 

  • 何のための準備か

達成したいものが明確になっているかを確認します。不明確であれば準備も中途半端になります。
例:全国大会に出場する、レギュラーになりスタメンで出場し続ける、世界一になる
 
 

  • 期間の設定

準備をするにも、どの期間で設定するかによって中身が変わります。
長期的な準備から直前までの準備まで、期間の設定も様々です。
 
例:1年後の全国大会に出場する。(長期)
半年で肉体改造を行う(長〜中期)
1週間の体調管理を徹底する(短期)
大会当日のウォーミングアップ、試合の合間でのケア(超短期)
 
 

  • 準備の幅と深さを広げる

筋力アップや柔軟性の向上など身体機能面での準備はイメージしやすいと思いますが、それらをさらに深く追求していく必要があります。
何のための筋力アップなのか、どれほどの柔軟性を獲得していればいいのかなど、ある程度の基準を設定します。(→股関節は柔らかければいいのか
また、普段から認識されにくい準備に対してもしっかり向き合うべきです。
 
*身体機能面…動き出しを速くするための筋力アップ・バランスが崩れてもプレーできる背骨の柔軟性向上、試合時間を走り続けるためのスタミナ向上
*精神面…気持ちを切り替えられる集中力、感情や緊張のコントロール、目標に向けて努力するモチベーションの維持
*環境面…試合で使用する道具への慣れ、手入れ、当日の気候を想定した服装などの準備
*生活面…習慣(ルーティン)の見直し、栄養バランスのとれた食事を心がける
 
 
挙げ出せばきりがありませんが、ほんの一例でもこれだけの準備があります。
もちろん①〜③の内容が互いに交差し合うことで、より深みのある準備となります。
 
 
 
 

準備を活かし経験値を積む

 
 
では、上記のように様々な準備を行い、これを「経験値」として活かすためにはどうすべきか。
 
例えば、
試合直前まで行ってきた多くの準備が、結果としてどのように現れたかを振り返ります。
 
勝敗はもちろん、プレーの質や課題としていた動きの改善など、その準備がもたらしたもの全てをフィードバックします。
 
*目的は達成できたか
*準備の期間の設定は適切だったか
*習慣(ルーティン)を見直すことで変化はあったか
*目的とする筋力・柔軟性は獲得できたか
*集中力は持続できていたか
*効果的だった準備は何なのか
*まだ足りない準備は何なのか
など。
 
 
準備の量にこだわった選手と、こだわらなかった選手。
 
 
言うまでもなく、準備の量にこだわった選手の方がフィードバック後に得られる課題は多いはずです。
 
これらの課題を成長する糧として考え行動する選手には、「経験値」が蓄積されます。
 
 
つまり、より多くの経験値を積むためには
 
その結果から得られる課題数と、
徹底的な準備を経て得られる課題数の合計が重要となります。
 
 

 
 
準備の量を増やすほど、得られる課題の数が比例して増加することは想像できると思います。
 
そして、その課題が経験値として蓄積されるのであれば、
 
準備にこだわる選手には、圧倒的な経験値が蓄積されていきます。
 
 
 
 

まとめ

 
 
経験値は、単に経験することで得られるものではなく
その経験を経て抽出された課題に対して、考え行動することで初めて得られます。
 
1つの経験から得られる課題をより多く見つけることができれば、経験値として蓄積される量も増加していきます。
 
より多くの課題を見つけるためには、いかに準備を徹底的に行えるかどうかで決まります。
 
 
準備は、半永久的に行えるものです。
 
 
今、自身で準備している内容を改めて振り返り
さらに準備できることがないか、考えを深めてみてはいかがでしょうか。
 
きっとその行動が、パフォーマンスアップのためのヒントとなるでしょう。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 
全てはパフォーマンスアップのために。
 

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2019年11月13日

自分をケアできるのは自分


 

文:岡元祐樹

 
自分のケアは自分で出来た方が良い。
 
アスリートであれ、スポーツトレーナーであれ、普段それほどスポーツをしない人であれ、その方が得だと筆者は思います。
 
ここで言う『ケア』という言葉は、心身の不調を軽減あるいは取り除く手段と定義して使用します。
 
例えば肩が凝っているから肩をマッサージする。ハムストリングスの柔軟性が低下しているからストレッチをする。精神的ストレスでイライラしているので穏やかな音楽を聴くなどもケアとして挙げられます。
 
様々な方法がありますが、効果的なケアを実施するには専門的な知識が必要です。なぜなら様々な情報が手に入る現代社会では、何が自分にとって優先順位が高いケアなのか判断に迷うことがあるからです。
 
しかし、心身の不調に気付いた瞬間に近くに専門家がいることはほぼありません。いるとしたらラッキーです。
 
そのため心身のケアは専門家に完全に依存するのではなく、アドバイスを受けながら自分自身で行えるようになる必要があります。
 
 

自分自身で対応できることを目指して

筆者自身の体験談になりますが、この前ふとジョギングがしたくなり自宅近所を走ることにしました。
 
走り始めて数分後、わずかな身体の異変に気付きました。普段より息苦しい感じがするのです。
 
そしてその場で息苦しさに対するセルフケアを実施しました。単純に胸骨(胸の前側にある骨)周囲をマッサージし、息を吸う時に胸が拡がりやすくなるようにしただけなのですが、それだけで息苦しさは解消されました。
 
筆者はスポーツトレーナーや理学療法士としての経験があるため、軽い不調であればその場でなんとかすることができます。
 
しかしそのような人ばかりが運動をしている訳ではありません。
 
もし自分が身体のことと全く関係のない職業に就いていて、今回のようなことがあった場合、やはり専門家にアドバイスを求めたいと思うでしょう。
 
では誰に?どうやって?
 
そういった問題はありますが、それを解決し、専門的なアドバイスを受けられる環境を作っておくことも、コンディションを整える上で重要になってきます。
 
少し話は変わりますが、選手のケアを担当していると身体のケアをこちら側に丸投げしてくる選手もいます。
 
ケアに関してその理論や実施方法などを専門家に丸投げしてしまうと、今回のジョギングの例のように即座に自分自身で対応することができなくなります。
 
アドバイスを受けたその先には、自分自身で身体の訴えに対応できるようにディスカッションを重ねていく姿勢が必要です。
 
そしてアドバイスを伝える側の人間も、受ける側の人間をそのように導かないといけません。
 
加えて、アスリートにとってもう1つ、自身でケアを行う重要な理由があります。それは「さらに高次元な課題の発見」です。
 
関節の可動域制限であったり筋肉の硬さであったり、自身でケアできる要素を放置しておくと毎回同じ要素が課題として残ってしまうということです。
 
例えば股関節の可動域制限がある選手にとっては、ストレッチ等のセルフケアが必要になってきます。そのセルフケアを怠った状態でプレーを重ねると、毎回股関節の可動域制限が問題点として挙がってしまいます。そして毎回の課題が「股関節が硬いのでストレッチする」となってしまいます。これでは競技者として進歩しづらい状況と言えます。
 
このように自分でクリアできる課題をクリアして初めて、次のさらに高い次元の課題に取り組むことができます。上記の例で言えば「ハムストリングスが収縮しやすい股関節のポジションを取る」等といった、よりハイレベルな要素に取り組むことができます。
 
そしてスポーツトレーナーもこのように先々を見越したサポートが必要になってきます。その場で不調が良くなればいいというだけでは足りません。
 

 

目的は多様化しても大事なことは変わらない

価値観が多様化した現代。スポーツ(運動)をすることの意味も多様化してきていると言えます。
 
その昔、ヨーロッパでスポーツが発展していった要因として『戦争に必要な兵士を養成する』といった側面があったそうです。
 
身体を鍛える。ルールを守る。集団で動くといった兵士に必要な要素を育むことができたからです。
 
一方、現代社会でスポーツをすることの意味はなんでしょうか?
 
よく運動不足の中高年層に言われることとしては『体型の維持』『生活習慣病の予防』『精神安定作用』などが挙げられます。
 
このようにスポーツをする目的は多様化してきています。
 
しかし、それを支える土台とも言える要素は共通しています。それは「自分の身体を思った通りに動かせる」ことと「身体に不調を感じる箇所がない」ことです。
 
もっと他にもあるかとは思いますが、筆者はこの2点が重要ではないかと感じています。
 
この2点を実現するために存在するのがスポーツトレーナーと言えるのではないでしょうか?
 
様々なスポーツイベントにより、スポーツに対する関心が高まっている昨今。スポーツトレーナーが提供できるものは何か?ということに対しても興味を持つ人が増えてきているかもしれません。
 
スポーツトレーナーは提供できるものを言語化し、それを理解・実践してもらえるように工夫していく必要があるということです。
 

 

多くの人がスポーツを楽しめるように

自分の身体は自分でケアできた方が良い。
 
そう文頭でお伝えしましたが、そんなに上手くはいきません。やはり専門家にアドバイスを受けることがオススメです。
 
JARTAでは、プロスポーツ選手やそれを目指す選手ばかりをサポートしている訳ではありません。
 
筆者がサポートしている選手でも、社会人として働きながら時間を見つけてスポーツを楽しんでいるという方もいます。
 
長い人生の中で、様々なシチュエーションであらゆる種類の不調を感じることがあると思います。
 
そんな時に、信頼のおける専門家にアドバイスを受けられる環境を整えておくことは有益です。
 
そしてその専門家のアドバイスをヒントに、あなた自身の身体にどんどん詳しくなっていって下さい。
 
あなたの身体の専門家はあなた自身なのですから。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年11月09日

同じトレーニングをしていても差が生まれるのはなぜか?

文責:高橋佑侍

 
 
あなたがトレーニングをしている理由はなんですか?
 
・上手くなりたい
・他の子に負けたくない
・レギュラーを取りたい
・勝つにはトレーニングが必要と考えているから
・格好良くなりたい
 
理由は様々あると思います。
 
 
 
しかし一生懸命トレーニングに励んでいても効果を感じれなかったり、成果が出ているのかわからない事はありませんか?
また、個々で効果や成果の差を感じる事はありませんか?
トレーニングの形や方法が一緒でも、同じ効果があるとは限りません。
なぜ同じことをしていても効果や成果の違い、「差」が生まれるのか考えていきます。
 
 
 
まずは、
・手段が適正ではない可能性
 
 
例えば、パフォーマンスアップや怪我予防の為に
「股関節を上手く使えるようにしたい」
「体幹を強くしたい」
と指導者や選手自身が感じたとしましょう。
 
そのためのトレーニング選択理由として、
・股関節を上手く使えるようにするにはJARTAトレーニングをすれば大丈夫だ。
・体幹を強くするには活躍しているプロ選手があの方法で体幹を鍛えていたから同じ方法で鍛えれば強くなる。
 
このようにトレーニング方法を選択していませんか?
 
 
 
このようなトレーニングの選択では、効果や成果に差が生じてしまいます。
なぜなら、
どんな状態が股関節が上手く使えているのか。
体幹が強い、弱いは何を基準にしているのか。どの場面で強くしたいのか。
言葉の定義や具体的な状態を提示していません。
言葉の認識の共有、個々の状態の評価・課題を具体的に抽出した上でどんなトレーニング方法が適正なのかは変わります。
 
 
 
 
ここで伝えたいのは、手段に囚われないでほしいという事です。
何をするかよりも、言葉を定義付けること、個々の課題に合わせて手段を選択することが大切になってきます。
 
 
 
 
次に考えられるのは、
・意識しているか、いないか(感じ取ろうとしているか、理解しているか)
 
 
 
トレーニングをただこなしているだけなのか、どんな目的でどこの動きを獲得するために、何に意識を向ければいいのか、繊細な感覚で取り組めているかどうか。
様々な要素も大きく関係しています。
 
 
 
例えば、ある研究で被験者を2グループに分け、一方には作業を通じて消費するカロリーを一覧にしたカロリー表を配布、一方には配布しない。そして、カロリー表を配ったグループには1日の最後に「どのぐらいカロリーを消費したか」を計算してもらった。
すると同じ作業をしているのに自分が使っているカロリーを意識したグループは体脂肪率が落ち、血液データの改善が見られ一方、普段通りの作業をしたグループは全く変化がなかったというような研究があります。
 
 
 
この結果から、どこに意識を向けているかによって同じ時間、同じ作業をしていても成果には大きく差が開くと言えます。
 

 

差を生みにくくするには何が必要か

 
 
このトレーニングをしていれば間違いなく怪我の予防にも、パフォーマンス向上にも、勝利にも繋がるといった絶対的なトレーニング方法はありません。
 
 
では、どうしたら適正な方法になったり同じトレーニングをしても効果や成果が生まれやすくなるのか。
 
 
 
それは、
個々を分析すること。
トレーニングの目的や自身の身体に意識を向けること。
これらのことが必要になってきます。
 
 
 
理想とする動きや獲得したい技術に対し、その動きや技術はどんな要素が必要なのか。
その上で自身の現状と比較し何が課題であるかを把握します。
そこで初めてどんな手段(トレーニング方法)を用いた方がいいのかが決まってきます。
 
 
 
また、自身の身体に意識を向けることで、部位の動きにくさ、感覚の違い、左右差等を察知でき、より繊細なトレーニングができます。
繊細なトレーニングができることで、身体の細部まで動かす能力が養われます。
 
 
トレーニング方法や形だけに終わらず、なぜそのトレーニングをするのか。
何のために、どの場面で必要なことなのかを理解しておくこと。
身体に意識を向けること。
これらを取り入れることで、トレーニングによる効果・成果が感じられます。
 
 
 
指導者であれ、選手であれ曖昧なことがあれば聞きましょう。
納得した上で取り組みましょう。
そうでないと、同じこと・同じ時間を過ごしても「差」が生まれてしまう可能性があります。
 
 
一人でも多くの方にとって
“なぜそのトレーニングをするのか”という問いが今回の記事をきっかけに
前向きな議論となってもらえることを願っております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年11月06日

投球障害から選手を守れ!―肩関節後方タイトネス編―


 

文責;山内 大士

 
関西で活動する山内です。
 
前回の記事にて、投球数と投球障害の関係性と、投球数以外に大切なポイントをお伝えしました。
 
https://jarta.jp/seminar/17257/
 
今回はその中の一つ“肩関節後方タイトネス”について、より深く掘り下げながらお伝えいたします。
肩関節後方タイトネスとは、投球動作の反復により肩関節後方組織が硬くなり、肩関節内旋・水平内転可動域制限が生じた状態を指します。
 
〈目次〉
・肩関節後方タイトネスと投球障害の関係性
・肩関節後方タイトネスの原因となる組織
・肩関節後方タイトネスを改善させる方法
・実際の介入における注意点
 
 
 

肩関節後方タイトネスと投球障害の関係性

 
前回ご紹介したとおり、肩関節後方タイトネスと投球障害の関連は数多く調査されており、非投球側と比較し18度以上の内旋制限を有する選手は肩障害発生リスクが1.9倍になることが報告されています(Wilk 2011)。
 
一方、上腕骨後捻角度が増大する影響もあり(Chant 2007など)、症状のない選手においても内旋制限と外旋拡大が見られます。そのため、内外旋総可動域の左右差を問題視する考え方もあり、実際に5度以上の内外旋総可動域制限は障害リスクとなることが報告されています(Wilk 2011, 2014)。
内旋制限単独で考える場合には、多少のばらつきはありますが20度程度の左右差を基準とし介入することが多いようです(Mansuke 2013, Michael 2018など)。
 
一定以上の内旋制限を有する選手は現在症状がない場合でも、肩外転筋力低下(Nirav 2015)や肩峰下スペースの減少(Launder 2016)といった機能的な問題が見られるという報告もあります。
 
 
 

肩関節後方タイトネスの原因となる組織

 
肩関節後方には、大きく分けて関節包と筋肉が存在します。上述した可動域制限にはどちらの組織が関連しているのでしょうか?
 
深部にある軟部組織の硬さを直接測定できるエラストグラフィという機械を用いた研究の結果、投球側の後方関節包は硬化・肥厚していること(Takenaga 2015)や、内旋制限の大きい選手は棘下筋や小円筋の筋硬度が高いこと(Mifune 2017, Yamauchi 2016)がわかりました。
 
以上のことから、後方タイトネスには関節包・筋の双方が関与していることが考えられます。しかし、外科的処置なしに関節包の柔軟性を改善させるのは困難であるため、我々が介入対象とする組織は主に棘下筋などの肩関節後方に存在する筋肉であると考えて良いでしょう。
 
 
 

肩関節後方タイトネスを改善させる方法

 
こちらも、数多くの研究が行われており、可動域改善効果が報告されています。
 
選手が一人で行えるセルフストレッチとしては、横向きに寝て肩を内旋方向に動かすスリーパーストレッチが多く用いられます(Maenhout 2012など)。

 
その他にも、少年野球などで一度は指導されたであろうクロスボディストレッチ(McClure 2007)や、それを横向きに寝ながら行うことで肩の後ろをより効果的に伸張させるmodified クロスボディストレッチ(Yamauchi 2016)なども、可動域改善効果が示されています。

 
 
 
これらのストレッチは30秒×3〜5セット実施することで即時効果があると認められており、数週間の介入による効果も認められています。また、こうしたセルフストレッチ単独でも効果的ではあるのですが、ストレッチとマッサージ的介入を併用することによりさらに効果が高まることも報告されています(Bailey 2017)。
 
 
 

実際の介入における注意点

 
これまでに述べてきた科学的知見を踏まえると、投球障害の予防もしくは改善に向けて、棘下筋などの後方筋群の柔軟性を改善させる取り組みは非常に重要であり、そのためには直接的なマッサージやストレッチが有効な一手段であると言えます。しかし、それだけでは効果が出ない、もしくは逆効果になる場合も存在します。
 
「内旋制限があるから肩関節後方のストレッチ」と短絡的に取り組んでしまわずに、少なくとも以下の2つの視点は持っておくことをオススメします。
 
①痛みや違和感の出にくい方法で肩関節後方に介入する

  1. ②他の部分にも目を向けながら肩関節後方の硬さを改善させる

 
まず①について。上述したストレッチ効果の検証は多くの場合現在症状がない選手に対して行われており、既に肩を痛めている選手の場合、内旋や水平内転方向へのストレッチは痛みを伴う場合も多くあります。症状を有する選手の場合はそうしたストレッチよりも、四つ這い位で肩の後ろに体重をかけるようなストレッチ方法の方が、痛みも少なく可動域改善効果も出やすいことが報告されています(川井2016)。
その他に私がよく用いる方法としては、テニスボールを使ったセルフマッサージや、ベーシックセミナーでお伝えしている肩のTレフストレッチなどがあります。

 
 
 
次に②について。これまでにもJARTAでは患部から離れたところに問題解決のヒントがあることを度々お伝えしてきました。
 
参考;
https://jarta.jp/training/3382/
https://jarta.jp/training/17234/
 
肩関節後方の硬さを解決させる際にも同様で、例えば棘下筋・小円筋の近くに位置する広背筋の硬さを腰部や臀部のストレッチを介して軽減させることにより、肩関節後方の硬さも和らぐことがあります。上腕三頭筋・三角筋後部を含めて肩〜上腕後方が全体的に硬いようなケースでは、前面に位置する小胸筋や上腕二頭筋の緊張を緩めるような介入をすることで、結果的に肩の内旋可動域が拡大することもあります。
 
このような視点は、通常のストレッチで痛みが出現するケースにおいても非常に重要となります。
 
 
 

まとめ

 
今回は投球障害に関する重要な要素である、肩関節後方タイトネスについてお伝えいたしました。次回の記事では肩甲骨の動きや筋機能に関する科学的知見と、私が実際に行う介入の方法をお伝えいたします。
 
また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。
 
野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。
学生・学生トレーナー・投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。
 
お申し込みはこちら
12/8(日)in大阪
https://business.form-mailer.jp/fms/f9765758112026
 
12/14(土)in東京
https://business.form-mailer.jp/fms/22655ff1112081
 
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年11月04日

流れを変えることができる選手になる

文:岩渕翔一

あなたが努力する目的はなんでしょうか?
 
・手に入れたいものがある
・守りたい(守らなければならない)ものがある
・成し遂げなければならないものがある
 
理由は人それぞれでしょう。ただし理由やきっかけ、目的が何であれ、実現するために踏まねばならないプロセスは皆一緒です。
 
成し遂げるまで続ける
 
必要なプロセスはたった1つ。これだけです。プロセスの過程における質はもちろん重要ですが、まずはこの覚悟が必要です。では努力の手段はどうでしょう。スポーツであれば、
・チーム練習をする
・他チームと合同練習をする
・自主練習をする
・なんらかの指導を受ける
・合宿を組む
・試合をする
 
などがあるでしょうか。これらのトライアンドエラーを繰り返しながら、適宜軌道修正を行い、なるべく最短距離で選手が目標を達成できるようにサポートするのが指導者やトレーナーの役割です。
 
スポーツでは大会前などに「合宿」が組まれることが多くあります。JARTAではトレーナーの合宿を毎年行っており、今年が5回目になります。選手やチームが集中的に練習やトレーニングを行うように、トレーナー自身が自身の成長のために集まり、寝食を共にし、集中的にそれぞれの課題に向き合います。

 
上記に書いたように「努力」の手段は多くありますが、なぜわざわざ手間のかかる「合宿」を行うのでしょうか。
 
互いが切磋琢磨し、自己研鑽に励む
 
合宿の特徴は何といってもこれでしょう。一人で課題に向き合うよりも仲間がいる。競い合うのではなく切磋琢磨する。教える側と教えられる側に別れることなくそれぞれが主体的に取り組む。
 
そういった場を年に1回トレーナー自身が経験することで、自己研鑽するだけでなく、その場で感じたことを実際の現場で活かせるように。
 
今年の合宿は神戸で10月26日〜27日の2日間。3年連続となるみのたにグリーンスポーツホテルで行いました。大ホールだけではなく、グラウンド、テニスコート、山に囲まれた自然いっぱいの環境、露天風呂つきの温泉と、素晴らしい環境で行えるため毎年利用させていただいています。
 
今回の合宿は4ヶ月前からweb上にスレッドを立ち上げ多くのディスカッションや課題に取り組むといったことを行いました。これは、先に述べたように努力すること。を習慣化し、積み重ねる続けるこが自然に行えるよう落とし込むためです。

 
また、合宿に参加するにあたりトレーナーには多くのルールを提示しました。例えば、
・受け身にならずに能動的に自己学習すること
・誹謗中傷や悪口など他者批判は厳禁で、ポジティブな議論をすること
・依存しないこと。他人や環境のせいにしていては成長は望めない
 
などがあたりますが、全ては「成し遂げるまで続け続けるため」の手段として、「互いが切磋琢磨し、自己研鑽に励む」環境を整えるためのものです。

 
合宿2日間の内容は「原点回帰」をテーマに「全ては選手のために。手段に囚われない」といったJARTAコンセプトの1つでもあるここに立ち返るためや体現するために必要なプログラムを組みました。
内容はこちら
それぞれの想いを胸にまた明日に向かう/2019JARTA合宿開催報告
選手であれ、トレーナーであれ合宿をするのであれば必ず前提に置いて欲しいことがあります。それを自然に行えるようにするためにルールがあったりプログラムにも多くの仕掛けを行うのですが、それでももう一度しっかり合宿に入る前にしっかり意識してください。
 
合宿というのは普段の練習や試合とは得られるものが違います。トレーナーであれば勉強会やセミナー、講習会とは違います。試合や練習は指導する者や大会を運営するものがなければ成り立ちません。勉強会やセミナーは教える側がいなければ成り立ちません。
 
合宿というのは、参加する選手自身が。
参加するトレーナー自身が全員で作るものです。便宜上、教える側と教えられる側(伝える側と伝えられる側)に別れることはありますが、実はそこに垣根がないことが合宿の最も良いところであり難しいところでもあります。
 
能動的に主体性があるかないかはここでわかります。伝える側が当然良いものを提供しようと最大限努力することは必須です。それに対して伝えられる側はどのように反応したか。内容やその場の空気を踏まえ何を考えどう行動したのか。その場を作るのはその場にいる全員なのが合宿です。垣根がないというのはそういった意味です。
それぞれに責任がある。
それは自分自身の成長に対する責任です。
 
JARTAトレーナー合宿は今年で5回目ですが、やっとそのような空気ができてきたと今年は感じることができました。来年はさらに良いものに。参加するトレーナー全員が主体的に動くことで良い相互作用が生まれ、文字通り切磋琢磨できるようになるはずです。

 
70名ものトレーナーが参加してくれた今回の合宿。70名分の背景があり参加者の想いは人それぞれです。2日間共に過ごした中で得たものや感じたこともそれぞれでしょう。歩みを進めるスピードもそれぞれ。
企画運営を担った責任者として、様々な背景を持ったトレーナーへの働きかけという意味で課題は山積みでした。この課題に向き合い、またみなさんと成長していくためのステップアップにし、来年お会いできればと思います。
 
 
今後合宿を行う選手のみなさん。
合宿を成長する機会にしたいのならとにかく主体的であること。能動的であることです。努力する目的をもう一度しっかり振り返り、今日からの積み重ねを。
 

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12月8日(日)大阪 10:00〜16:00
12月14日(土)大阪 10:00〜16:00
JARTAベーシックセミナー
12月22日(日)大阪10:00〜16:00
その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 
 

2019年11月03日

ファーストタッチの原則とは

文:赤山僚輔

 
JARTAの新セミナーでコンディショニング方法や思考について
多くのアップデートがなされました。
 
進化についての話から、これまであまり取り扱ってこなかった評価の観点。
先日のJARTA合宿でも実施した、スポーツトレーナーとしてのEBMの扱い方について。
 
多くの新たな観点が増える中で、初期の頃から変わらず残っているコンテンツがあります。
 
それはタイトルにもある「ファーストタッチの原則」です。
 
 

ファーストタッチの原則とは?


 
コンディショニングに関する手法を多く知るようになると、特に慢性障害が発生している場合などで痛みが発生している部位ではなく他の原因に対して原因があると考えられるようになります。
 
例えば、膝が痛いけど原因は股関節。
肘が痛いけど原因は肩甲骨。
 
などなど。
 
もちろん原因は多岐に渡ります。
患部以外の原因が想起できればできるほどに他の部位への評価や治療を急いでしまう場合が意外と多く見受けられます。
 
そういった際に選手側の立場からすると
 
「痛いのは膝なんだけど・・・。」
「なんで肘が痛いって言っているのに肘をみずに肩甲骨の評価ばかりするんだろう?」
 
このような疑念を抱かせながらのコンディショニングとなる可能性があるのです。
 
このような疑念は選手とトレーナーの関係性を構築する上でマイナス方向に働くことが多くあります。
そのような疑念を抱かせないためにも、最初は患部に触れましょう。
 
これがフォーストタッチの原則です。
 
 
治すことよりも関係性作りが重要
コンディショニングセミナー講師の真木トレーナーは復帰に向けての第一歩は
”クライアントのマインド作り”
このようにコンディショニングスキルセミナーでもお伝えしております。
 
これは真木トレーナーがオーストラリアのトレーナーから聞いた話だそうです。
 
本当に重要な視点で、痛みをとることや可動域を獲得することに重きが置かれがちですがアスリートの復帰の過程において前向きにリハビリに取り組めるか。
復帰に向けて明確な成功のイメージが持てるかなど、患部の状態を好転させるだけでなく重要な視点があるのです。
 
ファーストタッチの原則はこういった関係性作りを構築する上でも非常に重要で、是非とも頭に入れておいて欲しいと思います。
 
もちろんそんなことはしている、そんな方は、患部をただみるだけでなく、復帰に向けてのマインドが用意できているか。
 
そんな観点でコミュニケーションを図るだけでまた関わりが変わっていけると思います。
 
是非とも参考にしてみてください。
 
 
現在募集中のJARTAコンディショニグスキルセミナーは以下のサイトよりご覧ください。

現在募集中のセミナー


 
少しでも選手と良好な関係性を構築しながらサポートしていけるスポーツトレーナーが増えてくれることを心から願っております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年11月01日

バレー選手にしてもらいたい手首や指のケア

 

文:高島 公平
 
バレーは手の使い方が重要になるスポーツの一つです。
オーバーをする時にはボールを指で包み込み、肘を伸ばしていくのと同時に手首のスナップを効かせボールを押し出します。
また、フェイントをする時には手の形を状況に応じて変化させ狙った場所にボールを落とそうとしたり、ボールの軌道を作ろうとします。
ブロックではボールが当たる最後まで指先にしっかり力を入れることが必要になってきます。

 
手を硬く使ってしまうことや指先にまでしっかり力が伝わらない状態であると、バレーではプレーの質が下がってしまうことに繋がってしまいます。
 
 
しかし、日頃から手の状態まで気にしてケアを行なっている選手は少ないのではないでしょうか。
 
 
手の状態を気にしていくようになると「今日は少し手が硬い」であるとか「何か動きにくい」、「少しむくんでいる」など様々な状態を体感するようになってきます。
 
 
 
今回は手の状態をより良い状態にしていくためのケアをお伝えしたいと思います。
 
 
そこでまず皆さんに知っておいてもらいたいことがあります。
 
それは手はたくさんの骨でできており、手を動かす筋肉は手首から先だけでなく手首から肘の間にまであります。
たくさんの骨や筋肉があることで手は様々な動きをすることができ、細かい操作が可能となるのです。
しかしながら、たくさんの骨や筋肉が上手く誤魔化して動くこともでき、知らない間に硬さができたり動きが悪くなる部位が出てきてしまうのです。
 
 
このことからも日頃から手の状態を気にしていく必要があると言えます。
 
 
ケアの方法として手首のストレッチや手首を回す、指をしっかり動かすということはよく知られている方法だと思います。
今回はこれら以外の方法をお伝えしたいと思います。
 
 
 
1、手のひらのアロースポイントを押しながら指の曲げ伸ばし

 
アロースポイントとはいくつかの筋肉が重なり合うポイントです。手だけでなく全身の色んな場所にあるものです。
手のひらのアロースポイント(手のひら真ん中やや下)を軽く押しながら、約5秒間指の曲げ伸ばしを行ないます。
 
手のひらにあるアロースポイントに関わる筋肉には手のひらにある虫様筋や掌側骨間筋だけでなく、腱を介することにより手首から肘の間にある長掌筋や浅指屈筋、深指屈筋が挙げられます。
また、これらの筋肉に作用するだけでなく手のひらにある母指や小指を動かすための筋肉にも影響を与えることができ指の操作性を良くするためのケアになります
 
 
2、手首を握り、握った手を振る


 
手首の骨と前腕の骨の間を親指と人差し指or中指で握ります。
軽く握った状態から上下に5~10回振るように動かします。
親指を上に向けた状態と手のひらを下に向けた状態の2種類で動かします。
手首の動きを良くするためのケアになります。
握っている手で緩みを感じることができれば1回だけでも十分に効果を得ることができますが、硬いままの場合は2、3回続けて行なうと手首の動かしやすさを実感できるようになってくると思います。
一般的に知られている手首のストレッチをしてもスッキリしない場合や効果が不十分な時に併せて行なっても効果的です。
 
 
この他にも手首や指に引っ張る刺激を加えたり、指先を持って捻じったりすることなどまだまだ多くのケアの方法がありますが、まずはこの二つから日々のケアに加えてみてください。
 
オーバーパスが苦手の人や上手くボールコントロールができない人、手に疲れを感じやすい人はぜひとも取り組んでもらいたい内容になっています。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2019年10月28日

それぞれの想いを胸にまた明日へ向かう / 2019JARTA合宿開催報告

 

 
文責:赤山僚輔
 
2019年10月26日27日、2日間神戸にあります”みのたにグリーンスポーツホテル“で毎年恒例のJARTA合宿が開催されました。
 
大会長の岩渕翔一を中心に何ヶ月もかけて準備をして、多くの仕掛けを展開しながら、選手のサポートに関わるスポーツトレーナーが自分自身に向き合う2日間を過ごしました。
 

 
今回の合宿で行われた内容は以下のようなものでした。
・10 秒自己紹介
・東西対戦形式トレーニングプレゼン
・東京オリンピックパラリンピック〜その在り方とは〜
・リズムトレーニング演習
・外部講師特別講演 スポーツ内科疾患とその対策
講師:田中祐貴(一般社団法人日本スポーツ内科学会 代表理事)
・FTG 体験(夕食時間争奪戦);グループ対戦
・宴会および課題克服プログラム

・世界基準のウォーミングアップ
・体力測定及び体力測定トレーニング作成
・世界基準のウォーミングアップフィードバック
・トレーニング作成における思考過程と作成法
・ケースワーク〜選手を導くために必要な科学的情報の用いかた

・参加者プレゼン

  • プレゼンター1:
  • 岡元 祐樹「アキレス腱が切れて」
    プレゼンター2:
  • 山田 東秀「目標達成するためのメンタルトレーニング体験会」
  • プレゼンター3:
  • 森勢 健太「小児、成人の中枢神経疾患に対するリハビリテーションの 経験から得たアスリートへの評価と介入の順序づけ」
    プレゼンター4:
  • 三好 優美「コーチングとティーチングから考えること」
  • プレゼンター5:
    永井 貴大「僕がトレーナー活動をする上で心がけていること」
  • プレゼンター6:
    平山 鷹也「勝利に関わるトレーナーになるために〜2部降格から 1部復帰を目指した取り組み」
    プレゼンター7:
    山内 大士「投球障害への関わり方〜最速の現場復帰を目指して〜」

 
今回は運営側の仕掛けとして、なかなか現場で自分の時間をとりにくいスポーツトレーナーの環境を考慮し、
基本的には休憩時間なしというある意味過酷で過密な部分もありながらあっという間に2日間が過ぎて行きました。
 


 
わざわざ時間とお金をかけてまで、自分自身に向き合う時間を作る必要性があるのか。
 
オンラインでのやり取りが多くなった今、合宿の存在意義について問題提起をしてくれるオーストラリア在住の認定スポーツトレーナーからの問いに対して考える時間もありました。
 
全国にいる認定スポーツトレーナーや受講中の皆様。
 
実際に顔と顔を合わせて議論し、相談し、一緒に泣き笑いすることで得られた今後の伸び代や今後の課題。
そして何より、アスリートの心に火をつけるように我々自身が火をつけ、火をつけられる瞬間が確実に合宿にはありました。
 
 
それぞれの想いを抱えながら目の前のクライアントに向き合い、アスリートの成長に寄与している我々自身が成長を実感できること。
 
これは間違いなく明日への活力となります。
合宿が終わっていつも通りの日々に戻ってクライアントに対峙した時に、この合宿で灯した心の奥にある熱い火をきっと感じていることでしょう。
 
 
胸に秘めた想いをしっかりと目の前のクライアントに届けられるように、そしてこれだけ多くの仲間が共に悩み、共に解決してくれる安心感を胸にまた明日に向き合っていきたいと思います。
 
年に一度のJARTA合宿、来年は2020年11月7,8日
 
どんな景色がみえるのか、今から楽しみです。
 
少しだけ成長した認定スポーツトレーナーが皆様の元へお伺いします。
また一緒に汗を流させてください。
 
 
今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 

(外部講師の田中先生と大会長岩渕翔一、CEO中野崇)

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2019年10月23日

投球障害から選手を守れ!投球数制限以外に大切な要素は??

文責;山内 大士

 
 
 
毎年夏の甲子園の時期になると必ず議論される投手の球数問題。
 
今夏には、JARTA公式ブログにおいてもこの話題を扱った記事が掲載されました。
 
参考)投手を故障から守るのはエビデンスではなくルールだ
https://jarta.jp/training/16703/
 
選手を怪我から守るためになんらかのルール規制が必要ではないかという意見も多い中、これまでの野球界の歴史もありなかなか話が進んでいないのが現状です。
 
関西で活動している山内です。
 
今回の記事では投球数やその他の投球障害と関連深い要素について、科学的知見を中心にご紹介いたします。
 
目次;
・投球数と投球障害の関係性
・投球数以外に大切なポイント
①肩関節後方の柔軟性
②肩甲骨周囲の筋機能
③投球フォーム
 
 
 

投球数と投球障害の関係性

 
国内外を問わず、投球数や投球イニング数と投球障害及び身体機能との関係性を調べた報告は数多く存在するため、いくつかご紹介いたします。
 
・1試合あたりの投球数と肘痛について。5研究中関連あり3研究、関連なし2研究(Ryan 2019)
・1試合あたりの投球イニングと肘痛について関連あり1研究(Olsen 2006)、関連なし1研究(Lyman 2001)
・中学生では70球、高校生では100球以上の投球により、直後~数日間の肩関節筋力や可動域の減少がみられる(Iwasa 2011, Chou 2015)
・年間の試合数が多いと肘痛発生が増加する(Matsuura 2013)
・投球イニング制限に関する知識や順守率は肘痛発生と関連しないが、試合数に関するコーチの考え方が肘痛と関連する(Yukutake 2015)
 
これらの結果を見ると、断定はできませんが投球数が増加することで障害発生は増加する傾向にあるようには思えます。また、一試合・一つの大会のことだけを考えるのではなく、年間トータルの負荷量を考えていく必要もありそうです。
 
 
 

投球数以外に大切なポイント

 
投球数以外にも、投球障害との関連が報告されている要素はたくさん存在します。
中でも、我々スポーツトレーナーがメインとなり介入できるのが身体機能です。
また投球フォームに関しても、直接的に指導せずともトレーニングを通じて改善を試みることも多いでしょう。
 
身体機能や投球フォーム(バイオメカニクス)と投球障害及びパフォーマンスとの関連性については、数多くの論文が出されています。今回はこれまでに報告されている研究をいくつかご紹介いたします。
 
 
 
①肩関節後方の柔軟性
 
投球動作において大きな負荷が加わる部位の一つとして、肩関節が挙げられます。特に腕がしなるフェーズである“MER=肩関節最大外旋位”や、ボールをリリースする局面において最大の負荷がかかります(Glenn 1995)。

 
 
投球動作の反復により棘下筋などの後方組織が硬くなり内旋可動域制限が生じます(Mifune 2017)が、これが肩や肘の障害の一因であるという報告は多数存在しています(Wilk 2011など)。
 
投球障害を考える上で肩関節後方の柔軟性は欠かせない視点であると言えるでしょう。
 
 
 
②肩甲骨周囲の筋機能
 
投球動作において肩関節や肘関節への負担を軽減するために特に重要となる肩甲骨の動きは、“内転”“上方回旋”“後傾”になります。

特に、投球動作中に十分なMERを確保するためには、肩甲骨後傾の動きが大切であると示されています(Miyashita 2008)。そのために重要となるのは、「僧帽筋下部・前鋸筋がしっかり働くこと」と「小胸筋に十分な伸張性があること」です。

 
症状のない選手であっても投球側の肩甲骨が前傾していたり小胸筋が短縮していたりすることが報告されているため(Hodgins 2017, Otoshi 2018)、予防の観点からしても重要な要素と言えます。
 
また、肩関節外旋筋力の低下も投球障害リスクとして挙げられます(Byram 2010など)。特に、投球動作のように挙上位での外旋筋力を発揮する際には前鋸筋の働きが重要であると報告されています(Uga 2016)。
 
単に肩関節を外旋する筋肉を鍛えるだけでなく、土台である肩甲骨を安定させる機能にも着目する必要があります。
 
 
 
③投球フォーム
 
一流の投手であっても投げ方は千差万別であり、個性が表れる部分でもあります。だからと言ってどんな投げ方でもいいというわけではもちろんありません。どんな投げ方をしていれば負担が大きいのか、球速の速い選手はどんな投げ方をしているのか、たくさんの投手の平均値を取った際にどのような特徴があるのか把握しておくことは重要です。
 
肩や肘への負担が少ない投げ方の特徴は、MER~ボールリリースにかけて肩関節が適切な角度にあること(Matsuo 2002, 二宮2007など)です。具体的に述べると、外転角度が90度前後で真横よりわずかに水平内転位(前方)であることが理想的とされています(二宮2007, 駒井2008など)。
 
球速の速い選手の特徴は、骨盤や体幹の回旋速度が大きいこと(Stodden 2006など)や、軸足及び踏み込み脚で地面を押す力(床反力)が大きいこと(Williams 1998など)が挙げられます。また、肩外転角度が90度前後であることは球速の速い選手の特徴でもあります(Matsuo 2002)。
 
詳しくはまた別の機会に述べますが、こうした投球フォームを実現するためには、股関節や体幹を含む全身の身体機能と投球動作に対する運動イメージが重要です。
 
 
 

まとめ

 
今回は私の知る範囲で、投球障害を考える上で重要な要素についてその科学的知見を大まかにご紹介いたしました。
 
次回以降、それぞれの要素についてさらに詳しく考察し、その実際の改善方法までご紹介していきたいと思います。
 
また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。
 
野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。
学生・学生トレーナー・投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。
 
お申し込みはこちら
12/8(日)in大阪
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最後までお読みいただきありがとうございました。

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2019年10月19日

患部外トレーニングでも患部に影響する


文:平山鷹也
 
「患部外トレーニング」
 
怪我をしたことがある選手なら必ず聞いたことがあるこの言葉。
 
膝や股関節を痛めたときに体幹や上半身の筋トレをしたり、
逆に肩や肘などを痛めたときにスクワットなど下半身のメニューを行ったりすることを、一般的に患部外トレーニングと言います。
 
今回は、痛めたところに負担がかからないようにしながら行うトレーニングを、
「患部外トレーニング」ということにします。
 
 
選手やトレーナー、指導者の皆さんは、患部外トレーニングにどんなイメージを持っているでしょうか。
 
 
・怪我していないところの筋力低下を防ぐために行うもの
・怪我していない腕(脚)をパワーアップするために行うもの
・復帰できるまでの代わりの練習
などなど。
 
他にもあるかもしれませんが、患部に影響を与えないトレーニングを行う、と認識している方も多いのではないでしょうか。
 
 
ではここでタイトルの質問をしてみます。
 
患部外トレーニングは、患部に影響はないのでしょうか?
 
 
私の考えは、
「ほとんどの場合はNo」です。
 
ほとんどの場合は、とにごしているのはすべてを実証できることではないからで、実際に全く影響がないことはないと考えています。
 
 
ここから少し具体的な話をしていきますが、その前にまずは影響にも2種類あることに触れておきます。
 
つまり、①悪い影響と②良い影響です。
 
悪い影響とは、患部外トレーニングの結果として患部の治りが遅くなったり、パフォーマンス低下を招いてしまうこと。
 
良い影響とは、患部外トレーニングをすることで患部の治りを早めたり、パフォーマンスアップにつながること。
 
では、それぞれ具体的に考えてみましょう。
 

  • 悪い影響
    わかりやすいところで、慢性障害によって練習に支障が出てしまい、患部を安静にしている間の患部外トレーニングについて考えてみます。これは練習を続けながら慢性障害の改善を図っていくときにも重要な考え方になります。
    慢性障害の原因は多岐にわたりますが、多くの場合可動域や筋力、身体操作的問題によって局所への負担が集中することで起こります。
    つまり全身のバランスが崩れたことによって現在の痛みが引き起こされていると考えられます。
    実際のスポーツ場面では指の先から足の先まですべて関係しあっています。
    それは筋連鎖や運動連鎖など他にも様々な観点から考えることができますが、この影響を考えないと患部外トレーニングで患部に悪影響を与えてしまう可能性があります。
    実際に遭遇した例として、走ると膝の前方が痛くなり、全力で走れなくなったので一度練習から外れて患部を休ませ、その間は患部の治療と並行して患部外トレーニングを行うことになった選手がいました。
    そしてその期間、体幹トレーニングとして腹筋運動(クランチ)をたくさん行ったそうです。
    そうして一定期間の休養を経て再度練習に復帰したが、しばらくしたらまた痛みが出てきて、しかも前回よりも痛みが強く出るようになってしまった。
    これはいったい何が起こったのでしょうか。
    1つの仮説として、腹筋運動で鍛えられた「腹部前面にある腹直筋」と、
    膝前方の痛みと関連が深いと考えられている「太もも前側の筋肉である大腿四頭筋」との関係性から考えてみます。
    ・腹直筋と大腿四頭筋は筋膜を介してつながっており、腹直筋の収縮を繰り返す腹筋運動によって大腿四頭筋の緊張も高くなった
    ・腹直筋の緊張が高くなることで骨盤が後傾すると、動作時の重心が後方へ移動し、大腿四頭筋の緊張が高くなるので膝への負担が増大した
    ・腹部が硬くなってしまうことでみぞおちの動きが悪くなり、上半身で生み出した力を下肢へ伝える効率が下がることで膝への負担が増加した
    などなど、挙げればきりがありませんが、今回の例では腹筋だけを鍛えるのはリスクが高かったようです。(腹筋運動が必ずしも悪いというわけではありません)
    このように、患部へ悪影響を与えてしまうような患部外トレーニングが、現場ではまだまだたくさんあるように感じます。

 

  • 良い影響
    では次に患部に良い影響を与える患部外トレーニングとはどのようなものがあるのでしょうか。ここでも上と同じ膝の前が痛い選手を例に考えてみます。
    これは実際に私の経験ですがその選手はみぞおちが硬く、脚を腹部に引き付ける作用がある「大腰筋」が上手く働いていないことが予測されたので、
    「大腰筋T-レフストレッチ」を行ってから、トレーニングを行いました。
    (大腰筋T-レフストレッチはJARTAベーシックコースで紹介しています)
    そうすることで腹部の余計な緊張がとれ、大腿四頭筋だけで脚を持ち上げることが減り、練習へ復帰してからも膝の痛みなくプレーできるようになりました。
    (筋肉だけでなく、内臓、自律神経、循環などの関連も深い場所ですが、今回は割愛します)
    今回は慢性障害を例にしましたが、実は捻挫や骨折などの急性外傷でも同じように考えていくことができます。
    急性外傷では、まず損傷された靱帯や骨の修復が最優先されるので、循環や回復能力と全身との関係性をより深く考えていく必要がありますが、基本的な考え方は同じです。
    患部外トレーニングを行うときこそ、悪い影響を最小限にしながら、良い影響が最大限得られるように、トレーニングしていく必要があります。

 
いかがでしたでしょうか。
怪我はするということは、自分の伸びしろに向き合わなければならない期間でもあります。
選手の皆さんにとってはつらく苦しい期間だと思いますが、その怪我があったからこそ成長できたと思えるように、その期間を大事に使ってほしいと思います。
我々JARTAの認定トレーナーは、120%での競技復帰を最低限の目標として設定しており、今回の記事の内容を常に突き詰めて考えてトレーニングを提案します。
 
全ては、選手のパフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年10月16日

『スポーツの持つ力』を今こそ共鳴させよう

 

文:赤山僚輔

 
『スポーツの持つ力』
 
きっとJARTAブログをお読みの皆様は日々感じており、抽象的でありながらも信じてやまない多大なる”力”ではないでしょうか?
 
私自身この”スポーツの持つ力”に魅了された一人であり、いま日本中がこのスポーツの持つ力を実感している真っ只中だと感じています。
 
かつてこのスポーツの持つ力で国を変え、世界にメッセージを送りノーベル平和賞を受賞した人物がいます。
 
ネルソン・マンデラという人物です。
 
ラグビーファンならずとも一度は耳にしたことがある方もいるかもしれません。
 
ネルソン・マンデラ氏は南アフリカで初めて民主的に選ばれた大統領です。
映画『インビクタス/負けざる者たち』では彼の取り組みが1995年のW杯を舞台に映像化され、先日民放でも放送があったので記憶に新しい人も多いはず。
 
彼は本映画の中で以下のような言葉を残しています。
 
「スポーツには、世界を変える力があります。
人々を鼓舞し、団結させる力があります。
人種の壁を取り除くことにかけては、政府もかないません」
ネルソン・マンデラ『インビクタス』より
 
本映画中では国内の分断や人種問題含めて現在の日本人にとっては実感の得られにくい問題も内包していると思います。
 
ただ今回のラグビーワールドカップやバレーワールドカップ、加えて来年に控えた東京オリンピックに向けて多くのスポーツの場面を目にすることが増え我々は知らぬ間に手に汗握り胸に熱いものを感じているのではないでしょうか?
 
これは紛れもなく私は”スポーツの持つ力”であると実感しています。
 
東京オリンピックも翌年に控え、各競技団体の関係者の皆様も日増しに緊張が高まっていると思いますがこんな時こそ本来スポーツが持つ力について再考し、現代に生きる我々がもしかすると忘れかけている心の中にある”なにか”に気づく大事な時なのかもしれません。
 
 

胸の奥にある熱さを忘れていないでしょうか

 
ラグビーの試合をみていると、他競技と純粋に比較することはできませんがとにかく”熱い”。
そんな印象を受けます。
 
そしてそれはラグビー関係者の方々からも感じる熱さでもあります。
 
この熱さを今回は競技特性と共鳴という現象を通して解説してみたいと思います。
 

 
ラグビーの競技特性を考える時に圧倒的に他のスポーツと違う部分としてコンタクトの回数と強度です。
100Kg近くの大男達が全力でしかも複数人でぶつかり合います。
何度も何度も。
転がっても、突き飛ばされても。
一人で太刀打ちできなければ2人3人がかりで。
 
ぶつかり合うたびに筋肉の温度は上がり、心拍数も上がり、交感神経も優位な状態になります。
対戦相手の肌を通して温度を感じ、吐息から息の上がった様も感じるでしょう。
そして競技柄一人で局面を打開することは極めて難しく、自己犠牲を伴いながら得点をあげる為に”FOR THE TEAM”の行動をし続けます。
 
現代は個の時代とも言われ、チームワークや献身性といった側面は軽視されがちな側面でもあります。
 
実際私の関わるチームにおいても長年指導に携わる指導者からこういった部分で、ここ数年の指導の難しさを痛感している声を聞くこともあります。
 
特に世界的に活躍している競技を見渡すと、バドミントン、テニス、柔道、レスリング、フェンシング、空手道、スポーツクライミングなど競技としては個人競技が多いようにも感じます。
 
しかし日本は島国であり組織に対する忠誠心など心身の基底的な部分には『F0R THE TEAM』の精神が宿っているのではないかと私は考えています。
 
それは災害時の助け合う姿勢などからもみてとれるかと思います。
 
ただそういった姿勢が元来あったとしても、内側にある誰かを想う気持ちや熱さを表に出すことが”かっこ悪い”と抑え込んでいる人も多いのではないかと感じています。
 
関わる選手達をみていても試合ではびっくりするような感情表現をするのに、普段はその熱さはどこへ行ったのかとサバサバしたとした立ち振る舞いをする選手も多いです。
 
 
そんな多くの方が今回のラグビーワールドカップをみて、選手達の熱い想いに”共鳴”して自分自身の奥底にあった熱さに気づき、選手達の熱さに呼応するように各地のパブリックビューイングやテレビの前で熱狂しているのではないかと思っています。
 
 

共鳴とは

きわめて通俗的な説明としては、ある物体Aの振動エネルギーが、別の物体Bに移る現象だとしてもよい。

〜中略〜

外部から振動が与えられるとき、与えられる振動が固有振動数に近づくにつれ、物体の振幅が急激に増大する。この現象を「共鳴」または「共振」という。

(wikipediaより)

 
 
こういったラグビーの熱さが競技特有の選手同士のぶつかり合いによっての筋音や心拍の上がり方による共鳴、熱狂する観客の声援からの共鳴。
 
そしてそれは日本全国で応援を送る全ての方への共鳴となり、なんだか表現し難い胸の熱さを皆様が感じてるのだと思います。


 
ただそれはラグビーが気づかせてくれただけで、元来皆様自身が持っていた熱さであり、決して表に出してはならない熱さではない。
 
そのように私は思います。
 
今週末、思う存分熱狂して自分の中にある熱さを最大限に放出して、選手達の熱い思いと共鳴して存分に『スポーツの持つ力』を体感してもらえればと思います。
きっとその熱さがあなたの周りの方々へまた”共鳴”されていくことでしょう。
 
ネルソン・マンダラ氏は以下のようにも言葉を残しています。
 
我々が自らの内にある
光を輝かせるとき、
無意識のうちに
他の人々を輝かせることが出来るのだ。
 
彼は若い時にアマチュアボクシングをしていたそう、身体と身体がぶつかり合う戦いと経験を通して熱いものが他者へ伝わる感覚(共鳴)を実感していたのかもしれません。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年10月09日

大会1週間前に100mのタイムを14.1秒→12.8秒へ縮めた中学生ランナーの話


 

文:鳴海裕平

呼吸の様式が変われば運動の様式が変わる。
呼吸は人間が生きている限り必ず行わなければならない運動の一つです。
当たり前ですが人間はガス交換、つまりは身体に酸素を取り込み、
二酸化炭素を排出しなければ死んでしまいます。
 
しかし呼吸は身体に酸素を取り込むという生理的な働きだけでなく、
呼吸の様式が運動の様式にも影響するという働きも持っています。
 
先日とある中学生3年生ランナーを担当する機会がありました。
この方に対して呼吸の様式を変えることで、
100mのタイムが大幅に縮まったので、その経緯を含めてお話させて頂こうと思います。
 
負の悪循環に陥ったランナー
この方は、元々膝・股関節・腰の痛みで悩み、来院されたのですが、
痛みの原因がどうみてもオーバーワークだったので、よくよく話を伺いました。
すると、
『100mのタイムがどうしても縮まらないからひたすらに練習していた。』
『最近足の速い中1の後輩が入ってきて、すぐにタイムを抜かされそうで焦っている』
『自分は陸上部なのに、野球部の方が足が速くて惨めだった』と、
焦りや悔しさからオーバーワークになっていました。
 
もともと中々タイムが縮まらず悩んでいて、必死に練習した。
部活の時間以外でも、自主的に朝練や夜練をした。
それでもタイムは思うように伸びない。
 
オーバーワークになってから更にタイムが縮まらない、
タイムが縮まらないから更に練習しようとする。その結果、身体を痛めてしまった。
もうどうしたら良いのかわからない。とりあえず身体を治したい。
そういった思いを抱えていました。
 
痛みを取るのは当たり前。タイムが縮まらない原因を探せ。
オーバーワーク気味の身体から、
痛みを治すだけでも一時的に記録は良くなると予測されましたが、
それだけではこの負の悪循環から抜け出すには不十分。
 
何故タイムが縮まらないのかを突き詰めて考える必要がありました。
 
本人がどこを、何を意識して走っているのか。
イメージ上の自分のフォームと、実際のフォームの違いは何か。
周りからどういった指導を受けているのか。よく言われることは何か
 
本人は走るときには一番に『胸を前に突き出すこと』を意識して走っている。
 

 
すると、指導者からは
「前にかかりすぎで腰が入ってない。」「腰が入らないと足が前に出ないぞ。」
と指導される。
 
そして腰を入れてみると、タイムが落ちる。それを指導者に言うと、
「腰が入りきってないからタイムが落ちる。」
「前に傾きすぎてるから腰が入らないんだ。姿勢を直せ。」
姿勢を直してみると、更にタイムが落ちる。前に進んでいる感じがしない。
 
結局最初の走り方に戻したら一番タイムが良いけども、
タイムが頭打ちで一定以上にタイムが縮まらない。
そうしているうちに焦りだけが先行して、量をこなしてみるものの、
タイムは変わらず、むしろ身体を痛めてしまった。
 
実際に走っている姿を見せてもらうと、確かに指導者の言う通り腰が入っていない状態で、
本人に一度意識的に腰を入れて走ってみせてもらったところ、
腰は入っていないままでした。しかし、本人はしっかり腰を入れているつもりと言う。
 
一番大きな問題は「腰を入れる」という言葉の認識の違い。
腰を入れるという言葉の認識が本人は、
 
胸を前に突き出すので、自然と腰は反る形になる。
反っている状態から腰を戻そうとするとブレーキがかかってスピードが落ちる。
だから腰を入れるということは更に腰を弓なりに反らせること。 という認識でした。
 
しかし実際には、腰が入っている=腰が反っている は間違った認識です。
(腰が入っている状態についてはこちらの記事を参照して下さい。)
 
腰が反った状態のまま走るといくつか弊害がありますが、
特に短距離走で影響するのが、最高速に入った時に、
身体が浮いてしまい、踵が空振りし前足部で接地してしまい、下肢の力が地面に伝わらず、
力は空回りするばかりで、一定以上のスピードがでないという状態です。
 
呼吸を変化させ、腰を入れて、稲妻のような激しい踏み込みのある走りへ
腰を入れるといっても、
仙骨を意識的にたくし込むような運動戦略は走る動作には邪魔になります。
かといって逆に仙骨を前傾させ、腰椎が前弯すればやはり腰が反り返ります。
 
そこで今回は腹圧呼吸(IAP呼吸)を利用したアプローチを使用しました。
腹圧呼吸(IAP呼吸)とは簡単に言えば息を吸うときも吐くときも
お腹を凹ませずにお腹周りを膨らませたまま息を吐き切っていく呼吸方法です。
 
 
ただ、腹圧呼吸と書くと腹式呼吸の『腹式』という言葉のイメージからか、
お腹を前だけに膨らませてしまいがちですが、本来、腹式呼吸とはお腹が前だけではなく、
前後左右に広がるものです。なので前だけでなく後ろ、つまり背中・腰まで膨らみます。
 
背中・腰が膨らむことには腰が入っている状態を作りやすい他に
メリットはいくつかありますが、
走る際に地面をしっかりと強く押し込めるというのが一番大きなメリットでしょう。
 
 
実際に体感するには準備体操などで行われるアキレス腱伸ばしがわかりやすいです。
 

 
アキレス腱伸ばしの姿勢を取り、後ろ足の踵が地面に付くか付かないかの位置から
呼吸で背中・腰は膨らませると、下肢背面の筋肉がさらに伸張され、
踵がしっかりと地面に付くようになります。
 
ここで大事なのは『呼吸で柔軟性が増した』などではなく、
呼吸によりハムストリングスを中心とした下肢背面の筋肉で
より地面を強く押し込むことができるということです。
 
息を吸う際に腰をしっかり膨らませ、それをキープすることで、
腰椎が過度に前弯することがないため、
走りが最高速に入った時にも身体が浮き上がりすぎる現象を防ぐことができ、
下肢もしっかりと接地されます。
 
また、しっかりと接地させることで、腰が反っていた時よりも強い床反力が発生します。
そして呼吸により脊柱が安定しているため、下肢から伝わった床反力が逃げることなく、
脊柱全体に伝わり、それが更に推進力に加わります。
 
 
 
全く変動がなかったタイムが一気に変わる。
 
実際に走ってもらうと、
『今まで足がちゃんとついてなかったのがわかった』
『なんだか足が今までよりもしっかり上がる。』との声が聞かれました。
この段階でもタイムは今までよりも縮まっていましたが、
 
ここから、この呼吸を維持したまま、
走るときには今まで通り胸を前に突き出すようにしてもらいました。
『難しいし、腰が慣れない分キツい。』とのことでしたが、
実際に走ってもらうと、ベストタイムより一気に1.5秒縮まっていました。
 
 
元々本人が努力していた土台があったため、身体環境を整えた上で
しっかり接地できることで本来のパフォーマンスが十分に発揮され、
急激にタイムが縮まったのだと思います。
 
本人からは
『今までだとこの速さが限界のところから更に2段階位上の速さが出てた感じがする。』
『速さに慣れなくてちょっと怖かった。正直速さに足が付いていけない所だった』
との声が聞かれました。
 
この方とは何回か走って貰い、本人がやりやすいいくつか個人のコツを見つけました。
・鼻から2回吸って口から1回吐くリズムにすると腹圧呼吸をキープしやすい。
・呼吸は走る前に作っておいて、走ってる最中は腰の膨らみをキープする事だけ意識する。
などなど、、、
 
そして最後に嬉しそうに『どう頑張ればいいのか方向性がわかりました!』
という声が聞けて、こちらも嬉しく思いました。
努力している人に結果がついてくるのは素晴らしい事です。
 
最後の大会では公式ベストタイム14.1秒を更新し、12.8秒が記録されました。
 
運動戦略を変えるには呼吸を変えるのも一つの手段
もちろん呼吸だけで全てが解決されるわけではないため、
向上したパフォーマンスをさらに向上させるために、
様々な視点から今後も診ていく必要はあります。
 
ただ、今回の記事をお読みになられている方が、同じような悩みを持っており、
今回の記事の内容が盲点であれば、お試し頂いて損はないと思います。
 
あくまで呼吸の様式を変えることも一つの手段。
より多くの視点を持って、より良いパフォーマンスの実現を図りましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
 

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2019年10月07日

投手に指導するメンタルコントロール術の基礎トレーニング

文:岩渕翔一

前回の記事でパフォーマンスは能動的パフォーマンスと受動的パフォーマンスに大別できること。そして、それぞれにおいて考慮すべき要素が異なることを解説しました。
 
パフォーマンスの2分類を知りトレーニングに密度を
 
今回は、その中でも特に能動的パフォーマンスに活かしてほしいトレーニングを紹介します。
 
前回、能動的パフォーマンスは、
 
・能動的パフォーマンスには型が重要である
・型の安定には反復練習が必要である
・能動的パフォーマンスは状況とメンタルに左右されやすいためタスクを増やしたりプレッシャーを与える工夫が必要
・反復練習はオーバートレーニングのリスクがあるためパフォーマンスを細分化する分析力と安全
・機能強化を行うトレーニングを提案できる必要がある
 
といったことを考慮しトレーニングを構成する必要があるといいましたが、この中でもメンタルの影響を受けやすいということが最も特徴的な部分でしょう。例えばテニスのサーブを例にとっても、
・相手選手が誰なのか
・試合展開
・どこのポイントなのか
・ファーストサーブなのかセカンドサーブなのか
 
といったように多くの要素に世界ランクトップ100に入るような選手でも大きな影響を受けていることは試合を見ていれば明らかです。理論上は能動的なパフォーマンスなのだから安定した反復運動さえできればパフォーマンスは安定するはずですが、そうはいかないところがまさにスポーツの難しくも面白くもあるところです。
野球の投手であっても身体パフォーマンスだけを取り上げれば、プロの1軍で活躍するような投手がフォアボールを出すことなど信じ難いですが、ご存知の通りフォアボールは当たり前に出ます。
 
このように、競技カテゴリーやレベルの高さに関係なく、能動的パフォーマンスが安定して発揮できる強靭なメンタルは非常に重要な要素です。そして、緊張や落ち着かない時、興奮した時など周りの状況や環境に自身のメンタルを揺さぶられた際、最も多く用いられる対策はおそらく呼吸でしょう。
・ゆっくり呼吸する
・深呼吸をする
・吸った倍の時間をかけて息を吐く
など。
 
そうやって気持ちを落ち着かせ、身体をコントロールしようとし、パフォーマンスに入る。
では、この手法が効果的であったことがある選手はどれくらいいるでしょうか?もちろん大なり小なり効果が実感できることもあるでしょうが、そんなことで解決するようなことであれば、すでにプロの選手が困るようなことにはなっていないはずです。
呼吸はある程度コントロールできますが、それだけでは呼吸からメンタルにアプローチすることはできません。呼吸というのはそれだけ難しく奥深いものです。
 

呼吸からメンタルコントロールのメカニズム

 
そもそもなぜ呼吸からメンタルがコントロールできると考えられているのでしょうか?まずはそのメカニズムを簡単に解説します。
例えば緊張した際。心拍は早くなり、汗をかき、呼吸は早く浅くなります。メンタルの変化は必ずこのように身体に顕在化して現れます。だからパフォーマンスにも影響するのですが、この中で意図してコントロールが可能なのは呼吸のみです。早くなった心拍をゆっくりしようとしても無理ですし、汗をかいてるのを強制的に止めようとしても無理ですよね。しかし呼吸だけは別です。呼吸はゆっくりしようと思えばできるはずです。そうして、コントロールできるものからして、メンタルや他の身体機能を掌握しようというのが呼吸からメンタルコントロールしようとすることのメカニズムです。
 

横隔膜感じれますか?

 
ここで質問です。
 
あなたは横隔膜を感じることができますか?
 
どうでしょうか。実際、自分の動きや姿勢をコントロールしようと思えばその部位や筋肉を感じ、動かし、操作できなければそれは不可能です。そしてそれは呼吸も例外ではありません。例えば力こぶの筋肉である上腕二頭筋。この筋肉に力を入れたり、抜いたり、力こぶを作ったりするように、横隔膜を意識して動かし、コントロールすることができるでしょうか?
 
実際やってみましょう。手順はこうです。
1.あぐらをかいて。安静呼吸を行います。
2.呼吸をしている際、自分の胸やお腹がどう動いているのかをしっかり感じてください
3.しっかり感じることができれば、息を止めます
4.息を止めたままさっき感じた動きをそのまま再現してみてください
5.息苦しくなったら呼吸を再開してください

 
どうでしょうか?呼吸をしている際と息を止めた際。同じように動かすことができたでしょうか?なかなか難しい方が多いはずです。息を吸う際、主に活動する筋肉は横隔膜です。しかし、通常呼吸に関わる横隔膜の動きは色々な反射活動や受容体、脳の延髄網様体や橋といわれる呼吸中枢に無意識にコントロールされています。普段勝手に動いている部分を、必要な時だけ意識してうまく動かすなどそれは無理だし都合が良すぎます。なので、呼吸をコントロールすることの質をあげようと思えば、呼吸に関わる筋肉や部位を意識してうまく動かしたりコントロールしたりするトレーニングが必要になります。
1〜5を繰り返しおこない質を高めていくことがトレーニングになります。
 
こういった基礎的なトレーニングを行い、呼吸を通してメンタルコントロールを行うということが現実的になってきます。
 
今回紹介した横隔膜を意識して動かす方法は投手トレーニングセミナーで紹介している最も基礎的な方法です。ここからさらに発展させたトレーニングを行い、呼吸コントロールによるパフォーマンスの安定を実際は図って行きます。
 
緊張しやすい選手や感情的になりやすい選手、疲れやすい選手は一度やってみてください。
 

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その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 

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2019年10月05日

その手の置き方で大丈夫ですか?

 

文:赤山僚輔

 
本ブログをご覧の皆様は、スポーツにおける身体操作に興味があり
問題を解決、あるいは更なる向上を図る為に様々な情報収集と
日々自分自身に向き合っていると思います。
 
スポーツ障害をゼロにしようと考えアスリートの動作を分析したり
硬さの気になる部位を評価、アプローチしてもなかなか
改善方向に舵が切れないことを経験したことがあるかたも多いはず。
 
今回のブログでは、スポーツにおける痛みの原因が
普段の生活の中にも眠っているかもしれない。
 
という内容になります。
 

慢性的な肘内側や手首の痛みに悩まされている方へ

内側型の野球肘や、テニス肘、ゴルフ肘といわれる肘内側の痛み。
またラケットスポーツや手首を酷使する競技において今回のチェックポイントと
解決方法は単一的に硬さが気になる筋肉や炎症が発生している部位へのアイシングだけで
痛みが改善しない事例に対して新たな糸口になるかもしれません。
 
肘内側に負担がかかる場合、動作のパターンや使えていない部位などを評価する際には肩関節や肩甲骨、脊柱や股関節などもみていくことが多いでしょう。
 
その上で手首だけに負担がかからないように全身を使うようにしましょう。
 
というのが一般的です。
 
その上で手首のストレッチや患部に対するケアを実施すると思います。
 
肘内側に付着し、影響のある可能性がある筋肉は
・橈側手根屈筋
・長掌筋
・尺側手根屈筋
・浅指屈筋
などでしょうか。
 
この筋群は当たり前ですが、どれも手関節を超えて付着しています。
その為、この筋群をゆるめると手首の動きは大きくなることになります。
 
ここに一つ目の見過ごしてはならないチェックポイントがあるのです。
それは、手首は動きすぎてもよくない。
という点です。
 
足首であれば不安定性が問題になる事が多く、距腿関節のみの可動性が拡大するようにアプローチする人はもはやいないと思います。
距骨下関節や足根骨の可動性があってこそ、足部の剛性が保たれ機能的な足首となります。
 
これは実は手首でも同様で、手根骨の可動性や中手骨の可動性が低下したままで前述したような肘内側の筋のストレッチを選択的に行っても対処療法にしかすぎないことが多いです。
 
となれば、
「足と同じように手根骨や中手骨の可動性を拡大していけば良いのか」
「それくらいであればいつもしているけどな」
 
そんな声が聞こえてきそうですが。
では限局的に硬くなっている皮膚の硬さを日常での使い方から考慮して評価、問診はできているでしょうか?
 

ずっと当たっている部位の皮膚は硬くなる

横向きの睡眠姿勢で股関節の外側である大転子の周囲が硬くなる、大転子拘縮やギプスシーネを長期間使用した後の、踵骨周囲の皮膚や皮下脂肪の硬さが出現し周辺の関節の可動性低下へ悪影響を及ぼす病態は経験したことがある方も多く視点としては一般的になりつつあると感じています。
それでは現代の生活で多く触れている部分が手首にあることも、少し想像すればイメージできるのではないでしょうか。
 
これは何人ものクライアントで手首や肘内側の痛みの要因がこういった着眼点で解決した私自身の経験談になります。
 
デスクワークで、特にキーボードを長時間打つことが多いような方は、手首の豆状骨が常に当たっている状況であることが多いです。(画像青→)
 

(team LabBodyより引用)
 
豆状骨をPCやデスクにつくような動作を繰り返し行うことで豆状骨の表面の皮膚が硬くなるだけでなく、それに付随する隣接関節や骨の動きを阻害することになるのです。
画像からもわかるように有鈎骨や第5中手骨へと繋がる靭帯も豆状骨には付着しており、肘内側の筋であり、豆状骨に付着を持つ尺側手根屈筋への影響だけでない手根骨の可動性低下へと繋がるのです。
 
豆状骨の周囲の皮膚の硬さから有鈎骨や第5中手骨の可動性が低下した状態では、本来動きべき関節が動いていない状態での手首の動きとなる為に、手首自体が過可動性となってしまう可能性も出てきます。
 
特にグリップ競技でこういった障害が多いのは指に力が入り、手の手掌面では皮膚が硬くなり必要以上に手首への負担が増大することにも起因するのです。
 

PC時の手のつき方は変えられる、皮膚の硬さを取る事も自分でも出来る

前述したように、原因がわかればあとは具体的な対策を講じればよいだけ。
明らかにPC作業によって豆状骨付近の皮膚の硬さが出現していそうなら、そこがあたらないような手のつき方に変えたり、柔らかなクッションになる素材を緩衝させるだけでも効果はあります。
 
また皮膚の硬さは自分でつまめば確認できるので、デスクワークの合間などに同部位の皮膚の硬さをセルフマッサージしてもらうことも効果的です。
 
もちろんこれはPC作業だけでなく、学習時の手の置き方にも同じことが言えます。
 
皆様の目の前にくるクライアントが肘や手首の痛みを訴えた時、スポーツ動作以外で豆状骨が常に何かに当たっているようなことがないか、今一度問診してみてください。
 
そして同部位の皮膚の硬さが明らかに反対側と違う場合や癒着がひどい時には、まずその硬さを徹底的にとって肘や手首の痛みがどのように推移するか経過を追ってみてください。
 
その後の変化が、ひとつの答えになると思います。
 
 
一人でも多くの方が慢性障害で悩むことがなくなるよう。
スポーツにおける慢性障害がゼロになる未来を目指して、引き続き活動していきたいと思います。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年10月02日

チームにとっての休憩時間とは?

文:岡元祐樹

 
スポーツトレーナーとして様々な競技やチームをサポートしていると、それぞれに違いを感じることがある。
 
その違いの中の1つに『休憩時間の過ごし方』というのがある。
 
フィジカルトレーニングを行い、その間に5分なり10分なり少しまとまった休憩時間を設けたとする。
 
その時間、座って飲水しながら休んだり、ボールを使った個人練習をしたり、チームメイト同士でコミュニケーションを取ったりとチームによって休憩時間の使い方がまちまちなのだ。
 
個人ではなくチームに対してトレーニングメニューを構成する際、そのチームが休憩時間をどう過ごすのかを観察することは重要である。
 
それによってトレーニングの構成をその場でより良い方向に微調整するためだ。
 

 

休憩時間が必要な理由

先日、ある高校のバスケットボールチームのトレーニングサポートを行った。
 
JARTAのトレーナーとしてチームのトレーニングを実施する際、トレーニングの時間はおおよそ90分間というのが1つの目安である。
 
では90分間ずっと休みなくトレーニングをするのかというとそんなことはない。シチュエーションによって異なるが、間に休憩時間が入る。
 
そもそも休憩とは動きの質や集中力を持続させる上で必要なものである。
 
運動強度により休憩時間というのは何分ぐらいがいいのかというのは研究により明らかになってきている。
 
例えばウエイトトレーニングでは、セット間で3〜5分という長めの休憩時間を取ることによって負荷量や反復回数を高めることができ、より大きな最大筋力向上効果が望めると言われている。
 
また脳疲労の観点からも休憩時間は重要である。持続的な運動により、脳内のエネルギーとなる脳グリコーゲンが減少することが報告されているからだ。
 
休憩する時間やその意味は様々な研究によって明らかになってきている。
 
そのためトレーニング内容によって休憩時間の過ごし方もトレーナーがしっかりと決めるのが大事。
 
ということを言いたいのではない。
 
今回トレーニングを行った高校バスケットボールチームは、トレーニングの間の休憩時間にシューティング練習を全員が行っていた。
 
一瞬、「次のトレーニングがあるから休むように」と言おうとしたが、チーム背景を考慮して言うのを止めた。
 
このチームは学校の体育館が改修工事のために使えず、他校や公共施設を借りながら活動していた。
 
つまり、バスケットコートを使った練習時間に限りがあるのだ。
 
「せっかくバスケットコートが使えるから休憩の間くらいシューティングがしたい」という選手の心の声が聞こえたような気がして、次のトレーニングの構成を少し変えることにした。
 

 

チームの色にまで介入しない

例えば、休憩時間は体力回復のために喋らないでストレッチをしながら休もうとトレーナーが指示したとする。
 
するとそれは休憩ではなくトレーニングの延長であるような印象を与え、選手にとっては精神的ストレスを溜めてしまうことになりかねない。
 
休憩時間とはトレーニングの中で指導者から一時的にではあるが解放される時間である。言い換えるとチームや個人としての色が出る時間でもある。
 
「今日はフィジカルトレーニングだけだから少しでもいいからボールを触りたい」
 
「次のトレーニングもきつそうだからしっかり休んでおこう」
 
「早く終わらないかな」
 
トレーニング中とはまた違った内面が顔を出すことがある。その結果が休憩時間中の行動として現れると言えるのではないだろうか。
 
そうであるならば、休憩時間の過ごし方を観察し、休憩明けのトレーニングの構成を考えておく方がトレーナーとしては効果的かもしれない。
 
例えば、動いている選手が多い場合はトレーニングの説明を丁寧に行い、実際に動く時間は集中力を考慮して短めに設定する。座って休んでいる選手が多い場合は少しずつ心拍数を上げていくような構成にする。つまらなそうにしている選手が多ければ、トレーニングをゲーム化や競争化することで盛り上げる。
 
チームや選手の色にはあまり介入せず、その色に合わせてトレーニングの構成を変化させていくのだ。
 
もちろん、最終的にはこういうチームの色になってほしいという監督やコーチの意向も考慮する必要はある。その結果、長期的に見て選手達の休憩時間の過ごし方を良い方向に導ければ最高である。
 

準備はどこまでやっても完璧にはならない

トレーニングを立案し指導する際、自分が理想と想う流れでトレーニングを進めたい。
 
その理想形はあっても構わないが、チームは生き物であり、選手たちの内面を汲み取る努力も怠ってはいけない。
 
休憩時間はそんな選手たちの内面を垣間見ることのできる貴重な時間でもあると筆者は考えている。
 
休憩中は休憩の仕方にあれこれ口を出すことはせず、選手達の過ごし方を観察し、その後のトレーニング内容を自在に変化させられる能力も必要ではないだろうか。
 
もちろん、選手個人個人で「休憩時間でこういうことをやっておくといいよ」という指導があっても良い。
 
自分の型に選手を嵌めず、比較的自由度のある休憩時間に、新たな気付きを得られれば儲けものである。
 
そしてそこから臨機応変にトレーニングの構成を変化させることができるかどうか。
 
結局はそこまでを想定に入れた準備と引き出しが必要になってくるのだ。
 
研鑚を止めることはできない。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

 
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2019年09月30日

パフォーマンスの2分類を知りトレーニングに密度を

文:岩渕翔一

トレーニングの目的は競技パフォーマンスの向上であり勝利に近づくことです。実際はそのために色々な要素に対してトレーニングを行い、その要素がどうパフォーマンスに影響を与えるといった分析が必要になります。そして一口に「要素」といっても色々な分類があります。
最も一般的な分類は、
・筋力
・柔軟性
・スタミナ
・俊敏性
 
などといった体力と機能に特化した分類でしょう。筋力に対しては筋力トレーニングを、柔軟性に対してはストレッチを、スタミナに対しては持久走やインターバルトレーニングをといった具合にトレーニングを選択し機能強化を図ります。
また、JARTAでは「身体操作」は全てのパフォーマンスやトレーニングの土台になると考え、バランスや柔軟性、筋出力など機能要素を高レベルで同時実行する必要のある(アブレスト能力という)トレーニングが多くあります。
このトレーニングの分類はそもそも要素の階層が異なるため機能強化も身体操作も両方トレーニングを行う必要があることは以前の記事で解説しました。
身体操作系トレーニングVS筋力トレーニング 優秀なのはどっちだ
 
この他にも技術トレーニング、メンタルトレーニング、戦術トレーニングなど多くの階層やトレーニングの分類があります。この際、トレーナーがチームや選手にどの要素のトレーニングを求められているのかといったことを理解しておかなければいけません。例えば体力トレーニングを求められているのに技術トレーニング寄りのトレーニングを行なっては種々の問題が起こってしまうことは想像に難くありません。
 
今回紹介するのは、全ての競技パフォーマンスに当てはめることができる2つの分類です。この2つの分類は、強化を目的とするパフォーマンスがどちらに属するかで、必要なトレーニング手段と配慮しなければならない要素が大きく異なります。機能的要素がさほど大きく変わらなくても、手段が大きく異なってくるため知っておく必要がある分類です。
 

パフォーマンスを2つに分類する

 
競技パフォーマンスは以下の2つに分類できます。
・能動的パフォーマンス
・受動的パフォーマンス
 
【能動的パフォーマンスとは】
能動的パフォーマンスとは、選手が主体的に動き始めることができるパフォーマンスのことです。例をあげると、
・野球やソフトボールの投球動作
・テニスや卓球、バレーボールのサーブ
・サッカーのプレースキック
・体操競技
 
【受動的パフォーマンスとは】
受動的パフォーマンスとは、選手が相手チームの動きやパフォーマンスに対応しながら行うパフォーマンスのことです。例は、
・野球のバッティング
・テニスや卓球のラリー
・サッカーのオフェンスやディフェンス
・バレーボールのレシーブ
・格闘技全般
 
このようにパフォーマンスは能動的なプレーなのか受動的なプレーなのかの2つに分類することができます。このどちらに分類されるかでトレーニングに考慮すべきことが異なってきます。
 
【能動的パフォーマンスのトレーニングで考慮すべきこと】
 
例を出して解説します。例えば野球のピッチング。野球は投手が投球を開始しなければプレーが始まりません。投球動作は野球という競技のプレー開始スイッチのような役割を担い、先発投手であれば100球前後の投球数が必要になります。この反復を行うために最も基本的なことは、「投球フォーム」であり、同じフォーム(型)で安定した投球(パフォーマンス)を発揮することです。つまり、トレーニングの基本はフォームを安定させるための反復練習です。能動的パフォーマンスは自らが動き出すことで始まるため、物理的な邪魔が入ることはありません。イレギュラーな対応はほとんどないかわりに、どのような状況でもそのフォーム(型)を崩さずにパフォーマンスを安定させる必要があります。ピッチングであれば、試合開始の1球目なのか、対する打者は何番なのか、勝ってるのか負けてるのか、ランナーがいるのかいないのかなど。
このように能動的パフォーマンスは、試合状況とメンタルに大きく左右されます。つまり反復練習が基本になると言いましたが、その反復がどのような状況でもフォームが安定するように、タスクを追加した中で行うことや、精神的に追い込まれる状況をあえて作る(時間制限を設けたり、対戦形式にするなど)が必要になります。また、基本が反復練習であることは間違いないですが、投球動作の反復には投球障害を招いてしまうリスクがあることは昨今の投球制限の議論からも既に周知されています。ここではやはり投球動作というパフォーマンスを細分化し、安全に機能強化していけるトレーニングを提供することがトレーナーに必要な能力でもあります。
まとめると、
・能動的パフォーマンスには型が重要である
・型の安定には反復練習が必要である
・能動的パフォーマンスは状況とメンタルに左右されやすいためタスクを増やしたりプレッシャーを与える工夫が必要
・反復練習はオーバートレーニングのリスクがあるためパフォーマンスを細分化する分析力と安全に機能強化を行うトレーニングを提案できる必要がある
ということです。
 
【受動的パフォーマンスのトレーニングで考慮すべきこと】
受動的パフォーマンスは相手のパフォーマンスが先行する或いは、同時進行の中でのパフォーマンスになります。この際重要なのは、常に自分の思うようなプレーや理想的な動きができるわけではないということです。つまり、このパフォーマンスのトレーニングに必要になるのが、イレギュラーに対応するための身体操作の幅の広さです。例えば、対峙する選手が右に抜いて掛かると思って反応したのに左に抜きにかかった。変化球に身体が泳いでしまったなど。この時なす術なく抜かれるのか、空振りするのか。或いは通常の型やプレーではしないような動きで対応するのか。スーパープレーやファインプレーと言われるプレーは、このようなイレギュラーに対して目を見張るような動きから生まれることが多いです。
このプレーを支えるトレーニングにはもちろん筋力トレーニングやストレッチなどの基礎トレーニングであり、基礎的なプレーであることは間違いないです。ボクシングで左ジャブが重要だというように、ここでも型となり得る基礎は当然必要ですが、合わせて身体操作の幅を広げるための身体操作トレーニングもしていかなければなりません。
まとめると、
・受動的なパフォーマンスにはイレギュラーに対応する身体操作トレーニングが必要になる
・この身体操作を支えるのは筋力や柔軟性などの機能なので基礎トレーニングも当然必要である
・応用は基礎になる型があってこそであることは間違いない
・イレギュラーに対応するため、認知→判断→実行段階におけるビジョントレーニングを並行し、反応速度を速める必要がある
ということになります。

トレーニングに密度を

 
今回の提案で選手に必要なトレーニングはおそらく大きくは変わりません。プレーが能動的なのか受動的なのか。この分類の中で今どちらに対するトレーニングをしているのか。
これは今しているトレーニングをさらに発展させたり、タスクを増やす際のヒントになったり、評価の視点が増えることに意義があると考えています。今しているトレーニングの密度を濃くすること。この密度の濃さがこれから必要になるのではないかと考えています。
 
次回の記事では、今回紹介した能動的パフォーマンスに当たる投手のトレーニングについて。投手トレーニングセミナーでもお伝えしている、メンタルとパフォーマンスのコントロール法を一部紹介したいと思います。
 

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2019年09月28日

選手が本当に必要とするトレーニング

 

文:伊東尚孝

 
 
東京オリンピックまで1年となり、世界トップクラスの選手を間近で見るチャンスが近づいてきました。
世界一を目指して繰り広げられるパフォーマンスは、感動すら覚えます。
特に自分と関係のある競技であれば、なおさら引き込まれることでしょう。
 
「自分も世界で戦える選手になりたい」
「トップ選手のようなプレーがしたい」
「〇〇選手みたいになりたい」
 
世界のトッププレーヤーを目の当たりにし、その選手を目標として練習に励む方もいるでしょう。
しかし、トップ選手のようなプレーを身につけるためには、どのようなトレーニングを選択すべきでしょうか。
世界レベルの練習を、ただ同じように取り入れることが本当に正しいのでしょうか。
そのトレーニングは、本当に選手が求めているものでしょうか。
今回の記事では、目の前にいる選手の伸びしろを明確にし、どのようにトレーニングを選択すべきかのポイントを述べていきます。
 

トレーニングを選択する2つのポイント

先日、ヴィッセル神戸VSバルセロナFCの試合を観戦しに行きました。
昨年のFIFAワールドカップで優勝したフランス代表のグリーズマン選手も来日しており、
試合にも先発出場していました。

グリーズマン選手の凄さは、決して大柄ではないにも関わらず強烈なシュートを放ち、相手を一瞬で置き去りにし、味方に決定的なパスを出すなど、多様なプレーができることです。
その中でも特に目を奪われたのが、「素早い動き出し」でした。
裏への飛び出しはもちろん、ほとんどプレッシャーがない状態でボールを受ける場面が多く、相手の一歩先でプレーをしていたような印象でした。
この「素早い動き出し」によってチャンスを作り出しています。
では仮に、「素早い動き出し」を習得したいとする場合には、どのようなトレーニングを選択すべきでしょうか。
一般的に「素早い動き出し」すなわち「瞬発力」を高めるトレーニングの代表は
・ラダーを使ったステップワーク
・ジャンプ系の下半身強化
・ショートダッシュ系
などが挙げられます。
これらのトレーニングに多様性を加えると、トレーニングの種類にはキリがありません。
では、グリーズマン選手のような「素早い動き出し」を獲得するためには、
数にキリがないトレーニングを全て網羅することが、果たして正解なのか。
その答えは、以下の2つのポイントを抑える必要があります。
1つ目が、「競技の特性を知る」
2つ目が、「個人の動きを知る」
このポイントをどのように押さえていくのかを、具体的に解説していきます。
 

① 競技の特性を知る

「素早い動き出し」といっても、競技によってその特性は様々です。
 
例えば、野球の盗塁。
盗塁するために走り出す方向は必ず次の塁、すなわち右側になります。
牽制球に対しては左側に動き出します。
リードしてる時の姿勢は一番動きやすい姿勢をとり、動きだす方向も左右どちらかに限られています。
一方、サッカーで素早い動き出しが要求される場面の一つが、相手を振り切る時です。
サッカーは基本的にオフザボール(ボールを保持していない時)の時間が圧倒的に長いです。
そのため相手との駆け引きをしながら、相手より早く動きだすことが必要とされます。
つまり、相手の動きによって動き出す方向が多様に変化します。
さらに周囲のスペースや相手との密接具合によっては、動き出す時の姿勢が不安定な場合もあります。
 
まとめると、
野球の盗塁
① 動く方向が左右で決まっている。
② 構えの姿勢は一定であることが多い。
サッカーの相手を振り切る動作
① 動き出す方向は様々。
② 状況によって不安定な姿勢から動くこともある。
 
 
このように、競技によって「素早い動き出し」の特性が変わります。
すなわち、上記で示した「素早い動き出し」を全て網羅するのではなく、
各競技を構成する要素を抽出することが必要となります。
特性に沿ったトレーニングを選択することで、より競技に活きるトレーニングを行うことができます。
その競技を構成する要素を抽出するために参考とするのが、
トッププレーヤーの動きです。
トッププレーヤーはその競技において最高クラスの動きをしているため、その選手の動きを分析することで構成要素を抽出できます。
最近は、SNSなどで容易にトップクラスの選手の動きを分析することができます。
トッププレーヤーといっても一人ではないはずですので、様々な選手を観ることで引き出しを多く持つことが重要です。
 

② 個人の動きを知る

競技の特性を分析した上でトレーニングを選択しますが、
そのトレーニングが万人に共通して有効なトレーニングかどうかを考える必要があります。
つまり、同じトレーニングをしても効果が出る選手と出にくい選手がいるということです。
なぜかというと、一言でいえば「個性」があるからです。
同じスポーツをしていても、国籍が違えば体格、文化、経歴、など様々な違いがあります。
日本人同士でも、生活習慣や競技歴などによって違いが出るのは当たり前のことです。
つまり、目の前にいる選手の動きも分析しなければなりません。
硬さがあるのであれば柔軟系トレーニングを選択し、
筋力が足りなければウエイトトレーニングを選択する。
その選手が苦手とするポイントを改善できるようなトレーニングを選択できれば、パフォーマンスアップする可能性が広がってきます。

まとめ

トレーニングの種類は数えればキリがありません。
その全てのトレーニングをすることは、時間的にも体力的にも限界があります。
どんなに素晴らしいトレーニングであろうと、
あの有名選手がしているトレーニングであろうと、
目の前の選手に必要なトレーニングかどうかを分析することが重要です。
その基準となるのが世界トップクラスの選手。
SNSなどで観ることもできますが、やはり生で観戦することを僕は大事にしています。
そして、目の前にいる選手の伸びしろを見つけることになり、
結果的に、パフォーマンスアップに繋がるヒントが見つかるでしょう。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年09月23日

恐怖も不安も成長の力に

文:赤山僚輔

 
あなたにとって恐怖や不安は悪ですか?敵ですか?
もしそれが自分にとって成長する為の重要な感情であるとしたらどうでしょう。
 
今回は私自身の日々の葛藤とスポーツトレーナーとして重要な準備の話をしたいと思います。
 


 
ある時から、自身の挑戦とサポート選手の挑戦がとても解離することができないほどに関わりが深くなってきました。
 
最終的には選手の勝敗や人生を決めるのは選手自身であり、その家族やコーチになります。
 
しかしスポーツトレーナーという”仕事”は時に、選手の勝敗に左右することもあれば、選手生命に関わることも命に関わることもあるのです。
そんな重要な責務を担っていると最近つくづく感じるようになってきました。
 
そしてこのように誰かに何かを伝える立場にある私達にとって
現場で感じるリアルをお届けすることは、トレーニング方法やコンディショニング方法を伝えるよりも時に重要であると年々感じるようになってきたのです。
 
今回は私が日々感じてる、『恐怖』や『不安』についてお届けしたいと思います。
綺麗事ばかりではなく、こういった事象こそがスポーツトレーナーのリアルでありこれからスポーツ現場に身を置きたいと思っている方々に知ってもらいたい”事実”であると私は痛感しています。
 
 

眠れぬ夜に何を思う

本ブログをお読みの皆様は、初めての現場に出るからという緊張ではなく。
サポート選手の試合が近づいて眠れぬ夜を過ごしたことがあるでしょうか?
 
私は元々かなり睡眠欲が強い方で、どういった状況でもすんなり寝入ることができる性分なのですが、サポート選手の大事な試合が近づいてくると夜も眠れない事が出てきます。
「勝てるだろうか?」
「怪我をせずに帰ってきてくれるだろうか?」
「伝えるべきことは全て伝えられただろうか?」
「しっかり当日良いパフォーマンスを発揮できるだろうか?」
「自分にすべきことはまだ何かないだろうか?」
「あれもこれもまだできていないけど(自身のタスク)当日までに整理できるだろうか?」
などと思考を巡らせ、結局深夜まで対戦相手のYou tubeをみたり、過去のトレーニング指導時の動画を見返したりすることがあります。
 
自分自身はこういう時に、なかなか眠れなくて嫌だなあとは思っておらず。
逆にこんな想いにさせてもらってありがたい、選手たち、この環境に感謝しないといけないなと思っています。
 

恐怖や不安がポジティブな焦りを生むこともある

競技によっては試合に臨む際に怪我のリスク等を考える為に恐怖を覚えることがあります。
前述したように、試合に向けて不安になることなんて無限になります。
一般的にはこういった恐怖や不安は交感神経を優位にさせ、呼吸を浅く、内臓機能の低下にも繋がることがあります。
 
しかし、私自身は選手たちに関わる上でこういった恐怖や不安を選手が感じている以上にスポーツトレーナーも感じることでポジティブな焦りと危機感を持ってより慎重に準備を進める事が出来るので、ある程度は必要なのではないかと思うようになってきました。
 
例えば、何かの資格試験や学校の試験にチャレンジするとしましょう。
普段通りでまず合格するだろうということが何ヶ月前にわかっていたら、試験までの期間必死に勉強するでしょうか?
 
もちろん人によっては満点を取る為に、とかより安全に合格する為にしっかりと勉強ができる方もいると思います。
 
自分の場合には、余裕があるなと思ったら途端に集中力が低下して勉強に身が入らないようなタイプで悪くいうと余り危機感のないような学生生活をずっと送ってきました。
 
今は、状況が変わり学びに対する姿勢は学生時代とは変容していますが、試合に向けての準備についても選手やスポーツトレーナーの心構えには同様の事が言えるのではないかと思っています。
 
挑戦した事がない舞台や、相手。
これまでに負けている相手に挑戦する。
今まで以上に調整期間が短い場合や怪我など不安要素がある場合など。
 
焦りや危機感が自身や対象、環境に対してあることによって明らかに日々の取り組みが変わってきます。
今まで行わなかった準備を行うようになります。
そして私はこの2年間くらい、やったことのないチャレンジを繰り返し眠れぬ夜に恐怖や不安と対峙しながらサポート選手の試合に帯同し続けてきました。
 
その分、勝った時の喜びはひとしおですし、試合が終わった時の安堵はなんとも言えない開放感があります。
 

あなたの抱える不安はポジティブな要素に転換できる

私のような選手の試合に向けての恐怖や不安だけでなく、誰しもが生活していく上で日々不安を抱えていると思います。
そしてほとんどの方がそういった事象に対してネガティブ捉えてような気がします。
しかし、これまでお伝えしてきたように自分自身に起きているそのような不安がまったくない状態よりもあることによって日々に対する取り組みがより丁寧になったり深く洞察し慎重に行動するようになっているのではないでしょうか?
 
だとするとそういった不安すらも自分をスポーツトレーナーとして、人として成長する為の重要な要素だとポジティブに受け止め前に進んでもらいたいと思っています。
 
私自身がこのような葛藤の中で選手と共に成長する事ができ、今があるので。
 
恐怖や不安すら自身を成長させる力になるのです。
 
 
そして、今年の11月24日。
横浜アリーナでK-1のサポート選手が大きな挑戦をすることになりました。
日本人無敗のジョーダン・ピケオー選手と対戦することが先日決まったのです。
格闘技でなくとも、強い相手に向かっていくことはただの勇気だけでいけるはずがありません。
強ければ強いほどに恐怖や不安が大きくなり、それが未開の地であればなおさらです。

ネット上ではマッチメイクが早すぎると賛否両論ありますが、この挑戦が彼にとっても私自身にとっても大きな成長のチャンスであることに変わりはありません。
 
また眠れぬ夜を過ごすことになりそうですが、ポジティブに捉えて歩んでいきたいと思います。
 
皆様の応援が力になります、是非とも応援よろしくお願いいたします。
 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年09月19日

消費税法改正に伴う価格変更のお知らせ

 
平素よりJARTAオフィシャルサイトをご覧いただき、誠にありがとうございます。
 
このたびの消費税法改正に伴い、
2019年10月1日以降、弊社の提供するトレーニング、物販、その他サービスのご利用について価格改定させていただきます。
 
ただし、認定スポーツトレーナーコースやJARTAセミナーに関しましては、
以前よりアナウンスしておりました通り、2020年1月より価格変更いたします。
受講希望される方はお早めにお申し込みください。
 
◯認定スポーツトレーナーコース
BASICセミナー
コンディショニングスキルコース
トレーニング理論コース
 
◯JARTAセミナー
投手用トレーニングセミナー
サッカー上半身トレーニングセミナー
 
 
誠に勝手ではございますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
JARTAセミナー事務局

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2019年09月18日

最高の準備は日々の過ごし方にかかっている!?

文:平山鷹也

 
「最高の準備をして本番を迎えたい」
 
これはアスリートなら誰しも思っていることだと思います。
 
 
でも具体的に「準備」として何をしているか、言えますか?
 
即答できなかった選手の方は、ぜひ読んでみてください。
 
 

準備の目的

 
まずは準備の目的を明確にしましょう。
アスリートであれば、「試合で最高のパフォーマンスを発揮すること」が目的となることが多いと思います。
 
ここは立場や状況によって変わる可能性もありますが、自分の準備をする目的を明確にできればどんな言葉でもいいかと思います。
 
具体的にやることを決めていく過程でこの目的が明確になっていないと、「手段の目的化」が起こりやすくなってしまいます。
 
毎日ストレッチをやると決めたときに、ストレッチをすること自体が目的とならないようにする、ということです。
 
目的が明確であれば、どこの筋肉に意識を向けるのか、どのように呼吸をするのか、どのくらいの時間をかけて行うのか、など質的な部分をより意識できるようになります。
 
 

身体の調子を測る指標を持つ

 
目的が明確になったら次は調子の良し悪しを判断する指標を設定しましょう。
 
できれば毎日できるような簡便なもので、目的との関連も深いものが良いかと思います。
 
一例として私の指標の1つを紹介すると、JARTAトレーニングの基本でもある、「インナースクワット」です。
 

 
私は調子が悪いときはインナースクワットをすると左股関節に詰まりを感じます。
これを1つの指標としています。
 
これは一例なので、他にも一番苦手なストレッチのやりにくさにしたり、得意なストレッチのやりやすさにしたり、自分にあった指標を持つことが大事です。
 
指標を決めたら、まずは毎日同じ時間でその指標をチェックしてみましょう。
 
きっと、日によって全然違うことに気付くかと思います。
 
その気付きこそが、「最高の準備」の第一歩です。
 
 
 

調子の良い日を継続していく

 
さて、指標を作り毎日比較していくと調子が良い日もあれば悪い日もあります。
 
しかし、毎日行うことで何をした後に調子が良くなったり悪くなったりするのか、だんだん予測がつくようになってきます。
 
例えば、
・ジャンクフードを食べた翌日は股関節が詰まりやすい
・熟睡できた翌日はスムーズに股関節が動く
・プライベートで嫌なことがあると背骨が固くなる
・趣味の時間を満喫できたときは体も軽くなる
・脚を組むと膝の動きが悪くなる
 
など、やってみるとわかりますが、身体は本当に色々なことに影響を受けます。
 
上記は私が実際に経験したことで、それをもとに調子の良い日が続くように現在の「準備」を決定しています。
 
・ファストフードはなるべく食べない
・睡眠前のルーティンに時間をかける
・背骨は毎日チェックして固いときはストレッチを念入りに行う
・趣味の時間を作り、そのときは仕事を忘れて没頭する
・脚はなるべく組まないようにする
 
これはあくまでも一例ですが、このように指標に基づいて準備として何をするべきか決めていくと必然的にやることは見えてきます。
 
そして、調子が悪いときの対処法もわかってくるので一石二鳥です。
 
 
 

準備は日々の過ごし方から始まっている

 
このように考えると、試合前や練習前だけの準備では「最高の準備」とは言えません。
 
日々刻々と身体の状態は変化している中で、いつでも最高の結果を出すためには毎日の過ごし方も重要な要素です。
 
今回ご紹介した方法を実践していくと様々な疑問が湧いてきます。
 
・指標としては調子良かったのに、プレーはイマイチだった
・ぐっすり眠れる日とそうでない日の違いは何だろう
・あの行動のあとは何で身体が固くなるのだろう
 
そのような疑問があり、それを解決していく過程こそが「最高の準備」であると思います。
 
 
毎日の身体の変化に目を向けて、最高の準備を。
 
全てはパフォーマンスアップのために。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年09月14日

トレーニング効果をより高めていくために

文:山田 東秀

 
日々、パフォーマンスアップのため、トレーニングをはじめとして様々なことに取り組んでいる人にとっては、その効果を高めるために必要なことを毎日意識的に実践するなど、パフォーマンスアップに必要と言われる要素を日々の生活に取り入れたりすることはよくあることかと思います。
 
では、パフォーマンスアップに必要な要素を意識的に日常生活に取り入れていくことをする一方で、日常生活の習慣の中から、パフォーマンスアップを妨げる要因を取り除くことに、意識的に取り組んでいる人はどれくらいいるでしょうか?
 
 
 

人の身体には、毎日の生活習慣や行動パターンに適応しようと変化する特性がある

 
日常生活で、行う頻度が多い姿勢や動作、行動があると、身体はそれらが行いやすくなるよう、次第に変化していきます。
 
その変化は、身体本来の機能にとって良いかどうかは関係なく生活習慣や行動パターンの頻度や時間の多さに影響されて変化します。
 
日常生活というのは、普段何気なく行なっているものがほとんどです何気なく行なっているということは、「無意識レベル」で「習慣化」しています。
 
新しい要素を日常生活に取り入れていくことで、身体は変化していきますが、現在進行形で「無意識レベル」で「習慣化」している日常生活の中にそのトレーニング効果やパフォーマンスを低下させる要因が多く含まれているとせっかくパフォーマンスアップのために一生懸命トレーニングに励んでいてもトレーニング効果は薄れてしまいますし、そのトレーニング効果を打ち消す要因が多ければ、無自覚のうちに本来、人にとって必要な機能を失ってしまう変化に至ることもあります。
 
もちろん、個々人によって、バックグラウンドをはじめ、生活習慣や行動パターン、年齢、性別、競技、カテゴリー、トレーニング内容やトレーニング目的も、全て異なりますので、一概に万人にこれが良い悪いと言い切れるものはありません。
 
ですが、脳が「身体のこの部位は日常的にこう使う」と認識した身体の部位が無意識・無自覚のうちにそうしやすいよう変化し、適応していくというのは人間である以上、誰でも共通しています。
 
トレーニングとして、パフォーマンスアップに必要な要素を日常生活に取り入れるならパフォーマンスアップの妨げになる要素を取り除いていくこともトレーニングです。
そのためには、パフォーマンスアップの妨げとなるものを把握する必要があります。
 
そこで、まず必要となってくるのが
「無意識的なものに気づき、自覚すること」
 
そして、そのための方法は「書き出すこと」です。
 
実は「書き出すこと」と聞いて、実際に書き出す作業に取り掛かる人はすごく少ないです。
ということは、する人としない人とでの差が大きくなります。
 
では、具体的にご紹介します。
 

無意識的なものは、書き出すことで可視化することができる

 
主な作業は次の4つです。
 
①1日の流れを時系列スケジュールで1週間分、書き出す。
書き出すものは、「週間スケジュールや行動パターン」です。
家で過ごす時間、電車で過ごす時間、学校や職場で過ごす時間、トレーニング時間、競技練習時間、休憩時間等々、自分はいつもどこで何をどのようにしているか現時点で意識できる範囲で書き出します。
 
②次に、書き出したそれぞれの時間について「具体的に」どうしているのかを書き出す。
どんな姿勢や動きで何をして過ごしているか、何をどれくらい摂取しているのか、など現時点で意識できる範囲で構わないので、可能な限り書き出します。
 
③書き出したものを、一度自分で確認する。
いざ、書き出したものを自分で確認してみると、どうでしょうか?
書き出す作業は、慣れないうちは書き出せることが少ないかもしれません。
ですが、これは現状確認の意味もあるので、少なくても構いません。
意識できるものが少ないと自覚することも大切です。
 
ご参考までに私がこの取り組み初期で気づけたものの例を簡単に紹介すると
 
・仕事を含め、床に座って過ごす時間が想像以上に圧倒的に多かったこと
・その、床に座って活動する際に、特に何も意識することなく座って活動していたこと
 
もともと仕事柄、床に座る時間が多いことは自覚していたにも関わらず具体的に時間を書き出してみると、仕事以外も含め、床に座っている総時間は想像をはるかに超えるものでした。
 
自覚していた時間と無自覚だった時間とに大幅なズレがあり、身体の状態に意識を向けて活動している時間よりもそうでない時間の方が、活動時間の大部分を占めていた。
 
このことに気づけたことで、無自覚だった時間の活用方法は変わり、床で活動する時間に新たなトレーニング要素を組み込むことが可能となりました。
 
と、このように、書き出したものを見て確認することで無意識的なものに意識を向けることが可能になります。
 
④①~③の作業を定期的に繰り返す。
大切なのは、これを定期的に繰り返すことです。
 
全て書き出す作業が難しければ、③だけでも構いません。
もし、確認した際に新たに気づいたことがあれば、それをどんどん書き込みましょう。
 
この書き出して確認する作業を定期的に繰り返していくことで、意識を向けられるものは、量も種類も増えていきます。
 
 

普段トレーニングで言われていることとは真逆のことを意外に多くしていたりしないか?

 
パフォーマンスアップのために、良いと言われるものを導入し続けるだけでなく、今現在の生活スタイルの中に存在する、パフォーマンスを低下させる要因に気づき、日常生活における生活習慣や行動パターンからその要因を減らしていくという観点も、パフォーマンスアップには必要です。
 
認識できていない時間の過ごし方に自分自身が気づき、パフォーマンスを低下させるような変化を身体にさせないために、これまで無意識的に過ごしていた時間を、これからはどう使い、どう過ごすのか?
そうすることで、日頃から身体をどのような状態に保っておくのが良いのか?
 
書き出すという作業は、提案されても取り組む人は少ないものですが、書き出して確認することで得られる気づきは、意外と多いです。
 
 
すべてはパフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
 
10月6日に大阪で、WorkOutを開催します。
今回のWorkOutは、スポーツトレーナーを目指しているわけではないけれど、JARTAのセミナー内容やトレーニングに触れてみたいと思っている方々に、お集まりいただけるWorkOutです。
当日は、旧認定スポーツトレーナーコースの内容にいくつか触れていただいた後、それぞれの立場から、考えていたことや感じていたことなどをディスカッションで共有し、互いの思考を広げる時間を設けたいと考えています。
お申し込みはこちら
 
 

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2019年09月07日

不器用は伸びしろ

文:高塚 政徳

 
トレーニング指導をする中で、トレーナー側が伝えたいトレーニングや動作を習得する速度には個人差が必ず出てきます。
 
例えば、
・初めてやることはどうしてもうまくできない
・人よりもスキル習得に時間と回数が必要になる
・調子の波が大きく、修正に時間がかかる
 
このような選手を、一般的には不器用な選手だとする風潮がありますが、思い当たる選手は読み進めてもらえたらと思います。
 
今回は、競技スキルの習得も含めて、その習得速度はやり方次第で変化しうるものであるという話をしていきます。
 
習得速度が遅い選手に共通してみられる傾向として、以下の3点があげられます。
 
・背骨の動きが不十分
・プレー中、呼吸が浅く止まってしまいがち
・体の状態が変化していることを感じるのが苦手
 
この3つは、別物のようですべてつながりがあります。
 
 
背骨の動き(しなやかさと強さ)が不十分な状態では、深い呼吸をするために必要な横隔膜や肋骨の機能が担保されないことで、呼吸が浅くなります。
 
横隔膜や肋骨の機能低下は、体幹部から上下肢への力の伝達も損ないます。
 
そのロスを補うために、四肢を力源とした動作パターンが出現しやすくなり、これは俗にいう力みに繫がります。
 
背骨は力源でもあり、運動の巧緻性にも貢献しているため、動作の再現性に影響を与えます。
 
力みという不必要な筋肉の緊張が生じると、自分の体の状態を感じるための体のセンサー(筋紡錘)の感度が低下し、動きの方向・幅・程度など動作に必要な出力の調整が難しくなります。
 
このような複数の要因が絡んでくることで、トレーニングやスキルの習得速度が遅くなってしまうことが考えられます。
 
 

まずは、呼吸から

 
1番簡単に行えることは、自分の呼吸に意識を向けることです。
 
習得速度の遅い選手は、特に不慣れな動作を行う際、無意識に呼吸を止めて必要のない力が入ってしまうことがパターン化されているため、しばらくは繰り返し意識を向ける必要があります。
 
試しに、いつもと反対側の手で箸を持って食事をしてみてください。
 
不慣れな方であれば、力みや、呼吸状態の違いを感じていただけると思います。
 
そこから呼吸を整えてみてください。
 
呼吸から整えることで、不必要な全身の緊張が緩和されることが実感できるはずです。
 
呼吸自体は、意識次第で日常生活やトレーニング時にいくらでも取り入れることができます。
 
呼吸は当たり前のことようで、思った以上にできていない選手が多くいます。
 
選手も指導する側も、トレーニングやスキルの習得が上手くいかないときこそ、呼吸を感じてみてください。
 
呼吸にフォーカスしたアプローチをすることで、力を抜くこと、自分の体を感じるということができるようになり、習得速度・トレーニング効果が明らかに変わってくることもあります。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
高塚トレーナーの他の記事はこちら
意図的に「前もも」の力を抜けますか? ~セルフチェック編~
諦めの悪い男達~理学療法士としてスポーツに関わるには~
使える股関節を追求するために
障害者スポーツも勝負にかける想いは同じ
力自慢の方はぜひ挑戦を
力を抜くのもスキルの一つ
 

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2019年08月31日

まずは身体で感じることから

 

文:高橋 佑侍

 
 
中学生に対し、どんな言葉を使ってトレーニング指導をしたらいいか悩みませんか?
私は最初悩みました。
精一杯説明して、理解してもらおうとしていました。
 
 
 
ですが、なかなか納得した表情にはならないことがありました。
今考えると、「説明」にばかりに考えが囚われていたからだと思います。
 
 
 
本来は「指導」しなければならないのに、この言葉を理解していない自分がいました。
 
 
 
言葉の意味を整理すると、
説明とは、物事がなぜこうなのかの根拠・理由を明らかにすること。
指導とは、ある目的に向かって教え導くこと。
とされています。
 
 
また、
説明は自分主体。
指導は相手主体。
ということがわかります。
 
 
 
つまり、説明を精一杯していた時期は自分主体になっていたのです。
理解してもらおう、上手く伝えよう。伝えなければやってくれない。
今考えればなんて自分本意だったのだと気付かされます。
 
 
 
しかし、説明が必要ない訳ではありません。
説明した上で、どう導くかが大事です。
 
 
 
このことを忘れないことが、悩み解決のきっかけとなります。
 

 
私自身が中学生に関わる時に意識していることは、まずは言葉や認識を合わせることです。
例えば、競技によって本人の中で必要と考えている要素が、我々専門家から考える必要な要素との違いがあります。
 
 
 
「走るのには腿前が太い方がいい」
「体幹は固い方が強い」
「身体は柔らかければ、柔らかいだけいい」
 
と言ったように、実際に生徒に聞いてみるとこんな発言を聞かれます。
 
 
 
ですが、身体の構造を考えると
腿前にある筋肉は大腿四頭筋で、大腿四頭筋が優位になりすぎると前方への推進力効率は下がる。
体幹を固めるだけでは自分より大きい相手には当たり負けする可能性がある。
柔らかさだけでは出力も低下し、しなやかな動きがでる訳ではない。
ということは周知のことかと思います。
 
 
 
この認識の相違が生まれる原因としては、
・プロの選手が言っていたから
・本に書いてあった
・親がそう言っていたから(同じ競技経験)
などが挙げられます。
 
 
 
実際には本当にそうなのか?と生徒自身がよくわかっていないケースが多くあります。
 
 
 
言葉で伝えようとする生徒にはより迷いを生むことになります。
 
 
 
我々は生徒を導くのが本来の目的なはずです。
言葉という手段に囚われる必要はありません。
 
 
 
私の場合はまず、「感じてもらう」ことします。
例えば生徒の認識が、
高く飛ぶには膝を曲げて腿前に力を入れながら飛んだ方がいい。
体幹は固めて強いようが身体がブレないから速く走れる、脚が上がりやすい。
と言った認識であったとしましょう。
 
 
 
まず実際に認識通りの動きをしてもらいます。(A)
次に、効率のいい動き方を伝えます。(B)
AとBを比較してどう感じるか、どうなるかを確認します。
 
 
 
効率のいい動きのポイントとして、例えば高く飛ぶ際には腿前を意識し過ぎず、お尻の向きやハムストリングスが働いているかどうかの感覚、腕の振りのポイントを伝達。
脚の上がりやすさは、鳩尾を刺激した状態で足を上げる、筋肉の位置関係をアプリ使用し画像で確認などしています。
 
 
 
このようなポイントを伝えた上で、感覚的に高く飛びやすくなる、脚が上がりやすくなる。と言った感覚を体感して比較してもらいます。
 
 
 
その上で比較した現象の説明をします。
そこからトレーニングの開始です。
 
 
 
説明から入るのではなく、感覚の違いを体感してもらってから
起きている事実の説明をする流れです。
 
 
 
 
 
私自身、上手く伝えよう、わかりやすく説明しようという思いが強すぎることで全く上手くいかないことの連続でした。
指導する立場としての意味を理解しているつもりになっていたのです。
 
 
 
どんなに素晴らしい説明ができたとしても、パフォーマンスが少しでも上がらなければそれは自分主体の自己満足でしかありません。
 
 
 
考えるより、感じる。
感じてもらって、導く。
それが最適解かもしれません。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年08月24日

【トレーニング動画あり】「胸の動き」が痛み/パフォーマンスアップの両側面に関わる理由

文:萩 潤也

 
先日テニス選手と関わった際に以下のような相談を受けました。
 
・もっと楽に力強いショットが打てるようになりたい
・練習後に肘が痛くなることがある
 
普段はテニスの技術練習に加え、自重での補強トレーニングやストレッチなどを簡単には行ってはいるが、思うような結果が得られていないとのことでした。
 
実際は個人の特徴も考慮する必要がありますが、今回はよくある原因の1つである「胸の動き」に焦点をあてて話をしたいと思います。
 
胸の動きは身体の繋がりとして、痛み―パフォーマンスアップの両側面に関わっています。その具体的な理由と、実際の動きをチェック・トレーニングする方法も合わせてご紹介したいと思います。
 
身体のつながりについてはこちらもご参照下さい
ねじれて感じる身体のつながり
 

痛みとパフォーマンスは表裏一体

 
よく怪我や痛みと競技パフォーマンスは別物として考えられることがありますが、この両側面は表裏一体であり、繋がりがあります。
 
そもそも痛みという現象は、ある部位に「ストレス・負担が集中している」ということを知らせてくれている身体からのサインです。
そのため「どこが痛くなっているか」という事実だけでなく、「何故そこにストレスや負担が集中してしまっているのか」という原因を考える必要があります。
 
また、同時に競技パフォーマンスのことも考えてみます。
テニスのサーブやリターンで力強いショットが打てるようになりたい。
ではボールにパワーを伝えるための力源としてはどのようなメカニズムが考えられるでしょうか。
移動そのものの力、沈んだ身体が伸びあがってくる際の床反力、捻った身体が元に戻る力、などがあります。
これらが合わさることで大きな力がボールへと伝わります。(ネット際のボレーなどはここでは除きます)
 
特に今回焦点をあてている「胸の動き」は身体の捻りに大きく関わる要素であり、中心→末梢へ力を伝達する役割があります。
上半身からボールまでの繋がりを見てみます。
 
胸(背)―肩―肘―手―ラケット―ボール
 

 
この上半身の繋がりの中で一番捻りの要素が大きいのが、身体の中心である胸(胸椎・肋骨・胸骨)になるのです。
 
「でんでん太鼓」をイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、中心の棒(胸)が回転することで左右の紐と玉(腕やラケット)が振られ、音が鳴ります(力が生み出される)。
 
つまり、胸の動きが小さくなることは、以下のように表すことができます。
 
・動作に協力する関節や筋肉が少ない→ボールへ伝わるパワーが小さい
・生じるストレスや負担が分散せず、特定部位(肘など)に集中する→痛みや怪我の原因になる
 
ですが言い換えれば、胸の動きが大きくなることは以下のように表すこともできます。
・動作に協力する関節や筋肉が多い→ボールへ伝わるパワーが大きい
・ストレスや負担が分散し、特定部位へ集中しなくなる→痛みや怪我の予防・原因の改善
 
 
最初の話に出てきた競技パフォーマンス・痛みの両側面ともに「胸の動き」がポイントになっている、表裏一体であるというイメージがついたのではないでしょうか。
 
ではここから実際の動きをチェック・トレーニング方法の例をご紹介したいと思います。
 
 
 

  • 四つ這い肘上げチェック


 
(手順)
・四つ這いになり、片手指先を耳の上あたりにつける
・できるところまで肘を上げるように胸を開いていく
 
この時下の腕と上の腕が一直線になっている状態まで開くことができるのが理想です。ご自身の身体の状態はいかがですか?
 

  • バランスボールトレーニング

バランスボールを用いた「胸セパレート」というトレーニングをご紹介します。
セパレートとは「分かれている・分離している」という意味です。
その名の通り、このトレーニングの目的は頭や下半身に対して胸を分離して動かせるようになることになります。
 

  1. 胸セパレート:その場

https://www.instagram.com/p/B1L0LIuBcK7/
(手順)
1.肩幅よりやや広く足を広げ、膝と股関節を軽く曲げる
2.手や胸との隙間が無くなるようボールを抱きかかえるようにして把持する
3.頭や骨盤は正面を向いたまま、左右に振るように動かす
※ボール―手―胸の隙間があると腕だけで動いてしまうため、隙間をなくし1つのユニットとして同時に動かすことを意識する
 
 

  1. 胸セパレート:サイドステップ

https://www.instagram.com/p/B1L0q_IB-li/

(手順)
1.①のポイントと基本は同じだが、肩甲骨-背中が正面に見えるくらい大きく捻る。目線は肩越しに正面に向ける。
2.左右にサイドステップを行い、移動した側と同じ方向に胸セパレートを行う。身体の捻りが戻る反動を利用して逆方向へステップを行う
※足で地面を蹴って移動するのではなく、捻りが戻る反動を移動のエネルギーに変換することがポイント。そのため一瞬身体がフワッと浮き上がるような感覚。
 

おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回焦点をあてた「胸の動き」は、もともと硬くなりやすい部位です。
心臓や肺といった臓器を守るために、骨の砦のような構造をしていることや、精神面の影響(自律神経)の影響を受けやすいためです。
だからこそ、この部位が自由に動けるかということが、障害予防やパフォーマンスアップの観点からも重要視される理由です。
ご自身の現状をチェックしてみて下さい。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年08月18日

あなたはサンプル1とサンプル1000のトレーニングどちらを選択しますか

文:谷口祐樹

トレーニングメニューは探せば探すほど存在します。
もちろん、オリジナルのトレーニングを自分で作る事も可能です。
トップ選手の動きを動画などで観察し、その動きが意識しなくても出来るようにトレーニングを通して体に落とし込み、パフォーマンス向上を図ります。
 
しかし、ちょっと待ってください!
 
そのトレーニングは本当に効果的なトレーニングなんですか?
 
トップ選手の動きだからきっと正しい動きに違いない、だからその動きやトレーニングをトレーナーとして選手に提供するんだという単純な思考になっていないでしょうか?
トップ選手という憧れにあなたは引き寄せられていませんか?
 
サンプル1のトレーニングとサンプル1000の科学的根拠をもったトレーニングをあなたなら選手にどちらを提供しますか?
 
 

トッププレーヤーの動きが全て良い訳ではない・・・

 
どの競技にも、トッププレーヤーが存在し飛び抜けて活躍している時それが輝いて見えてしまい、ついその動きに引き寄せられてしまいます。
彼らがやっていることは全部良いことだと思うようになり、無条件で取り入れるようになってしまう事が選手だけでなく、トレーニングを提供するトレーナー及び指導者には必ずあると思います。
 
そして調子を崩し自分の良い所がなくなっていくというマイナスの学習に繋がる可能性もゼロではありません。
 
【トッププレーヤーが〇〇な動きをしている】と【〇〇の動きをすればトッププレーヤーになれる】とは話がまったく別問題です。
 
また、トレーニング方法においても同様の事が考えられます。
今までにないトレーニング方法だと思っていても実際には他の競技のトレーニングで既に取り入れられていたり、過去に流行ったトレーニングだったりする事も多々あります。
 
人は何かのきっかけで盲信すると、それを強化する情報ばかりを集めるようになり、自分の考えを肯定し後戻りしにくくなります。
 
それでは、流行りや思い込みに振り回されることなく、本当に必要なトレーニングを選択するためにはどうすれば良いのでしょうか?

 
 

本当に必要なトレーニングを選択するためには?

 
そのために意識すべきことが3つあります。

・1つ目は多様性のある考えを持ち常に疑うこと
・2つ目は時間軸を長く捉えること
・最後の3つ目は基礎を怠らず普遍性のトレーニングと個別性のトレーニングを必ずバランス良く行う事です。

以下に具体的に説明していきます。

 

1.多様性のある考えを持ち常に疑うこと

あるトレーニング方法や組織に所属すると、まわりはそのトレーニング理論で染まってしまいがちになり、自分が現在行っているものを肯定する要素を探してしまいます。
「あのような人になりたい」という自分にとって具体的な行動や考え方の模倣となる人物(ロールモデル)を選び、その人の影響を受けてしまいます。
ロールモデルは目標となる指標が出来る為良い場合もありますが、妄信してしまうと悪影響を及ぼします。
そうならないためには、自分の周りにいる人の考え方を取り入れることや、知識の多様性が必要です。
一度冷静になり、自分の立ち位置を俯瞰してみることをオススメします。
 
2.時間軸を長く捉えること
トッププレーヤーにもトレンドは必ずあります。
ある時期にはトップ選手の動きをみてそれが大事だと思われていたが、いざ長い時間軸で捉えると、その時代の道具や練習形態によって生み出された動きだったりし、パフォーマンスには直接影響しないという事も必ずあります。
普遍的な動きなのか時代の流れなのか、現在のトッププレーヤーだけを見ているとそれがわからないという事です。
 
3.基礎を怠らず普遍性のトレーニングと個別性のトレーニングをバランス良く必ず行うこと
「正しい動き」や「正しいトレーニング」というのは結局のところ、人の裁量でしかありません。
スポーツの頂点に近い世界では科学的根拠のある情報を探そうとしても、サンプル数が少なすぎて参考になりません。
つまり、実際に彼らがやっている事の何がパフォーマンスに影響しているのかの根拠はほとんどないのです。
結局は観察して洞察するしか理解する方法がないのですが、トップ選手を見る時は特に冷静になることを意識する必要があります。
無意識のうちに良い部分ばかりを探してしまいがちですが、実際にはトップ選手にも悪い部分があります。成功している人が持っている特徴を、それをやればパフォーマンスが向上する要素なのかもしくはただの癖なのか、そのように分類して整理する必要があります。
最後に、忘れてならないのは個別性の原則です。
ある人には効果的な動きトレーニングであっても、ある人には機能しないという事が必ず存在します。
結局のところは、良いトレーニングとは普遍性と個別性に対してバランス良く介入することです。
普遍性のトレーニングとは、誰にでも通用する可能性の高いエビデンスのあるトレーニングのこと。そして個別性のトレーニングとは、個人の特徴つまり個性を活かしたトレーニングのことです。
この部分こそが、トレーナーの力量がもっとも試されるところだと考えます。
 

まとめ

今回は、選手にとって本当に大切なトレーニングを選択するためには、意識すべき3つのポイントについてお伝えしました。

特に最後の3つ目の部分、普遍性のある土台を作り上げた上で個別性を高めていくということが、一番大切かつトレーナーの力量が試される部分ではないかと私は考えます。

自分のサポートしている選手やチームは、基礎的な部分である普遍性のトレーニングにも力を注いでますか?
常に新しい動きや変わったトレーニングメニューをすることパフォーマンスアップ出来ると考え、新しいトレーニングばかりを提供して満足していませんか?
 
最後までお読みいただきありがとうございます。

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2019年08月15日

スポーツトレーナーを目指していなくても

文:山田東秀

JARTAのホームページにアクセスしていたり
JARTAのブログを読まれている方の中には
「私は別にスポーツトレーナーになりたいわけじゃないんだけど・・」
「でもJARTAのセミナーの内容には興味があるんだよな・・」
という方が、少なからずおられるのではないかと思います。
「でも、JARTAのセミナーを受講している人たちって、
きっとスポーツトレーナーを目指している人たちばかりで・・」
「なんなら、すでにアスリートをサポートしている人たちばっかりだったりして・・」
「そんなところに私なんかが学びにいくのって場違いじゃないかな・・」
「アスリートに携わってないと、JARTAって敷居が高いよな・・」
かつての私自身が、実はそうでした。
 
「自分はスポーツ現場に出たいわけではない」「スポーツトレーナーになりたいわけではない」
「けれど、自分の目の前にいるクライアントに貢献したいという思いは、人一倍ある」
「ジャンルは全然違うけれど、もしかしたらJARTAのトレーニングが有効かもしれない気がする」
勇気を出して、私はJARTAの認定スポーツトレーナーコースを受講しました。
 

 
私がJARTAと出会ったのは、理学療法士として10年目、障碍児の「療育」の分野で働いていたとき。
療育の分野とは、障碍のあるこどもたちが小学校に上がる前に通う、保育園のようなところです。
もともと私はこどもが好きで、幸いにも障碍児療育という、
こどもたちと長く関わる分野に就職できたこともあり、
勉強するのは、こどもの発達や障碍児に関する勉強ばかり。
本格的なスポーツをしている子たちと関わることは皆無でしたし、
スポーツトレーナーという分野にも全く興味がありませんでした。
しかし、よく考えてみると、スポーツ選手と障碍児の保護者には共通点がありました。
 
そのひとつが「パフォーマンスアップのために」という思いです。
 
スポーツ選手は自身のパフォーマンスアップのために、
より良いトレーニングを求めます。
障碍児の保護者もまた、我が子のパフォーマンスアップ(成長)のために、
より良い療育やリハビリを求めます。
10年間で、たくさんの、様々な障碍のあるこどもたちの発達をみてきましたが、
「色々なところで、良いと言われることはやってきたけど、あまり変わらない」
「医師からは『仕方がない』と言われた」
「どうにかなりませんか?」
そんなお母さん達の声を聞いて
「本当にこれが限界なんだろうか?」
「こどもたちにもっと貢献できることは他にないだろうか?」
 
そんなときに私が出会ったのがJARTAです。
 
JARTAのコンセプトは、対スポーツ選手で説明されていますが、
それらはそのまま障碍児に対してももちろん言えることです。
トレーニングについても同様で、
選手の動きがかたいのと、こどもの動きがかたいことには
共通点があります。
障碍の有無に関わらず、同じ人間です。
パフォーマンスの妨げになる要因には同じものもあります。
受講内容を、自分がみているこどもたちに置き換えるとどういうことになるだろうか?
トレーニングをどんなふうに構成すれば、障碍のあるこどもたちにもやってもらえるだろうか?
 

 
そのような観点で受講していき、学んだことをこどもたちに還元していった結果、
運動面の成長が限界と言われてきたこどもたちに、運動機能の向上がみられるようになりました。
 
 

すべてはパフォーマンスアップのために

 
私はもともと「スポーツトレーナー」になりたかったわけではありませんし、
今もアスリートやスポーツ現場をみることはほとんどありません。
JARTAの認定トレーナーとなったのは、JARTAで学び続けた結果であって、
認定トレーナーになることが目的ではありません。
JARTAで学び続けることで、自分がみているこどもたちのパフォーマンスは
今も確実に向上していっています。
「スポーツ現場に出たいわけではない」「スポーツトレーナーになりたいわけではない」
「けれど、自分の目の前にいるクライアントに貢献したいという思いは、人一倍ある」
「ジャンルは全然違うけれど、もしかしたらJARTAのトレーニングが有効かもしれない気がする」
自分のクライアントの可能性を広げられるのは、自分自身です。
 
スポーツトレーナーを目指す目指さないにとらわれず、
また、職種、年齢、性別に関わらず、
「すべては目の前のクライアントのパフォーマンスアップのために」
その思いを行動に移すことで、
目の前のクライアントにより貢献できるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
10月6日に大阪で、WorkOutを開催します。
今回のWorkOutは、スポーツトレーナーを目指しているわけではないけれど、
JARTAのセミナー内容やトレーニングに触れてみたいと思っている方々に、
お集まりいただけるWorkOutです。
 
当日は、旧認定スポーツトレーナーコースの内容にいくつか触れていただいた後、
それぞれの立場から、考えていたことや感じていたことなどをディスカッションで共有し、
互いの思考を広げる時間を設けたいと考えています。
お申し込みはこちら

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2019年08月12日

天国と地獄 / 2019年インターハイ帯同報告〜高松中央高校空手道〜

文:赤山僚輔

南部九州地方にて2019年インターハイが各地で各種目が熱戦を繰り広げています。
JARTA認定スポーツトレーナーの中にも複数人が多くの競技で帯同をしておりました。
サッカーやバレーボール、ソフトテニス競技など。
今回は私が8月7日から12日まで帯同してきました、空手道競技の帯同報告を簡単ではありますがさせていただきます。
今回インターハイ帯同した高松中央高校空手道部は男子が2年前にインターハイ初優勝、去年は準優勝。
女子は昨年は3位ですが、今年の主要な全国大会で2回日本一になっており今大会は男女での優勝を目標に準備をすすめてきました。
そして私自身も彼らが1年生の時から関わり、試合帯同は今回が初めてでした。
大会期間中はウォーミングアップやクールダウンの指導、選手のコンディショニング、試合に臨むまでのルーティーンの指導や心構えなどメンタルの観点での指導も行ってきました。
どの高校も最後の夏にかける思いは強く、連日厳しい戦いが続きました。
そして、私自身も最終日である昨日、まさに選手の天国と地獄の姿を直面することとなりました。
3冠を疑わずして臨んだ女子は準決勝で勝敗は同率ながらもポイント差での敗退という幕切れとなりました。

呆然とする選手、泣き崩れる選手、空手道は監督、選手以外は観客席からの応援の為、私はそれを少し離れたところからみていました。
現実を受け入れるのに時間は待った無し。
まだその状況を受け入れられないままに、すぐに男子の準決勝が始まりました。
相手は昨年の決勝で敗れた相手。
予想通りの混戦になりました。
大将戦を前にして8点差あけられなければ負けないという圧倒的に優位な展開にも関わらず。
8点差で敗れて代表戦に突入するというドラマのような展開になりました。
結果は代表戦で勝利するも決勝に向けて不安要素の残る試合となりました。

決勝に向けては少し時間があるので、これまでの悪い流れを断つようにリセットする為の時間をとりました。
しっかりと気持ちを切り替えることができた選手達は決勝戦ではこれまでで最高のパフォーマンスを発揮して最高の結果を出してくれました。
関連記事はこちらから
南部九州インターハイ  高松中央、2年ぶりV 空手・男子組手団体
(四国新聞社より)

第46回全国高等学校空手道選手権大会(沖縄インターハイ)が閉幕


第46回全国高等学校空手道選手権大会
(公益財団法人、全国高等学校体育連盟HPより)

そして、私自身スポーツトレーナーをして初めて胴上げをしてもらうという経験をさせてもらいました。

もちろん嬉しい経験でしたが、全員の選手に対して最高のパフォーマンスを発揮させてあげられなかった思いが今日も思考を巡っています。
この景色をみた下級生が来年、群馬の地でアベック優勝が果たせるようにまた一緒にトレーニングをしていきたいと思います。
選手とともに過ごす、熱い日々は最後の沖縄の暑い日差しが一生忘れない記憶として身体に染み込ませてくれました。
また良い報告ができるように日々に向き合っていきたいと思います。

最後になりました、応援くださった全ての方々にこの場を借りて感謝いたします。
本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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2019年08月07日

トレーニングには2つの時間が必要

文:岡元祐樹

 
 
「言われた通りやっているけど効果がわからない」
 
トレーニングを継続していく過程でこう思ったことはありませんか?
 
そんな時は2つの時間が必要だと考えてみて下さい。
 
1つは短期的な時間、もう1つは長期的な時間のことです。
 
論理的にも自分に合っているトレーニングや効率的だと思えるトレーニングであっても、効果が出てくるには『量』をこなす必要があります。そしてただがむしゃらに量をこなすだけではなく、2つの時間を意識した作戦が重要になってきます。
 
 

短期的な時間と長期的な時間

トレーニングには2つの時間が必要です。その2つの時間とは短期的な時間と長期的な時間です。
 
それぞれ説明していきます。
 
短期的な時間とは「1日の中のトレーニング時間」です。
 
この短期的な時間は、1時間や2時間といったある程度まとまった時間のことも含みますが、1分や2分、さらに言うと数十秒といったごく短い時間も含まれます。
 
そういったごく短い時間でできるトレーニングを日常の中でどのように組み込んでいくかがパフォーマンス向上に重要になってきます。
 
トレーニングと言うと、負荷があって辛く苦しいものというイメージを持っている選手もいると思います。
 
しかしここで述べるトレーニングは短時間で可能なストレッチや身体操作練習も含みます。
 
選手がフィジカルのトレーニングをする目的は、競技での身体の動きを良くすることが中心であるはずです。課題となるトレーニング、もしくはそのトレーニングの前段階にあたるトレーニングは高頻度で行われた方が、実際の競技においてスムーズに動けるようになるはずです。
 
具体例として筆者が『立甲』を習得するまでのトレーニングを挙げます。
 
筆者はJARTAトレーニングの立甲ができるようになるまで5ヵ月という長い時間が必要でした。
 
少し専門的な用語になりますが、立甲ができるようになるためには
 

  • 肩甲骨の下制方向への可動域
  • 肩関節外旋からの肩甲骨外転下制運動

 
が必要でした。
 
この2点のトレーニングを隙間時間に行うようにしました。
特に有効に使ったのはテレビを観ている時間です。
両トレーニングともテレビを観ながらでも可能であったため、ストレスなく量を重ねることができました。
初めて立甲ができるようになったのもテレビを観ていた時です。
 
このように短い時間を利用してトレーニングを行うことは可能です。時にはトレーニングを細分化したり、前段階のトレーニングに変えたりすることで量を確保するのです。
 

 
 
次に長期的な時間についてです。
 
ここで言う長期的な時間とは『期間』という言葉が本当は適切かもしれません。すなわち効果を感じ取れるようになるまでの期間のことです。
 
この時間は人によって個人差があります。1ヶ月や2ヶ月、あるいは筆者の立甲のようにもう少し時間がかかるかもしれません。
 
そういった長期的な時間が必要であると認識して、トレーニングを継続する工夫が必要になってきます。
 
・どうすれば飽きずにトレーニングを継続できるか?
 
・どのように休養をとるのか?
 
・食事はどうすればいいのか?
 
といった長期的な継続を支える要素も必要になってきます。
この長期的な作戦が立てられないと、トレーニングは気合いと根性で積み重ねなければならなくなります。
モチベーションが低下せずに保たれれば問題ありはませんが、消耗してトレーニング自体が嫌になってしまう可能性もあります。
 
そうなるとトレーニングをする習慣は自然消滅してしまい、やってみたけど効果が無かったという判断になってしまいます。
 

 
 

作戦が必要だ

こう書き進めていくと、トレーニングは何をやるか?ということが大事ではありますが、どのような作戦を立てるか?ということも大事だとわかります。
 
どうやってトレーニング量を確保するのか?どうやって長期的にトレーニングを継続するのか?といった作戦です。
 
とにかく毎日身体を追い込むようなトレーニングをしていても、やがて疲労が蓄積し、パフォーマンスを低下させる可能性があります。
 
また長期的なゴールばかり見据えていると、今日やらなければならないことがボヤけてしまいます。
 
これはトレーニングに限らず、勉強や仕事にも当てはまる視点です。
 
悲劇なのは、選手自身がそのことに気付いていない状態に陥ることです。選手自身や指導者はそのことに留意し、作戦を臨機応変に立案する能力も鍛えなければなりません。
 
 

競技に没頭しているか?

ここまで述べてきた通り、トレーニングには2つの時間が必要です。トレーニングを行う時間と、その効果が出てくるまでの時間です。
 
トレーニングというものは、速効性や効率化を求めることも部分的には可能です。
 
しかし基本的には短期的にも長期的にも『量』を確保する必要があります。しつこいようですが、今回の記事で伝えたかったのはこの事です。
 
トレーニングによって筋力が向上したり、身体操作のコツをつかんだり、結果を出せるようになるには個人差があります。よってトレーニングは他者との比較ではなく、己との戦いになってくる側面があります。
 
そういったトレーニングを地道に継続するには、その競技にどれほど『没頭できているか?』が問われます。その競技が好きで、結果を出したいという気持ちが根底に必要です。
 
『トレーニングには2つの時間が必要』というタイトルで書き進めてきましたが、本当に大切な時間は『好きなことに没頭できる時間』かもしれません。
 
真剣に競技に向き合える時間は短いです。そんな没頭できる時間を本当に大切にしてほしいと想います。そしてそんな選手を影ながら支えたいと想っています。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年08月05日

投手を故障から守るのはエビデンスではなくルールだ

文:岩渕翔一

高校野球地方大会もすべて終わり全国の代表校が決まった。
明日、8月6日からいよいよ全国大会が始まるという中、今でも議論が尽きることがないのは、岩手県の決勝戦で試合出場がなかった大船渡高校の佐々木朗希投手の件だ。
 
議論の要点は大まかに以下の点だ
・決勝戦での登板回避について
・4回戦盛岡四戦での194球完投の是非
・準決勝一関工戦で中2日での129球完投
・肘の違和感を訴えたと言われていること
 
ここではこれらについて意見や私見を述べるつもりもないし、経緯を改めて記載することもしない。現場しか知らないことは絶対にある。その中で下された判断は尊重されるべきであると考えるからだ。
また、そもそもこの議論は佐々木朗希投手の圧倒的なポテンシャルがあったからこそ生まれた議論だ。高校生でMAX163kmは特別視されて当然だし、野球好きでなくとも、スポーツが好きな者であれば見てみたいと思うのが当然の心理だろう。だからこそ物議を醸している。
 
今回のことを受けて、
・過密な試合日程
・球数制限
・登板間隔制限
などが様々なところで意見が述べられている。昨年は金足農業高の吉田輝星投手(現・日本ハムファイターズ)が地方大会から全国大会決勝途中まで一人で投げたことから同じような議論が起こった。
 
様々な意見や考え方があるという前提で、球数制限や試合日程、登板間隔など必要だと感じている方、不必要だと感じている方両方に伝えたいことがある。
 

監督は矛盾した2つのことを共存させなければならない

基本的に投手の投球動作において、肘の靭帯や肩に炎症を起こすほどの負荷がかかっているということは紛れも無い事実だ。だから投球後は炎症を抑えるためにアイシングをするし、大会期間中など特別な理由がなければ少なくとも翌日はノースローにして回復を促す。夏の選手権のような、負けたら終わりの大会ではなく、例えば日々の練習試合であれば投球数も常識の範囲でしっかり管理されているだろう。

さらに身体に負担を出来るだけかけないようにと効率的な投球フォームの獲得にも着手するし、日々のケアもしっかり行う。これは指導者も選手もその責任の中でしっかり行うべきだし、実際行なっているチームがほとんどだろう。
一方で、監督やチームスタッフが、自身が関わるチームを勝たせたいと思っていることも当然だ。選手が試合に勝ちたいと思い、なんとして勝とうとすることも当然だ。勝つためにどうすればいいのかを考え実行する。それも監督の仕事だ。選手は勝つことを目的に全力でプレーするし監督は勝つために最善を尽くそうとする。
そういった意味で今回の大船渡は非常に分かりやすい。私立の名門校ではなく大船渡は公立高校だ。「勝つ可能性」を考えれば佐々木投手が投げるほうが高いに決まっている。
 
・チームの勝利のために最も確率が高いであろう作戦を考え実行する監督としての立場
・チームの選手を守るための監督・教育者としての立場
 
この矛盾した両者を共存させなければならないのが監督という役割だ。選手はどんな状態であれ、使われた以上全力でプレーするだろうから尚更だ。
 

投手を守るのはエビデンスではなくルールではないのか

 
球数制限や登板間隔などの投球制限の導入には必ずある主張が出る。
 
「エビデンスがない」
 
球数制限や登板間隔を設けることで投手の故障を防ぐ(減らす)ことができるというエビデンスがないという主張だ。
 
申し訳ないがそんなことは当たり前のことだ。
 
例えば、
球数制限を導入した投手100名と球数制限を導入しなかった投手100名で高校卒業までの障害発生率を調べる。
 
このような研究計画を立てたとする。こんなものは即刻倫理委員会で却下される。当たり前だ。一方の障害発生率が高くなると考えているにも関わらずそれを研究対象にすることは明確に倫理に違反する。分かっているなら研究ではなく対策しろよということだ。
 
・メジャーリーグでは中4日、投球数100が目安
・NPBでは中6日、投球数120球程度が目安
・筋肉疲労の回復には48〜72時間必要
・投球で肘や肩の負荷による炎症は必ず起こる
たったこれだけを見てもどうすべきか答えは出ているのではないだろうか?
 
仮に高野連がなんらかの投球制限を導入すれば、投球制限がなかったこれまでと、導入したこれからという縦断研究が可能になり、より良い投球制限の検討とエビデンスを作っていくことが可能になるだろう。日程も然りだ。
研究者が倫理に違反する研究はできない。
野球が先に進むためには現場の変化が必要だ。その判断を下すに必要な間接的な研究とエビデンスは十分揃っているはず。
これは野球という競技そのもののため。野球をプレーする選手や指導者のため。現場が率先して常に最善だと考えられる措置を取り、その結果検証を行う形でなければより合理的な対策は恐らく進まない。
 
今、この瞬間に選手を救えるのは投球制限が投手の障害予防に有効であるというエビデンスではない。監督や指導者、チームスタッフ、選手自身。なにより野球というスポーツを運営する組織団体。現場にいる者だけが、最前線で迅速に選手を守る策を講じ実践できる。そのために必要なことがなんなのか。それを考えるためのエビデンスやデータ、情報、経験は十分は揃っているはずだ。
そして勇気を出して踏み出した新しい一歩が、更なる予防策の発展とエビデンスの構築に繋がるはずだ。
 
先に述べたように最前線の現場にはジレンマがある。そして想いがある。では運営サイドはどうだろうか。
ルールはなんのためにあるのか。競技の秩序を守るためだけではない。選手保護という側面がスポーツのルールにはなくてはならないことを忘れてはならない。
 

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2019年08月03日

股関節は柔らかければいいのか

 
 

文:伊東尚孝

 
ハイパフォーマンスには股関節が重要であるという内容が、SNSなどでよく取り上げられています。
 
確かに運動構造を紐解くと、あらゆる競技で股関節が重要なのは明確であり、ハイパフォーマンスを発揮するためには必要な要素となっています。
 
 
では仮に、股関節が硬い選手のパフォーマンスを上げるために、
股関節の柔軟性を高めるトレーニングを行うとします。
 
「股関節が硬いから」
 
という理由で。
 
 
 
もし、その選手が、メッシやイニエスタのようなトップ選手だとしたら?
 
 
 
それでも、あなたは彼らに股関節を柔らかくするように指導できますか。
それがかえってパフォーマンスを下げるリスクにならないと確信できますか。
 
 
 
つまり、
「股関節を使うこと=柔軟性を高めること」になっていないかということです。
 
 
パフォーマンスアップのための「股関節を使う」とは、どのように評価していくべきかを述べていきます。
 
 
 

イタリア人選手の股関節は硬い?

 
 
昨年JARTAのイタリア研修に参加し、私はイタリア人サッカー選手とバスケットボール選手にトレーニング指導をする機会をいただきました。
他にもラグビーやフットサルの試合や練習も見学しました
 
 
その時に感じたことは、
 
「イタリア人は股関節が硬い」
 
どの競技の選手も、股関節の柔軟性を必要とするトレーニングでは苦痛の表情を見せていました。
しかも、プロで活躍する選手ばかりです。
 

 
本当に股関節の柔軟性は、ハイパフォーマンスに必要なのか?
 
 
「ハイパフォーマンス=股関節の柔軟性」という思考だと、そう思ってしまうかもしれません。
 
 
 

動作の過程に股関節があるだけ

 
 
少し話はそれますが、
 
あらゆる競技の運動構造を紐解くと、床反力を力源としているフェーズが非常に多いです。
地面から受けた反力を全身に波及させることで、無駄な力みのない強いパワーを生み出すことができます。
ピッチャーの投球は、まさにこの力を利用しています。
 
また股関節は下半身と体幹を繋ぐ関節の一つで、球関節という形状によって様々な姿勢(股関節の角度)でも体を支えることができる特徴があります。
 
動きの自由度が高い股関節を“使う”ことができれば、
複雑な動きや姿勢でも全身に効率良く力を伝達することを可能にし、結果的にハイパフォーマンスを発揮することができます。
 
 
 
では、ここからが本題です。
 
“股関節しか”使えない身体はハイパフォーマンスを発揮できるでしょうか。
 
 
答えはもちろん否です。
 
 
ピッチャーの投球を例に挙げると、
強い床反力を受けるフェーズは、軸足でプレートを押し込む時、前足でスタンスをとる時の二つに分けられます。
例えば、前足でスタンスをとる時に足部アーチが極端に潰れてしまうと、運動連鎖により膝は内側に倒れ、股関節は内旋運動を強要されてしまいます。
 
床反力を真っ先に受けるのは足部であり、そこからズレが生じていれば全身に効率良く力を伝達することが難しくなるのは当然のことです。
(伝達できていても、無駄な力みが生じ疲労が蓄積しやすい可能性があります。)
 
股関節だけにとらわれ「股関節の外旋角度が足りない」と股関節にアプローチしても、
その投球の質は変わらない、もしくは低下するリスクがあります。
 
 
つまり、その動作がどのような構造なのかを理解し、その動作の過程で股関節がどのように機能しているかを分析する必要があります。
 
 
投球という動作を分析した時にどのフェーズで股関節は機能するのかを考え、
それを踏まえて目の前の選手はどのフェーズでエラーが起きているかを明確にします。
 
上記の例ならば足部の問題を解決したのち、もしくは同時並行で股関節にもアプローチすることが望ましいと考えます。
 
 
 

股関節は柔軟であるべきだ

 
 
結論からいえば、股関節は柔軟であるべきだと考えます。
 
しかしなぜ柔らかい方がいいのかを、各競技の特徴や運動構造を理解した上で解説できる知識が必要です。
 
 
また単純に関節が硬ければ、その部位のボディイメージは薄くなっているはずです。
股間節がどこにあるのか、ぼんやりしている状態ということです。
そのため、生活習慣の中でも股関節を認識する場面を増やすことも有効になります。
ルーティンがもたらす3つの効果
 
 
ただ闇雲に股関節の柔軟性を高めればいいのではなく、その選手に必要な要素を抽出した結果、股関節にアプローチするプロセスが重要です。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
***
 
運動構造の分析も踏まえた上で、股関節そのものの評価・治療はどのように進めていくべきか、ケーススタディを用いてみなさんで知恵をシェアできるワークアウトを開催しています。
ぜひ、ご興味があればご参加ください。
Workout in 神戸
 
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2019年07月27日

筋力トレーニングを再考する ~筋トレのあり方とは~

文:能城 裕哉
  • 筋力トレーニングを再考する

 
現在、様々なトレーニングの理論や方法論が存在している。
 
トレー二ングと聞いて、筋力トレーニングや体幹トレーニングなどイメージされる方は多いはずである。
 
*これまでの記事にもあるように、
「筋力トレーニングをすべきか、すべきでないか。」スポーツ現場でしばしば耳にする問いがある。
 
今回は一般的に広く知られている筋力トレーニングついて再考してみる。
 
筋力トレーニング(以下筋トレ)とは、レジスタンストレーニングとも言われ、骨格筋の出力・持久力の維持、向上や筋肥大を目的とした運動の総称とされている。
 
要するに、筋トレとは筋の収縮力向上のためのトレーニングである。
 
つまり、筋トレは、筋線維の肥大や動員される運動単位の増加など筋収縮に関わる因子がトレーニングのターゲットとなる。
 
通常、どの因子へアプローチするかによりトレーニング設定を変更し、プログラムを計画・実行する。
 
例えば、最大筋力を上げるために、1RMの80%、動作を最大速度で行い、休息は数分とるなど設定し、実施されている。
 
年齢など対象に合わせ、各設定が異なり、RMのみでなく、運動速度やトレーニングの総負荷量の調整で筋力が向上するとのデータも存在する。
 
まとめると、筋トレの目的は、トレーニングを通じて、筋の収縮力を上げることにある。
 

  • トレーニングは手段であって目的ではない

 
前述にように、筋トレの目的はあくまでも、筋力の強化が目的であるが、スポーツでのトレーニングの最終的な目的は、競技パフォーマンスの向上である。
 
前述した筋力強化にフォーカスしてトレーニングを設定する場合と競技パフォーマンス向上のため、一つの手段として筋トレ実施する場合では、意味が異なる。
 
実際に、競技パフォーマンス向上のために、どのようにトレーニングを処方するのか?
 
競技パフォーマンス向上には、競技そのものの練習のほかにも、運動学習をベースとした身体操作系のトレーニングがある。
俗にいう動きのトレーニングである。
 
このトレーニングは、競技の動作分析に基づいて、必要な運動の要素を抽出したものである。
さらに、この身体操作を細分化した先に、身体操作を構成する要素として、組織の柔軟性や筋の収縮力といった身体機能が存在する。
 
筋トレは、この身体操作を構成する一つの要素である筋力を強化するトレーニングであるべきである。
 
つまり、単純に〇〇筋を鍛えるという単に、筋力向上のための筋トレなのか、身体操作の要素として、動きとの関連性を考慮した筋トレなのかによって意味が異なる。
 
筋力トレーニングVS身体操作系トレーニング。優秀なのはどっちだ!??
にあるように、それぞれの分析はトレーニング処方において必須となる。
 
1:競技パフォーマンスの分析
↑↓
2:身体操作の分析など
↑↓
3:身体機能(筋力、可動域…の分析
 

  • 全てはパフォーマンスアップのために

前述したように、筋力トレーニングは、筋収縮力という要素の強化である。
 
そのため、筋力がどのように競技パフォーマンスに影響を与え、どういった動きに必要となるかを考慮しない場合、特異性の原則にあるように、トレーニングがマイナスに作用する場合がある。
 
当然ながら、目的としたパフォーマンスを考慮したトレーニングができなければ、競技へ筋力トレーニングがどう影響するのか、メリット、デメリットを考えられない。
 
しかし、競技パフォーマンスのキーポイントを考慮し、本来の目的である高めたい競技パフォーマンスを分析した上で、筋力がどのように影響するのかを考慮していれば、筋トレ自体に問題はないはずである。
 
筋トレは、パフォーマンス向上には必要なトレーニングの1つの要素だと考える。
 
*個々の評価は前提として必須なのは言うまでもない。
 

  • 最後に

筋力トレーニングは、高めたい競技パフォーマンスを詳細に分析し、筋が動作にどのような影響を与えるか考慮した上で、実施すべきである。
 
メディカルリハビリテーションの段階から競技動作をイメージし、筋力トレーニングを処方することが、マイナス要素を最小限にし、トレーニング効果を最大化できる方法である。
 
また筋トレには、筋力向上と言う要素のみでなく、障害予防としての寄与も大きい。
 
筋トレ実施での負荷が、関節や筋、腱など筋骨格系にポジティブな効果を与えることは立証されている。
 
筋力トレーニング、身体操作系トレーニングのみにも限界があることを理解し、競技パフォーマンス向上のために、トレーニングの選択肢を広げていくことも必要である。
 
1つ1つのトレーニングが目の前の選手のパフォーマンスにどんな影響を与えるのか?
 
どんなメリットやデメリットがあるか?
 
を考え、トレーニングプログラムを計画、実施する必要がある。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年07月24日

JARTAにおけるコンディショニングスキル〜初級編〜

文:真木伸一

 
多くのメディアやトレーニング領域で、「コンディショニング」という言葉が一般的に使われています。コンディションを整える=コンディショニング、という解釈が一般的に思われますが、そもそも、コンディションとはどういうものでしょうか。
 
 
 
トレーナーの仕事をしている方ならば、ご自身の仕事を、選手の「コンディショニング」に関わる仕事です、という説明をしていることがあると思います。この「コンディショニング」という言葉、大変便利なのでよく使われています。ただ、この「コンディショニング」という言葉の定義はみなさんご存知でしょうか。
厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、
「運動競技において最高の能力を発揮出来るように精神面・肉体面・健康面などから状態を整えること。」
とされています。なるほど・・。
健康面ってなんだろう、という疑問はさておき、
精神面、肉体面、健康面にアプローチして、
その人の状態をより快適な方向へ導いていくことがコンディショニングの基本概念なのかと思います。
 
つまり、あらゆる面から選手を観察し、
「競技成績を残すために必要な全てのサポートを実践すること」
に置き換えることができると思います。
JARTAでは、選手のコンディショニングを行う時、
このように考えます。
 
先日、まだサポートを開始して間もないプロラグビー選手が、
こう訴えてきました。
「左肩に乗せる感覚が得られない」
この選手は、スクラムハーフというポジションで、
簡単に言えば、
誰よりもボールに触って攻撃のタクトを振る指揮者のような立場です。
彼が言うには、
左肩はいつも力がうまく乗らない感じがあって、
右と比べるとしっくりこないのだとか。
 
可動域、筋力を評価しても
大きな左右差はみつからず、
機能障害を示唆する一般的な理学所見は
見当たりません。
この場合、多くの人が、
「感覚」の問題に置き換えて、
「理解が難しい」と判断してしまうのではないでしょうか。
 
JARTA では、
「立甲」の習得を認定トレーナーに義務付け、
多くの選手にパフォーマンスアップ目的のトレーニングとして
提供しています。
訴えのあったトレーニングの肩甲骨機能を評価すると

 
左の肩甲骨だけが胸郭から分離できておらず、
十分な内旋・外転ができずに上腕骨軸と肩甲骨関節面を一致させられていませんでした。
肩甲帯周囲の筋のゆるみがなく、
主動筋・拮抗筋にも同時収縮を起こしている状態で、
意識的に使うべき部位の収縮と目的動作に不要な筋の弛緩がコントロールできていない状態、と判断しました。
 
今回は、Tレフストレッチという
JARTAで提供している「アロースポイント」を用いたストレッチを3種、
伝えて実施してもらいました。
実施後の結果が以下の写真です。

 
この間、3分。
今回のアプローチでは、「肉体面」にアプローチして、
選手のコンディションを整えました。
ですが、もし次回私がみるときに状態が元に戻っていたら、
まず全身の繋がりに目を向けます。
次に影響しそうな選手の背景を確認します。
もちろん、今置かれている選手の立場や、チーム状況、
家族関係にも「評価」は進んでいきます。
「精神面」「健康面」という言葉が何を指すのか不明瞭ですが、
おそらくその領域には確実に踏み込みます。
 
JARTAでは、
選手を要素還元的に導くことはしません。
関係主義的な手法を用いて、
コンディショニングを実施します。
 
選手を良い方向へ導くコンディショニング。
トレーナーとしての武器にしてください。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
現在募集中のコンディショニングスキルコースの内容・日程・開催地は下記よりご参照ください。

コンディショニングスキルコース



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2019年07月21日

リスペクトを次世代にも

文:岡元祐樹

 
 
「他者をリスペクトする」
 
チームメイト、対戦相手、審判などに敬意をもって接する。これはスポーツ界のみならず、一般社会でも大切と言われている心構えだと思います。
 
しかし、スポーツの現場では時折リスペクトを欠いた言動を行う選手やチームを見かけることがあります。
 
「教わっているはずなのになぜこのようなことが起きるのか?」
 
それはリスペクトへの理解が不十分だからかもしれません。
 
リスペクトは他者に与えるだけのものではなく自分自身にもメリットがあるものなのです。
 
なぜ他者をリスペクトすることが大事なのか?
 
筆者が選手やチームに教えられ、そしてJARTAで学んだ『他者をリスペクトすることの意味』を共有したいと思います。
 
 

リスペクトがもたらすメリット

 
リスペクト(respect)とは辞書的には「尊敬・敬意・それを表すこと」という意味で使われます。
 
『リスペクト精神』とも言われるこの姿勢や態度について、我々は世代を問わず教わってきたはずです。
 
筆者が部活動に励んでいた高校生時代には「リスペクト」という言葉はあまり一般的ではなかったと記憶しています。
 
しかし「相手を侮ってはいけない」「審判の判定に文句を言わない」など、言葉は違いますが本質的には同じことを教わっています。
 
ここで、逆説的ではありますが『他者へのリスペクトを欠いた状態』を想像してみましょう。
 
他者へのリスペクトがなくなると、それは態度や言動に現れます。選手が対戦相手のプレーや、審判の判定に文句を言うような場面は皆さんも想像できるはずです。
 
一見、戦う姿勢が全面に出た結果の言動に見えるかもしれませんが、そこには明らかなデメリットがあります。
 
それは『不確定要素にフォーカスしてしまう状態』に陥りやすくなることです。
 
不確定要素というのは、自分ではコントロールできない物事のことを指します。
 
対戦相手はこちらの思うように動いてはくれませんし、審判も自分の思うような判定ばかりしてくれる訳ではありません。
 
その不確定要素に不満を持つことは、結果が伴わなかった際の自分自身への言い訳に繋がります。
 
「相手が卑怯だった」
 
「審判がちゃんとジャッジしてくれなかった」
 
「雨でグラウンドが悪かった」
 
このように自分以外に結果の要因を見出そうとしてしまいます。
 
この状態では、唯一コントロールできる自分自身の『改善点や伸び代』に気付きづらい状態になります。
 
言い換えると選手としての成長が止まるということです。
 
他者へのリスペクトは自分自身に向き合い、成長していくための1つの手段だと言えます。
 
そこまで理解して実践しないと、そのリスペクトは形だけのものになってしまいます。
 
つまり『リスペクトすること』が目的になってしまい、そこから得られるものを見失ってしまうということです。
 

 

リスペクトの大切さを次の世代へ

 
先日、とあるサッカー大会に選手として出場しました。
 
久しぶりのサッカーの試合を楽しみにしていたのですが、そこで『リスペクトを欠いたチーム』と対戦することがありました。
 
そのチームの選手達は敵味方に限らず敬意の感じられない言葉を使い、審判の判定に対して大声で抗議するチームでした。
 
こうなるとスポーツは楽しさがなくなります。勝とうが負けようが心にモヤモヤしたものが残ります。
 
試合後、なぜかジュニア世代の指導のことが脳裏に浮かびました。
 
「子供達がこの試合を観たらどう思うかな?」
 
「こういったチームの選手が子供達を指導することになったらどうなるのかな?」
 
家族連れで試合会場に来ている選手が多かったため、このようなことを思ったのかもしれません。
 
他者へのリスペクトは前述のように自分自身を成長させる上で重要な要素です。
 
加えて、様々な年代やレベルでスポーツを楽しむための土台にもなり得ることに気づきました。
 
スポーツは楽しむことにも重きを置かないと地味で辛い練習に耐えられなかったり、長続きしなくなったりします。
 
次世代が楽しみながら成長していくために、また競技者として長くスポーツを続けるためにも、指導者はリスペクトすることの意味をもう一度認識し、実践する必要があります。
 
特別なスキルは必要ありません。
 

 

他者を尊重し自己研鑽を

 
他者をリスペクトすることは大切です。
 
ただなんとなくそう言われているから大切にするのではなく、自身の成長と次の世代の成長を意識した実践でないと意味がなくなります。
 
筆者はリスペクトの精神についてJARTAで学びましたが、今回選手の立場になった機会にそれをさらに深く認識することができました。
 
スポーツが幅広い年代に愛され、継続されるためには、土台として他者へのリスペクトが必要であると強く感じました。
 
スポーツをする人が、気持ち良くスポーツを継続できるように。
 
また日本のスポーツ界が、他者を尊重し自己研鑽を積む方向に今後も強く進んでいくように願いを込めて。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年07月18日

続・立甲を再考する

 

文:竹治久里子

 
“見た目だけの立甲”というエラーがなぜ起こるのか。
前回の記事で、「前鋸筋が機能的に使えていないことで、肩甲胸郭関節の安定性が低下している状態」と説明した。 (参照https://jarta.jp/training/15358/
 
このとき前鋸筋以外にも目を向けてみると、例えば、腹斜筋は使えているか、僧帽筋上部や広背筋は過剰に収縮していないか、胸郭と骨盤の連動性は・・・など、評価すべきポイントは他にも多々ある。
それらを理解した上で、今回はあえて、前鋸筋に焦点を当てて掘り下げていきたいと思う。
まずは、前鋸筋の作用を整理しておく。
第1~第8肋骨の外側・上縁と肩甲骨の内側縁に付着部を持ち、
肩甲骨を外転・上方回旋させ、肋骨(胸郭)を肩甲骨に引き寄せる。
教科書などではこう書かれていることが多いが、実際にどんな作用を起こすかというと、
胸郭に対して肩甲骨(上肢)が動くと、パンチング動作になり、
肩甲骨(上肢)に対して胸郭が動くと、胸郭が後方へ引かれるような動きになる。
さらには、動きとしては見えにくいが、
内旋位にある肩甲骨を外旋させることで翼状肩甲を抑制し、
付着部の両端から同時に収縮することで胸郭を安定させる。
といった作用もある。
 
では立甲において、前鋸筋はどのように作用しているだろうか。
結論としては、上記全ての作用を発揮する必要がある。
立甲は基本的に四つ這いで行うトレーニングであり、地面を押すという動作においては、しっかりと収縮する必要がある。
また肩甲骨を“立たせる”ためには、胸郭と肩甲骨が引き離される必要があり、ある程度の弛緩が必要となる。(もちろん、完全弛緩ではない。)
さらに言うと、立甲の状態を機能的に使うためには、胸郭(体幹)の安定性が保たれる必要性があるので、一定の収縮力を維持しなければならない。
これら全てがバランスよく機能していること、それが立甲における前鋸筋の作用である。
強く収縮させるだけではなく、もちろん弛緩しきっているわけでもなく、肩甲骨の可動性を有したうえで、前鋸筋の収縮力を発揮できる状態。これが、立甲を習得した先にあるべき理想である。
ここで一つ、トレーニングを紹介する。


 
四つ這い姿勢をとり、重心を一側上肢に移し(写真では右上肢)、反対側の手は一段下げたところに着く。下げた手で、しっかりと床を押す。
押した力で重心移動が起こらないように、対側の下肢・体幹で押し返す(支える)。
重心を一側に残しておくことで、反対側の上肢は身体を支えるという役目がなくなり、押す動作にフォーカスしやすくなる。なおかつ、対側の下肢には重心がしっかり乗っているので、腹斜筋への収縮が入りやすい。
ポイントとしては、上肢で床をしっかり押すことと、腹斜筋や殿部・ハムストリングスがしっかり働いていること(骨盤・胸郭のぐらつきがないこと)。
見た目だけの立甲になっている場合、見た目上は肩甲骨が立っているので、可動性はあると考えられる。問題は、収縮力である。
私は、前鋸筋の収縮が入らない人に対して、前鋸筋のトレーニングをするのは非常に難しいと感じている。
なぜなら、収縮が入らない人は、そもそも前鋸筋に力が入っている感覚が分からないということが多いからだ。
そういったケースでは、直接前鋸筋にアプローチするよりも、間接的に、強制的に前鋸筋が働きやすい状況を作る方法が有効ではないかと考える。
今回紹介したトレーニングも、そこを意識している。
アナトミートレインでいうところの「スパイラルライン」をみると、前鋸筋からの筋連鎖は、外腹斜筋・内腹斜筋を通して骨盤まで続いている。
つまり、骨盤を安定させること、腹斜筋を収縮させることで、前鋸筋まで波及させるというのが狙いの1つである。
さて、今回は前鋸筋に焦点を当てて掘り下げていった。
しかし実際には、前鋸筋のみで話を進めるのは難しい。なぜなら、立甲は前鋸筋だけが使えれば出来るというものではないし、前鋸筋だけを鍛えたいわけでもない。
さらに言えば、立甲は「出来ている」か「出来ていない」かの二択ではなく、前鋸筋をはじめとした身体機能がいかに上手く使えるか、その質を高めていくものである。
「上手く使える」ためには、柔軟性も必要だし、筋力も必要だし、それらをコントロールする力も必要。しかも1つの部位でのコントロールだけでなく、複数の部位で同時にコントロールする力も必要だ。
「立甲」一つとっても、考えるべき要素は無限大である。
 
ぜひ、様々な角度から考察を深めていただきたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年07月15日

色んなトレーナーがいて良い

文:岩渕翔一

スポーツトレーナーというのは、選手やチームのパフォーマンス向上を目的にトレーニング指導や身体のケアを行うことが仕事です。
当然トレーニングをするのも身体のケアをするのも選手ですが、
・どのようなトレーニングをどれだけするのか
・身体をどう評価しどのようなケアをするのか
というのは、トレーナーがいるチームであればそれはトレーナーの判断になります。
トレーナーは努力の方向性を提示する。努力するのは選手の責任であるということを我々は度々伝えています。一方で、トレーニングそのものの「手本力」を高く求めることに代表されるように、トレーナー自身が努力することも重視しています。
これ自体は至極当たり前のことで、別にJARTAでなくても仕事に対する責任がある者であれば向き合って努力しているかと思います。
 
今回は、そんな当たり前のことに加えてトレーナーに必要なもう1つの大切なことについて考えてみようと思います。
 

トレーナーも選手もみな人間である

 
当たり前のことばかり言いますが、選手もトレーナーも指導者も人間です。人間ですので当然感情があり、好き嫌いがあり、元気な時も元気じゃない時もあると思います。
トレーナーや選手として努力を継続することは当たり前だということを前提に考えてみると、人間なのだから波があることも当たり前だと思うのです。私は、元来いい加減で不真面目ですぐ妥協するし感情的になるどうしようもない人間です。なので、「真面目一辺倒正論一辺倒」の人が苦手で、「それはそうなのかもしれないけどそんな風にはいかないから臨機応変にやればいいやん!」とすぐに思ってしまいます。
チームトレーナーをしていると、必ずと言っていいほど「不真面目だけど上手い選手」がいます。そしてそういう選手はチームのピンチに活躍することが多いように感じることも多くあります。
 
・いつも真面目で
・完璧で
・妥協することなく
・必要なことは必ずこなす
・不摂生などもってのほか
ぐうの音が出ないほど完璧で穴がない人間に「不真面目だけど上手い選手」をうまく指導できるでしょうか?私の経験ではなかなか難しくて、そういった選手は先に挙げたような「人間臭さ」を前面に出し、まずは人と人であるという大前提での関わりが大切であるように思います。
そして人が人に関わる仕事である以上、今後はこの人間臭さが大切になってくるのではないかと感じています。
 

色んなトレーナーがいて良い

 
自分に甘くて、いつも妥協して、どうしようもない自分。そんな人間臭さを持ったトレーナーだからこそ救える選手がいると思います。側から見るといつも完璧で凄いあの人も実は同じように、自分の甘さを常に感じているということは少なくありません。
そういう人間臭さを持って時に厳しく時に優しく。やるべきことをやるというのは何を生業にしても変わりません。スポーツにもカテゴリーがあり、世代があり、レベルもそれぞれです。緊張感のある空気が必要な現場もあれば、和やかな空気が必要な現場もあります。色んな選手がいて、色んな指導者がいて、色んな保護者がいます。
だから、色んなトレーナーがいて良いです。「自分」という人間を肯定してその上で前に進む。そんな人間らしさがもう1つの大切なことではないかと思います。
 
 
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8月31日(土)福岡10:00〜16:00
 

2019年07月14日

「勝利の再現性」

文:米沢康平

トレーナーとしてチームに関わっている以上、目の前の試合や大会に勝利した時には嬉しいはずです。逆に負けてしまった時は、悔しさとともになぜ負けてしまったのかを分析することも多いかと思います。今回は勝利した時の分析を次の試合や大会に活かせるための取り組み方の一例をご紹介します。
 
『勝利を分析する』
 
私自身も岩手県の盛岡大学附属高校野球部に関わり、甲子園帯同を経験しました。初めて帯同した甲子園ではベスト16。同校史上初となるベスト16という結果に選手、スタッフの方々と喜びを分かち合いました。しかし、ベスト8をかけた試合で負けてしまったという悔しさは大きく、なぜ負けてしまったのか必死になって分析しました。その時に一つ気付いたのは、それまでは勝利した試合の分析を細かく行っていなかったということです。
 
実際、負けた試合後には選手と細かい自己分析を聞くことができ、次回の修正点を共に導き出すことをしていましたが、勝利した試合では「調子が良かった」「身体が軽かった」などの抽象的な表現しか出てこず、具体的な内容まで掘り下げることをしていませんでした。
 
勝利することはとても嬉しいことなのですが、トレーナーとして喜んでばかりではいられません。「なぜ」勝利することができたのか、「なぜ」その大事な試合で最高のパフォーマンスを出すことができたのか。これらの要因を掘り下げていくことでチームとして成長できると思いますし、この作業をいかに大事にできるかが成長の鍵となってくると思います。負けた時に振り返って敗因を分析することは多くのチームがやっています。次に活かすために、他のチームに差をつけるためにも大事です。しかし、勝利した際にそれを偶然のものにしないために、勝因を分析するという作業も大切なことです。
 
いわゆる「調子が良い」状態はなぜ作られているのか、試合で結果を残せたのはなぜなのかなど、日頃からポジティブな要素にも目を向けながら分析を繰り返しました。
 
翌年の甲子園にも帯同できたため、前大会で分析できたことを元にチャレンジすることができました。結果としてはベスト8。もちろん喜びは大いにありましたが、心の中には「まだやれることがあったのでは?もっと結果を出すためには何が必要だったのか?」などの悔しさもあり、当然容易に勝てるような大会ではないと改めて実感させられました。
 
単純作業ではないこの地道な分析を繰り返すことが勝利の確率をより高いものにすると思います。
 

 
『分析方法の一例』

最後に私自身が取り組んだ分析の内容をいくつか紹介します。

 

  • ウォーミングアップしている時の選手自身の状態

試合で活躍できた選手は、「今日は朝から体が軽くて調子が良かったです」ということが多いです。
そのため、ウォーミングアップに入る前に選手自身の評価と私からの客観的な評価を統合したうえで、どこに重きを置いてウォーミングアップをしていけば良いか決めました。
また、そのやり取りを繰り返していき、選手自身がセルフチェックでその日のコンディションを把握し、自分に足りない要素をピックアップできるまでにしました。
 

  • 調子が良い日の理由探し

これに関しては多くの要因が考えられます。就寝時間や食事内容、ウエイトトレーニングの負荷量の増減、練習後の自主練習の内容(守備練習を増やした、など)。
また、好きな音楽を聴くと良いのか、試合の具体的なワンシーンをイメージした後は調子が上がるのか、それともその逆なのか……etc
突き詰めてもキリがないくらいの要因があります。こうした分析を繰り返し、少しでも「調子が良い」状態に近づいていくようにしていきます。
逆に、調子が良いことと明らかに因果関係がない場合には、気にしすぎないよう促す場合もあります。
 
このように日常生活のことから自分の練習に至るまで、様々な場面に調子を上げる要素は隠されています。
 
勝利を再現性の高いものにするためにも取り組んでみてはいかがでしょうか。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2019年07月11日

選手であり続けるからこそ見えてくるもの

文:山内大士

この記事を読まれている方の多くは、選手に貢献できる自分になるために、日々何らかの取り組みをされていることと思います。
 
今回は、その中でも私自身が最も大切にしていることをご紹介させていただきます。
 
 
 
現在整形外科クリニックに勤務しており、特に投球障害の選手を担当する機会に恵まれています。
 
私は小学校で野球を始め、その後公立の高校・大学で硬式野球をしてきて、今もクラブチームで硬式野球をしています。
 

学生時代は練習試合にも滅多に出られない実力で、さらに肩・肘・腰などの慢性障害を常にかかえていました。そのことがきっかけで理学療法士・スポーツトレーナーという道を選びました。
 
選手と関わる中で、一番の原動力となっているのは自らの苦い経験です。
 
うまくなりたい
痛みを治してたくさん練習したい
でも、何をやってもうまくいかない
もう自分には無理なんだろうか
 
過去の自分と同じような想いを抱えた選手が、関わりの中で希望を取り戻し明るい表情を見せてくれたとき。それが、この仕事のやりがいを最も感じる瞬間です。
 
私が最も大切にしていることは、選手時代に抱いていた気持ちを忘れず、また当時克服できなかった問題と向き合い続けるために、現役で真剣に野球に取り組み続けることです。
 
 
 

自分という選手と向き合い、分析し続けて得られるもの

 
大学院時代にJARTAと出会い、今まで知らなかった新たな概念やトレーニング方法を知り、夢中になって実践しました。
 
その成果もあり、学生時代は練習でも達成することのできなかった、
「ホームランを打つ」
という目標を達成することができました。
 
肩の強さ・足の速さといった、いわゆるフィジカル的な要素は、28歳となる今も成長し続けています。
 
硬式野球部だと話すことが恥ずかしくなるほどに運動能力が低く、試合は見るものであり、惨めな気分になることばかりでしたが、大人になって初めて「野球をしている」という実感を得ることができました。
 
こうした経験は、選手と関わる場面においても間違いなく活きています。
 
試合に出て活躍することは誰からも期待されておらず、自分自身でも諦めてしまっているようないわゆるセンスのない選手。
そんな選手でも可能性があることを、建前なしの本音として伝えることができます。
 
歯車が狂い、以前はできていたことができなくなってしまった選手。
誰よりもチグハグだった歯車を一から作り直してきた自分だからこそ、どこで狂ってしまいどう修正すれば良いのか伝えられることがあります。

 
 
もちろん、ただ経験するだけでは足りません。成功も失敗も、どういう要素が作用してそうなったのかを徹底的に分析し続けるのです。
自分以外の選手と関わる中でもそれは可能ですが、やはり自分以外の対象に失敗はさせたくありません。好きな時に好きなだけ向き合うことができ、周囲から長所や短所を指摘してもらえる存在は、自分以上には他にありません。ましてや自分以上に失敗が許される存在も他にはありません。
対象が自分であれば大好きな野球を好きなだけでき、専門家としての検証作業もある意味楽しみながら繰り返し行えます。
 
選手としての日々の取り組み・身体機能・精神状態と試合でのパフォーマンスの関係性、それらの関係性を分析して指導するトレーナーとしての到達度。
 
これらのことを、残酷なまでにはっきりと自覚させてくれるのです。
 
 
 

セラピスト・スポーツトレーナーを志したきっかけはなんですか?

 
今までに聞いたことのあるこの質問の答えで、一番多かったのは
 
選手として怪我を経験したこと
 
です。
 
怪我に悩む選手の助けになりたい
パフォーマンスアップを実現させられるような、努力の方向性を提示したい
 
こうした想いの根底に、自らの苦い経験があるという方は非常に多いのではないでしょうか?
 
現役時代に知りたかった
 
仲間達からよく聞く言葉です。
 
しかし、今からでも遅くはありません。
 
今一度、自分という選手と向き合い、自身のパフォーマンスを見直す機会を作ってみてはいかがでしょうか。
 
選手時代に越えられなかった壁を乗り越えられた時、トレーナーとしてもきっと前に進むことができているはずです。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年07月07日

筋力トレーニングと同時に”認識力”を

文:仲田享平

スポーツのトレーニングにおいて、筋力トレーニングは以前から重要視されており、実際にプロスポーツ選手がトレーニングを行っている映像を私自身、何度もメディアを通して目にしたことがあります。
 
私自身も高校時代は硬式野球部に所属し筋力トレーニングを行っていた経験がありますし、現在サポートしている高校生の男子バレーボール部、ボート部の選手たちも筋力トレーニングに取り組んでいるという話を耳にします。
 
現在のトレーニングのひとつとして浸透している筋力トレーニングですが、筋力トレーニングをすべきか否かという議論を指導者の方とすることもありますので、私の考えを述べていきます。
 
まず、「筋力トレーニング」という言葉の定義づけを行ってから話を進めていきます。
 
今回の話で論ずる筋力トレーニングですが、主に重量に対する負荷を身体に与えて、それに抗する動きを反復し筋の出力や持久力の向上、筋肥大を目的とするものとします。
 
結論から述べると、筋力トレーニングは必要であると私は考えます。
 
しかし、起こりうる有害事象を想定しながら行うことが前提条件となります。
 
具体的な事例を用いて説明していきます。
 
高校生男子バレーボール部の練習の中に腕立て伏せを行っている場面がありました。
 
指導者の方に話を聞くと、「ブロックを強化したい」という目的で行っているとのことでした。
 
実際に選手たちが腕立て伏せを行っている姿をみると、脇は開き、肩甲骨は挙上し、腰椎が前弯状態で行っている姿が目立ちました。
 
このケースで想定される有害事象ですが、まず「ブロックの強化」という目的から「腕立て伏せの回数をこなす」ことが選手たちの目的となってしまっているように感じました。
 
目的が「腕立て伏せの回数をこなすこと」に変化してしまうと、フォームが崩れ代償動作を伴ってでも動作を遂行しようとするため、負担が一部分へ偏りオーバーユースを招く可能性があります。
 
また、脳の運動学習機能により代償動作での運動を脳が学習してしまうことで癖や力みを生み出し、結果的にパフォーマンスを低下させる恐れがあります。
 
 
実際このケースにおいても肩甲骨の挙上や、腰椎の前弯が代償動作としてみられていましたが、肩甲骨が挙上してしまうと肩の可動域の低下や筋発揮を低下させます。
また、腰椎の前弯が強まると上肢運動の土台となる体幹の安定性が低下し、結果的に上肢機能の低下に繋がります。
 
以上のことから、ブロックを強化するという目的で行っていたトレーニングが結果としてパフォーマンスを低下させ、障害を引き起こす可能性が想定されます。
 
これらの有害事象に対して対策を講じながら筋力トレーニングを進めていく必要がありますが、その中で重要となってくるものが「認識力」であると考えます。
 
パフォーマンスはフィジカル、認識力、スキルの3つの構成要素から成り立っており、3つの要素の関係性を強めていくことがパフォーマンスアップに繋がります。
JARTA公式HPより
※内的認識力とは、自分の状態がどうなっているかということを認識する能力のことです。
例えば今どこに重心位置があるのか、どこに力が入っているのかということが認識できる能力のことです。
※外的認識力とは、相手と自分の位置関係であったり、ゴールまでの距離や方向、ボールの重さや道具の重心位置を認識する能力のことです。
 
今回のケースのように闇雲に腕立て伏せを行うことはフィジカルの要素のみをトレーニングすることとなり、関係性を強めることに繋がりません。
 
そこで、認識力を同時に用いることで、どこの筋肉に収縮が入っているのか、脇が開きすぎて肩甲骨が挙上していないかという部分を認識しながら行うことで、オーバーユースや代償動作の学習を防ぐことにもなり、効率よくパフォーマンスアップに取り組むことができます。
 

 
筋力トレーニングはフィジカルの要素を高めるためには有効なトレーニングであると考えられますが、実際のスポーツ場面において、筋力だけを求められる場面は少なく、筋力を発揮しながら同時に自分の重心やボール、相手選手など同時に様々な要素に意識を向けることが必要となります。
 
筋力を発揮することと同時に認識力やスキルも発揮できなければ良いパフォーマンスは生まれません。
 
この関係性を理解していれば、筋力トレーニングの負荷において重量だけではなく意識の数を増やすこともトレーニング強度を上げる方法となります。
 
よって、筋力トレーニングはパフォーマンスアップに必要な要素であり、取り組むべきではありますが、有害事象を想定し、それを予防する認識力の要素を同時に取り入れながら行うことでトレーニングの効果を高めることが可能であると考えます。
 
筋力トレーニングのネガティブな部分だけを切り取ってやるやらないの議論をするのではなく、パフォーマンスアップに必要な筋力トレーニングを”認識力”というキーワードを元に”やり方”をこういった機会に再考してもらえればと思いお伝えさせていただきました。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年07月04日

あらゆる競技に必要な頭部のコントロール

文:伊東尚孝

 
様々な競技で重要なファクターとなっているもの。
それが「重心操作」です。
 
高重心が有利なサッカーやバスケット、低重心が有利になる柔道や相撲など、競技の特性によっても重心のコントロールは様々です。
しかし高重心だけ、低重心だけを取得するのではなく、それぞれを使い分けることが重要になります。
 
 
そこで注目したい部位が「頭部」です。
頭部は言うまでもなく身体の頂点に位置し、身体の中で最も高い位置エネルギーを保持しています。
位置エネルギーを急速に落下させることで爆発的な運動エネルギーに変換することができ、強いパワーやキレのある動きを発揮することができます。
 
 
 
 
ここで、皆さんは日頃から頭の重量を感じることはありますか?
 
ヒトの頭の重量は、体重のおよそ8〜10%と言われ平均すると5〜6kg程度といわれています。
 
5kgのボーリング玉が、身体の頂点にずっとあるようなイメージです。
言われてみれば、想像よりも重たい印象があります。
 
 
しかし、プレー中はもちろん日常生活でも頭が重たいと感じることは少ないと思います。
(質量的な重さであり、重だるさなどは省きます。)
 
むしろ、何気なくそれだけの重量を“乗せている”ことが、当たり前になっているのではないでしょうか。
 
当たり前だからこそ、そこにパフォーマンスアップのための伸び代が隠されているかもしれません。
 
今回はそんな「当たり前」を見直し、頭部をコントロールするための基盤となる要素を解説していきます。
 
 
 

頭部のコントロールがもたらす効果

 
そもそも頭部をコントロールすることで得られる効果とは一体何なのかを、先に解説していきます。
 
冒頭でも述べたように、重心操作をする上で頭部のコントロールは重要ですが、それ以外の効果を以下に述べていきます。
 

  • 目線(視野)の確保

ほぼ全ての競技に必要不可欠なのが、目線や視野の確保です。
コンタクトスポーツでは、相手との接触により頭の位置がめまぐるしく変化します。
その状況でも味方や相手の位置、コートの状況、ボールの位置などを目線(視覚)によって把握します。
頭部をコントロールすることで両目はできる限り地面と平行な位置関係となり、状況判断を素早く行えます。
コンタクトスポーツ以外でも、野球やバレー、卓球といったボールに対する情報処理を視覚にて行う必要があります。眼球運動と頭部(頭頚部)にも密接な関係があるため、頭部のコントロールは重要となります。
 

  • 平衡感覚の確保

頭部には三半規管という、平衡感覚やバランスを担う器官があります。
競技によって様々ですが、多様な動きを求められる動作であれば平衡感覚は必要不可欠です。頭部の傾きによって身体をどのように修正すべきかを判断する必要があります。
 

  • 呼吸

頭部には呼吸筋である胸鎖乳突筋が付着しています。特に有酸素系の競技であれば、努力吸気筋である胸鎖乳突筋は過活動になりやすいです。
頭部をコントロールすることにより、運動量が増加しても呼吸がしやすくなります。
また気道の向きによっても呼吸の質が変化するため、頭部(頭頚部)の位置関係は重要となります。
 
 
これらのように頭部とスポーツはかなり密接な関係にあり、上記のように様々な効果が期待できます。
 
では、これらの効果を効率良く発揮するためにはどうすればいいかを以下に述べていきます。
 
 
 

頭部と腕を支える筋

 
まず、頭部(頭頚部)の解剖学をおさらいします。
頭部に付着する筋の中で最も強い力を発揮する筋は、僧帽筋です。
 

 
試しに、両肩を思いっきり引き上げた状態で、他の人に両肩を引き下げてもらってください。
おそらく肩はビクともせずに引き上がった状態を保持できると思います。
(※急激に行うと頚部を痛める可能性があるため、力加減に注意してください。)
 
僧帽筋はそれだけ強い出力を発揮できます。
 
その理由は、僧帽筋が頭部と腕(肩甲骨)を支えている筋だからです。
 
頭部の位置関係を見てもわかるように、後頭骨に付着する僧帽筋の負担は大きいことが想像できます。
腕は肩甲上腕関節により肩甲骨とつながり、肩甲骨は僧帽筋に釣り下がっている状態にあります。
(もちろん他にも様々な筋が関与しています。)
両腕の重量は体重の約10%であるため、体重が60kgであれば両腕で6kg程度ですので、頭部と合わせると10kg以上あります。
 
 

 
このことから、僧帽筋は頭部だけでなく肩甲骨を支えるための重要な存在であることがわかります。
 
 

支えるとコントロールの違い

 
頭部と腕(肩甲骨)を支えるために必要な僧帽筋ですが、競技においてその出力は阻害因子になる恐れがあります。
 
なぜなら僧帽筋は、頭頚部のコントロールには不向きだからです。
 
 
試しに、先ほどと同様に両肩を思いっきり引き上げた状態で頭頚部を動かしてみてください。
脱力している時の方が動きやすいことは明らかだと思います。
 
つまり頭部のコントロールには、僧帽筋をはじめとする頭頚部筋の脱力が必要です。
 
トップ選手の頭部を見ると首が長いように見えリラックスしており、急加速するフェーズでも目線はほぼ地面と平行な位置関係になっています。
C.ロナウドがヘディングする時には、肩甲骨がズルッと下がっていることで頭部をコントロールし正確なヘディングシュートを放っています。
(検索するとすぐに動画が出てくると思うので、ぜひ観てみてください。)
 
 
また、僧帽筋の作用は肩甲骨の挙上・内転であり、ハイパフォーマンスに必要な立甲とは真逆の作用となります。
(立甲は獲得できて終わりではなく、いかにパフォーマンスにつなげることができるかが重要です。→立甲を再考する
 
 
「肩の力を抜け!」「リラックスして!」
このような声かけをしたこと、されたことがあると思いますが、
この肩の力みや肩をすくめる姿勢(僧帽筋の過活動)が、冒頭で述べた【頭部のコントロールがもたらす効果】が失われることを、我々は無意識に体感しているのです。
 
 
つまり、頭部をコントロールするための基盤には、頭部と肩甲骨の関係性が関与しているといえます。
 
 
 

頚部Tレフストレッチ

 
僧帽筋を含めた頭頚部筋は、常に10kg以上の“重り”を支えていることになります。
頭部をコントロールしやすい環境にするためには、それらの筋の緊張を定期的にゆるめる必要があります。
 
今回紹介する頚部Tレフストレッチはセルフでも行うことができ、僧帽筋以外の筋にも一度にアプローチすることが可能です。
 

 
 
 

まとめ

 
いかがでしょうか。
普段何気なく“乗っている”頭部ですが、パフォーマンスアップに必要な要素がたくさんあります。
頭部のコントロールには肩甲骨との関係性が重要であると述べましたが、さらに深掘りしていけば、胸郭の可動性や脊柱(背骨)の柔軟性、それに伴う自律神経系の調整など、挙げ出せばきりがありません。
 
また日常的な頭頚部筋への負担は避けられず、完全になくすことは不可能です。
しかし上記で紹介したTレフストレッチを行うこと以外にも、
負担を減らす「行動」はできるはずです。
 
例えば、スマホを見る姿勢。
この記事を読んでいる方のほとんどが、スマホを使用していると思います。
 
 
今、どのような姿勢でご覧になっているでしょうか?
 
 
今一度、頭部のコントロールを阻害している生活習慣(ルーティン)を見直してみてはいかがでしょうか。
ルーティンがもたらす3つの効果
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年07月01日

革新的なトレーニング理論とは

文:岩渕翔一

どんな世界でも、革新的なだとか、新しいとか、これまでにないとか、そういった類の理論やコンテンツを目にすることがある。
 
トレーニング理論もそうで、色々な手段や方法が溢れているのが現状で、それは現在進行形で増えている。果たしてこれまでの常識や方法を超越、あるいは覆すような、真の意味で革新的なトレーニング理論などあるのだろうか。
 

決して抗えない法則の上に成り立つのが人の動き

 
人間が地球上に存在する以上、重力という抗えない物理法則の中で生きることになり、人間という生物の構成もまた決まった構成になっている。我々は決まった条件の中で決まった条件の身体を使い、パフォーマンスやトレーニングをする。
 
私が小学生の時の話である。宇宙人がいるかいないのかの話を友達や先生としている時に誰かが、
「宇宙や他の惑星には酸素がないし食料がないから生き物は存在できない」
と言った。私はそれに対し、
「いや地球上の生物は酸素がないと生きることができないけど、宇宙には窒素や二酸化炭素をエネルギー源にして生きることができる生物がいるかもしれないよ」
 
と考えたのを今でも鮮明に覚えている。確かに可能性としては0ではないのかもしれないが、化学や生物を中学高校で学び、理学療法士養成校で生理学や解剖学を学んだ今、非現実的な考えであったなと感じることはいうまでもない。
 
話が逸れたが、我々が存在する空間や我々自身は、抗えない法則や成り立ちの上で存在できる。人は血液があるから生きることができるし、重力があるから力という概念がある。
そういった中で重要なのは、この無数にあるといっていい法則や成り立ち、条件を知るということ。つまり、私が度々口にする基礎が大切だということだ。
 
色々な概念やトレーニング理論や方法があるが、中身を見てみると、
・脊柱の柔軟性や動きが重要であること
・仙腸関節の機能が重要であること
・大腰筋やハムストリングスが重要な筋であること
・肩甲骨や鎖骨の機能が重要であること
・インナーユニットが重要であること
 
これらはどのトレーニング理論をみても共通することで、はっきりいって大した差はない。以前、
筋力トレーニングVS身体操作系トレーニング。優秀なのはどっちだ!??
という記事を書いたが、このような一見相反する理論であっても中身をみれば実は主張していることや狙っている効果は似たり寄ったりだ。そしてそれは前述した、基礎がしっかりあるトレーナーやトレーニング理論であればあるほど似通っている。根本や根底にあるものは揺るぎないのだ。
では、どのトレーニング理論や方法を選択しても変わりないのかといえばそういうことでもない。ここが選択をする上で非常に重要なポイントだ。
 

異なるのは理論ではなくフィルターである

ある選手はAというトレーニングを行い効果が出ている。一方で別の選手はBというトレーニングをして効果が出ている。AというトレーニングとBというトレーニングは一見相反する理論なのだが、中身をみればあまり変わらない。であるならば、この2人の選手がしているトレーニングを入れ替えても同じような効果が出るのか。
 
答えは否。
 
というより分からないというのが正直なところだ。なぜ分からないのか。それはそのトレーニングをやると選択するまでの過程に意味があるからだ。
 
人にはそれぞれのフィルターがある。ある人のフィルターには引っ掛かる理論やメッセージであっても別の人には全く引っ掛らずに素通りする。
誰が見ても美しくて性格も良い女性に出会った男、皆がその女性に恋をするかと言われればそんなことはないだろう。そんなことは当たり前のことだ。それはその人の歴史や背景、気分や感情などあらゆるもので構成されたフィルターを通るからだ。どのような理論やメッセージが引っ掛かるのかは正直、当の本人も分からないだろう。人は自分のフィルターに引っ掛かったものにしか真の意味で向き合えない。人を愛そうと思っても愛せないし、愛してはいけないと思っても止めることができないことと同じ。良いか悪いかではないのだ。
 
2人の選手がしているトレーニングを入れ替えて、同じような効果が出るのか分からないのはこういった理由だ。
前提として専門家としての質を担保できるのであれば(できることが当たり前なのではあるが)やるべきことはメッセージを出し続けることに尽きる。
必要なものは真新しい理論でも奇抜な方法でもない。自己主張の強い自称オリジナル理論でもない。確かな基礎と論理に裏付けられた正しい理論と手段だ。
自分を磨き、常に学び続け、人らしく人としての愛情や欲を持ち、その土台の上で発信し続ける。その時々の全力で発信し続けるのだ。それがある時、誰かのフィルターに掛かり、またある時に別の誰かのフィルターに掛かる。そこから繋がるそれは、誰かという唯一にとって革新的であるはずだ。
 

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下半身を使うの正体
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【アスリート向け】アスリートにトレーニングが必要な理由
 
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2019年06月30日

大事な試合だからこそパフォーマンスより優先される2つのモノ

文:鳴海裕平

 
気温も30度を超える季節がやってきて、多くの競技で試合のシーズンが始まっています。
 
選手に今までトレーニングをやってきた成果を発揮し、
試合で良い結果を出してもらいたいと、
共にやってきたトレーナーはそう思っているでしょう。
 
トレーナーは選手に最良のパフォーマンスを提供出来るよう、
トレーニングを含めたサポートをしていきます。
ではトレーナーはパフォーマンスのことだけを考えて
選手と共に試合にのぞめば良いのでしょうか?
 
いいえ、違います。
 
実際にはそれよりも大事なモノが“2つ”あります。
では試合に臨むにあたり、トレーナーがパフォーマンスより
大事にするべきモノとは一体何なのでしょうか?
 

第一に大事なモノは選手の【命】


 
仮定の話をしましょう。
あなたが普段から診ている選手が試合に出ていて、試合中に倒れたとします。
意識がなく、呼吸も止まり、心停止している。
そうなると救命措置が始まり、応援や救急車を要請し、AEDを持ってくる。
 
そのとき、あなたは会場のどこにAEDがあるか把握していますか?
そのとき、把握している自分を想像できますか?
 
選手には『結果を出せるなら死んでもかまわない』と思って
試合に臨む方もいらっしゃいますが、
トレーナーが『結果をだせるなら選手が死んでもかまわない』と
思っていてはいけません。
 
私自身、遠征先で練習中に急に倒れた選手に遭遇したことがあり、
救命救急措置の際にAEDの置いてある場所を周囲にいた人に指示しました。
そのときは事前に把握していて本当に良かったと心から思いました。
 
『AEDを持ってきて下さい。でも私はどこにAEDがあるのか知りません。
 あなた探してもってきて下さい。』などという命がかかった緊急時に、
医療従事者として恥ずかしい行為をせずにすみました。
実際、探してもらっている時間すら惜しいのですから。
 
パフォーマンスが大事なのは当たり前として、
緊急時のシミュレーションは必ずするべきです。
 
もちろんテーピングやコールドスプレーなど
処置に必要なメディカルバッグを事前に用意することもそうですが、
試合の会場についたら最低限AEDがどこにあるのかは把握しておきましょう。
*もちろん事前に会場のホームページなどで確認できれば、なお良いでしょう。
 
当たり前のことですが命よりも大事な事はありません。
では命の次に大事なモノは何でしょうか?
 

第二に大事なモノは選手生命

接触時の事故による怪我による選手生命の危機もそうですが、
私がここで言いたいのは“薬物”です。

 
市町村レベルの競技ではドーピングなどの検査は基本的にはありませんが、
国内大会でも国体になると検査がありますし、
国際試合になるとない方がおかしいと言っていいほど検査があります。
 
薬物を使用した選手はどんなに良い結果を残したとしても、
その称号を剥奪され、個人の名誉を深く貶めることになりますし、
社会的にも多くの弊害や迫害を受けます。
もちろん禁止薬物は使用しないよう厳重に選手に指導しておく必要はありますが、
問題は“禁止薬物を他者から混入させられる”場合です。
 
選手を貶めようとする他者が存在する場合も想定しなければいけません。
選手が頑張って良い結果を出したにもかかわらず、
他者からの行為によって称号も名誉も傷つけられ
選手の心は深く傷つき、失意のまま引退するケースもあります。
 
特に禁止薬物を他者から混入させられた場合、
身の潔白を証明することは大変困難です。
 
2018年1月に起きたカヌー・スプリント競技では他者への禁止薬物の混入が起こり、
入れられた選手はドーピング検査陽性で資格停止処分となりました。
この後、加害者が自白したことで資格停止処分は取り消されましたが、
このように身の潔白を晴らせるケースというのはほとんどありません。
 
私は大きい大会になるほど、選手には
一度開封したのち、目を離したドリンクボトルからは決して水分補給しない
ということを伝えさせて頂いています。
 
薬物は選手が使うことに注意することはもちろんですが、それ以上に
“誰かに使われる”ことを念頭に置いて考えるべきです。
“きっと大丈夫”という安易な考えが選手生命にとって致命傷になる場合があるからです。
 

トレーナーは二つの命を守る。

選手自身の命と選手生命を両方守らなければいけません。
もちろんトレーナーだけは難しい場合もありますので、
監督やコーチ、医師などと連携して選手を守ることが必要です。
 
試合が多くなるシーズンでどうしても選手のみならず
チーム全体でも試合に目が向きがちですが、
30度を超える時期では熱中症を中心に危険な状況に陥るケースは多くあります。
 
“結果が全て、全力のパフォーマンスを発揮すれば良いだけ”
と考えるのは選手に任せましょう。
 
トレーナーは結果だけでなく、パフォーマンスだけでなく、
選手が不幸になることがないよう、様々なことに気を遣いましょう。
 
全てはパフォーマンスのために、
ですがパフォーマンスに囚われることがありませんように。
 
最後までお読み頂きありがとうございました。

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2019年06月27日

ケアを入念にするから慢性化する痛みもある

文:赤山僚輔

 
スポーツを継続的に行なっている人にとって、日頃の身体のケアの重要性は言うまでもないだろう。
 
私自身も選手たちにセルフケアを丁寧に実施するように指導することは、まだまだある。
 
しかしこれが慢性的な症状となっている場合や、ある一部分の疲労の発生しやすさ、筋痙攣等が発生しやすい場合の対応には注意が必要だ。
 
 
 

痛みはサインであり症状の原因とは限らない

 
これはかつて女子の実業団バスケチームのトレーナーをしていた時の出来事だ。
 
試合の終盤でほぼ毎試合ふくらはぎの筋痙攣をおこしてしまい、プレイ続行が困難となり、その後痛みが発生する選手を経験した。
 
最初は次の試合に向けて同じような症状が発生しないように、水分補給の仕方やふくらはぎの硬さがしっかりと、とれた状態でのぞめるようにコンディショニングや指導をしていた。
 
真面目な選手でふくらはぎの硬さはチームでも一番緩んでいると言っても過言ではないくらいの状態にすぐ変化した。
 
 
“しかし筋痙攣は改善しなかった”
 
 
それどころか若干攣りやすくなったような印象すらある。
 
患部から痛みが発生したり、筋痙攣が起こるということは間違いなく何かのサインだ。
 
 
しかしそれを原因を探求せずに、あたかもその現象自体が症状の原因と断定し患部を徹底的にケアすることは選手のパフォーマンスを考えるとかなりリスクがある。
 
 

痛めたところを使いやすくしてどうする

なぜ患部を徹底的にケアすると症状が悪化したり、慢性化するかは慢性障害に関わりスポーツ現場に立つ人であれば少し考えればわかることだと思う。
 
そもそもふくらはぎが攣るということは、そこをよく使っているということ。
 
そしてその部位をしっかり緩めたり、ケアを徹底的に実施すると同部位はもっと使いやすくなる。

 
ましてや患部を意識することが多くなることから、意識しやすくなることが想定される。
 
例えばジャンプという動作ひとつとってみても、ふくらはぎを使うような足首の動きだけでなく、以下の関節や筋肉への協同的な作用が必要となる。
 
・股関節の屈伸運動
・大臀筋、ハムストリングの筋力
・体幹の伸展運動
・脊柱起立筋の筋力
・腕振り(上肢の機能)
・足部の機能
他にも細かくわけるとまだまだあるが、要するに一つの動作を反復する際に、一箇所へ負担がかかる事が患部の疲労や筋痙攣のひとつの原因なのだ。
 
その為、負担がかかっている部分をより使いやすくすることは、一時的に痛みを緩和する効果はあってもスポーツ動作やスポーツパフォーマンスにとって問題解決とはならないことが多い。
 
 

患部のサインを通して、現象の原因を探る

ではどうすれば、よいか。
 
これは思考としてはシンプルだが、実際に体現するには多くの工夫が必要となる。
 
結論としては、痛みというサインと通してそこが余計に使わされてしまった要因を徹底的に探る事。
 
これにつきる。
 
その探り方は
 
・運動連鎖や動作パターンからの推察
・柔らかい筋肉は使いやすい、よく似た働きをする他の筋の中から硬さを探る
・屈伸や回旋など同じ方向へ動くはずの他関節の硬さを探る
・ケアの重点具合やそれに対して動作で必要な部位のケアが不足する部分
・過度に意識をしてしまう要因の列挙と取捨選択(必要以上の意識が働かないように)
 
読んでみればすごく当たり前なことばかりですが、多くの選手のこれまでの痛みの慢性化やケアに対する考え方を聞いている限り、まだまだサインを結果としてとらえてその場しのぎの指導になっているセラピスト・トレーナーが多いように感じる。
 
特に現場では一時的に痛みを軽減させても、翌日の試合でベストパフォーマンスが発揮できなければ意味をなさない。
 
その為に我々のようなスポーツトレーナーが、選手たちにどのようなことを啓蒙し伝えていくべきかはこのような機会に再考していければと思う。
 
 
これはこのように伝えつつ、自分に対する戒めでもある。
 
もう一度言う、“多くのスポーツにおける慢性障害による痛みはサインであり原因ではない。”
 
 
慢性障害がなくなり、怪我で引退する選手がゼロになる未来へ。
 
まだまだ我々ができることは山のようにある。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年06月24日

150km/hのボールを投げるには「かためる」力が不可欠

文:岩渕翔一

 
速球を投げるには当然様々な身体機能、身体操作が必要です。
・柔軟性
・バランス
・筋力
・スピード
・動きのキレや再現性
etc
当然この他にも多くの要素が必要で、速球を投げるにはこれらの要素を同時に発揮する必要があります。ただ、これらの要素は投球という実際のパフォーマンスの中では同時に発揮する必要がありますが、トレーニングの優先順位では階層性があり段階的に取り組んでいく必要があります。
 
例えば、
「ゆるむ」と「かためる」は対極にあるものとして捉えられやすく、どちらが良いとか悪いとかいった議論を度々目にします。しかし実際は、「ゆるむ」こともできるし「かためる」こともできるといった身体操作が必要で、優位性のある関係にはありません。投球動作においては「ゆるんだ」身体を、最終的は思いっきり「かためる」ことでボールに大きな力を加えることができ、速球を投げることができます。
「ゆるむ」からこそ「かためる」ことができ、「かためる」ことができるから「ゆるむ」ことができる。その幅が大きければ大きいほど生み出せる力は強くなりますので、この幅を作ることがなにより大切です。
 

身体操作の階層

 
「スポーツパフォーマンスは全て身体操作である」
 
この点に関してはこちらの記事を読んでいただければその階層が分かると思います。
身体操作系トレーニングV S 筋力トレーニング 優秀なのはどっちだ!??
ただし、あるパフォーマンスを実現するために必要な要素をピックアップした際、その機能獲得には効率的に目標とするパフォーマンスを獲得するための優先順位があります。

 
まず獲得したいのは目標とするパフォーマンスを可能にするだけの可動性と柔軟性。これがない状態で他のことに取り組んでも必要な幅の中での身体操作にならないため非効率的です。まずは必要な幅(可動域)を作った上で、その幅を使いこなすためのバランスやスピードの強化を行う。
スピードは速くなればなるほどバランスを担保することが難しくなります。裏を返せばバランスを担保すればするほどスピードは発揮しづらくなるということです。この両立を強化し、必要な幅の中でバランスを保ったまま、最大限のスピードを有した動きを最終的に「かためる」ことで大きな出力(力)が生まれ、結果的に速球という形になります。
 

投球動作におけるかためる力

 
投球動作はシンプルにいうと並進運動からファーストスピン、セカンドスピンで生み出した力を、リリースの瞬間にボールに伝える身体操作パフォーマンスです。
並進運動に関してはこちらの記事をご覧ください。
投手の「タメ」の作り方には2つのパターンがある
 
ここではファーストスピンとセカンドスピン。つまりコッキング期における下半身のスピンと加速期における肩関節最大外旋位からの胸郭から指先までの肩関節を中心としたスピンについて考えていきます。
この回転動作で重要視しているのは「スライド」という身体操作です。回転動作ではなく、中枢が割れるような動きを指していますが、当然実際に身体が割れるわけではありません。身体の中枢部分から動き出すことでハイスピードとハイパワーを実現できるため必ず獲得したい動きです。
スライドとフック
 
ここからが本題なのですが、このスライドの動きは下半身から起こり、その動きが、
股関節→仙腸関節→脊柱下位から上位へ順に→胸郭→肩甲骨→肩関節→肘→手首〜指先
へと波及していきます。ここは実際の動きとしては一瞬ですが、少し細かくみてみると下半身から順にスライド動作が完了した部位は、かためることで土台として安定する必要があります。さらにそれだけでなく、スライド動作を行い急加速した身体をかためる力で急停止することで、その上にある部位が進行方向に向かって動く力を、末端に向けて段階的に蓄積させていくことができます。
ここで重要なのは「しなり」です。ムチを思い出してみて欲しいのですが、持ち手の部分は硬く太いと思います。それが末端になるにつれ、細く柔らかくなると思いますが、この構造がしなりを生み、末端での急加速に繋がります。投手に必要な運動構造はこれに近い構造が必要で、末端での急加速を得るには体幹部の「かためる力」が必要になります。

 
つまり、下半身から順に、
スライド(mobility)→かためる(stability)
というのを連動させることで筋の粘弾性を有効に発揮させることも相なり、強い力を生み出せるということです。
 
投球動作においては、可動性と柔軟性を有した身体をバランスとスピード(スライドの動き)を両立した身体操作を行い、最終的に一気に連動した、「かためる」身体操作を行うことで強い力をボールに加えることができ、球速が上がるということです。
 
「ゆるむ」ことと、「かたまる」こと。これらを両立することが球速アップの鍵になります。
 
全てはパフォーマンスのために。
 

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2019年06月20日

ストレッチはさらに奥まで


 

文:岡元祐樹

 
 
「ヒラメ筋を単独で痛めることがあるんだ」
 
そんな経験をしました。フットサルをしていたら、ふくらはぎに痛みが走ったのです。
 
膝関節を伸展したまま足関節を背屈しても痛みはない。膝関節を屈曲して足関節をさらに背屈させるとふくらはぎに痛みが生じる。
 
腓腹筋ではなくヒラメ筋を単独で痛めたことが推察されます。幸い走ったりできる程度の痛みだったので2~3日で回復しました。
 
日頃からトレーニングをし、運動前のウォーミングアップをしていても、このようなことは大なり小なり起きてしまいます。
 
なぜこのような痛みが生じてしまったのか?
何か見落としていることがあるのではないか?
 
よくよく考えると、素早い動き出しにヒラメ筋の機能が重要であること。そして今回の痛みは防ぐことができたものであることがわかりました。
 
 

ヒラメ筋、ストレッチしていますか?

 
一般的にふくらはぎと呼ばれる部位の筋肉は下腿三頭筋という筋肉です。この筋肉は腓腹筋(内側頭・外側頭)とヒラメ筋の3つの筋肉で構成されています。
 
この筋肉を運動で痛めた場合、「準備運動不足、ストレッチ不足」と言われてしまいます。そこで『アキレス腱伸ばし』と呼ばれる下腿三頭筋のストレッチが準備運動として広く普及しています。運動前に実施されている方も多いのではないでしょうか?

 
アキレス腱伸ばしのストレッチの多くは膝関節伸展位で行われることが多い印象があります。そういった手本が多く、その方が下腿三頭筋を伸長している感じが強いからではないかと思います。
 
しかしもうお気づきとは思いますが、これだと腓腹筋は伸長されていますが、ヒラメ筋はしっかりと伸長されていない可能性があります。
膝関節屈曲位で足関節を背屈し、ヒラメ筋もしっかり伸長した方が動きの質は向上します。しかも運動前ではなく、日常的に行っておくべきです。
 

※ヒラメ筋ストレッチの一例
 
なぜそこまでヒラメ筋にこだわるのか?
その理由は素早い動き出しに関係します。ヒラメ筋の硬さによる足関節の背屈制限が、前方への動き出しを邪魔するのです。
 
前方への動き出しは、重心の前方移動がスムーズに行わなければなりません。足関節の動きで言うと背屈運動がスムーズに行われる必要があります。
 
加えて、素早く動き出すためには重心の落下運動が伴います。直立位より重心位置が低くなっていくということです。
そのため足関節の背屈と同時に膝関節は屈曲していく状況になることが多くなります。その場合、足関節背屈の制限因子は腓腹筋よりヒラメ筋の方が相対的な比率が高まります。
 
足関節の背屈運動を制限する因子は様々ですが、選手自身でもケアしやすい下腿三頭筋の柔軟性はしっかり確保しておくべきです。
その中でもストレッチが不十分になりがちなヒラメ筋に目を向けることが、パフォーマンスアップに繋がるヒントになるかもしれません。
 
 

姿勢制御に関わるヒラメ筋

 
ヒラメ筋をストレッチする。
 
しかも日常的にストレッチを行っておく理由がもう1つあります。それはヒラメ筋が立位の姿勢制御に関わっている筋肉であるということです。
 
姿勢制御というのは、立っている状態を維持する、バランスを保つための機能が働いているということです。その際にヒラメ筋が収縮~弛緩を無意識的に調整し足関節で立位のバランスをとっています。
 
人によって立ち方や立つ頻度に差はあるものの、ヒラメ筋は知らず知らずのうちに使われることが多い筋肉であると言えます。
 
言い換えると気付かないうちに疲労が蓄積したり、硬くなってしまう可能性がある筋肉でもあります。
 
そうなると、競技前の準備運動だけで競技に必要なヒラメ筋の柔軟性を確保するのは困難であると言えます。日常のちょっとした空き時間にストレッチをしておく方が効果的です。
 
筆者は自身のトレーニングを重ねるにつれて、「自分は前方重心傾向だな」と感じるようになりました。
 
前方重心とは足裏で言うとつま先の方に体重がかかっている状態です。このことは姿勢制御のために下腿三頭筋を頻繁に使うことに繋がります。
つまり下腿三頭筋が硬くなりやすい状態ということです。
そのため、運動前には腓腹筋のストレッチは充分に行っているつもりでした。しかしヒラメ筋に関しては詰めが甘かったと言わざるを得ないでしょう。
 
その結果、ダッシュを繰り返すフットサルという競技中に、ヒラメ筋を痛めてしまったのではないかと推察しています。
重心落下を利用した動き出しはできてはいたが、そのためのヒラメ筋の機能が不十分だったために痛みが出てしまったということです。
 
 

習慣になっているならチャンス

 
柔軟性の話を中心に書いてきましたが、収縮力が必要ないと言っているのではありません。
 
ヒラメ筋も腓腹筋と同様にダッシュの最後の一蹴り、ジャンプへの関わり(跳ぶ時や着地時の収縮)、ブレーキとしての作用など強い収縮力が必要なタイミングがあります。
収縮力も高めつつ、必要な時は弛緩して関節の可動域を使えるという収縮と弛緩の幅を持たせることで、スポーツのパフォーマンスは向上に向かいます。
 
もうアキレス腱伸ばしが習慣になっている選手は比較的多いのではないでしょうか?
 
それなら比較的伸長感の強い腓腹筋のストレッチだけで満足せず、身体を動き出しやすくするためにヒラメ筋のストレッチは有効です。
 
ヒラメ筋は立っているだけで硬くなる要因を抱えています。だとすると、スポーツ選手にとって他者と差をつけるチャンスだとも言えます。
 
スポーツ選手として伸びるために、伸ばせるところは伸ばすようにしていきましょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年06月16日

練習前に選手が行うべき準備とは

文:志田伊史

私は「αプラス」という小学生向けかけっこ教室を主宰しています。当教室では、かけっこ練習開始前の時間を重要視しています。
 
これが練習開始10分前の状態です。まだ練習開始前ですが、個々に集まりそれぞれが自分のタイミングでストレッチを行っています。
 

 
サムネイルにもありますが、写真の子供たちが取り組むストレッチは「プレコモド」というものです。
股関節の柔軟性向上を図り、ハムストリングス上部を使いやすくするというスプリントにおいて重要なストレッチ種目です。
 
我々のかけっこ教室では、練習前に自分の体の硬さや、どの程度関節が動くのかなど、自主的に自分の体を感じる時間を作っています。
全体練習の中でもウォーミングアップはありますが、その前に個人個人が自分と向き合い、最大限動きやすい状態を作った上で全体練習に臨むという姿勢を身につけてもらっています。
 
全体練習で行うウォーミングアップの前に行う個人単位での準備を、JARTAでは「プレウォーミングアップ」と称しています。
“Pre  Warming up”
文字の通り、全体練習前にあらかじめ行うウォーミングアップということです。
 
例えば「プレコモド」では以下のようなことを子供たちに確認してもらっています。
 
もも裏に張りを感じるのか?左右の足で差はあるか?昨日と比べて差はあるか?
他の子と比べてしゃがむ深さはどうか?
脛はまっすぐか?どの向きになりやすいか?
背骨はまっすぐか?丸まっていないか?
 
自分自身の色々なことを確認してもらいます。
そして子供たち同士で指摘しあい、わかることがあれば他者の修正まで行ってもらいます。
 
 
これらを経てから初めて、全体で行うかけっこのウォーミングアップやトレーニングに入っていきます。
みなさんのチームでも、当たり前に上記のようなストレッチがウォーミングアップとして行われていると思います。
当然、筋肉温度の上昇や関節の柔軟性向上が期待でき、怪我発生リスクの軽減やパフォーマンス向上につながります。
しかし、これと別枠でプレウォーミングアップという枠組みを設けることで、より大きな効果が望めるのです。
 
とりわけプレウォーミングアップにおいて期待できるのは内的認識力の向上です。
内的認識力とは、以下のような自分の状態を自身で認識できる能力を指します。
 
自分の関節の曲がり具合
どの筋肉が緊張しているのか
呼吸は正常か
どのような精神状態か
 
プレウォーミングアップという個人単位での準備を行う中では、これらの認識を大きく向上させることができます。
全体のウォーミングアップでは、どうしてもチーム全体の一体感や士気を高めることに重きが置かれやすく、個人が筋肉や関節の繊細な状態まで内観することは難しい状態となります。
個人単位で行うプレウォーミングアップの時間の中で、選手一人一人が練習ごとにその日の身体をモニタリングする機会を与えることは、自身を細かく内観できる内的認識力を育むことに繋がります。
 
この後に指導されるスプリントのフォーム修正、きつい補強トレーニングの中でも、自身の細かな筋肉の収縮に気を配れるか。
このように、内的認識力が必要とされる場面が様々なシーンで起きるということは、言うまでもないでしょう。
 
 
 
例として小学校のかけっこ教室を出しましたが、これはどの年代においても必要といえる内容です。
個別性の高いプレウォーミングアップで最大限の準備を行い、いつでも勝負できる状態で全体練習開始を迎える。そんな選手はきっとほかの選手に大きな差をつけるでしょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年06月13日

「チーム」は「生き物」だから

文:真木伸一

 
トレーナーとして選手と関わり、選手を良い方向へ導く。
始めた動機は人によって様々ですが、スポーツに関わるトレーナーの全ての目的は、ここに集約されると思います。
 
そのために多くの準備をして、学び、実践する。
つまり、選手やチームを「良い方向へ」導くために学んでいるわけです。
 
多くのことを学び、知識を得た。
トレーニングを知り、還元できる自信もある。
トレーナーとして自分が得た知識は、多くのトレーナーと比べても引けをとらない。
そんな自負があるとして、あなたはチームにおいて有益な人間となりえますか。
 
 
資格の有無にかかわらず、「スポーツトレーナー」としての活動は、

  • ・パーソナルトレーナー(基本的に個人対個人でコンディショニング指導にあたる)
  • ・チームトレーナー(チームに属して所属選手の外傷管理、コンディショニング、障害予防にあたる)

という2種類の関わりに大別されると思います。
 
当然といえば当然ですが、1と2では求められる能力が根本的に異なります。
 
今回は、その「違い」についてスポーツ現場での活動を志すなら知っておきたい大切なことを一つ、お伝えしたいと思います。
 
パーソナルトレーナーに必要とされる能力は、前提となるトレーニング・栄養・休養に関する情報収集能力(知識)、指導能力、プレゼン能力のというように、目の前の選手を変えていくことに即必要なことが多いと言えます。
 
他方、パーソナルトレーナーとして磨いたこれらの能力を持って現場に帯同するチームトレーナーとしての役割を果たそうとすると、求められる結果を残せない事態に陥ります。
 
そこには、『チーム』である、という決定的な違いがあるからです。
 
『チーム』は「達成すべき」「共通の目的」を持った複数の人が集まり、成り立っています。
 
つまり、その中で求められる能力は、組織の中で与えられた役割を「まっとうする」能力です。
 
そして、与えられた役割をまっとうするために必要な概念が、「Management」です。
 
・現在チームが置かれている状況
・スタッフ、選手の数
・競技レベル
・後方支援組織(病院や医師)
・物品の充実度
・予算の有無
・OB会の関わり、父兄の参画
などなど、数え上げればきりがない前提条件の中で意志決定し、方向性を示唆せねばなりません。
 
現場に入ったら、その現場の状況に応じて最適な環境を創造し、選手、スタッフが円滑に目標に向かえるよう、サポートするのがトレーナーの役割となります。
 
パーソナルトレーナーに必要とされていた細かい知識やプレゼン能力は、身につけておくべき当然の能力ですが、それ以上に、現場を回す「マネジメント力」が大きな比重を占めるわけです。
 
スポーツ現場における「トレーナー」に求められる能力は、本当に多岐に渡ります。
 
リハビリテーション、外傷予防から、テーピング、救急処置、ドーピングコントロール、コンディション管理など、これら全てのことに「責任」を持たねばなりません。
 
トレーニングに対する知識、栄養に関する知識、テーピングの技術、こういった目の前のことに対する知識のみをおさえていても、現場で有益なスタッフにはなり得ません。
 
 
時には雑用を、時には水汲みを、時には発注業務を、全力でこなさねばなりません。
 

 
これらは全て、「チーム」という「生き物」が有機的に循環していくために必要なことです。
 
こうしたマネジメント能力は、いざ明日から現場に出るとなった時、教科書を開いて載っているものではありません。
 
ですが、どこにいても身につけていくことができる能力でもあります。
つまり、自らの意識次第で変えていける能力ということができます。
今いる組織で、必要とされる働きができていますか。
今いる組織で、「変えの効かない」人材になれていますか。
 
『チーム』という組織で「生きていく」なら、「求められる役割」に自ら気づき、「まっとうできる」下地を養いましょう。
 
JARTAでは、選手にとって有益な人材を育成するのみならず、スポーツチームにおけるトレーナーのあるべき姿もお伝えしていきます。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年06月10日

ピッチャーゴロを捕ってしっかり送球できません。手首が固まる感覚があります。どうすればいいですか?

文:岩渕翔一

今回はタイトルの通りです。代表中野のブログで取り上げられていた質問ですが、この悩みについて私の見解と分析をご紹介します。
中野の記事はこちら
https://ameblo.jp/bodysync/entry-12464968788.html
 
うまくフィールディングを行うには、あるギャップを共存させる必要があります。裏を返せばこのギャップをクリアできなければいくつかのパフォーマンス低下を起こすことになります。
また、このテーマは私が認定コースのベーシックセミナー講師をする際に、「アブレスト能力」、「ハイパフォーマンスゾーン」の解説での実例として提示するシーンです。
チームで投手をやっているような選手です。単純に考えて投げることは上手いはずです。にも関わらず身体操作上のエラーを起こす。それには単に投げることが上手い下手ということとは違う次元の問題がいくつか提示できます。
・出力コントロールの選択ミス(ハイパフォーマンスゾーン)
・身体操作と意識のギャップ(アブレスト能力)
・運動構成と構造間の認知→判断→実行イレギュラー
 
などです。
 

手首が固まるという現象から推察されること

 
「手首が固まる感覚」という具体的な訴えがありますのでそこから考えてみます。
これは選手の意識が手首に向いていることを示唆しますが、なぜ手首に向くのでしょうか?投球時に手首に意識が向くことは特別な場合を除き(変化球の修正など)ほとんどないと思います。それは基本的に投球は「強く投げる」ことがベースであるため、全身で投げるとか下半身を使うとかそういった意識下の方が圧倒的に多いです。
一方、フィールディングで要求されるのは大まかに2つです。
・素早く投げること
・コントロールすること
 

 
この2つです。送球においてこの2つを実行するために選択されるスローイングは「スナップスロー」です。これが手首に意識が向きやすい原因ですが、素早く投げることとコントロールすることは運動構造としては逆行する(矛盾する)要素を共存させる必要(アブレスト能力)があります。
どういうことかと言いますと通常、「コントロールすること」を容易に遂行するにはゆっくり行うことが原則になります。運動や動作は速くなればなるほどコントロールが難しくなるためです。しかし実際の動作はというと、「素早いこと」が大前提になります。ランナーがいる状態でのフィールディングは封殺が第一選択になるため出来るだけ速く遂行する必要があるからです。
投手のフィールディングにおける実行過程は、
認知→判断→実行
この過程を出来るだけ素早く正確に行うことで、具体的には、
①投球完了後、打者がヒッティング

②打球を見て(認知)その場、或いはダッシュして(判断)捕球(実行)。それとほぼ同時に捕球後のスローイング方向を決定(判断)。それに応じて捕球体勢の選択(判断)。

③捕球後からのスムーズなスローイング(実行)
 
この過程においてスローイングを行うまで一貫して素早いことが要求されますが、スローイングそのものはコントロールしようとするわけです。そうすると実際の動きの速さと、コントロールしようとすることのギャップができてしまいます。他は素早く動いているのに、スナップスローでコントロールしようとする意図が、「手首が固まる」という現象を生んでいる可能性が高いです。
 

 
これに対する対策は明確で、フットワークを素早く安定して行うトレーニングを行うことです。実際、素早く動く必要があるのはほとんどの相で下半身です。
 
・前後左右方向へのフットワーク(捕球ポイントまでの移動)
・上下の重心移動(素早い捕球)
・回転フットワーク(捕球から送球方向への方向転換)
 
これらを素早く安定して行わなければならず、特に3つ目の回転フットワークは他の野手にもあまりない動きです。当然投球練習で補えるものでもないため、特化したトレーニングを行う必要があります。フットワークが安定し自信を持つことができれば、素早い動きだが安定したフットワークになるため、コントロールすることとのギャップが解消されていきます。
 

その他の可能性

 
もう1つフィールディングがうまくできないときに多いパターンについて。オーバーハンドで強く投げるという投球直後に、スナップスローで素早くコントロールして投げるという動作は同じ「投げる」でも運動構造が大きく異なります。それぞれ単体で練習を行ってうまくできていたとしても、実際の試合ではこの切り替えがうまくできずに暴投してしまうということがあります。これはその場面に応じてうまく動きや身体を切り替える(ハイパフォーマンスゾーン)必要があり、そのためのトレーニングが必要になります。
 
フィールディングに必要なトレーニング
 
以上のことからフィールディングには、
・投球後パワーポジション獲得トレーニング
・時間・空間認知を高めるビジョントレーニング
・フットワーク改善トレーニング
 
が必要になります。フィールディング時に手首が固まるという感覚がある選手や、うまく行かないと感じている選手は参考にしてみてください。
 
全てはパフォーマンスのために。
 

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2019年06月09日

選手に準備の重要性を語れる準備をあなたはしていますか?

文:赤山僚輔

 
今回は、先月開催された『K-1 KRUSH FIGHT. 101』のメインイベントとしてタイトルマッチに出場した近藤魁成選手への帯同報告を活動報告記事としてお伝えさせていただきます。
 
現在高校3年生の近藤魁成選手は高校生の日本一を決める”K-1 甲子園”で1年生と2年生時に連覇し、昨年の3月にプロデビューを果たしました。
 
この試合でプロ4戦目となるマッチメイクは高校生と25歳のK-1でもチャンピオンを目指す相手となり、「無謀」「危険」という声まで聞こえてくる下馬評でした。
 
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またこれまでの試合でもありましたが、今回の試合も当日はJARTA講師としてもおなじみの萩トレーナーも一緒に帯同致しました。
 

 
結果は2RでKO負けとなりましたが、戦評や模様については
以下サイトや公式Youtubeで是非ご覧ください。
 
https://www.k-1.co.jp/schedule/16487/

 
今回の活動報告では赤山自身が前日、当日にかけてどのような関わりをしているかについてお伝えしたいと思います。
 
 

帯同の目的

基本的には事前に決まっているサポートチームの長期帯同や海外遠征がない限り、試合には毎回セコンドとして帯同しています。
K-1の試合は年間に3〜4試合程度。
もちろん帯同の目的は勝利であり最高のパフォーマンスで試合を迎えることにあります。
前日から心身のコンディションを整え、必要に応じて相談に乗ることもあります。
 
また館長であるお兄さんと試合当日の戦略の確認や試合までの過ごし方、タイムスケジュールの相談も前日までに一緒に行います。
 
その為、ほとんどの試合で前日計量なので前日の朝から一緒に時間を共にします。

 
こういった帯同に携わっていくほどに自分がこれまで多くの選手に関わって来たなかで、身体のコンディションを整えるという側面が勝利に向けての準備の極々一部であることに気づかされました。
 
 

試合に向けてのトレーナーとしての準備

実際に当日に行なったことの前に、私自身がトレーナーとして試合当日に向けて準備をしてきたことについて簡単にお伝えしたいと思います。
項目として以下にあげるとこのような内容になります。
・対戦相手の分析(館長と共有)
・トレーナー自身の身体のコンディションを過去最高にしておく
・トレーナー自身が心にひっかかりがない状態で迎えらえるようにする
・当日のイメージを様々なパターンで想定しておく(試合自体も会場もタイムスケジュールも)
・当日試合に集中できるような環境設定を整える
・選手と気持ちを共にできるように減量をして迎える
 
このように実際にトレーニング指導だけやメディカルとして怪我人をみるだけ、治療に関わるだけであれば考えなくてもよいような内容もこういった帯同に関わると増えて来ます。
 
またそれは試合に関わるたびに、これも準備できていなかったと思い知らされることで毎回増えたり、不要な事柄は減ったりすることもあります。
 
選手に準備が大事と伝えるのであれば、トレーナー自身が最高の準備をして当日を迎える。
 
その準備は選手よりも長く、細かく、多岐に渡らなければ選手をみていてどのような準備が足りずに結果が伴わなかったかも分析できない。
そのように私自身は考えています。
 
 

当日重要視していること

当日に実施している事の全てをお伝えすることは、選手の個人情報も今後の戦略上もできません。
ただ私自身が重要視していることは、本ブログを読んでいるなかで、選手の試合当日に時間を共にする可能性があるトレーナーの方々には心に留めておいてもらいたいと思いますので共有させていただきます。
項目としては以下の内容になります。
・集中しすぎず集中できる状態を目指す(適度な緊張感)
・試合開始時間を意識した過ごし方を心がける
・他者の緊張感が伝播しないように選手以外への配慮も心がける
・試合前に一度100%の状態で動けるようにアップを行う
・勝つことにフォーカスし過ぎない
・トレーナー自身が冷静でいれるように心がける
 
以上のような事を重要視して過ごしています。
もちろん他にも細かな部分では無限にあります。
ただ身体のコンディションについては、このような大事な試合の場合ほとんど身体について気になる部分が皆無である状態で臨む為、当日は身体に関することはあまり自分自身も気にし過ぎないようにしています。
 
もちろんこういった関わりや内容は選手の成長によっても試合のカテゴリーによっても様々な変化が伴います。
 
この1、2年で試合に帯同したことがある競技はK-1以外で
・国体バスケットボール
・全国高校選抜フェンシング
・国体空手道
・国際大会バレーボール(U-18)
・高校インターハイ バスケットボール
 
同じ試合帯同でも同じ競技でも、全く違う部分もあれば共通する部分もあります。
 
私自身はこのような試合現場に帯同するからこそみえてくる視点を日々のコンディショニングやトレーニング指導に活かし、またこのように共有していくことが他競技に関わるトレーナーの皆様にとっても重要であると認識しています。
共有することで振り返ることができ、不足を知ることもできます。
 
行き当たりばったりでは、同じ過ちを繰り返すばかり、それではサポートしている選手に申し訳ないと思っています。
 
今回のサポートでは残念ながら敗れましたが、敗れたからこそ感じられた多くの要素が私自身にもあります。(選手はもちろん多くの学びが得られたようです)
 
その学びを次に活かすのは同じ選手だけでなく
私の場合には他にも関わる多くの選手やチームにも還元できると考えています。
 
実際この試合後に関わった同年代の選手たちにはここで得られた大事なことをしっかりと届けることができました。
 
もし試合に向けての準備や試合当日のサポートで何かが足りない。
 
そのように感じているトレーナーの方がにとって、今回の活動報告が何かの一助になれば幸いです。
 
そしてより多くの方々から応援していただける選手へと成長していけるように
私自身も成長していければと思っています。
 
今回の活動報告でお伝えした”近藤魁成”選手はじめ近藤3兄弟へはJARTA  internationalがオフィシャルサポーターとしてパートナーシップを締結しております。


 
より多くの方々からのご支援、ご声援をお待ちしておりますのでご興味がある方は以下専用サイトより詳細情報をご覧ください。
https://kondo3k.jinriki-aka.jp/recruiting/
 
長くなりましたが、以上で今回の活動報告の全てとさせていただきます。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年06月06日

練習時間を長くかける理由

文:谷口祐樹

 
日本のスポーツの練習時間は種目によっても多少違いはありますが、世界と比べて長い傾向にあるといわれています。
なぜ長いのか、それには理由もありメリットもデメリットも確実に存在しています。
今回はそこに迫っていきたいと思います。
 
 

身体の自動化を狙っている

では、まずなぜ練習時間を長く確保したがのるかを考えてみます。
それは一言で言えば、身体操作の自動化を求めているのです。
試合で勝つ為には考えて動く時間など許されていないということです。
どういうフェイントを入れるか、どこにシュートを打つかなど一つ一つ考えていると脳疲労を起こし、本当に必要な状況における瞬時の判断が出来なくなる恐れがあります。
 
脳疲労を極力少なくするためには、自然と身体が動くという状態であることが求められます。
自然と身体が動くという状態に至るためにはひたすら動きを反復し、たくさんの状況を経験させ、とにかく身体で覚えることが大切であるという考えから、練習時間を出来るだけ確保するというところにたどり着いたのだと考えます。
 
ここまでの流れではやはり時間は長くかけた方が良さそうだとなりそうですが、時間をかけることによる弊害もあります。
これからメリットとデメリットに関してまとめていきます。
 
 

長時間練習のメリット・デメリット

では長時間練習のメリットからまとめます
1  体で覚える事が出来る
2 団体競技であれば、他のメンバーと動きを合わす事に時間をかける事で完成度が高くなる
3  不足分を補うこと事が出来る
4  たくさん練習を行う事で「これだけやったんだ」と精神的に満足して自信になる。
その他様々な表現があるでしょうが大枠はこの4点です。
 
次にデメリットについてまとめます。
1  余暇の時間がなくなる
2  肉体的、精神的に疲弊し怪我が多くなる。
3  練習時間が長くなる事で練習自体をこなすことが目的となる。
この3点にまとめられると思います。
私が特に一番の問題だと考えるのは最後の3番目です。
多くのスポーツが瞬間的にパワーを出す事が求められるわけですが、練習時間が長いと、疲労とともに徐々に瞬間的なパワー発揮が難しくなってしまいます。
出力が最大限に高まっていない状態のまま力を出す事を長時間学習してしまうと、逆にパフォーマンスを下げてしまうリスクすらあるのです。
 
 

データ収集し分析の時代へシフト

確かに以前は量を確保することで勝負が決まった時代もありました。つまり努力の量によって勝敗が決まる可能性が高かったのです。
しかし、時代の発展とともにデータ収集する時代にシフトし、分析することでより効率的な動きを獲得したり、戦略的に優位な立場に立てることが増えてきました。
つまり、スポーツが洗練されてきたのです。
正しいところや必要なところに努力をフォーカスできる努力の質の時代となり、努力の量で勝負できるレベルではなくなってきたということです。
 

求められる競技によって異なる

今までお伝えした事をまとめると、競技によりメリット面が強く出る場合とデメリット面が強く出る場合がある、ということです。
瞬間的な筋出力よりも正確性が求められる演技系競技では、ある程度の量を確保する事で技能が洗練され、パフォーマンスアップにつながる場合もあります。
しかし、多くのスポーツでは瞬間的にパワーを発揮することが大切になってくるため、必要以上の練習量はマイナスの学習につながります。
 
 

最後に

練習量に関しては色々な議論があると思いますが、その裁量こそが指導者の技量の1つではないでしょうか?
 
陸上界で良く言われているフレーズですが、モチベーションとアキレス腱は消耗品という言葉があります!
皆さんの練習量はこの2つが擦り切れない程度の負荷となっていますでしょうか?
一度振り返ってみて下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 

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2019年06月03日

脚が攣る(筋痙攣)ことがある投手へ

文:岩渕翔一

6月に入りいよいよ暑くなってきました。それと同時に、学生アスリートにとって最もアツい夏が今年もまた始まります。
すでにインターハイ予選は各競技で始まっています。
 
誰もが自分のベストのパフォーマンスを出し、全力を出しきりたいと考えているはずです。そのためにいよいよ調整の時期に入ってきています。
この時期特有の課題として、試合に向けたピーキングと同時に暑さ対策。いわゆる、熱中症や脱水症対策が必要になってきます。
この対策で最も言われているのは、マメな水分摂取です。当然重要なことですが、この水分摂取において、多くの学生に関わってきてほとんどの選手がなかなか意識できていない点があります。これはプロの選手でも意識できていないことが少なくありません。また、暑さ対策において学生特有の課題が一点あります。
特に、脚が攣る(筋痙攣)ことがある選手は要チェックです。
今回お伝えするのは、
・脱水予防だけでなくパフィオーマンス向上を目的とした水分摂取について
・暑さ対策に必要な暑熱順化について
 

一般的な脱水症予防

体水分量(体液)は成人で体重のおよそ60%程度であると言われています。このうち、2%が失われると喉が渇き、運動能力が低下すると言われています。さらにそこから3%で強い喉の渇きになり。食欲不振や意識の低下、4〜5%で疲労感や体温上昇、頭痛などの脱水症状があらわれます。
 

このため、喉が渇く前に水分を取れと言われるわけです。また、練習や試合前後に体重測定することで簡易的に排出された水分を管理することができます。例えば、体重60kgの選手であれば、練習前後での体重減は1.2kg以内に留めなければ2%以上の水分が排出されてしまっていることになります。
このように、練習や試合など競技に関わる部分での管理はどんどん発展しています。しかしこれだけでは対策は不十分です。試合中や練習中の水分摂取は体液不足を起こさないための「予防」でしかありません。それだけでなく、身体そのものを鍛え、余力を作るということを時期に関係なくしなければなりません。
 

体液の役割

 
どうやって余力を作るのか??それを解説するためにまずは体液の役割をおさらいします。体液の主な役割は3つ。
・酸素や栄養素・ミネラルなどを体内に運搬する
・尿や汗として老廃物を体外に排出する
・発汗によって体温を調節する
 
という役割を担っています。
 
それが脱水によって、
・必要な栄養素を体内に運搬できない
・老廃物が蓄積する
・体温調節が行いにくくなる
 
といったことに伴う各々の症状があらわれます。そうなるとスポーツパフォーマンスにおいては、
疲れやすくなり、回復も遅くなる。判断力の低下なども招く。
というパフォーマンスの低下に直結することになります。
そのために排出された分、あるいはそれ以上の水分を摂取し補うというのが基本的な対策なのですが、それともう1つ。
元々体内にある水分量を増やすということをしなければなりません。
 

体液量には人による幅がある

 
先に成人の体液量はおよそ60%程度であると述べました。当然、これには人によって幅があり、およそ50〜70%程度の幅があるとされています。これが、何を指すかというと、人によって体内に保持しておける水分量が違うということです。当然、多くの水分を保持できるほうが脱水症や体液量低下によるパフォーマンス低下を起こしづらくなります。
これを鍛えるためにしなければいけないことは、競技中や練習中の水分摂取だけでなく、日常的に水分摂取を意識することです。
 

1日の水分摂取

 
成人に必要な1日の水分は2Lと言われています。食事に含まれる500mlを省き、一日およそ1.5Lの水分を摂取しなさいと言われますが、スポーツ選手は当然これだけでは足りません。まずは練習以外の時間で3〜4Lの水を飲むように心がけます。まとめて飲んでしまうと、ほとんどが尿として排出されてしまうのでマメに少しずつ摂取することがコツです。それでも最初はトイレに行く頻度が多くなりますが、これも習慣化していけば少しずつ体内に保持されるようになってきます。
 
そうすることで体液量という側面で余力を作ることができる。つまり身体の強化になるということです。脱水症でなくても、試合終盤や途中で筋痙攣を起こす選手はやってみる価値は大いにあります。筋痙攣は多様な原因から起こりますが、試合途中に起こるものの多くは疲労と体液量低下によるものです。つまり、先にあげた体液量低下に伴う症状が大いに関係しているということです。
 
当然、ストレッチやマッサージなど対策はしていると思いますが、それだけでなく、水分摂取量を増やすことによる体質改善という強化を意識してみてください。
 

学生に必要な暑熱順化

 
もう1つ脱水症や熱中症を予防するために必要なのが、「暑熱順化」です。暑さに慣れるということを目的とし、
・あえて暑い中で高強度の運動を短時間行う
・睡眠の管理
・水分摂取も含めた栄養管理
 
などを行なっていくことが対策になりますが、学生特有の課題として日中は授業があるということです。必然的に練習を行うのは放課後の気温が下がり始める夕方から行うことになります。しかし試合は日中に行われることが多く、ここでギャップが生まれ、身体がうまく対応できないことがあります。そのために昼休みに意識して屋外に出ることや(できれば走るなど少しでも負荷をかけることができると良い)、朝練を行うなどの対策が必要になります。また、暑い中で長時間練習を行うと疲労が蓄積されてしまうため、試合へのピーキングという意味では好ましくありません。暑熱順化するには高強度の運動を短時間行うことで十分です。
 

夏に最高のパフォーマンスを

 
今回は、
・脱水予防だけでなくパフィオーマンス向上を目的とした水分摂取について
・暑さ対策に必要な暑熱順化について
 
解説しました。いずれも夏にベストのパフォーマンスを発揮するために必要なことです。そのためには、「暑さ対策を行い脱水症を予防する」というだけでなく「暑さに対する余力を作るための身体強化をする」という視点が必要なこと。また、競技や練習中だけでなく、日々の生活そのものの習慣や意識を変えていかなければならないということです。
全ての選手がこの夏に全力でベストのパフォーマンスを発揮できるように。
 
全てはパフォーマンスのために。
 

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2019年06月02日

ルーティンがもたらす3つの効果

文:伊東尚孝

 
 
「私は毎日300以上のルーティンを行っています。」
 
 
 
皆さんはこの言葉を耳にして、どう思いますか。
 
 
私は正直、驚きを隠せませんでした。
 
 
私が思うルーティンのイメージは、有名選手が行う「あの動作」であり、それが300となれば想像もつきませんでした。
 
 
 
しかし現在、私は100程度のルーティンを毎日行っています。
 
それは私が思う「ルーティン」の概念が変わり、様々な効果をもたらしてくれると思ったからです。
 
今回はルーティンがもたらす効果を以下3つに分け、それぞれ解説していきます。
 
* 集中力・気持ちを高める
* 自己管理ができる
* トレーニングになる
 
もしあなたや周りの選手がルーティンに対して、昔の私のようなイメージを持っているのならば、ルーティンの概念が変わりパフォーマンスアップのヒントになると思います。
 
 
 
 

集中力・気持ちを高める

 
周知の通り、試合前や試合中に用いることで、集中力・気持ちを高めることができるルーティンです。
 
具体例を挙げてみると、
〈試合前〉
・決まったウォーミングアップを行う。
・決まった声出しをする。(円陣など)
〈試合中〉
・フリーキックで決まった歩数下がって構える(C.ロナウド)
・プレーに入る前に決まった動作を行う(イチロー、五郎丸、内村航平)
 
一般的にルーティンと聞くと、特に〈試合中〉のことを思い浮かべる方が多いと思います。
自分の身体を使って行うもの=ルーティンだと認知されているかもしれません。
 
 
しかしルーティンは自分の身体だけでなく道具を用いても可能です。
 
テニス選手であれば、ラケットのサイレンサー(振動止め)を見つめる、触ることで、気持ちをリセットして集中する。自分の靴を見つめる、触ることで無心になる習慣を取り入れます(靴ひもや縫い目などポインを決めても良い。)
試合中に身につけている道具であれば、何を使用しても良いでしょう。
(もちろん、練習中から道具を使用するルーレィンを取り入れなければいけません。)
 
 
また道具は、自分の気持ちを高める力を持っています。
 
例えば、その道具を購入する時に「優勝を目指すためにこれで戦う」という強烈な思いを込めるとします。
するとその道具には、「優勝」という自分の魂が宿ります。
その道具を見るたびに「優勝」というキーワードが自分の中で湧き出てくるため、今までの努力が思い返され、自分を鼓舞してくれます。
 
道具を使ったルーティンを行うなら、道具の一つ一つに思いを込めてみることをしてみると良いでしょう。
そうすれば、道具は集中力を高めるだけでなく、気持ちを高ぶらせることもできます。
 
 
 

自己管理ができる

 
上記のルーティンは意図的に行うものであり、日常にプラスされたものです。
これから述べる内容は、日常的に行っていること(生活習慣)に意識を向けることで自己管理ができるルーティンです。
 
自己管理において重要なものの一つとして、睡眠の質が挙げられます。
 
皆さんは、毎日スッキリ目覚めているでしょうか。
朝の目覚めこそ一日のスタートであり、目覚めが良いと調子も良く、目覚めが悪いと身体が重だるい気がします。
 
睡眠の質を確認する方法の一つとして、まず起床後の立ち上がり、歩行を確認します。
その際に身体の軽さ、重さを認識することで、毎日の睡眠の質を確認することができます。
睡眠の質が良ければ身体は軽く、身体がいつもより重いなら、その日の睡眠の質は低い可能性があります。
 
仮に身体が重だるければ、昨日のことを振り返り何か睡眠の質を下げることをしていなかったかを確認します。
 
例えば、
・夜更かしをしてしまった。
・寝る直前までスマホを見ていた。
・夜食を食べてすぐ寝た。
・暖房・冷房をつけっぱなしで寝た。
 
睡眠は自律神経と深く関係しており、上記の例は全て自律神経を乱してしまう恐れがある行為です。
原因が分かれば、今夜は“それ”を行わないようにし、翌日の身体の軽さ・重さを認識してみます。
これを繰り返すことで、睡眠の質を下げる要因を排除し、自己管理ができます。
 
 
つまりここで言うルーティンとは、
今までの生活習慣にプラスするのではなく、既に行っている習慣(ルーティン)を見直すということです。
自分にとってマイナスなルーティンを見つけ、より良いルーティンに変換することが重要になります。
 
 
 

トレーニングになる

 
先ほど述べたように、ルーティンは何かをプラスするものだけでなく、既に行っている習慣とも言えます。
つまり、皆さんは既にたくさんのルーティンを行っているということになります。
(そのルーティンには良し悪しがあり、多くは無意識で行われています。)
 
ここで紹介するものは、先ほどと同様に今までのルーティン(生活習慣)を見直し、トレーニングに変換していくルーティンです。
 
今回はJARTAで紹介している「股関節入れ」を例に挙げて紹介していきます。
 
〈洗面を行う際のかがみ方〉
毎朝の洗面の際、背中を丸めて(脊柱後弯して)行っていませんか。
洗面所の高さによって多少の違いはありますが、間違いなく身体を低くする動作を行います。背中を丸めてしまうと、背中の筋肉に大きな負担がかかります。
 
ここで股関節入れを行いながら洗面動作を行うことで、股関節を主体とした動作をルーティンに組み込められます。
 

 
他にも股関節入れをルーティンに入れられる場面の例として、
・下に落ちたものを拾う
・足元に置いた荷物を持ち上げる
・椅子に座る直前
・手を洗う
・部屋や風呂の掃除
・食器などの洗い物をする
・冷蔵庫の下の棚を開ける
・タンスの下の棚を開ける
・お風呂上りに足元を拭く
 
 
このように自分の生活習慣を見直すと、「股関節入れ」だけでもルーティン化できる場面はたくさんあります。
生活習慣のほとんどをトレーニングに変換できるとすれば、
言うまでもなく、ライバルやチームメイトと差をつけられます。
 
また同じ動作(ここでは股関節主体の動作)を繰り返すことで、脳はその動作を学習することができます。
股関節はハイパフォーマンスに必要不可欠な要素であるため、競技レベルでも股関節を主体とする動作を行うことが容易になります。
 
 
繰り返し述べますが、ここで言うルーティンとは、
今までの生活習慣にプラスするのではなく、既に行っている習慣(ルーティン)を見直すということです。
毎日行う動作をトレーニングに変化できると、もはや24時間がトレーニングと言っても過言ではありません。
 
 
 

まとめ

 
今回はルーティンの効果を3つに分けて解説していきました。
 
さっそくルーティンを再考してみよう!と思った方が少しでもいらっしゃれば幸いです。
 
しかしこの3つの中でも、取り入れやすさには個人差があると考えます。
「集中力・気持ちを高める」ルーティンは、今までのルーティンに新たなルーティンをプラスしているため、継続することが難しいかもしれません。
「自己管理」と「トレーニング」は自分の生活習慣の中から、パフォーマンスアップを阻害している要素を抽出しなければなりません。
そのため、今まで当たり前のように行っていた習慣を否定する場合もあるため、問題点を抽出することが難しいかもしれません。
 
 
自分が取り入れやすいものからチャレンジしてみて、難しさを感じれば我々に頼ってください。
あなたや周りの選手のパフォーマンスアップのために、全力でサポートします。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp




2019年05月30日

成長に不可欠なインプット&アウトプットバランス

文:岩渕翔一

成長するためや学びを深めるためには、インプットとアウトプットの両方が必要であることは周知の事実かと思います。

こちらは有名な「ラーニングピラミッド」というアメリカ国立研究所が発表したもので、学習方法と平均学習定着率を現したものです。非常に有名なピラミッドですのでご存知の方も多いかと思います。
 
このピラミッドによると、講義を受けるだけでは学習定着率はわずか5%にとどまります。
一方、他者に伝えるというアウトプットを行うことで学習定着率は90%まで跳ね上がります。これを見てもインプットだけでは足りず、インプット→アウトプットの流れを確立することが成長する上で非常に重要だということがわかります。
また、例えばチーム練習やトレーニングの際、選手同士で教え合うという時間が、互いにとってすごく有効であるということの裏付けにもなるはずです。
 
しかし、アウトプットそのものに躊躇したり、インプットはできてもアウトプットすることが苦手な方が多いのも事実です。実際は、行動しなければどうしようもないのですが、今回はこのインプットとアウトプットの適切なバランスを考えてみようと思います。
 

アウトプットが進まない原因

例えば、私はこうしてJARTAのサイトにほぼ毎週記事を寄稿していますが、そのときによって〆切ギリギリになることもあれば、余裕を持って提出できることもあります。また、気分良くサラサラ書ける時もあればなかなかペンが進まないこともあります。ネタがすぐに思いつくこともあればなかなか面白いネタが浮かばないこともあります。
 
うまくいかない際に、「多忙」を理由に「時間がない」と言い訳にすることが多いのが人の性ですが、果たして原因は忙しいからでしょうか?
私は違うと思います。少なくとも色々な現象や結果に対して「多忙」は言い訳でしかなく本質は違うところにあるはずです。ましてや、本当に忙しくて時間がないのであれば現状は充実しているわけなので、丁寧にお断りすればいい話です。それが礼儀なはずですが、人というのは欲張りでせこいものです。私自身が忙しさを言い訳にしてしまいそうになることが多々あるので、このあたりはよくわかります。
話が少し逸れました。
 
私が記事を書く際、
・〆切に間に合わないorギリギリになる
・なかなかペンが進まない
・面白い内容がなかなか浮かばない
 
この原因は、インプットとアウトプットのバランスであると考えています。
何もないところからアウトプットのネタは産まれません。
アウトプットの前提には必ずインプットがあります。
例えば今日、自分が一人の時に何かすごく面白いことが目の前で起こったとします。そうしたらどうでしょうか?誰かに話したくならないでしょうか?話したくないって人もいるかもしれませんが(笑)。
少なくとも私は猛烈に誰かに話したくなります。
このように、人に話したいことができれば人は能動的にアウトプットという選択を無意識に行います。実技系の講習や勉強会に参加した際、早く臨床で使ってみたくなるのもアウトプットの1つです。
つまり、自分がインプットした「何か」が、
・自分自身にとって新しい視点や考えを得ることができた
・自分にとって大切な人や顧客にとって有益なものになる
・自分の責任を形にして表現できる
 
こういった、ポジティブな感情を生むからこそ、「アウトプットしたい」という欲求に駆られるわけです。
 
もうお分かりかと思いますが、アウトプットできない最大の原因は、
「インプットが足りない」
ことです。
 
ですので、対策は単純です。今回の例のように記事を書く際に、
・〆切に間に合わないorギリギリになる
・なかなかペンが進まない
・面白い内容がなかなか浮かばない
のであれば、まずはインプットです。アウトプットしたい「何か」が自分の中で産まれるまでインプットし続ける。
 

アウトプットはインプットを含む

 
一方で、時にアウトプットしたいことが溢れるように出てくることもあります。これは、アウトプットできるだけすればいいのですが、そういう時こそまさに時間がないことがあります。アウトプットが追いつかないんですね。ここで良くあるのが、昨日はアウトプットしたくてたまらなかったことなのに、今日になったらすっかり興味を失ってしまっているという現象です。
情報や感情というのは鮮度が非常に重要なので、したいやりたいと思った時こそそのタイミングです。
 
ですので、やはりインプットとアウトプットのバランスは重要だということです。
 
また、もう1つ重要なことは、
アウトプットはインプットを含むということです。ラーニングピラミッドの中では、アクティブラーニングにあたる部分がアウトプットになりますが、より能動的であることが鍵になります。
他者に何かを伝える際には、そのことに対する学びが必ずあります。それ自体はインプットになるため、アウトプットというのは同時にインプットが必然的に伴います。
一方、インプットはどうでしょう。インプットにアウトプットが伴うことはないですね。これが、成長を加速するためにはアウトプットが重要で、ラーニングピラミッドの中でこうも学習定着率に差が出る要因の1つです。
 
選手であれ、指導者であれ、トレーナーであれ成長を加速させたいのであればアウトプットは不可欠です。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年05月26日

バレー選手に重要な肩の機能を最大限発揮するために

文:高島公平

 
バレー選手で肩を痛めている人、肩の障害を予防したい人、サーブやスパイクの威力を高めたい人やレシーブが上手くなりたい人向けのトレーニングを紹介します。
 
バレー選手では、肩の調子を悪くする方や、肩を故障した経験を持つ方が多くいると思います。
 
 
バレー選手にとって肩の機能は重要なものになります。
攻める時のサーブやスパイクではもちろん、守る時のブロックやレシーブにおいても肩の機能は非常に重要な位置付けにあります。

 
 
攻める場面において、サーブやスパイクでは、どれだけボールに力を伝えられるか、コースを狙った時に負担なく肩を動かせることができるか、どれだけキレを出せるかということが必要です。
また、緩急をつけるための身体の使い方が相手に悟られずできるかということも選手には要求されます。
 
守る場面でのブロックやレシーブでは、相手のサーブやスパイクの威力に負けず構えを崩さずに上肢を固定できるか、セッターにボールを返すためにボールの勢いを弱めることができるかということが必要になります。
 
 
 
では、実際肩の機能を高めるためにどういったトレーニングをしていますか?
 
 
筋力をつけるためのトレーニングとしては、マシンを使ったもの、バーベルやダンベル、チューブなどの道具を使ったもの、腕立て伏せなどの自重を使ったものがあります。
 
筋力をつけるということにフォーカスした場合、マシンや道具を使ったトレーニングを行なうことは必要になってきます。
 
 
しかし、バレーでは、肩や腕の筋力だけでなく、上肢と体幹を連動させて使うことができるかということが必要になります。また、下肢と体幹を連動させることも上肢の機能を最大限発揮することに関わってきます。
 
 
筋力アップが図れたが、思うようなパフォーマンスができていない時や肩の調子が良くならない場合は、体幹や下肢と連動させて使えているかどうかプレーを確認していく必要があります。
 
 
 
では、これから肩の機能を高め、体幹や下肢との連動性を高めるために有効なトレーニングを紹介します。
 
 
 

  • 立甲

立甲はJARTAトレーニングの1つです。
 
立甲とは、肩甲骨を自由に動かすことができるようになることです。
肩甲骨を自由に動かせるようになることで、スパイク動作に伴う腕の動きに合わせて、肩甲骨が動くようになり、肩の負担を軽減させることのできるポジションを維持することができます。
また、肩甲骨周辺の筋の硬さが取れることにより、上部体幹の動きが出やすくなり、肩や腕の力だけでなく体幹から生み出される力を上肢に伝えやすくする効果もあります。
 
それだけでなく、力みで肩が上がりやすくなることも防止でき、スパイク動作での腕の振りをスムーズ出すことも可能となります。
レシーブにおいては腕を安定した状態で保持することも可能となります。
 
 
バレー選手にとって、攻守どちらの場面においても必要な機能を高めてくれるトレーニングです。
攻守のレベルアップには必須のトレーニングであり、上肢と体幹を連動させるためには獲得したいトレーニングとなります。
 
また、立甲は一次姿勢(立位)を整えるために有用なトレーニングであるため、バレー選手だけでなく様々な競技の選手にとって重要なトレーニングとも言えます。
 
 
 

  • ダウンドックのポーズ


 
ダウンドックのポーズは、ヨガでもよく用いられるポーズの1つです。
 
上肢と下肢でバランスを取るため全身の適度なトレーニングとなります。
肩周りや背部・下肢のストレッチ効果があり、鳩尾や背部を緊張させずに取り組むことで、肩や脊柱、股関節を捉えやすくするトレーニングにもなります。
 
また、自重のみの負荷となるため、筋力が不足している成長期の子どもにも負担なくできるトレーニングです。さらに、肩を痛めた選手にも負担の少ないトレーニングと言えます。
それだけではなく、十分に筋力のある選手にとっては、自分自身の身体のどこが力みやすいのか、どこの力が入りにくいのかということや重心がどの辺りにあるのかといった内的認識力を働かせやすいトレーニングにもなります。自分自身の身体の状態や力みやすい部位、力の入りにくい部位などを認識することでプレーの質を高めていくために役立ちます。
 
 
 

  • コモドドラゴン


コモドドラゴンは、体幹と上下肢を連動させるためのトレーニングです。
 
ワニやトカゲなどの爬虫類の動きです。上肢と下肢を動かすだけでなく、その動きに伴い体幹の動きも出ない限りはスムーズな動きにはなりません。
体幹を固めることはせずに、上肢と下肢の動きを妨げることのない程度の固定力を必要とします。
また、低い位置で重心を維持しつつ、前方へ進んでいくため、体幹と上下肢の連動を高めるだけでなく、負荷量も高くなるトレーニングとなります。
 
そのため、上下肢の筋力トレーニングや体幹トレーニングの要素もあるトレーニングです。
 
 
ジャンプサーブを打つ選手やスパイクを打つ選手は、下肢で蓄えた力を体幹と連動させ上肢に伝えていくことで、さらにボールに力を伝えることができるようになります。
肩や腕の力だけに頼ることをせずに、より力強く打つことができ、肩の負担を減らしていくことに繋がります。
また、空中でボールコントロールが必要となる場面やボールに合わせて身体を動かさないといけない場面での不必要な身体の力みを無くしていくことにも繋がります。
 
 
バレー選手にとって肩の機能を高めていくことは、プレーを高めていく中では必要なことになります。
トレーニングと言えば、まだまだ筋力トレーニングをイメージすることが多いと思います。
そこで、今回は筋力以外の要素を高めていくことで、肩の機能を最大限に発揮することができるということを知ってもらい、今後のトレーニングに活かしてもらえればと思います。
 

最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
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2019年05月20日

スポーツとはなんなのか

文:岩渕翔一

5/18、19日。この2日間は多くの格闘技イベントが開催されました。
・K-1
・JFKO
・RISE
・井上尚弥選手のWBSS準決勝
 
我々がサポートする選手の中では、統括部長の赤山がサポートする近藤魁成選手が5月18日K-1 KRUSH FIGHT.101・ウェルター級タイトルマッチに挑戦者として。

 
 
岩渕がサポートする山口翔大選手が5月18、19日にJFKO(第5回全日本フルコンタクト空手道選手権大会)で3位以内に与えられる第1回全世界フルコンタクト空手道選手権大会出場権獲得を狙いました。

 
 
 
この日に向けて4月10日には大成会館、山口道場の両道場で合同練習を行いました。
 

 
同じ立ち技系格闘技という枠組みですが、競技の運動構造としては想像以上に異なる競技です。それは競技の運動構造やルールだけでなく、例えば、何ヶ月も前から対戦相手が決まっているワンマッチが主流のキックでは、対戦相手を分析し対策を練り準備を行います。対してフルコンは1dayか2daysのトーナメントでその時にならなければわからない相手と一日複数の試合をこなします。
そういった大きな違いはあるにしろ、というよりあるからこそ、
フルコン側はキックの間合いを。
キック側はフルコンのタフネスとスタミナを。
 
互いに参考になる、活かせることがあるという判断から行った合同練習です。
 
 
結果はそれぞれ見ていただければ良いのですが、今回は改めて考えたスポーツそのものについて。
 

選手の分だけ想いがある

 
スポーツである以上、全ての競技で勝敗がつきます。そこには競技レベルこそあれ、結果そのものに対し、選手や応援する者、家族、サポートする者など、多くの感情が入り交じります。
 
格闘技という競技は他のスポーツと違い、勝敗に対する感情の喜怒哀楽だけでなく、心身に対する物理的な痛みが伴います。それだけに、時には残酷なまでに勝者と敗者がより明確に、鮮明に色濃く写るといった側面があります。
当然、我々はトレーナーという立場なので自身がサポートする選手を応援します。今回でいえば、合同練習をしたということからも互いの結果はやはり気になりますし、やはり勝ってもらいたいという感情も強くなります。
そしてそれは、
関わっているからこそ触れることができる過程や背景、物語、歴史、想いを知っている
 
ということが深く関係します。その想いに共感したりシンクロしてサポートをするので当然トレーナーとして、選手への想いも強くなります。
一方で、自分が知らない、或いは関わりのない選手、チーム、競技にもそれぞれの想いや歴史、物語が存在します。それはスポーツをしている人の分だけあるはずです。
サポートしている選手です。当然勝ってほしいし、勝てるように、勝つためにはどうするのかを考え実行し最大限サポートします。
ところがスポーツというのは、どの競技でも勝者は一人です。そのたった一人以外は全員敗者になります。じゃあ負けたからといって想いや歴史がダメになるのかと言われればそんなことはないはずです。
大切なのは自分自身の想いや歴史に真剣に向き合うこと。そして、対峙する全ての選手にも同じような想いや歴史があるということを認識しておくこと。
それがあれば、
 
礼節を重んじ、どんな相手や他者にも敬意を払い、真剣に向き合い取り組むという社会で生きていく上で必要なことをスポーツを通して学ぶことができるはずです。
 
これは私自身の価値観ですが、
「勝敗にはとことん拘るが捉われない」
勝っても負けてもその先を見据える。結果はあくまで結果。よく負けた時に、
「今回の負けが将来あの時負けてよかったと思えるように」
と言いますが、それは勝ちも一緒です。
負けてその先どう在るか
勝ってその先どう在るか
結局は逃げずに、誠実に真摯に真剣に今の自分と向き合うしかないのだろうと思います。
勝って嬉しい
負けて悔しい
勝ちを目指す
負けたくない
負けるのが恐い
 
当然です。
 
我々は専門家です。なのでサポートする選手が勝ちという結果を得られるように、論と根拠と熱意を持ってトレーニングを構成し指導する。
しかしそれは相手も同じだということを忘れてはなりません。
・全てはパフォーマンスの為に
・全ては選手のために
これはJARTAのコンセプトの1つですが、それは自分がサポートしている目の前の選手に限ったことではないと考えています。目の前の選手に真剣に向き合うことの先に、
スポーツをする全ての選手のために。
トレーナーとしてはこう在るべきだと考えています。
想いと想いのぶつかり合い。
たまに考えてみるといいのかもしれません。
スポーツとはなんなのか。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年05月19日

かかとの痛みには人生の33%の過ごし方が重要

 

文:赤山僚輔

 
 
「いてっ!」
 
あなたは朝起きて歩き出そうと踵を床に着いた瞬間に
痛みが走ったことはないでしょうか。
 
 
私自身はアキレス腱を断裂した過去もあり
 
起床時に踵や足の裏に痛みがでることがいままでにありました。
 

 
 
こういった痛みが出現する原因はたくさんあります。
 
・そもそも足底が非常に硬い
・踵を酷使するような競技や使い方をしている
・シューズやインソールが合っていない
・捻挫や他の怪我の後遺症が残っている
・長期間免荷していた影響で過敏になっている
 
などなど。
 
痛みが出現した経緯や痛みが出現する時と
さほど出現しない時を比較することでいくつかの原因が見当たると思います。
 
 
しかし足首周辺のコンディションや
経過だけでは整理できない痛みが出る選手に以前遭遇したのです。
 
その時の改善にきっかけを解剖学的な視点を元に
今回は紐解いていきたいと思います。
 

かかとは引っ張られすぎると都合が悪い

 
足底の硬さの要因にふくらはぎの硬さが起因することがあります。
そんな事は周知の事実だと思いますが、後述する説明が理解しやすいように
一旦触れさせていただきます。

※プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論 / 運動器 第2版より引用

 
ふくらはぎの筋肉を通してアキレス腱から踵への牽引力が強まると
上記図でいうと踵は上方に強く動かされようとする力が働きます。
 
そうなると足底にある腱膜は結果的に伸張されることになり
その伸張ストレスにより硬さを生んだり、過敏になる可能性があります。
 
 
 
これが骨が未成熟な時期であれば骨自体を牽引する力となり
図のように骨棘が発生したりもします。
 
実際に骨棘と聞くと末期症状のように感じる方がおられるかもしれませんが
小中学から毎日のように競技を継続していれば
高校生で骨棘形成で悩まされる選手も珍しくありません。
 
先日は中学1年生で変形性足関節症と診断を受けた選手もいました。
 
 
そのような事例を未然に防ぐにはやはりミスユースを減らすことと
丁寧なセルフケアであることには間違いありません。
 
しかし真面目にケアを行なっていても
さほど使い方が悪くなくても
起床の痛みが慢性化する選手がいます。
 
その原因は実は前述した部分以外にあったのです。
 
 

1日の三分の一は寝ている

改めて言うまでもないですが
1日の三分の一は寝ているということは
1年の三分の一は寝ています。
 
つまり人生の三分の一は寝ていると言うことになります。
タイトルの33%はこれを比喩する表現になっています。
 
 
私は37歳なので12年は寝ていることになる・・・。
 
『めちゃめちゃ寝てるやん!』
 
そう思った人はかなり伸び代があると思います。
 
私は自分の身体に真摯に向き合うようになってから
大きく変えたのは睡眠前のルーティーンです。
 
起きている時間にいくらケアをしていても
寝ていてまた硬くなったりするのでは時間がいくら合っても足りない。
 
そのように感じたからなのです。
 
 
動作分析でも痛みや動作不良の問題が発生する直前に原因がある。
このように言われることがあります。
 
起床時に痛みが発生するのであれば
その直前は睡眠時です。
 
 
ではどうして睡眠時に踵に負担がかかってしまうのか。
この点について解剖のいつも見慣れない視点をヒントに紐解いていきたいと思います。
 
 

かかと引っ張るのはアキレス腱だけではない

 

※プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論 / 運動器 第2版より引用

 
皆様はこの図をみて何を感じるでしょうか?
 
私はこの図を見たときに、自分が何気なくやっている日々のルーティーンが
起床時の踵への負担を軽減させている事を確信しました。
 
距腿関節の軸よりも前方に付着する筋肉が緊張していれば
距腿関節の背屈方向への牽引力がかかります。
 
それに対して後方に位置する筋肉が緊張すれば
底屈方向への牽引力がかかるのです。
 
図をみてみると、下腿三頭筋だけでなく
後脛骨筋、長指屈筋、長母指屈筋、短腓骨筋、長腓骨筋がそこにはあります。
 
ちなみに此処で私が睡眠前に必ず実施する
ルーティーンをご紹介します。
①両脇を気持ちいい程度に伸ばす
②背骨を左右に捻る
③全ての指の硬さを一度にほぐし、親指は念入りに実施する。(外反母趾なんです)
④その硬さが取れた状態から緊張しないように寝転がり、寝落ちするまで鳩尾に手を当ててゆるめる。
 
以上になります。
合計でも1分もあればできます。
 
動画でお伝えしたいところですが、あまりにもシュールな絵なのでお会いしたときにご紹介します。
 
 
読んでいればご理解頂けるように、見事に底屈方向への筋群へのリラクセーションが図れていたことが
お分かりになると思います。
 
脇の硬さを改善する事は筋膜や経絡の繋がりからも腓骨筋へと繋がり、後脛骨筋などは内転筋などからの影響も重なり恥骨への負担となるので鳩尾の硬さが改善され結果的に恥骨への負担が減ればリラクセーションが図れる可能性があります。
指については直接的なストレッチとしても好影響がありそうです。
 
つまりこのルーティーンを繰り返していく事で
起床時の踵の底屈方向への牽引力を軽減することが出来ていると想像できます。
 
実際にここ数年は起床時に痛む事はありませんし、そのように悩むクライアントもお伝えすることで解決することが多いです。
 
上記部分が硬くなる要因についてはまた次回以降続編で触れることにして
まず起床時にかかとが痛む方は是非とも人生の33%を過ごす睡眠時に
意識を向けて睡眠前のルーティーンを実践してみてください。
 
きっと朝が変わると思います。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年05月16日

ボールの中心を捉えるために身体の力みを無くそう

 

文:高島公平

 
 
バレーでは、サーブやスパイクにおいてボールの中心を捉えることは、プレーのレベルを高めるためには重要になります。
ボールの中心を捉えることで、ボールにしっかりと力を伝えることができるようになります。
また、スパイクでコースを打ち分ける時やサーブで狙った場所や選手に打つ時のコントロールを高めるためにも重要になります。
さらに、フローターサーブやジャンプフローターサーブでは、ボールの中心を正確に捉えボールに回転を与えないようにすることで、ボールの軌道の変化を多様に出すことができるようになります。
 
今回どのようにしてボールの中心を捉えるようにしていくのかということを紹介したいと思います。
 

 
 
スパイクやサーブでは、セッターからのトスや自分自身が上げるボールの軌道やボールの重心などを視覚情報で感知しないといけません。
その視覚情報から打つ瞬間のボールの重心を正確に判断するには、自分自身の身体の中で重心感知・制御が常に行なわれている必要があります。
 
 
つまり、ボールの中心を捉えるために必要なことは、自分自身の重心を正確に感知・制御することです。
 
 
重心感知・制御には、平衡感覚を司る前庭・三半規管、筋にかかる張力を感じる筋紡錘、皮膚感覚など様々な要素が関わってきます。
前庭・三半規管は頭部にありますが、筋は全身にあります。
そのため、この全身にある筋は、重心を感知・制御するには非常に重要なものと言えます。
 
 
力んでいると重心の変化に伴う張力の変化を筋紡錘で感知できなくなります。
重心が動こうとする時に生じる張力をより正確に感じるとるために筋の状態は力んでいないことが重要となってきます。
 
 
バレーをする中では、力んでしまう場面は多くあると思います。
ピンチの場面はもちろん、チャンスの場面でも余計な力が入ってしまって上手くいかなかった経験のある人もいると思います。
 
プレー中の動きを確認することも大事なことではありますが、基本的な立位姿勢が力んでいる場合、応用動作となるスポーツ動作が力みやすいということは言うまでもありません。
 
 
普段の立位姿勢からすでに力みが生じていないか一度確認してみてはどうでしょうか?
 
 
力まずに姿勢を保持するためのトレーニングは多くありますので、今回はその中でも2つ紹介したいと思います。
 
 
①脊柱スパイラルストレッチ

 
脊柱の可動性を高めていくストレッチです。
椎体の1つ1つを意識しながら捻ることで、意識しやすい部位・意識しにくい部位、動かしやすい部位・動かしにくい部位、左右差など、現状を認識するためには有効なものになります。
鳩尾周辺や腰に関しては、硬さの出やすい部位となるため、より丁寧に1つ1つの椎体を意識して動かせるようになることを目指してみてください。
 
脊柱を自由に操作できるようになってくると立位姿勢での、腰回りの力みや胸回りの力みは改善しやすくなります。
また、バレー選手にとって負担になりやすい腰部のケガの予防にも繋がります。
 
 
②インナースクワット

立位姿勢からしゃがみ込み、しゃがみ込んだ姿勢から立位姿勢に戻るまでの運動となります。
必要最小限の動きで行なえているか、鳩尾に力みが出ないか、重心がブレていないかなど意識していくことで、立位姿勢に必要な股関節や脊柱などの機能を高めていくことに繋がります。
 
 
この2つ以外でも立位姿勢を整え、力まない身体にしていくためのトレーニングは多くあります。
まずは、現状の自分自身の身体の状態を認識しつつ取り組めるトレーニングとしては、有用なトレーニングとなっています。
ぜひ一度取り組んでみてください。
 
 
 

まとめ

 
バレーのスパイクやサーブではボールの中心を捉えることが必要
               ↓
中心を捉えるためには自分自身の重心感知・制御が重要
               ↓
重心感知・制御には全身の筋の役割が大きい
               ↓
スポーツ動作だけでなく、立位姿勢から筋の力みをなくしていくことが必要
 
 
 
これらのことを押さえ、今後の練習やトレーニングに活かしてみてください。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

 
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2019年05月13日

下半身を使うの正体

文:岩渕翔一

多くのスポーツで下半身をうまく使うことは重要なトピックの一つです。取り分け野球においては、
・ケツから踏み出せ
・軸脚を安定させろ
・腰で打て
・下半身の粘り
・下半身をしっかり使え
など、投球打撃両方において下半身の重要性を裏づけるかのような、いわゆる「野球用語」が存在します。
投球は最終的に指先、打撃は両手で持ったバットで完結するにも関わらず、指をどう使うかやバットをどう持つかは選手の感覚に委ねられることが多く、下半身をどう使うかのほうが指導や練習で重きを置かれることが圧倒的に多い印象です。
 
では、そもそも「下半身を使う」とはどいうことなのか。この抽象的な言語の奥を投球動作を中心に考えてみます。
 

下半身の正体

そもそも下半身とはどこからが「下半身」なのでしょう?股関節から?骨盤から?
どうでしょうか?
おそらく各個人のイメージによって変わってくるのではないかと思います。私もネット検索してみましたが、実に多様な解釈がありました。
実は下半身というのは身体の学問である医学用語ではありません。ですので、明確な定義づけがないのが現状です。
ではどのように下半身を定義づければ良いかですが、観点は2つ。
1.上半身との境目を明確にする
2.運動様式によって定義づけを変える
 
1.上半身との境目を明確にする
これは簡単です。人の重心は骨盤内で仙骨のやや前方にあります。重心の位置を足底から計測すると、成人男子で身長の約56%、女子では約55%の位置にあります。(重心の位置はプロポーションによって個人差があり、小児では相対的に高位にあるために立位姿勢保持が不安定となります。)。ですので、ここを境目に上半身と下半身を分けるという考え方。


2.運動様式によって定義づけを変える

基本的に、人の運動様式には2つのパターンがあります。開運動連鎖(OKC)と閉運動連鎖(CKC)です。開運動連鎖(open kinetic chain;OKC)とは、手や足を床面から離した非荷重位での運動。閉運動連鎖(closed kinetic chain;CKC)は、手や足を床面に付けた荷重位での運動を指します。

この運動様式に投球動作に当てはめると、投球動作は多くの相でCKCの動きになります。
「どこまでが下半身なのか」の議論は骨盤帯を含むのか含まないのかとほぼ同義になるかと思います。ここでOKCとCKCの概念が大切になります。CKCの場合、股関節が可動するには骨盤の動きがなければ不可能です。ということは、この運動様式では下半身に骨盤を含む必要があり、骨盤から下が下半身。それより上位は上半身と定義づけることができます。
つまり、CKCの動きが多いピッチングやバッティングにおける「下半身を使う」とは骨盤を含む下半身の動きを指していることになります。
 

下半身を使うの正体

 
下半身がどこからどこまでかがはっきりした上で、下半身を使うというのは具体的にどういうことなのかを考えてみます。

1.最終的に上半身にある指先で完結する投球動作において、下半身の第一の役割は、上半身操作を安定して行うための土台としての役割です。ここがバランス悪く不安定では当然安定した投球は行えません。1つは軸脚のみで体重を支えている相での安定。もう1つがステップ脚がフットコンタクトしてからの両脚で重心コントロールを行う相での安定です。
 
2.ボールに加える力を大きくするには並進運動と骨盤の回旋運動が鍵になります。並進運動は、投球スタンス幅が広ければ広いほど距離を長く取れ、力を蓄えることができますが、スタンスが広くなればなるほど、骨盤の回旋運動が起こりにくくなるという関係にあります。つまり投手それぞれの身体特性によってより効果的な投球スタンス幅があり、それを見つけ出さなければ結果的にエネルギーロスに繋がります。
さらに骨盤の回旋と言いますが、実際はほとんどが股関節の動きになります。そこに、仙腸関節が連動することで上半身へ連動するしなりが発生します。この際、スタンス幅が広いほうが筋の張力が強くなり、下半身の粘りと割れができやすく、結果的にキレのある骨盤回旋運動になりやすいですが、そのためには下半身の柔軟性が大前提として必要にまります。
 
3.最終的に、リリースの瞬間に軸足は地面から離れます。そこからフォロースルーとなり投球動作は完結するわけですが、この瞬間に、軸足がどう地面から離れるかが非常に重要になります。「プレートを蹴る」というように良く表現されますが、実際は「蹴る」というよりは、「押し込む」イメージの方が近いです。リリースのギリギリまで重心を軸足側に残し、なおかつ膝を落とさずに残すことができると、骨盤の回旋からリリースの瞬間に急激に重心が前方へ移動する際に、自然に軸足でプレートを押し込むことができ前への推進力が生まれます。ですので、「蹴る」という能動的な運動イメージではなく、「押し込む」イメージが指導をしていてもしっくりくる選手が多い印象です。
 
つまり、下半身を使うというのは、
・バランスコントロール
・並進運動と骨盤の回旋運動
・床半力の効率的な伝達
 
この3つが必要になります。
 

下半身を使うためのトレーニング

ここまでくれば、下半身を使うための強化トレーニングをそれぞれ具体的に考えていきます。
 
[バランスコントロール]
・軸足のみで立っている時のバランス強化(後方や側方への崩れは避ける)
・股関節を捉えた多様な下半身の状態で、多様な上半身操作や運動を行うトレーニング
 
[並進運動と骨盤の回旋運動]
・軸足のバランス
・股関節の柔軟性・可動性と操作性強化
・仙腸関節の可動性
・ステップ脚のフットコンタクトバランス
・軸足の股関節内転筋強化
・ステップ足のハムストリングス強化
・主に股関節周囲筋の遠心性収縮と粘弾性強化
・骨盤底筋群の強化
 
[床半力の効率的な伝達]
・ステップ脚のフットコンタクトバランスとコントロール(投手セミナーでは「抜きランジ」というトレーニングを紹介しています)
・軸脚の遠心性収縮強化と重心コントロール
・力の伝達効率を良くする骨アライメントを再現する運動学習強化
 
あくまで投球動作に必要な下半身のトレーニング例で、それぞれ目的が重なるトレーニングもありますし、手段は他にも色々あります。「下半身を使う」という抽象的な表現をいかに具体的に落とし込み、効果的なトレーニングを行うか。それができればトレーニング効果の判定や評価も行いやすく、適宜軌道修正することができます。下半身の重要性はいうまでもありませんが、今一度なぜ、どのように重要なのかを考えるきっかけにしていただければと思います。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年05月06日

休日の使い方

文:岩渕翔一

10連休あったゴールデンウィークも今日が最終日です。スポーツをしている方は練習の日、試合の日、休みの日とあったかと思います。代表の中野の記事でも取り上げられていましたが、この連休中、すべて練習をしているといったチームや選手がいないことを願っています(GW全て練習なんてやるべきじゃない)。ですが、「休むこと」そのものに恐さや罪悪感がある選手がたくさんいることも事実。日本では昔から、
「1日休んだら取り戻すのに3日かかる」
などと言われていました。私自身も現役時代は休むことに罪悪感や恐怖を感じたり、例えば、自分が休みの日であってもライバルチームや選手はその日練習していたりするわけです。そのため、休むこと自体が焦りや不安といった負の感情を産み、精神的に落ち着かないといったことがありました。
また、「練習が休みだと何をして良いのかわからない」といった選手も少なくないと思います。事実、私自身がそうで、野球さえしておけば、1日1日が充実していて慌ただしく終わる日々を過ごしていました。そのため、休みだと言われても何をどうして過ごせば良いのかさっぱり分からず、ただただ時間だけが無駄に過ぎていく日が「休みの日」でした。
 
休むことの重要性や必要性は近年多く叫ばれるようになり、指導者や選手も休日を設けることの重要性の理解は進んできていると感じます。しかしそれは、あくまで「競技のために必要な休息」であって、見方を変えれば休むことも練習や競技の一環ということになります。
元サッカー日本代表監督イビチャオシム氏は、「休みから得るものはなにもない」、「休むのは引退してからで十分だ」と話し、プロなら生活全てをサッカーに注げと仰っていました。当然プロであり、しかも日本代表ということになれば、そこまで求めなければ結果はなかなか伴わないでしょう。ですが、この記事を読んでいただく多くの方は指導者であったり、プロではない選手だと思います。また、プロの選手であっても引退する日は必ず訪れます。
その際、競技の第一線から離れてセカンドキャリアを歩んでいくことになりますが、これはプロスポーツ選手における社会的課題の最たるものでもあります。そのため、休日の使い方は競技のためだけでなく、人生そのものに対しても重要な役割を持ちます。
 
ですので今回は、スポーツ選手にとってもう少し広い意味での「休日」が重要な理由について話したいと思います。
 

休日を楽しめる競技生活を


 
冒頭で話したように、休日をどう過ごせば良いのか分からない選手は少なくないと思います。
これは、学生やアマチュア選手、プロ選手などカテゴリーに関わらずスポーツをする選手にとって一番良くない状態です。なぜ良くないかですが、競技から離れた際、引退した際にその状態は毎日続くことになるからです。それがなぜマイナスなのかは説明するまでもないでしょう。
健康な人であれば、成人すれば大多数の方がなんらかの仕事をすることになります。どのような仕事をするのにも重要なことが2つあります。

  1. ・アイデアの産生とそのアイデアを実行する行動力
  2. ・切り替える能力

 
休日の使い方はこのどちらかの視点がある必要があります。
 
[アイデアの産生とそのアイデアを実行する行動力]
休日に何をすれば良いのか分からないのであれば、徹底的に今している競技にプラスに働く休日の使い方をしてみてください。身体のケアや試合観戦、精神的なリフレッシュなど。競技ベースで何が必要かを考え、アイデアを出し実行してみてください。オシム氏が言っているように競技のために必要な休日の過ごし方は山のようにあります。それができれば、競技ベースで考えると休んでいることにはなりません。パフォーマンス向上のための積極的休日です。そしてそこで悩み、考え、調べ、出したアイデアを実行する癖は必ず今後に活かせます。
 
[切り替える能力]
社会では切り替える能力が高いほうが高いパフォーマンスを発揮しやすいです。仕事の自分、家庭での自分、友人との自分など。仕事の中でも顧客、上司、後輩、部下などそれぞれの立場の中での役割を切り替える力。
プロアマ問わずそれまでの人生を捧げたと言っても過言ではない、競技から離れた際、それまでの生活を一変させることに対するポジティブな感情やなにをするかの選択肢が複数あることはとても大切です。ですので、休日に全く競技とは関係のないことを行い、楽しみ、学び、経験する。その積み重ねは必ずその後のキャリアの選択や切り替えに活かせるはずです。
 
スポーツに対する姿勢は人それぞれです。健康のためにしている人も、プロを目指している人も、日本一や世界一を目指している人もいます。しかし、どういう姿勢であれどうせするのであれば真剣にやったほうが楽しいし、学びも多いです。その姿勢が休日を取りにくかったりするというジレンマがあることも事実です。休日の目的は競技力向上だけでなく、人生を豊かにするためにもあるということを知っていただければと思います。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年05月05日

「メンタルが弱い」の正体〜身体アプローチでメンタル強化〜

文:伊東尚孝

 
「お前はメンタルが弱い。」
 
スポーツ現場でよく耳にするスレーズです。
大事な試合や大事な場面で、いつも通りの力を発揮することができずに苦い思いをしたことのある選手は大勢いると思います。
「いつも失敗するパターンがある。」
「あの対戦相手にはどうしても実力を発揮できない。」
「また失敗したらどうしよう。」
そんな思考が頭をよぎると思います。
 
結果、その先にあるのは
 
 
「勝てない」
 
 
勝てない理由は、本当に技術や戦略の問題だけでしょうか。
 
 
その原因の一つに、メンタルの要素が隠されているかもしれません。
自分のメンタルを理解し自分のものにできれば、勝てるチャンスが増える可能性があります。
 
 
関西で活動しています認定スポーツトレーナーの伊東尚孝です。
 
 

そもそもメンタルとは

 
一般的には「メンタル」と一言で済ましてしまうことが多いですが、メンタルとは「本能」と「理性」の二つで成り立っています。
 
「本能」とは、いわゆる感情であり、楽しい、悔しい、怒りなどを表出するものです。欲求や気分、機嫌なども含まれます。
その「本能」をコントロールするのが「理性」です。具体的には思考や判断、選択、分析などを担っています。我々は「理性」があるから、道徳的な行動をとることができ、考えて行動し物事を選ぶことができます。
 
「本能」は言い換えれば赤ちゃんのような存在であり、感情のまま行動してしまうものです。「理性」はそれをコントロールする大人のような存在と言えます。
その「本能」と「理性」をいかに共存させられるかで、メンタルはコントロールできるか否かに分かれます。
 

 
 
簡単な例を挙げると、すぐ試合中にカッとなって集中できない選手は、「本能」が感じる怒りが表面上に現れ、それを「理性」がコントロール不能になっている状況といえます。
 
 
つまりメンタルの強化には「本能」と「理性」のバランスが不可欠でありますが、それだけでは不十分です。
なぜならメンタルが弱い原因は、様々な要素が絡み合っており、個人差があるからです
考え方のクセや生活環境、メンタルブロックなど原因は一つとは限りません。
 
そこで今回は、メンタルが弱い原因の一つである「失敗イメージ」について解説していきます。
 
 
 

失敗イメージは蓄積される

 
 
過去の失敗や苦手な相手、プレー中の失敗パターンなど、各選手それぞれ失敗イメージがあると思います。
どのような失敗イメージがあるか、具体的に例をあげて解説していきます。
 
例)サッカー
*いつも決定的な場面でシュートを外す。
*一度トラップミスをしたら、立て続けにトラップミスをする。
*同じ相手・チームに同じ負け方をする。
 
この失敗イメージには、
「またミスをしてしまったら、負けてしまったらどうしよう」という不安がよぎると思います。
そのような不安なイメージを、無意識に頭の中で繰り返していませんか?
 
脳は、現実に失敗したことと、失敗をイメージしたことの区別をつけることができません。したがって、失敗イメージをすればするほど脳は失敗体験を蓄積していきます。
 
例えば、実際に決定的な場面でシュートを外したことがあるのは1回だとします。
その後、試合中や練習中で、「あの場面」を10回イメージしたら、脳はその失敗を11回体験したと思い込みます。
 
 
つまり、「失敗イメージの蓄積」がメンタルの弱さを生み出している原因の一つになっていると考えられます。
 

 
 

成功イメージを鍛える

 
「過去の失敗」というネガティブなイメージを取り払うためには、そのプレーに成功イメージを上書きする必要があります。
イメージトレーニングなどの思考的なアプローチはいくつか方法がありますが、今回は身体的要素へのアプローチについて述べていきます。
 
 
上記で述べたように、脳は実際に体験したこととイメージしたことの区別をつけることができません。
それを逆手に取り、成功体験を脳にインプットしていきます。
 
ただ闇雲に成功イメージを持って反復練習を行っても、そこに「どのような動き・姿勢が組み合わさっているか」という自分の身体を感知することが欠かせません。
身体が整っていない状況での反復練習はマイナスの学習を引き起こすリスクもあり、成功イメージを鍛えることは難しくなります。
 
 
 

変化に気づくことができる身体に

 
では、どのように成功イメージを獲得していくかを具体的に解説していきます。
上記で述べたように、失敗パターンが「どのような動き・姿勢が組み合わさっているか」を自分の身体で感知する必要があります。
 
そのためには、まず「失敗パターンの分析」を行います。
 
失敗パターンがどのように発生しているか、その時の自分の動きや姿勢はどのような状態にあるのかを分析します。
分析する時のコツは、プレーを時系列に区切ることです。
 
例えば、サッカーのシュート場面を大まかなフェーズに区切ると
〈ゴールの認識→ボールの認識→助走→上半身の回旋運動→軸足の踏み込み→蹴り足の振り抜き〉といった具合になります。
フェーズごとに区切られたら、どのフェーズでエラーが生じているかを分析します。
その際の身体の動きや姿勢などを把握し、成功するためにはどうなれば良いかを考えます。
おそらくエラーが生じているフェーズでは、主観的なイメージと客観的な動きに誤差が生じているかと思われます。
 
最初は客観的な指摘や、自分の動きを録画したものを客観的に分析することから始める方がいいでしょう。
(最終的には自分の身体の感覚を変えるため、客観的なアプローチに依存し過ぎないように気を付けます。)
 
 
では自分の身体を“感覚的”に把握するためには、どうすべきか。
それは、日々の身体状況の変化に気づくこと。
 
厳密に言うと、変化に気づく意識を持ち続けること。
プレー中だけでなく、日常生活からも。
歩き方、立ち方、座り方など、日頃から身体の変化に気づく習慣をつけることで、プレー中の自分の動きの変化を感知しやすくなります。
 
我々は普段から姿勢や動作を、筋や関節などにある固有感覚をもとに感知しています。
固有感覚受容器の働きを高めることで、細かな姿勢や動作を再現することができます。
 
すなわち、固有感覚というセンサーの感度を上げることが重要です。
 
 
ここで活用したいのが、Tレフストレッチ
 
Tレフストレッチとは、体を効率良く機能させるために必要な部位に固有感覚(体性感覚)を入力しながら行うストレッチのことです。
Tレフストレッチのメリットは短時間で複数の筋に刺激を入れることができることです。練習前後はもちろん、起床後などにも取り入れることで固有感覚の感度を高めることができます。


 
 
身体状況を感知することができれば、失敗パターンと成功イメージとの誤差に気づきやすくなります。
あとは、その誤差を埋め合わせるトレーニングを繰り返す。
成功パターンの蓄積によって今までの失敗パターンは薄れていき、成功イメージを構築しやすくなっていきます。
 
成功イメージが構築できると、やるべきことは一つだけ。
 
 
その成功イメージを脳内で繰り返す。
 
 
脳は、実際の体験とイメージしたことの区別がつきません。
その特性を利用し、今までの失敗イメージから成功イメージへと変換します。
 
「過去の失敗」というネガティブな思考が、「このプレーは成功する」というポジティブな情報に上書き保存された瞬間です。
 
 
 
今回の内容をまとめると、
 
①イメージは実体験として脳に蓄積される。(メンタルが弱いと言われる正体の一つ)
②成功イメージに変換するためには、まずは失敗パターンを分析する。
③身体状況を整え、自身の体の変化に気づく習慣をつける。(Tレフストレッチを活用)
④成功パターンが構築されれば、そのイメージを繰り返す。
 
 
 
 
いかがでしょうか。
 
メンタルの弱さは生まれつきではなく、知らず知らず積み上げてきたマイナスのイメージであることもあります。
そして身体環境の調整によってもメンタルを整えることができ、身体的なトレーニングと同じでメンタルもトレーニングによって強化することができます。
 
 
 
 
今回は、メンタルの弱さの原因が「過去の失敗」であると解説しました。
しかしメンタルはそれほど単純なものではありません。
様々な要素が絡み合っており、個人差があります。
つまり、メンタルの弱さは「過去の失敗」だけが原因とは限りません。
この記事を通して、メンタルが弱いと悩む選手が少しでも解決できる方向へ変われれば幸いです。
 
 
勝利を目指して、メンタルの強化も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年05月01日

活動報告 / 全国高校選抜空手道大会 高松中央高校結果報告

いつもJARTA公式ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
本日は、赤山僚輔がトレーニング・コンディショニングサポートを継続しております香川県の高松中央高校が3月に和歌山で開催された全国高校選抜空手道選手権大会にて以下の成績を収めましたので活動報告とともに日頃のサポートについてご紹介させていただきます。
 
大会結果は以下のサイトからもご覧ください。
http://www.jkf-hs.com/cha_sen_result/cha_sen38.html

第38回全国高校選抜が閉幕!


 
個人では組手で優勝1名。3位3名。5位2名。
個人の形では準優勝1名。
団体組手では女子が初優勝。男子は準優勝という結果でした。

 
今大会はこれまでサポートしてきた中でも最高の結果であり、アベック優勝を目指している選手たちからするとあと一歩で達成できず悔しい思いもありますが、これまでの積み重ねが少しずつ実っていると感じさせる機会となりました。
 
普段の本校へのサポートはトレーニング指導が中心で、試合前にはコンディショニングを実施することもあります。
 
今大会の前にも身体で気になる部位がある選手へのコンディショニングを行い、その選手が本人が目指していた結果よりも上回り、サポートするスタッフとしては本当に嬉しい瞬間となりました。
 
これまで球技やチームスポーツに関わることが多く、空手道については武道であり、個人競技であるような認識でした。
ところがサポートを重ね、試合帯同等も実施するなかで団体戦などは特にチームスポーツと考えるべき要素はかなり重なるところがあると感じています。
 
トレーニングを実施する際にも、男女で同じメニューを行なっており、最初に全国制覇を成し遂げた男子の影響を女子は色濃く受けていると日々実感します。
次は自分たちの番だと言わんばかりに集中してトレーニングに望む姿からは、凄みも感じます。
 
今回は普段行なっているトレーニングをいくつかご紹介いたします。
 


 

 
JARTAが発信するSNS等でみたことのあるトレーニングもあれば、よく似た動きながらも
初めてみるものもあるかもしれません。
 
実際に現場のトレーニングでは競技で求められる動きを優先しながら
その動きを向上させる為に、同じようなトレーニングでも目的や意識の向け方を変えています。
 
またトレーニングを応用し、より競技のパフォーマンスアップへと繋がるものへ昇華させていきます。
 
 
そういったトレーニング自体は、現場での選手の動きや指導者からの要望によって
新たに生まれることが多々あります。
 
その為に、名前のついていない物もまだまだありますが。
 
そして、大事なことは、自分自身がサポートしている他の競技のアスリートへも
還元できているということです。
 
空手道の一瞬の動きはボールを扱うような球技の一瞬の動きよりも
遥かに速いです。
 
その動きが習得できていくトレーニングを、バレーやサッカー・バスケットボールでの
トレーニングに応用することはより高いレベルでの競技動作を獲得するうえで
重要なきっかけになります。
 
今後もこのような現場でも学びを、関わる全てのアスリートに還元しつつ
こういった形でJARTAでもお伝えできればと思っております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年04月29日

スプリンターに必要な2つの足とは??

 

文:谷口祐樹

 
もっと足が速くなりたい。
 
皆さん一度はそのように思った事はありませんか?
 
様々なスポーツの中で速く走れる事は確実にアドバンテージになります。
最近では陸上競技出身のコーチをスプリントコーチとして招くチームや選手が数多く出てきておりますが、各競技において必要な「速く走る」という事は言葉が同じであってもその中に含まれている「身体構造及び機能」は異なっています。
 
今回はわかりやすいようにスプリンターを例にして速く走る為に必要な下半身の構造及び機能について考えていきましょう。
 

速く走るとは??

 
確かに、スポーツの中で速く走れる事は確実にアドバンテージになります。
しかし単純に速く走れるだけではパフォーマンスに直結しないと皆さまの実感や体験としてお分かりだと思います。
 
速く走る為の要素は「ピッチ×ストライド」で表す事が出来ます。
 
誰よりも速く足が回転し、誰よりも歩幅を大きく走る事が出来ればいいわけです。
しかし、競技や状況によって求められる機能が大きく異なります。
 
サッカーの場合、求められる「速く走るとは」単純に考えるとピッチを向上させていくほうが競技にとって有利に働きます。
ドリブルやボールコントロール時に足を速く捌く必要がありますし、急激なストップ&ゴールが求められ上半身の動きも状況に応じて使い分ける必要があるからです。
 
では単純にスピードが求められるスプリンターではどうでしょうか?
 

スプリンターに必要な2つの足とは??

 
スプリンターにおいても単純にピッチ×ストライドを高めていけば良いわけではありません。
各フェーズに対して必要な身体機能が異なり、それぞれ適応するためには「2つの足」が必要となります。
 
スプリント種目は疾走速度の変化をもとにフェーズを分けると3つに分けられます。
その3つとは以下となります。
 
1、加速局面
2、最大疾走局面
3、減速局面
 
この3つの局面に対してパフォーマンスアップを検討していく必要があります。
では、それぞれ必要とされる構造及び機能を見ていきましょう。
 
スタートの加速局面は「柔らかい足」という一つ目の足の機能が必要です。
 

 
運動量の変化は、加える力が大きければ大きいほど、また力を加えている時間が長ければ長いほど大きくなります。
そのため、地面との接地時間が長く保てるような足首の背屈及び股関節伸展の可動域、さらに体幹が前傾しても姿勢を保てる体幹筋力などの身体機能が必要です。
 
次に最大疾走局面において必要な能力としては「加速で得たスピードを長く保つ能力」です。
人間は、いつまでも加速し続けることは出来ません。自分が出せるトップスピードに達すると、それ以上速度を上げることは出来なります。
 
この時の状態を物理的に説明すると、地面からの推進力は受けておらず慣性の法則により前に進み続けている状態といえます。
地面に足を着いた時のブレーキと地面を押して前方へ進む為の加速力がちょうどつりあった状態であるともいえます。
 
その際にはスピードが上がるにつれて、地面との接地時間が短くなり短い時間で大きな力を発揮するような機能が必要となってきます。
 
つまりトップスピードに近づくにつれて足首を硬めて、身体が一本の棒のようになる状態。
そして地面から反発をもらい弾性エネルギーを得る為の「硬い足」という二つ目の足が必要になってくるのです。
 

まとめ

スプリント種目という競技でさえ、走る局面において様々な身体機能及び構造が必要です。
ランナーは筋肉の硬さや関節の動きで脚の硬さを調整し、短時間での加速やトップスピードを維持しやすい状態、つまり「柔らかい足」と「硬い足」という脚の機能を有することが必要なのです。
 
みなさんが携わったり、プレーしている競技において「速く走る」とはどういう事でしょうか?
一度頭で整理してみてください。
そうすると「速く走る」為のトレーニングにおいてどういうものを選択すれば良いかが、みえてくるはずです。
 
もしお困りでしたらJARTAトレーニングサポートをご利用ください。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2019年04月25日

活動報告 / 高校野球のサポートから小中学校のサポートへ

文:米沢康平

 

現在の私は4年前から行なっていた高校野球のサポートを一旦離れ、盛岡市内、岩手県内の小、中学生の野球チームのサポートを行なっています。
 
 
今回の活動報告では関わっているなかで感じたこと、今後実現していきたいシステム作りを紹介したいと思います。
 
 
まず、小中学校に関わらずですが現状の課題はチームによってストレッチ・トレーニングが定着しているところとそうでないチームが分かれているということです。
 
これに関しては、その地域ごとに選手が集まって、 異なる指導者のもとで野球を教わっているため、ストレッチやトレーニングの重要性に関する認識の差が生じることはいわば当たり前だと思います。
 

 

また、様々なチームに関わっていて、指導者や選手との話で他のチームにどんな選手がいてどんなトレーニングや身体操作ができる選手がいるかわからないし知りたいとの声がありました。
そこで、小学生のチーム同士でストレッチやトレーニングを一緒に取り組む場を作っていければお互いの技術向上に繋がると感じました。

 

 
しかし、市内のトーナメントで戦いあうチーム同士がお互いの練習を見せていくということにはもちろんデメリットも伴います。
戦術や野球の技術を共有してしまうとデメリットが多くなるかもしれませんが、ストレッチやトレーニングレベルでは共有してもいいかと思います。
野球に必要な運動というのはどのチームでもどの子供たちにも共通して大事なものになってきます。
また、指導者にとっても他のチームがどのように身体作りに取り組んでいるかを把握できるのはとても良い機会です。
 
実際、関わっているチーム(ここでは A チームとします)と練習試合をした指導者の方とお話をした際、「Aチームのアップを見ましたがあの動きはうちのチームにも必要そうですね。今度、指導する時に見学させてもらってもいいですか?」とのお話をいただきました。
 
このように、他のチームが行なっているトレーニング等が気になっているがなかなか知る機会も少なく、聞けないというのが現状です。
 

 

そこで少しのきっかけを作るためにトレーナーという立場を使わせていただき、パイプ役としてチーム同士の合同練習の場を作ることにしました。

 
小学生のチームは比較的、親御さん主体で指導をしているチームが多いため、保護者の方に向けてストレッチの重要性、トレーニングの方向性を同時に伝えていくも大切だと感じ、同じ場での指導を行なっております。
 
 
選手の感想としては、「他のチームにこんなに素早く動ける選手がいるとは思わなかった」「自分たちのやっているトレーニングをもっと変えて上手くなりたい」などの声がありました。
 
また、指導者、親御さんの方からは「他のチームの上手いと思ったトレー ニングを練習してみたい」「練習に取り組む姿勢など見習うことがたくさんあった」など、私の意とした成果以上の反応を得ることができました。
 

野球界はまだまだ閉鎖的な部分が多いかもしれません。
自分のチームが強ければいいという思いを持った方々が多いことも当然ではありますが、野球が好きな子供たちが純粋に上手くなる、野球に限らずスポーツの楽しさに気づくという本質のために、手段を選びすぎていると感じています。
 
 
今回のような他チームとの合同練習を行なうというきっかけづくりを提供できたのは小さなことではありますが、私のなかでは大きな一歩を踏み出せたと思っております。
今後、中学生・高校生同士のトレーニングの場を作っていき、高校生による小学生への指導など、縦と横のつながりの連携を図りながら進めていきたいと思っています。

 

簡単ではありますが活動報告と共に、私自身が小中学校でのサポートを今後継続していく上での重要な一歩についてご紹介させていただきました。

 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年04月22日

今しているトレーニングは変えずに成長できる


 

文:岩渕翔一

 
スポーツをする以上、誰もが上手くなりたいし常に成長し続けたいと考えていると思います。だからトレーニングをするし、練習もします。当然、その中で、
 

  • このトレーニングでいいのだろうか?
  • この練習メニューでいいのだろうか?
  • もっと良い方法があるのではないだろうか?

(さらに…)

2019年04月21日

この体幹トレーニング、呼吸を止めず、10秒できますか?

文:青木正典

 

JARTAの体幹トレーニングとは?

 
東海地方で活動するJARTA認定スポーツトレーナーの青木正典です。
今回はJARTAセミナーで学ぶことができる体幹トレーニングの一つ「クレーン」を紹介します。
 
クレーンは体幹機能だけを高めるものではなく、いろいろな要素が複合して達成できるトレーニングで、できるできないの先にはその質を高めていくことが重要です。
そのトレーニング方法と、その効果をお伝えします。
時間を作って、ぜひチャレンジしてみてください。
 

2018年プロ野球自主トレ

埼玉西武ライオンズ高橋光成選手の体幹トレーニング(クレーン)

 
 

トレーニングの方法

 

JARTA認定スポーツトレーナー青木正典のクレーン

 
行う際は、頭部・顔面付近のケガに十分に注意して実施してください。
事前準備として、メガネを外して行う、顔面を打たないように前方にマットを敷くなどの対策をした上で、集中できる環境で行うことをお勧めします。
 
床に両手をつきます。
肘の裏側に膝を乗せます。
そこから足を浮かせて、上肢で全体重を支えます。
バランスをキープします。
 
10秒キープできましたか?」
 

トレーニングのポイントは

・やや小指側(尺骨)で、体を支える

・重心を捉えバランス良くできる限り、少ない力で行う

・呼吸を止めない

・10秒以上キープ

です。

 
特に初めて挑戦した方は、なかなか難しいかもしれません。
しかし、安心してください。
今すぐにできなくても大丈夫です。
オススメの方法があります。
 
トレーニングをするときは、トレーニング方法を熟知しているトレーナーに指導を受けることや上手くできる選手と一緒に行うことをお勧めします。
実際に出来る選手やトレーナーの手本を見ることでトレーニングのイメージがしやすくなり、効率良くトレーニングに取り組むことができます。
トレーニングを効率良く上手く行うための事前のウォーミングアップ、アシストトレーニングもあります。
クレーンができるようになったら、その質を高めると同時に、さらにレベルアップしたトレーニングもあります。
 
 

クレーンの効果とは?

 
今回紹介したトレーニングは、自分の全体重を両手で構成された支持基底面でバランスを取りながら保持する体幹トレーニングです。
主に、上半身の重要インナーマッスル、脇にある筋肉(主に前鋸筋)と、骨(関節)の力(関節間力)を使い強化することで、パフォーマンスアップにつなげます。
また、初めて行うときは高い集中力が求められるトレーニングです。
 
上記のトレーニングのポイントにあるように、手をつき、やや小指側(尺骨)で体を支えることで、骨格構造と、前鋸筋が使え、体を支えやすくできます。
できる限り少ない力で行うことで、力みの少ない動きの獲得につながり、バランスよく行えたり、外乱刺激に対応出来るようになります。
また、呼吸が止まっているということは、余計な全身の筋緊張が亢進することにより、スタミナを消費し、力みにもつながります。
呼吸が止まっていないリラックスした状態、それくらい余裕がある状態で、クレーンの姿勢がとれることが重要です。
 
その他に、クレーンができることで
・バランスをキープしながらのパワー発揮能力アップ
・上肢の力の出し方(どこに力を入れるべきか)の学習
・上肢・体幹の筋出力バランスの向上
ができます。
 
つまり、この1回のトレーニングで「バランス」や「パワー」を同時に高めることができます。
「上半身の筋力はあるけど、上手く力が伝わらない、力を発揮できないなどで力負けしてしまう」
「上半身をもっと使えるようにしたい。ボディバランスを良くしたい。」
という選手にオススメのトレーニングです。
 
 

実際にクレーンを指導してもらう方法

 
クレーンはJARTAトレーニング理論コースレベル1でお伝えしているトレーニングです。
しかしセミナーはトレーナー育成を行う場です。
選手やチームはJARTA認定スポーツトレーナーに依頼していただければ、出張や遠隔地でのトレーニングサポートができます。全国各地には認定トレーナー試験を合格したスポーツトレーナーがいます。
手本を見ることでイメージがしやすくなることをお話しした通り、トレーニング方法を熟知し、高いレベルで手本を示せるトレーナーに実際に指導してもらうことをお勧めします。
早めに習得できれば、自身のパフォーマンスアップと怪我予防につながります。
 
 
プロスポーツ選手と同じトレーニングを受けてパフォーマンスアップしたい、体幹トレーニングを指導して欲しいなど、JARTAトレーニングサポート依頼についてはこちら。
http://jarta.jp/dispatch/
 
 
今回は「JARTAの体幹トレーニング」を紹介させて頂きました。
時間を作って、必ずチャレンジしてみてくださいね。
 
最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 

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2019年04月17日

慢性疼痛の正体

文:伊東尚孝

 
皆さんは「慢性疼痛」と聞いて、思いつくことは何でしょうか?
 
 
多くの方は「腰痛」「肩こり」などを連想するのではないでしょうか。
 
または、足首の捻挫をしてからずっと違和感がある。
膝の手術をしてから力が入りにくい。
それほどの痛みではなくても、何かしら常に違和感を抱えている人は少なくはないと思います。
症状の程度は人それぞれでしょうが、誰しも経験があると思います。
 
そんな慢性疼痛は、厄介なことにスッキリ痛みが取れるのに時間がかかることが多いです。
もしくは何をしても痛みが取れない・・・
 
なぜなら慢性疼痛は、疼痛部位の問題だけでは解決しにくいからです。
今回は、そんな慢性疼痛を引き起こす「根本の原因」について迫っていきます。
 
JARTA 認定スポーツトレーナーの伊東尚孝です。
 
 

原因は背骨にあり

 
慢性疼痛の厄介なところは、一時的に良くなっても、また再発するところにあります。
なかなか良い状態を維持できず、結局また治療するサイクルに陥ってしまいます。
その理由は、痛みの原因は様々な要素から成り立っており、局所だけの問題解決では限界があるからです。
 
そこで注目してほしいのが
「背骨」
背骨は体の中心に位置し、上から頚椎 7 個、胸椎 12 個、腰椎 5 個、仙骨 1 個と骨が並ん でいます。
骨は、文字通り体の骨組みを形成し支える、臓器を守る、カルシウムを貯蔵する、血液を作るなどの役割がありますが、「力を伝達する」という役割もあります。
 
この「力を伝達する」仕組みが慢性疼痛を解決させるヒントになります。
 

二足歩行の始まり

 
話は少し変わり…
ヒトは進化していく過程で、四足歩行から二足歩行になりました。
この進化によって、背骨のアライメント(姿勢)が大きく変わりました。
 
四足歩行をする動物の背骨は、頚椎から下部は弓なりに弧を描くアライメントになっています。
しかし二足歩行となったヒトの背骨は、S 字に弯曲しています。
 
なぜ S 字に進化したのか・・・
 

その理由は単純で
「力を伝達する」ために、背骨は S 字のほうが効率が良いからです。
 
重力(体重)を支えるための力や、歩く時の足からの衝撃(床反力)などの力を、S 字の背骨は全身に伝達・分散することで、無駄な力を使わずに姿勢・動作を成立させます。
 
足部やひざ、股関節なども力を伝達するために重要な部位ですが、体の中心部に位置しており、多くの骨が連なり多くの筋肉が付着する背骨が、最も効率が良いと考えます。
 
裏を返せば、二足歩行を行うためには背骨を S 字に弯曲させるのは必然だったのでしょう。

 

 

背骨の S 字弯曲の崩壊

 
そんな背骨の S 字弯曲ですが
「座る・立つ姿勢のクセ」「パソコン、スマホの使い過ぎ」「運動不足」などの生活習慣の影響を受け、背骨の S 字弯曲は崩壊し硬まってしまいます。
 
その結果、背骨の柔軟性が低下し、背骨で力を伝達しにくくなり他の骨(関節)が背骨をかばってしまいます。
これを専門的に「代償」と言います。
 
実は、背骨の固さを代償することで他の骨(関節)に必要以上な力が加わります。
この必要以上な力が骨(関節)に少しずつストレスをかけて 慢性疼痛を引き起こしてしまいます。
 
つまり
「背骨」の柔軟性低下
慢性疼痛の「根本の原因」となり得ます。

 

(腰痛の場合、腰も「背骨」の一部ですが、上下にある胸椎・仙腸関節などが問題になることがあります。
同じ「背骨」でも、部位によって柔軟性は変わってきます。)
 
 

背骨の柔軟性を高めるワーク

 
本来であれば背骨は一つ一つがばらばらに動くものです。
ほんのすこしずつ動いた結果、カラダを曲げ伸ばしでき、捻ることができます。
これから紹介するワークには、その「一つ一つをばらばらに」という意識が重要になります。
 
〈方法〉

①足を曲げた状態で座った姿勢からスタートします。
②骨盤から腰椎にかけてゆっくり下ろしていき、背骨一つ一つを順番に床へつけていきます。
③背骨が首の下(第7頸椎あたりまで付いたら、両足を持ち上げて床から離していきます。
④背骨一つ一つをゆっくり離して行き、つま先が床につくまで動かします。
再び、④から①まで姿勢を戻していきます。
 
コツとしては、あらかじめ背骨がどこにあるかを手で触ってから行うと、触った感覚が残っているうちにワークに取り組めます。
 
また、カラダが硬くてこの姿勢が厳しい場合は、①と②の繰り返し、③と④の繰り返しで分節的にワークをしても効果的です。
 
他にも背骨を捻るようなストレッチや前屈などでも、背骨をばらばらに動かす意識があれば、そのストレッチの効果は増大します。
 
いかがでしょうか。
疼痛部位だけの治療で良くならないと思っている方は、背骨の柔軟性を見直しワークに挑戦してみてください。
 
また背骨の柔軟性を高め、背骨を介して力を全身に巡らせることができれば、強いパワーと速いスピードで動くことができると同時に、怪我の予防にもつながります。
カラダの中心にある非常に重要な部位なので、パフォーマンスアップに大きく貢献することができると思います。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

 

※今回ご紹介した内容では、疼痛部位以外の背骨にアプローチすべきだと述べましたが、疼痛部位の評価があってこその話です。
疼痛部位には間違いなく何らかのストレスがかかっており、全く問題がないと言うつもりはありません。
あくまで、局所の慢性疼痛を「二次的なもの」として捉えていることを、ご理解いただけると幸いです。

 

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2019年04月15日

JARTA会員制度終了のお知らせ

平素より、JARTA会員制度をご利用いただきありがとうございます。
誠に勝手ながら、2018年度(2018年9月1日~2019年8月31日)をもちまして、JARTA会員制度を終了することとなりました。
サービス終了までのスケジュール、コンテンツの取り扱い等につきましては、
会員制度終了のお知らせをご確認ください。
長らくのご利用、ありがとうございました。

JARTA事務局

2019年04月14日

立甲を再考する

 

文:竹治久里子

 
 
 
『四足歩行動物が歩いている姿を見ると、肩甲骨が立った状態になっている。この状態を “立甲”と言う。(高岡英夫 提唱)』
 
JARTAのホームページには写真が載っており、セミナーを受講した方には自由にダウンロードできる解説書まで作られている立甲。
解剖学的に見ると、立甲とは肩甲胸郭関節にあたる肩甲骨前面と胸郭後面を引き離す形となっている。
肩甲骨内側縁が胸郭から浮き上がり、菱形筋と前鋸筋は伸張されている。
 
 
そもそも肩甲胸郭関節は機能的関節と呼ばれ、解剖学的関節とは違い滑膜を持たず、骨と骨がかみあって安定性を保つのではなく筋によって肩甲骨と胸郭が結び付けられている。
肩甲骨に付着している筋には僧帽筋、菱形筋、前鋸筋、小胸筋があり、肩甲骨の動きに直接的に関係してくる。
肩甲胸郭関節の動きには2つの滑走動作(挙上/下制と外転/内転)と3つの回旋運動(上方回旋/下方回旋と前傾/後傾と内旋/外旋)があり、基本的に肩甲骨が胸郭の上を滑るような動きになる。
 
 
 
ここで引っかかるのは、立甲をしている状態は、肩甲骨と胸郭が引き離されて内側縁が大きく浮き上がっているということ。
この形だけをみると、肩甲胸郭関節は破綻していることになる。
本来は、肩甲骨が胸郭に覆いかぶさるように動く機能を関節と捉えているのだから。
 
 
 
では肩甲胸郭関節が破綻するとどうなるのか。
 
 
 
Joint by joint という考え方がある。
人体の各関節は大きくモビリティ関節とスタビリティ関節に分けられ、それは人体の関節に交互に存在するという考えである(Michael Boyle、Gray Cook)。
これによると肩甲胸郭関節はスタビリティ関節であり、安定性が求められる関節になる。
 
確かに腕をあげる動作などにおいて、土台となる肩甲骨が安定していないと上腕骨がスムーズに動かないというのは納得のいく話である。
もちろんスタビリティ関節とはいえ全く可動性が必要ないというわけではなく、上肢のスムーズで十分な動きを獲得するためには、肩甲上腕関節の動きに伴って肩甲胸郭関節も動く必要がある。
 
滑走運動と回旋運動により上肢のスムーズな動きを補助しつつ、基本的には安定性が求められる関節、これが肩甲胸郭関節の役割である。
安定性が低下する原因としては、肩甲骨と胸郭を引き付けている前鋸筋の機能不全が主に考えられる。
引き付けが不十分になり内側縁が浮いている状態、これは「翼状肩甲」と呼ばれ、怪我の原因になったりパフォーマンス低下につながったりする。
立甲の形だけを見ると、同じような形になっている。
もちろん「翼状肩甲」「立甲」は全く違うものであり、JARTAの立甲解説書にもはっきりと書かれている。
 
 
しかし立甲を習得しようとすると、その意義よりもまず形を真似したくなる。そして見た目上は立甲ができたように見える人がいる。
 
実は私がそうだった。
 
筋力の強い男性ではあまり起こらないエラーかもしれないが、女性でもともと「翼状肩甲」 ぎみで前鋸筋がしっかり使えていない場合、菱形筋の硬さが取れれば肩甲骨の内側縁は浮かせやすい。
まだ身体のできあがっていない子供も同様だと感じる。
 
前鋸筋などがしっかり使えていて肩甲胸郭関節の安定性がしっかりある人にとっては、あまり弊害のないトレーニングかもしれないが、そもそも前鋸筋が使えておらず安定性に欠ける人にとっては、より不安定性を高めてしまうマイナスの学習になってしまう可能性があるということ。
 
この可能性に気づかずに、見た目の派手さや一方向のメリットだけをみて立甲を指導することのリスクを知っておくべきである。
 
 
立甲を習得するということは、手を身体の前に出していてもゼロポジションをとれる、つまり肩甲上腕関節にかかる負担を軽減することができるなどのメリットがある。
 
とはいえ、上肢を自由に動かすためには、まずは安定性(土台)が必要であり、その安定性は肩甲胸郭関節から得られる。
 
その肩甲胸郭関節を安定させるためには、前鋸筋をはじめとする肩甲骨に付着部を持つ筋の働きが重要である。
つまり、そもそも前鋸筋が使えていない人に立甲だけを指導しても意味がないどころか、マイナスの学習になってしまう可能性がある。
 
 
 
今回は立甲について考察したが、これに限ったことではない。
一見すると、従来定義されている機能や運動と矛盾するような動きを習得する場合、変わった動きや形だけに目が向きがちになる。
 
 
しかしそういった場合ほど基本に立ち返って、一度疑ってみる、疑問に思うということが必要だと思う。
 
 
とくにトレーナーとして誰かに指導する場合、そのやり方やメリットを説明するのは比較的簡単だが(そのトレーニングの提唱者が言ってくれているので)
「その選手に本当に必要か」
「今この選手に指導して問題ないか」
「リスクやデメリットはないか」
 
ということを伝えられるくらいに、自分の中で昇華させておくべきだろう。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

合わせて読みたい記事

続・立甲を再考する
 
 
 

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2019年04月08日

ジュニア世代の運動指導で押さえておくべきポイントを脳科学を踏まえて解説

 

文:岩渕翔一

 
ジュニア世代(特に小学校低学年まで)のトレーニングにおいて飽きさせない工夫や注意を引く工夫、こちらのやって欲しいことをさせるための工夫などを教えて欲しいと質問がありました。
面白いテーマなので今回はこのテーマに関して考えていきたいと思います。
(さらに…)

2019年04月01日

身体操作系トレーニングV S 筋力トレーニング 優秀なのはどっちだ!??

文:岩渕翔一

 
JARTAは身体操作系トレーニングがメインで筋力トレーニングをあまり行わないと言われたり。
選手やチームのためという目的は変わらないはずなのに、それぞれのメソッドを主張してトレーナー同士が縄張り争いや誹謗中傷したり。
そんなことがずっと繰り返されるのがもう嫌だしうんざりしています。
だからはっきりさせましょう。
本当に選手のためになるのは身体操作系トレーニングなのか筋力トレーニングなのか。
 

身体操作系トレーニングと筋力トレーニングの定義

そもそも身体操作系トレーニングってなんでしょう?
筋力トレーニングってなんでしょう?
これは我々がいつも言っていることですが、定義が曖昧なまま、それぞれの主観的定義づけでそれぞれが主張し合うから話が噛み合わない。
それほど不毛で生産性のない議論はありません。
まずは定義づけを。
 
 
[身体操作系トレーニング]
運動課題そのものが複雑で難しい。
運動そのものができない又は明らかにぎこちない状態から始まり、習熟していくことで運動学習による運動課題の遂行が滑らかになる。
その過程で起こる身体及び神経系の変化が機能的要素に対するトレーニング効果となる。

[筋力トレーニング]
主に重量の負荷を身体に与え、それに抗することを反復することで筋肥大を中心とした筋力強化を目的とする。
 
ここで扱う身体操作系トレーニングと筋力トレーニングはこのように定義します。
 
 

身体操作と筋力の階層

ここで一度2つの例を出して考えてみます。それぞれ身体操作、筋力両方の側面から考えてみます。
 
例1:ベンチプレス70kgを1セット7回しか上がらず10回できない。
[身体操作軸での解釈]
70kgのバーベルを10回連続で上げるという運動課題を遂行できない。
→70kgのバーバルを10回連続で上げるという運動ができるようになるよう、トレーニング。
[筋力軸での解釈]
大胸筋の筋力不足で70kg10REPを行えない。
→ベンチプレス70kg10REPができるよう大胸筋の筋力強化を行なって行く。
 
例2:逆立ちができない
[身体操作軸での解釈]
逆立ちという両手掌で構成された基底面内でバランスを取りながら両上肢中心で身体を支えるという運動課題を遂行できない。
→逆立ちという運動課題を遂行できるよう練習し、それを実現するための構成要素も個別で強化しよう。
[筋力軸での解釈]
上肢及び体幹の筋力不足で身体を支えることが出来ない可能性がある。
→全身を支えることができるだけの上肢や体幹の筋力を強化しよう。ただし、逆立ちができるようになるためにはバランスも重要なので他のトレーニングもしなければならない。
 
例1は一般的で代表的なウエイトトレーニングのため筋力トレーニングに分類。例2は逆立ちという身体操作を要する運動課題で分類としては身体操作に当てはまるトレーニング。
どうでしょうか?
筋力トレーニングであろうが身体操作系トレーニングであろうが他のどのようなトレーニングであろうがそれぞれ「運動課題」であることは同じです。
ということは、どのように解釈するのか?というのは捉え方や視点によって変わりますが、結果的にその運動課題が「より上手くできるようになる」という目的は一致しているはずです。
 
ここで見えてくるのは身体操作系トレーニングと筋力トレーニングというのはそもそも階層が違うということ。
 

 
 
このように階層としては、
競技パフォーマンス

身体操作

筋力トレーニング
となるため、どちらかが優秀であるとかどちらが必要だとかそんな考え方になるはずがない。
 
この階層で見ると競技パフォーマンスを発揮するための一条件が身体操作であり、身体操作を実現するための一要素が筋力であることは明白です。
となれば筋力トレーニングも身体操作も必要である。というシンプルな解にしか辿り着きません。
例えばこの表上で筋力と同じ階層になる柔軟性を強化するためのストレッチを全く必要ないとすることなどあり得ないでしょう。それと同じで筋力トレーニングが必要か否かと言われれば必要に決まっているということです。
 

筋力と身体操作は階層が違うという前提での評価を

 
[身体操作系トレーニングに必要な評価とメニュー構成]
身体操作系トレーニングを行なった際に行わなければならない階層間の評価は大きく分けてこの2つです。
・その身体操作は、どういった競技パフォーマンス場面に対する強化になるのか。
・その身体操作で強化されている機能はどのような機能で、強化できていない機能はどのような機能なのか。また、強化できていない機能は補填すべきなのか否か。補填すべきなのであればそれに対するトレーニングはどのようなものなのか。
また、オーバーユースになるような要素はないか。

[筋力トレーニングに必要な評価とメニュー構成]
筋力トレーニングを行なった際に行わなければならない階層間の評価は大きく分けてこの2つです。
・機能に特化したトレーニングを行うことで起こる、その他の機能に対する影響(プラスとマイナス両方)。マイナスがあるのであれば、それを補填するトレーニングメニューはどのようなものなのか。
・その筋力強化は競技パフォーマンスのどの場面で活かされるのか。また、強化なのか補強なのか。
 

 
身体操作と筋力強化。当然それぞれメリットとデメリットがあります。必要なのは詳細な評価と、両方必要に決まっているという前提です。
 
全てはパフォーマンスアップの為に。
 
手段に囚われない。選手のために必要なことをやる。
筋力トレーニングと身体操作系トレーニングのどちらが優秀なのか。そんなものは優劣つかない。選手のためであれば両方必要であるということです。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2019年03月31日

その先へ行く為の柔軟性

文:岡元祐樹

 
身体が柔らかい = 怪我しにくい
 
このようなイメージを皆さんは持たれているのではないでしょうか。「だから柔軟性を高めよう」という選手や指導者は多いと思います。
 
一方、身体が硬くても怪我の少ない選手というのは存在します。またそういった選手は柔軟性を高めるトレーニングに対してやる気が出ない場合が多くあります。やらなくても怪我をしないのですから当然かもしれません。
 
今回の記事で伝えたいことは柔軟性の向上は単なる『怪我予防』ではなく、『競技力の向上』にも確実に役立つということです。
 
身体が柔らかい=競技で結果が出やすくなる
 
このようなイメージを定着させることで日々のストレッチやトレーニングを見直し、怪我をしにくく競技で結果を出せる身体へと近づいていきましょう。
 
 

身体が柔らかいだけでは柔軟性が高いとは言えない

 
まずここで『柔軟性』という言葉を整理しておきましょう。筆者が考える柔軟性とは『関節が使える幅』を意味します。ただ単に「立位体前屈で指先が地面に届く」というだけでは柔軟性が高いとは言えません。
 
競技において必要な柔軟性とは、様々な関節の角度で多様な動きができるということです。
逆に柔軟性が低いということは「限られた範囲での関節の角度でないと何もできない」という状態といえます。
 
具体例を挙げて説明すると『開脚』があります。
 

 
このように、座った状態で開脚できる範囲が広いことを「身体が柔らかい」「柔軟性が高い」という表現をすることがあります。
しかしこの状態になることが競技力に繋がる柔軟性なのかは少し考える必要があります。
 
 
次は体重のかかった状態での開脚です。
 

 
このように体重がかかった状態で開脚の形が保持できる。加えて上半身を自由に動かせる状態だとします。
このような開脚の方が実際の競技場面をイメージしやすいのではないでしょうか?
 
例えば野球の内野手が間を抜けそうなゴロを捕球するときや、バドミントンで落ち際のシャトルを目一杯手を伸ばして拾うときにこのような荷重位での開脚がしばしば見られます。
 
しかし一般的に柔軟性を高めるという名目で行われる開脚は、座って行う1つ目のストレッチの方がイメージされがちです。
 
同じ開脚でも「脚を開ききって終わり」なのか「脚を開いてさらに次の動きに移行していく」のかで意味合いが変わってきます。どちらが正解などはありませんが、競技や目的によって必要な柔軟性というものを考える必要があります。
 
 

立ち上がりからのダッシュを例にして柔軟性を考える

 
今年行われた男子サッカーアジアカップ準決勝の日本vsイラン戦。日本の先制点のきっかけになったのは南野拓実選手の『素早い立ち上がり』でした。
 
ドリブル突破をしかける南野選手が転倒し、ファウルでプレーが止まると思われた場面。
しかしプレーは続行されており、いち早くそのことに気付いた南野選手はすぐさま立ち上がってボールを追いかけました。
 
このような立ち上がりから素早く動き出す場面で『股関節の柔軟性』が重要になってきます。
 
通常の走行では体幹はほぼ垂直位であることが多く、股関節はあまり深く曲がる必要はありません。
 

 
しかしうつ伏せの姿勢から立ち上がって走りだす場合、最初の数歩は体幹前傾位を取ることになります。股関節をより深く曲げた位置から後ろへ蹴っていく動作になるのです。
 

 
この時股関節を深く曲げられないもしくは深く曲げた状態から後ろへ蹴れない状態、すなわち股関節の柔軟性が低い状態だったとしたらどうでしょう?
 
なんとか地面を蹴ろうと、その分腰を浮かして対応することになります。この腰を浮かす時間がロスとなって次のプレーへの移行が遅れてしまいます。
 

 

 
 
このような動きでは「股関節を深く曲げて、そこから後方に力強く脚を伸ばせる」ことがより早く動き出すために必要になってきます。
 
この例は股関節の前後方向(屈曲~伸展)の動きのみの説明になります。
股関節にはその他に横方向に開いたり閉じたり(外転~内転)する動きや捻る(外旋~内旋)動きがあり、これらの動きが複雑に絡み合い、多様な動きを実現しています。
 
関節の使える幅をしっかりと確保していく。つまり柔軟性を高めるということは競技力の向上に確実に役立つと言える理由です。
 
素早く立ち上がれない。ぶつかられると簡単に体勢が崩れてしまう。怪我が多い。
 
そういった選手は筋力の問題だけでなく、競技に必要な多様な動きができる柔軟性が獲得できていないのかもしれません。
 
 

もう1つ上のレベルでプレーするために

 
「柔軟性を高めたい」
 
多くの選手・指導者が想っていることだと思います。
 
柔軟性を怪我予防という目的のみで高めようとする場合、関節の動く範囲を拡げようというストレッチが主な手段になりがちです。
座ったままの開脚を例に挙げると、一見開脚は十分に開くことができても股関節周囲の怪我が多いという選手はいくらでもいます。
 
そのため競技特性や自身の得意・不得意なプレーを考慮し、必要な動き作りをしていく必要があります。
 
柔軟性を高めるための要素の1つに静的に筋肉を伸ばすストレッチがあり、確かに怪我を予防する効果も期待できます。
 
しかしそれのみで満足せず、柔軟性というものをもっと広い意味で、競技力の向上に役立つものとして捉えることをお勧めします。
競技力の向上のつもりでやっていたが、結果的に怪我も予防できていたということに繋がるはずです。
 
現段階で怪我が少なくとも、もう1つ上の学年、もう1つ上のカテゴリー、もう1つ上のリーグでプレーすることをビジョンとして描くのであれば、この柔軟性の意味を理解し高めておいて損はないはずです。
 
最高のプレーヤーを目指して。
 
お読みいただきありがとうございました。
 

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2019年03月25日

イチロー選手が徹底する、やれば誰でもできるのに誰もやらないこと

文:岩渕翔一

 
イチロー選手が引退しました。私は、マリナーズが日本で開幕戦を行いそれにイチロー選手が参加するというニュースを見た確か昨年9月。イチロー選手のプレーを日本で観れる機会はこれが最後だろうと思い、必ず観戦に行くと決意し、開幕戦の半年前から東京のホテルをおさえておきました。
 
色々ありましたが無事チケットを手に入れることができ、東京のJARTAスタッフと共に観戦に行きました。テレビの画面を通しでは決して分からない、その場にいてこそ分かる凄さが分かったので今回はそのことを記そうと思います。
全ての競技、アスリート、スポーツ選手にとどまらず、全ての人が見習わなければならないことです。
 
 
 

エリア51


イチロー選手が守るライトを指して「エリア51」といつからか呼ばれるようになりました。そのエリア51にかなり近い1塁側の内野席。イチロー選手が目の前にいます。おかげで試合中、どこに焦点を合わせればいいのかを迷うことになりました。
ボールなのか、目の前にいるイチロー選手なのか。普通はボールを追うのが当たり前ですが、目の前にはイチロー選手。その姿を目に焼き付けたい。そんな風に試合を見ていると一緒に観戦に行っていたスタッフがふとこんなことを言いました。
「イチロー選手だけですよね。ずっと動いてるの。」
 
確かに。通常、外野手は1球1球の合間にしなければいけないことは内野手に比べてもかなり少ないです。
ですのでその間に何をするのかどう在るのかは選手次第で、実際問題としてはほとんどの選手で時間の使い方に伸びしろがあることがほとんどでしょう。
ここにイチロー選手の凄さが潜んでいます。メジャーリーガーという世界最高峰の野球選手の中にあっても、イチロー選手の準備というのは抜きん出ている。
 
 
 

常に最高の準備を

この試合は乱打戦となったことで投手交代が多い試合になりました。ということは野手はその間、試合が再開されるまで各々の時間を得ることになります。
 
イチロー選手はこの時間はもちろんのこと、試合の中で生まれたこういった些細な時間を本当に1秒の無駄もなく使っていました。いつ来るか分からないプレー機会で最高のプレーができるようにできる限りの準備を淡々と怠らずに行っていました。
それは身体の準備だけでなく心の準備も。球場を見渡したり空気を感じようとしているようなそんな所作もなんとなくですが感じることができました。見ていてこれは本当に凄いことだと感じたし、なによりもに感動しました。
・守備位置までのダッシュ
・投球練習中のキャッチボール
・1球1球の合間でのストレッチや視野の確認
・試合の流れで生まれた時間の使い方
 



など。イチロー選手が常に言われている小さいことの積み重ね。これを愚直なまでに実践されていました。バットを丁寧に置くことが一部報道されていましたが、イチロー選手はグラブを外してストレッチを行う際もグラブを丁寧にグランドに置いていました。ひとつひとつの所作や行為全てが野球という競技に対する敬意と愛情にあふれていました。
 
イチロー選手のようなプレーは今すぐできなくても、そのような準備をすることや競技に対して誠実であることは今すぐ誰にでもできるはずです。
しかし、誰もしない。
なぜだろう?
 
理由は選手やチームによって色々あるだろうし、簡単だからこそ継続が難しいのかもしれない。だからこそそれを見た私は感動した。
けどこれは間違いなく誰にでもできることのはずです。
何を目指すのか?にもよるでしょうが、目指すものがあるならできることを積み重ねる。そうでなければ何もなし得ないということを、日米合わせて28年の現役生活の中で圧倒的な成績を残し示してくれた。テレビではなかなか写ることのないイチロー選手の本当の凄さを球場で感じることができました。
感動することも、ありがとうと言うことも勿論大切です。しかし、何かを感じたのならイチロー選手がいつも言っていた小さいことの積み重ね。これを実践するのが何より大切なのではないでしょうか。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年03月21日

再発予防は怪我が減ることでは終わらない

文:赤山僚輔

 
 
昨今、様々なスポーツ外傷に対する障害予防のプログラムが存在します。
 
そのそれぞれは一定の効果があり
 
実際に現場で継続し選手を救っていることも多々あるでしょう。
 
 
しかし、もしそれが“障害予防”を”目的”とする
 
スポーツトレーナーやセラピストの達成感や満足感で終わってはいけない
 
常々そのように感じています。
 
 
もちろんきっかけは指導者からの障害を減らしたいという依頼かもしれません。
 
 
そして結果として怪我が減ればその依頼に対しては
 
プロとして結果を残してるとも捉えられます。
 
 
 
しかしいくらけが人が減ってもゼロにならなければ
 
悲しむ選手や困る指導者の本当の意味でサポートにはなりません。
 
 
 
アカデミックなデータを算出するには
 
ある一定の再現性を元に一貫したエクササイズを提供することが求められます。
 
 
そうでなければそのプログラムによって本当の意味で
 
障害が減少したかを検証できないからです。
 
 
 
でもこれは目的達成に対しての一部分であって
 
これ自体が目的になるものではないと感じています。
 
 
 
現場で活動を続ければ続けるほど
 
外傷や障害をゼロにしなければ
 
本当の意味で障害を予防できているとは言えない。
 
 
 
そのように年々強く感じるようになりました。
 

 
 
 
ではどうすれば障害がゼロになるのでしょうか?
 
 
そこはやはり最低限の柔軟性や筋力など
 
画一的なプログラムで提供できる改善できる部分だけでなく
 
 
その選手がどのようなバックグラウンドを持って
 
現在どのような心身の悩みを抱えているか
 
可動域が正常であっても
 
本人が感じる動きの違和感や力の入りにくさなど
 
 
痛み以外の多くの要因に対しても向き合う必要性があるのです。
 
 
 
残念ながらストレッチやトレーニングで防げる怪我は
 
外傷や障害の一部です。
 
 
多くの選手を現場で対応していると
 
自律神経系の問題や心身相関によるトラブル
 
環境の因子や上記問題が複合されただるさや無気力など
 
はっきりと解決しづらい問題が障害の後ろ側に隠れていることも多々あります。
 
 
 
こういった問題を選手から解決するためのヒントして
 
今回私からご提案したい手法は
 
 
自分の日々のコンディションの変化に繊細に耳を傾けることです。
 
昨日と比べて足がだるければ
 
どういった要因が考えられるか。
 
 
今週はイライラとしてしまいがちであれば
 
何がそうさせているのか。
 
 
 
自分の繊細な心身の変化に耳を傾けることで
 
選手の繊細な日々の変化にも気づくことができます。
 
そして気づいた後、どのようにすれば対処できるかも
 
自分でトライandエラーを繰り返すことで
 
実践できるのです。
 
 
私自身はストレッチを繰り返してもなかなかとれなかった身体の硬さは
 
口に入れるものを今一度見直すことで解決することができました。
 
以前と比較し硬さが出現しにくくなっています。
 
呼吸も大きくできるようになり
 
どういった手法で解決してきたかを自身で整理しています。
 
 
 
前回のブログ(手本力が生きるのはトレーニングだけじゃない)でも触れましたが
 
スポーツトレーナー自身の手本力として
 
身体に向き合うことは障害予防という観点でも
 
どういった要素が自分の不調の起因になっているかを知る
 
重要なきっかけとなるのです。
 
 
 
本当に選手の悩みや繊細な部分に向き合える
 
スポーツトレーナーとして活動していく為に
 
日々の繊細な自分の変化に対して
 
耳を傾けてみてください。
 
 
きっと選手の痛みがでたり、怪我をしてしまう要因の
 
ヒントに気づけるはずです。
 
 
そしてそういった思いや心で
 
選手に歩み寄って一緒に成長してもらいたいと感じています。
 
 
 
教科書的な情報や結果の出ているプログラムを軽視するわけではなく
 
それを知っている前提で次の歩みに進んだ時
 
きっと怪我の出現頻度はこれまでと異なると思います。
 
 
 
 
答えは教科書にはなく
 
現場や臨床に落ちています。
 
 
そしてそのヒントは皆様自身の心身の状態にあります。
 
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年03月18日

競技パフォーマンスに活かすために必要な発展的トレーニング法

文:岩渕翔一

 
アスリートであればトレーニングの目的はその競技が上手くなることであり、その競技で勝てるようになるためです。
またそれに加えて痛みの改善や障害予防の目的もあるでしょう。つまり、アスリートにとってのトレーニングは、

  • ・パフォーマンス向上
  • ・障害及び疼痛予防
  • ・障害又は痛みの改善

という目的が、「その競技で勝ちを目指す」という一段階上の階層にある目的と同じベクトル上にある必要があります。
 
トレーニングには5原則というものがあります。

  • 全面性の原則
  • 漸進性の原則
  • 反復性の原則
  • 個別性の原則
  • 意識性の原則

 
これが5原則です。
基本事項ですので詳しい解説はしませんが、端的にいうとトレーニングはこの5原則が必ず全て考慮されていなければいけないということです。
今回はこの原則にもう1つ。トレーニング効果を競技パフォーマンスに活かすために私が行っている発展法をご紹介します。
 
 

トレーニング効果を無意識下に落とし込むことを意図して発展させる

 
上のタイトルの通りですが、トレーニング効果を無意識下に落とし込むために、トレーニングを段階的に発展させていきます。
どういうことかというと、トレーニングの目的は上記にあげたように、パフォーマンス向上、障害及び疼痛予防、障害又は痛みの改善です。
つまり、弱い部分を強化したり、できないことやできない動きをできるようにしたり、強い部分をより強くしたりということを具体的に行っていくことがトレーニングの具体的手段になります。
ただ、トレーニングで強化した部位や動きを競技パフォーマンスで活かすには、意識しなければできないことではなく、無意識でできるようになる、あるいは発現するようにならなければならないということは誰もが分かっていることです。
 
そのために、
トレーニングによる強化

競技パフォーマンスへの反映
という過程が必要であるとうことは一般的に言われています。
当然、競技そのものの練習を経なければ競技に活きないということもありますが、トレーニングの段階である程度近づけることが可能です。
そのためにはトレーニングの5原則のうち、「漸進性の原則」を応用し無意識レベルでのトレーニングに発展させていくことが重要です。
 
 

負荷量を変えるのではなくタスクを増やす

 

わかりやすいのでウェイトトレーニングを例にします。例えば、ベンチプレスが80kgで1RMの選手がいたとします。
ウエイトトレーイングの場合、ここから負荷重量とセット数を設定します。
漸進性の原則とは、この設定した重さや回数などの負荷量を徐々にあげていかなければトレーニングとしての効果は低くなっていき終いには、トレーニング効果のないただの運動や習慣になるという原則です。
その為、トレーニングを継続することで当然筋力は向上していくため、負荷量(回数や重さ、セット数など)を成長に合わせて変化させるという漸進は必要です。
 
もう1つ。漸進させなければいけないのは、
「そのトレーニングのみに集中できる状況から、いろいろなことに意識を向けながら行わなければいけないトレーニングにする」
という「タスクを増やすという漸進」です。
ウェイトトレーニングであれば、その重量を持ち上げることだけに集中できるのか、あるいは何か他のこと(呼吸や人と喋りながら行う、何らかの合図があれば上げるなど)を意識して行うのか。
身体操作そのものが課題になるようなトレーニングであれば、環境が整い、その動きだけに集中できるのか、あるいは、多様な環境や他のこと(何かを見ながら行う、ペアを組んでどちらが速くて正確かを競うなど)を意識して行うのか。
 
その動きや、強化した要素を競技パフォーマンスに活かすということは、無意識にでもその動きやその要素がパフォーマンスで発現したり使えなければなりません。
つまり、そのトレーニングに集中しなければできないような課題やトレーニングは競技パフォーマンスに活かせるレベルではないということです。
それを競技パフォーマンスに活きることにできるだけトレーニングの段階で近づけるための漸進性が「タスクを増やす」ということです。
そうすることで無意識に発揮できる能力に変換していくという過程をトレーニングの段階で行うということです。
 
 
これは工夫次第で可能となります。

  • ・ビジョントレーニングをしながら行う
    (目のトレーニングはこちらの記事を参照→「マウンドが合わない」原因は眼と脳にあるかもしれない
  • ・会話をしながら行う
  • ・多様な呼吸様式で行う
  • ・練習前と後で同じトレーニングを同じ質で行う
  • ・環境を変える(屋内外、アスファルト、地面、少し傾斜があるなど)
  • ・ペアや複数で行い競い合う
  • ・道具をコントロールしながら行う

 
キリがないですがこのように、「意識して無意識に行わなければならない課題に変換していく」ということです。
負荷量を増加するという漸進性だけでなく「タスクを増やす」という漸進性も意識してトレーニングメニューを組んでみてください。
 
 

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2019年03月17日

選手の自主トレーニングが継続・定着しないときに考えるべき6つの行動障壁

文:福原良太

 
「選手に自主トレを指導したけど、なかなか継続・定着してもらうのが難しい」と感じているトレーナーも多いはずです。
 
そんなときにもしもこんな思いが頭の中をよぎってしまっていたら要注意。
 
・選手にやる気はあるのかな・・・
・選手が自主トレの重要度を理解してくれないんだ
・指導内容をしっかり聞いてくれていなかったのではないか?
 
これらは自主トレーニングがなかなか定着しない責任を、どれも選手に向けてしまっている状態です。
 
これではいつまで経っても選手に自主トレーニングを指導できるトレーナーにはなれません。
 
そうではなく、「選手が自主トレーニングをできないのは、すべてトレーナーの責任だ」とまずは思考を変えることが大切なのです。
 
なぜなら、選手に責任を押し付けてしまってはトレーナーとしての成長も止まってしまうからです。
 
ではどうやって、自主トレーニングが継続できない状態を解決すればいいのでしょうか?
 
その解決方法のひとつが、選手の行動障壁を取り除いていく指導方法です。
 
行動障壁とは、行動しようとする気持ちを遮(さえぎ)る“なにか”のこと。
 
選手は、好きで自主トレーニングをやらないわけではない。
 
自主トレーニングを行おうとする気持ちを遮(さえぎ)る“なにか”に対して手に負えなくなってしまっているだけなのです。
 
したがって、トレーナーはその“なにか”を指導によって取り除いていけばいいのです。
 
ということで今回は、6つの行動障壁なる存在を理解して選手に自主トレーニングを継続・定着してもらえる指導方法について解説していきます。
 
 
 

選手の行動障壁を考えるときの6つの視点

選手が自主トレーニングを行うときに乗り越えてもらうべき行動障壁は以下の6つです。
 
1.時間がかかる
2.費用がかかる
3.肉体的許容性
4.頭脳的許容性
5.社会的な逸脱
6.結果を出すまでに、繰り返し行動が必要か
 
それでは、ひとつずつ簡単に解説していきます。
 
 
その1.時間がかかる
自主トレーニングを行うまでの準備に時間がかかる場合は自主トレーニングの行動障壁が高くなります。
 
時間が奪われることはストレスであり、準備の途中で自主トレーニングをやめてしまいたくなるからです。
 
自宅内でトレーニングをしたくてもトレーニングスペースを作る時間が必要と思われるトレーニングは、選手の生活環境を加味してトレーニングを提供する必要があります。
 
 
その2.費用がかかる
なにか道具を買ってからでないと実践できないトレーニングも行動障壁になります。それが、いくら安いものであっても。
 
選手が「トレーニングは身体ひとつあればできるもの」という意識の強いときに道具を使ったトレーニングの指導してしまうと、思いがけない費用が発生することになるからです。
 
道具を使うのであれば、購入しなくてもよいどの家庭にでもあるような道具を活用したトレーニングを提供しましょう。
 
 
その3.肉体的許容性(動きたくない)
「身体を強化するためのトレーニングなのに、“動きたくない”が行動障壁になるってどういうこと?」と感じた人もいるかもしれません。
 
この“動きたくない”とは、タイミングによって変わります。
 
たとえば、こんな指導をする人もいるかもしれません。
 
「テレビを見ている時間もトレーニングをするんだ!」
 
確かに、これが有効な選手もいます。
 
ですが、なかにはテレビを見ている時間が最もリラックスできて、いつもテレビを見終わったあとにトレーニングの時間を組み込んでいる、いわばルーティン化している選手にテレビを見ている時間のながらトレーニングは適しているとは言えません。
 
また、普段からお風呂上りにストレッチをしている選手に、お風呂上りに汗をかくようなトレーニングをするよう指導するのも行動障壁が高くなります。
 
 
その4.頭脳的許容性(考えたくない)
これは、トレーニング実施時ではなく、指導場面での行動障壁になります。
 
トレーニングの指導をするときに、専門用語を多用すぎてしまうと、トレーニングの有用性が理解できなくなり、結局「なんのためにやるの?」と疑問に思ってしまいます。
 
すると、自主トレーニングを実施するモチベーションが低くなってしまうのです。
 
 
その5.社会的な逸脱(後ろめたさがある)
社会的な規範から考えて逸脱しているような場合は、行動障壁が高くなります。
 
たとえば、学生の自主トレーニング。
「授業中に暇を見つけて股関節を摩るトレーニングをしてほしい」と指導をしたケースなどです。
 
授業中に座ったまま机の下で股関節(股:また)を摩る行為。
 
生活の中で身体と向き合う時間をより多くするというのは良い視点だと思います。
 
ですが、変なことをしていると周りに思われるのが嫌で、できない選手もいるはずです。
 
トレーニングはときに、周辺環境との調和も意識しなければならないことを理解しておきたいです。
 
 
その6.身体が変わるまでに、繰り返し行動が必要か(ルーティン)
「いつまでトレーニングを行えば身体の変化が出るのか、パフォーマンスがアップするのか全くわからない」という状態では、誰もやりたくはなくなります。
 
もしも全くパフォーマンスアップにつながらなかったら、時間という大切なものを失ってしまうからです。
 
とはいえ、トレーニングはやってみないと変化が出るかわからないもの。
 
概ねどのくらいの期間トレーニングをすれば身体の変化が出るのかを示せれば、選手に提示するようにすると行動障壁が下がりやすいです。
 
もしも、選手と関わっている中でその場で新たに考案できたトレーニングなのであれば、短い期間を設定して、「自主トレーニングをやってみて効果が出なかったらやめる」などのフォローアップをしていくことも大切になります。
 
 

自主トレーニングを継続・定着してもらうためには選手とのコミュニケーションが重要

ここまでで、選手が自主トレーニングをなかなか継続できない行動障壁6つを紹介していきました。
 
勘の良い方は、ここまで読んでいただいて「選手の生活リズムを事細かに知っていないと適切な指導ができないではないか」とお気付きになられたかもしれません。
 
そうなのです。
選手の生活リズムを知っていないと、適切な負荷量、頻度、トレーニングの種類、が提供できないのです。
 
そして、選手の生活リズムを知るために自主トレーニング以外の話もしていく必要が出てきます。
 
傍(はた)からみたら身体の使い方には全く関係のない話であっても、じつは自主トレーニングをより有効活用するための提案をするために必要なコミュニケーションであることだってあるのです。
 
あなたは最近、選手とトレーニング以外の話はしていますか?
もしトレーニング以外の話をしていないのであれば、今回の記事をぜひもう一度、読んでいただきたいです。
 
 
 

まとめ

いかがでしたか?
 
今回は、選手が自主トレーニングをなかなか継続できないという悩みのあるトレーナーに向けて、その解決方法の提案をさせていただきました。
 
選手の自主トレーニングを促すのは簡単そうに見えて、じつは奥が深い。
 
また、今回挙げた行動障壁という考え方だけでは物足りない部分はあるかもしれません。
 
まず初めにやっていただきたいことは、自主トレーニングが継続・定着できない場合は、選手のせいではなくトレーナーのせい、という視点を一度持ってみることです。
 
この視点を今一度持ってみるだけでも、解決手段がみえてくるかもしれません。
 
また、自主トレーニングが継続・定着しないのは選手個々によって解決すべきポイントが違うはずなので、選手とコミュニケーションを取りながら思考を張り巡らせていただくと、なにか解決手段が引き出されるかもしれません。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 

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2019年03月10日

手本力が生きるのはトレーニングだけじゃない

文:赤山僚輔

『トレーナーの手本力』
 
 
JARTAセミナーやブログ等でも重要視して
 
お伝えしてきている点になります。
 
 
実はスポーツトレーナーが自身の鍛錬をして
 
手本が見せられる柔軟性や動きを獲得していくことは
 
施術行為やコンディショニングを行なっていく上でも
 
非常に重要になるのです。
 
 
 
これまでもブログやメルマガで触れてきた事がある点ですが
 
改めて今回はお伝えしたいと思います。
 
 
皆様は少しでもよいコンディショニングを実施する為に
 
自分のコンディションを最高に整える準備をしているでしょうか?
 
 
 
腰痛のスポーツトレーナーには
 
選手の腰痛が解決しにくく
 
 
慢性的な肩こり症状があるセラピストは
 
アスリートの肩の重だるさを根本的に解決するのは難しいでしょう。
 
 
 
ただ今回お伝えしたいことはもっとその先にある
 
自身に向き合う重要性についてです。
 
 
 
 
 

硬くなる原因をおざなりしてストレッチしていませんか?

 
 
自分自身の身体のコンディションを現在私は更新し続けています。
 

 
 
そしてそのコンディションの更新を
 
サポート選手の大事な試合、特に実際に自身が帯同する際には
 
毎回更新して迎えるように心がけています。
 
 
 
もちろんそれは自分自身の身体が少しでも軽く
 
繊細な感覚が使えるように
施術の力加減や選手の繊細な状態の変化が感じ取りやすく
する為という目的はあります。
 
 
ただそこに至る過程
 
どんどんと身体が変わってくる中で
 
それ以外の大きな副産物がありました。
 
 
それは今までより自分の身体が柔らかく
 
軽く、動きやすくなることで
 
どういった日常生活での事柄や
 
自分を硬くさせ、動きを重たくさせるかが
 
より具体的に整理できるようになったのです。
 
 
 
 

身体を硬くさせる要因は日々に無限に眠っている

 
 
 
 
どんな時に背骨が硬くなるか・・・。
 
もっと具体的に
 
何をした後で下部頚椎が硬くなるか
 
もっともっと具体的に
 
寝る前と寝起きで胸椎の1番の硬さがどの程度変わっているか。
 
 
 
 
一度硬さが取れた状態を経験するからこそ
 
どういう時にその部位が硬くなる可能性があるかを
 
実体験をもって学ぶ事ができます。
 
 
私自身、選手と関わってきた経験的にも
 
ただ、硬い部位の関節や筋肉の硬さを取る手法を伝えて
 
真面目にケアをする選手でも
 
すぐに硬さが再燃することがあります。
 
 
 
一時的にであればケア頻度を大幅に増やせばある程度は解決するでしょう。
 
でも現場レベルでは頻度を増やすだけでは解決できないことも多々あります。
 
 
そういった時にプラスの事をするだけでなく
 
何がそのプラスをまたマイナスにさせるのかを徹底的に考えるのです。
 
 
そしてそれをスポーツトレーナー自身が自分の生活や人生をかけて
 
トライしていく事でより具体的な提示をする事ができます。
 
 
 
そして今、わたしはもっともっとコンディションを向上させ
 
単なる硬さだけでなく
 
心身に関わる全ての問題に対して何がマイナスになるかを客観視できるよう
 
自分の体に向き合いたいと思っています。
 
 
是非、本ブログをお読みの方は今一度自分の心身に向き合って
 
スポーツトレーナーとしての手本力に向き合ってみてください。
 
 
きっとその先に選手の笑顔があると思います。
 
 
 
私は今日サポートしている選手の試合帯同で
 
KO勝ちを経験することができました。
 

この笑顔を見るたびに、またより一層自分に向き合おうと思えます。
 
 
そのような日々が本ブログをお読みの皆様にも訪れる事を祈念しております。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年03月07日

セミナー受講料の改定について

 
平素よりJARTAのHPをご覧いただき、誠にありがとうございます。
 
 
2020年1月より消費税増税に伴い、現在表記しているセミナー受講料+消費税(10%)に変更いたします。
※全てのセミナーが対象です。
受講希望される方はお早めにお申し込みください。
 
◯認定スポーツトレーナーコース
BASICセミナー
コンディショニングスキルコース
トレーニング理論コース
 
◯JARTAセミナー(現在募集中のセミナー)
・JARTA指導スキルセミナー
投手用トレーニングセミナー
サッカー上半身トレーニングセミナー
JARTAスポーツ障害・循環アプローチセミナー
 
 
 
誠に勝手ではございますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
JARTAセミナー事務局

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2019年03月03日

南米式パントキックの土台

 

文:岡元祐樹

 
「パントキックがイメージ通りに蹴れない」
 
サッカーにおいてゴールキーパーというのは、失点を防ぐことが主な仕事となります。
しかし戦術の進化によって、ゴールキーパーもキックの質が問われるようになってきました。その中でもパントキックはゴールキーパー特有の技術です。
 
遠くにいる味方選手に迅速に、正確に、トラップしやすいボールを蹴る必要があり、現代サッカーでは質の高いパントキックを蹴れることはゴールキーパーの大事な能力の1つに挙げられます。
「パントキックのミスが多いからレギュラーになれない」という場合も少なくないでしょう。
 
現代のサッカーにおけるゴールキーパーのほとんどが『南米式』と言われる形のパントキックを用います。
身体の横にトスしたボールをサイドボレーの形で蹴ることを南米式のパントキックと呼びます。
一方、身体の前方にトスしたボールを蹴るパントキックを欧米式のパントキックと呼びます。
 

 

(さらに…)

2019年02月28日

認定スポーツトレーナーコースがリニューアルします

 
認定スポーツトレーナーコース「ADVANCEセミナー 」は現在募集しているセミナーが最後となり、4月以降より新コースに移行いたします。

新 認定スポーツトレーナーコース
 
 
新コースでは、BASICセミナー受講終了後、「コンディショニングスキルコース」「トレーニング理論コース」に枝分かれします。

 
コンディショニングスキルコース」では、選手のコンディションを最適化するための技術・考え方を実践レベルで体系的に学びます。
※プログラム内容、日程は近日中に公開予定
 

 

トレーニング理論コース」では、パフォーマンスの構造と高め方、トレーニングの構造、選手の分析方法、デモンストレーションの重要性などを体系的に学びます。

非常に多くのトレーニングを習得することができます。

 
 
 
どちらか一方のコースだけの受講も可能な構成となっておりますので、スポーツリハビリのみ、フィジカルのみなど必要に応じて選択していただくこともできます。
※認定スポーツトレーナー資格を目指される場合は両コース修了が必要
※どちらのコースを先に受講してもらっても構わない(トレーニング理論コースはレベル1、レベル2の順での受講となります)。

 
 
現在ADVANCEセミナーを受講中で、進学を検討されている方や認定スポーツトレーナー試験を受験されたい方は、
旧コース受講中の方が新コースを受講される場合の進学手順
を参考にお申し込みください。
 
 
何卒よろしくお願いいたします。
 

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2019年02月25日

【アスリート向け】アスリートにトレーニングが必要な理由


 

文:岩渕翔一

 
昨今では、あまりにも当たり前すぎてあまり考える機会がないのかもしれない。
なぜアスリートはトレーニングをするのか?
・競技がうまく強くなりたいのだから競技の練習ばかりしたほうが効率が良いのではないか?
・キツいトレーニングが嫌い
・地味なことは嫌い。勝ち負けより技術を身につけて美しいプレーをすることの方が好きだ
こう言った声は今も度々耳にします。
競技の練習さえしておけば強くなり、勝てて、美しいプレーができ、怪我をしないのであれば当然トレーニングは必要ないでしょう。
しかし競技の練習だけでは不足しているからアスリートはトレーニングをします。
練習だけでは足りない部分をトレーニングすることで、強くなり、勝利に近づけ、怪我を予防することができるからトレーニングは行われていますし、そういったロジックのもとトレーニングメニューは構成されているべきです。
 
 
 

競技の練習とトレーニング。目的は一緒だか対象は別物

競技の練習は基本的に技術の習得や、戦術や作戦の理解・浸透、チームの連携プレーの向上を目的に行います。
一方、トレーニングは競技パフォーマンスに必要な構成要素(筋力、持久力、柔軟性、身体操作など)を強化することを目的に行います。
 

 
 
どちらも目的は勝つことや強くなることですが、強化の対象が全く別物であることがわかります。
競技の練習で「結果的に」パフォーマンスの構成要素が向上することは当然ありますが、それ自体を対象にしていることはほとんどないでしょう。
このように競技の練習とトレーニングは強化する対象が全く違うということを理解しなければなりません。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その1:故障のリスクが極めて低い中で強化を行える

例えばサッカーやラグビーといった競技で体力向上を含んだ競技の練習をしようと思えばどうなるでしょう?
当然練習時間は今より長くなります。
また、競技の練習を並行して行なっている以上、その分選手同士が接触する機会が増えることが予測されます。
選手が故障するのは競技に関わらず圧倒的に試合中や実戦形式の練習中が多いです。
練習時間や試合頻度が多くなれば当然、故障のリスクは高まります。
 
一方、トレーニング中に故障を起こすというのは試合に比べれば障害発生数は如実に低下します。
私自身、選手がトレーニング中に故障を起こしたというのは未だに経験していません(練習中はあります)。
 
つまり、トレーニングで強化できることはトレーニングで補うことで故障リスクを回避した中で安全に構成要素の強化ができるということです。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その2:オーバーユースを予防できる

例えば、野球のピッチャーが球速アップを目的に投げ込みの量や頻度を増やすとどうなるでしょう?当然オーバーユースによる肩や肘の負担が懸念され、故障のリスクが高まります。
そうならないためにも、オーバーユースを回避し球速アップに必要な構成要素の強化を安全に行うことができます。
 
それぞれの競技において障害発生の部位別頻度は異なり、競技における傾向があります。
単純にいうと、その競技をやっているから起こしやすい障害であるため、強化も予防もトレーニングで補えるのであればそのほうが安全に行えるはずです。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その3:過度なアンバランスを防ぐことができる

ほとんどの競技は左右対称に身体を使うことはありません。
テニス選手とサッカー選手と野球選手では体型が全く違うのと一緒で身体はその競技やその選手のパフォーマンスに合わせて変化します。
それ自体はいいのですが、それが過度になりすぎるとバランスを崩しパフォーマンスが低下することが度々あります。
そしてそれを競技レベルで気づいたときにはかなり深刻な問題になっていることが多いです。
 
トレーニングはこの競技パフォーマンスに悪影響を及ぼすようなアンバランスを発生させないためにも必要になります。
ある程度どのようなアンバランスが生まれてくるかは予測できるので、予防的にトレーニングを行うことができますしそれはパフォーマンスアップに直結します。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その4:人間の構造上、動きにくい部位と動きやすい部位があるため

例えば脊柱。
腰椎は可動性があり動きやすいですが、胸椎は稼働性が乏しい部位です。
それは構造上そうなのですが、多くの競技で「身体を使って」とか「全身で」とかいうように脊柱の動きは凄く重要です。
中でも胸椎の可動性や操作性というのは競技に関係なく重要で、構造上動きにくい部位であるが故に、この部位が動く、使える選手は非常に優位に立てることがあります。
 
しかし、構造上は腰椎が動きやすく胸椎は動きにくい。
そうなると、全身を使うといっても競技レベルではやはり腰椎が動きやすくなり、それがパフォーマンスの低下を招くだけでなく、腰部のオーバーユースとミスユースにより故障を起こしていることが少なくありません。
 
そうならないためにも、構造的に動かしづらい、動きづらい、意識しづらい部位をトレーニングによって選択的に強化することができます。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その5:要素の最大値を上げることができる

競技の練習だけをやっていても構成要素の強化はある程度見込めますが、ある程度です。
なぜかというと、競技パフォーマンスというのは基本的に色々な要素の統合で発揮されるため、コントロールできなければ意味がないからです。
速いけどコントロールがめちゃくちゃとか、強いけど遅いとかでは安定したパフォーマンスを発揮できないため、基本的にはコントロールできる範囲でしか要素は発揮されません。また、想像していただければわかると思いますが、競技練習をしながら柔軟性の最大値を改善できるほどストレッチをかけることができるでしょうか?想像しただけで故障を起こしそうで怖い乗っではないかと思います。
 
そこをトレーニングによって、安全に柔軟性や筋力、持久力を要素別に強化し絶対値を上げることで、各要素の余力を作り、競技パフォーマンスで発揮できる(コントロールできる)要素の最大値を上げることができます。
 
 
 

トレーニングを有効に行うために重要なこと

ここまでアスリートにとってトレーニングが必要な理由を述べてきましたが、勘違いしてはいけないのは、単純に要素を高めればパフォーマンスが上がるかと言われればそんなことはないということです。
例えば柔軟性が向上すればするほど、筋肥大が起きれば起きるほどパフォーマンスがそれに比例して向上するわけではありません。
そこには各要素との相互関係があり関係性があります。
 
短絡的に要素を伸ばすことは他の要素の低下を招き、パフォーマンスを低下させ故障を起こしやすい身体にしてしまうリスクすらあります(JARTAではこのような現象をマイナスの学習と呼んでいます)。
 
そのようなマイナスの学習を起こさないためには、なぜそのトレーニングをするのかという評価と分析が根底に必要です。

  • ・競技パフォーマンスの評価と分析
  • ・選手の動きや姿勢、身体の評価と分析

その上でトレーニングの選択と量と質の決定を行います。
 
障害予防、効率性、安全性、身体の強化などを目的にアスリートがトレーニングを行う意義を解説しました。
適切な評価と分析のもと効果的なトレーニングを行えば必ず競技パフォーマンスの向上に繋がるはずです。
身体という土台そのものの強化であるトレーニングはその選手が持つ潜在能力を高めることと同義です。
その高めた潜在能力をうまく引き出すために行うのが練習の目的の一つです(トレーニング効果の転移と言います)。
 
アスリートであれば誰もが勝ちたいはずです。
勝つためには、競技練習とトレーニングを並行して行っていくことがやはり大切です。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2019年02月21日

ねじれて感じる身体のつながり

文:萩 潤也

常人では体現できないようなスピード、パワー、バランス等を駆使したプレーを行うことができるトップアスリートは一般の方と比べて何が違うのでしょうか?
筋力、柔軟性、感覚、判断力、、、etc
ハイパフォーマンスを実現するための身体の使い方には本当に様々な要素が含まれます。
 
今回は様々な要因のひとつである身体の「連動性」についての話をしていきたいと思います。
(さらに…)

2019年02月18日

投手の球数制限がもたらす野球界の成長

文:岩渕翔一

選手を守るため野球界が少しずつ変わろうとしています。
 
新潟県高野連の球数制限導入なるか
https://www.yomiuri.co.jp/sports/koshien/20190216-OYT1T50071/
軟式の少年野球も球数制限。一日70球
https://www.asahi.com/sp/articles/ASM2G4QVPM2GPTQP02H.html?iref=sp_ss_date
新潟県の球数制限に筒香選手も期待
https://number.bunshun.jp/articles/-/833235
 
命はなにより大切です。
命さえあれば、生きてさえすればどんな失敗をしてもまた前に進むチャンスがあるからです。だから人はなによりも先に命を守らないといけない。
 
(さらに…)

2019年02月17日

選手に合わせて伝え方を変える方法

「どうしたら伝え方が上手くなるんだろう・・・」
「自分がイメージしていた動きと選手の動きとに微妙な違いが出る・・・」
 
 
あなたは、選手に伝えた動きやトレーニングがイメージしていたものと違ってしまい、パフォーマンスアップにつながりにくくなってしまった経験はありませんか?
 
 
もしくは、「結論から話すように言われているし、実践もしているのだけど、なんだか伝わっているかどうか不安・・・」という気持ちになっている人もいるのではないでしょうか?
 
 
なかには、実際に選手から「わかりにくい。もう一度説明してほしい。」と堂々巡りになってしまった経験をされている人もいるかもしれません。
 
 
スポーツトレーナーは、パフォーマンスアップにつながる動きの改善をしていきます。
 
 
したがって、いくら動きを見て伸びしろのあるポイントがわかっても、いくらトレーニングの方法論が備わっていても、評価してみつけた伸びしろを伸ばすための“伝え方”が適切でないと、選手を戸惑わせてしまうのです。
 
 
選手が戸惑ってしまっては、身体の動きにぎこちなさが生じてしまい、どんなに良いトレーニングであっても試合に活かせるパフォーマンスアップは望めません。
 
 
ではなぜ、こんなことになるのでしょうか?
 
 
じつは、トレーナーが“それぞれの選手に合わせた伝え方”ができていないから生じてしまっている可能性があるのです。
 
 
そこで、今回は選手に合わせて伝え方を変えるために必要な“ある評価”と実践方法について千葉で活動する認定スポーツトレーナーの福原良太が解説していきます。
 

 

情報を伝える方法は3つある

選手に合わせた伝え方を知るために、まずは情報を伝える方法にはどのようなものがあるのかわからないと実践できない。
 
 
ということで、まずは人が相手に何かを伝えるときの3つの方法を知っておきましょう。
 
 

  • 1.ビジュアル
  • 2.オーディオ
  • 3.感覚

 
 
上記3つのどれかを使って人は情報を相手に伝えています。
 
 
「ビジュアル? オーディオ? 感覚? 初めて聞いた。急にそんなこと言われてもなんだかわからない・・・」という方も多いはずです。
 
 
選手に合わせた伝え方を評価する前に、まずは上記3つを簡単について解説していきます。
 
 
 
1.ビジュアル
目で見た情報が理解しやすいケースです。
 
目で見た情報が理解しやすいので、JARTAでいう「手本力」がとても重要になってきます。
 
手本をみてもらうことで、トレーナーの伝えたい内容をより適切に伝えやすくなります。
 
また、ビジュアル系の人は、早口であったり、目標設定が得意であったりといった特徴があります。
 
 
2.オーディオ
耳から聞いた情報が理解しやすいケースです。
 
動作練習の時は、動きの時に生じる「音」を付けて説明をするとより適切に伝わりやすくなります。
 
読売ジャイアンツ終身名誉監督である長嶋監督は、コーチングをするときに擬音をよく使うことで有名ですが、これはオーディオ系の伝え方であるとも言えます。
 
オーディオ系の人は、普段から擬音をよく使います。また、目標設定は比較的苦手な場合が多い印象です。
 
 
3.感覚
「感情」や「気持ち」といったものが付け加えられた情報が理解しやすいケースです。
 
トレーニングを行ったときに感じると思われる感情、たとえばインナースクワットのときに「うまくいくと、背筋も伸びて呼吸がしやすくなるから、気持ちも穏やかになる感じがする」といった付属情報を伝えるとより適切に伝わりやすくなります。
 
感覚系の人は、比較的女性に多い印象です。
(とはいえ女性全員に当てはまるわけではありません。)
 
また、他者の気持ちを理解するのにも長けている人が多く、他者の気持ちを代弁するようなフレーズを普段からよく使います。
 
 
 

それぞれの選手に合わせた伝え方をするための評価

評価の仕方は簡単です。
 
 
その選手が、普段からどの言語を使っているのか、もしくはトレーニングを提供したときにより反応のよい伝え方は3つのうちどれか判断すればいいだけです。
 
 
その選手に適切な伝え方は、オーディオなのか、ビジュアルなのか、それとも感情なのか。
 
 
あとは、それに合わせて言語を選び、トレーニングを伝えてあげればいいのです。
 
 
すると、選手はこんなことを思うのです。「あ、このトレーナー、わたしのこと理解してくれている?」
 
 
つまり、選手が普段からよく使う言語を活用して情報提供をすることで、調和が図れるようになって、こちらの伝えたい内容がより理解しやすくなるのです。
 
 
 

トレーナー自身が普段から使っている言語がわかると選手にも情報を伝えやすい

自分のことがわかっていないと、他人のことを理解できない。
ということで、まずは、あなた自身が普段からどの言語を使っているのかを知る必要があります。
 
 
じつはこの記事の冒頭でも、3つの言語を使って導入文をかかせていただいています。
それが、以下の文章です。
 
 
“あなたは、選手に伝えた動きやトレーニングがイメージしていたものと違ってしまい、パフォーマンスアップにつながりにくくなってしまった経験はありませんか?
→ビジュアル
 
“「結論から話すように言われているし、実践もしているのだけど、なんだか伝わっているかどうか不安・・・」という気持ちになっている人もいるのではないでしょうか?
→感覚
 
“「選手からわかりにくい。もう一度説明してほしい。」と堂々巡りになってしまった経験をされている人もいるかもしれません。”
→オーディオ
 
 
ここまで読んでくださっている方であれば、これら3つのなかで「あ、この記事の続きを読んでみようかな?」と思ったフレーズがきっとあるはず。
 
 
そして、そのフレーズこそがあなたの普段から使っている言語なのです。
 
 
あなたが普段から使っている言語は当然、使い慣れていると思います。
 
 
もしも、「選手に伝えたいことが伝わっていない気がする・・・」と思ったときは、普段使っている言語以外の伝え方も試してみてください。
 
 
 

まとめ

いかがでしたか?
 
 
今回は、選手に合わせて伝え方を変える方法をお伝えしました。
 
 
そして、伝え方には以下の3つがあると解説していきました。
 
 

  • 1.ビジュアル
  • 2.オーディオ
  • 3.感覚

 
 
まずはあなた自身がどの言語をよく使うのか、確認してみてください。
 
 
そして、今まさに「言いたいことは間違えていないはず。でもなかなか伝えたい内容が伝わりきらないときがあった」という人は、次の機会に、普段あなたが使っている言語以外の伝え方で情報を伝えてみてください。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございます。

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2019年02月11日

スポーツ界で蔓延する抽象的言語に注意せよ

文:岩渕翔一

 
今回の記事はトレーナーや指導者に向けた記事です。選手を指導する際に抽象的な表現を使うことは非常に多いと思います。
丹田、軸をつくる、タメがある、壁をつくる、ブレーキ筋、アクセル筋、前モモ、裏モモなど
あげればキリがないですが、これらの抽象的な言語を使うメリットと理由は明確です。選手を指導する際に上記のような抽象的な表現や感覚的な表現を使うことで、選手が、「イメージできること」や「納得できること」、「意識できること」が進み、トレーニングや競技パフォーマンスを効果的に行うことができるからです。
(さらに…)

2019年02月09日

「食事」と「栄養」が心とカラダを繋ぐ

文:伊藤直哉

 
 
スポーツに一生懸命に取り組む我が子の力に少しでもなりたい。
 
それが親の心境だと思います。力になる方法はたくさんあります。応援に行くのも道具を買うのも練習を手伝うのもそうです。
しかし、どの程度関わっていいものかは悩みの種でもあります。親が干渉しすぎると良くないと言われたり、大きくなるにつれ子どもが自立していきむしろ距離をとられる。 我が子を応援したい。そんな親の思いをありったけ思う存分込めることのできる方法が一つだけあります。
 
それが食事と栄養です。
 
毎日食べる食事であるからこそ可能性は無限大です。
スポーツに一生懸命取り組むための土台となります。
 
そしてセラピストやトレーナーは、その橋渡しが出来ます。
我が子のために奮闘する親のために、食事と栄養の大切さを知り、その手段を伝えることが出来ます。
 
全ては選手のために
そしてその選手を想う親のために
食事と栄養という方法があります。
 
 
今回はそんな我が子を思いながらも仕事など日々忙しく奮闘しているご両親へ、ひとり暮らしを始めて食事に困っている選手への記事です。
 
 

 
 
大切なのは分かってるが、栄養、栄養って言っても…
「めんどくさい」
「練習してしんどいのに作る気にもならない」
と思っている方が多いと思います。
 
そんな選手のために、
そして料理をしてくれているお母さんのために、
 
カラダも冷やさず、栄養素も取りやすく、
そしてただ食材を入れるだけでできる簡単な(料理の仕方に個人差はありますが…)
『スープ最強説』
を東洋医学の視点から日々の食材を選ぶ方法をお伝えします。
 
 
前回の記事でも紹介しましたが、
「冷えは万病の元」
冬のトレーニングだけでなく、体調管理も夏に影響する
 
スープはこれを解消してくれます。
 
カラダを冷やしてしまう食材でも温める調理法を用いることで、冷やす作用が緩和されます。
温める・冷やすという観点で食材を考えるストレスも軽減されます。
そして何より、自分で作っても失敗しにくいのも大きなメリットです。
私も料理はしますが、スープ作りで「失敗した〜」と思うほどのことはありません。
練習や日頃の生活に気を配っているからこそ、大切な食事といえども簡単で美味しいのが1番です。
 
 
 
では実際にどういう時にどのようなものを食べると理想的か(アドバイスしたら良いか)ご紹介します。
 
・しんどい
・だるい(重だるい)
・ぼーっとする
・動きたくない
・眠い
・めんどくさい
・気合が入らない
・胃腸が弱い
などの症状がある選手はカラダを動かしたり、温めたりするための生命活動のエネルギー《気》が不足しています。
練習したりしてこの《気》を消耗して、少なくなっている選手は本当に多いです。
 
 
では、シンプルに《気》を補う食材を入れれば良いのですが。
 
東洋医学にはこういう言葉があります。
「気血同源」
《気》と《血》は相互依存関係です。
《気》は《血》(全身に栄養を運ぶ作用)を作っています。
ですので《気》が不足していれば、《血》も不足してきます。
カラダにエネルギー《気》を補給し、栄養を運んでくれる《血》を作って元気を取り戻すのが理想です。
 
 
では実際に入れていきましょう。

 
見た感想はいかがでしょうか。
すぐスーパーで買えるものばかりですよね?
ベースはコンソメでも和風だしでも何でも大丈夫です。
更にしょうがを入れればカラダもより温まります。
(カラダに熱を持っている人は入れすぎに注意)
 
気分転換に酸味のあるトマトを入れても良いですね。
トマトは胃の働きを助け、食欲増進効果もあり、酸味は肝(肝臓のようなもの)の機能も上げてくれます。
 
また大豆は気を補い、胃腸の機能も高め、血流も良くしてくれます。
豆類は水の代謝にも良く、むくみやカラダの重だるさも取り除く作用がありますので、
ミックスビーンズなどを使うと良いです。
 
 
いかがでしょうか?
良く食べる食材ですし、スーパーでも簡単に買えます。
 
いつも食べているかもしれませんが、何気なく食べているのと意識して食べているのとでは効果も違います。
同じストレッチでも何も考えずにしているのと、筋肉など意識しながらしているように。
 
 
日々の練習で頑張っているからこそ、大切な食事。
それでもより簡単に作れることも大切な継続できるポイントかと思います。
 
そんな時はスープにして、いろいろな具材を入れてみてはいかがでしょうか?
疲れているからこそ、カラダを冷やし過ぎず、胃腸に優しく温かくして食べてみてはいかがでしょうか?
 
 
今回は1つ例を紹介しました。
他の症状にも食材や調理法を変えて、『最強のスープ』が作れます。
もちろん腹八分目、良く噛んで食べることも《気》や《血》を作る上でとても大切です。
 
 
JARTAスポーツ栄養セミナーでは、この記事のように東洋医学の視点を用いて選手のカラダの状態に合わせて、食材や調理法を考えていきます。
 
そして、「口に入るまでのコンディショニング」
例えば、疲れて消化吸収力が落ちて、食べたものが吸収されず、栄養がパフォーマンスに繋がらないことのないように、普段からの過ごし方やセルフワークもお伝えしていきます。
▶︎JARTAスポーツ栄養セミナーの詳細はこちら
 
 
是非、
パフォーマンスUPやケガをしないカラダづくりに、東洋医学の視点を取り入れて、食事や体調管理を考えてみてはいかがでしょうか。
参考にしていたけたら幸いです。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
〈前回の記事はこちら〉
手段に囚われない、食事面からのサポート
夏の食欲不振へのアプローチ
冬のトレーニングだけでなく、体調管理も夏に影響する
 
 
 
 

 

今回JARTAではスポーツ栄養セミナーがコース化されました。

西洋と東洋、両方の栄養学を体系立てて学ぶことができます。
※参加条件はありません。どなたでもご参加いただけるセミナーです。

 

日本における栄養学は西洋的な観点を中心に発展してきましたが、実は東洋にも栄養学があります。

 

JARTAでは、西洋医学と東洋医学、そして西洋的身体観と東洋的身体観は、それぞれ補い合え、両者をそれぞれ使いこなすことで選手にとってより良いサポートが実現できるという考え方を持っています。

 

我々はこの考え方は栄養学にも当てはまると考え、西洋と東洋の栄養学の両者を使いこなせるようになることを目的としたセミナーを開催することにしました。

 

▶︎こんな方には特にお勧めいたします。
・西洋だけでなく東洋の栄養学も学びたい方
・スポーツ栄養学に興味があるけど、どこから学べばよいかわからない方
・スポーツ現場での応用編など、より深く学びたい方
・スポーツをしている方の栄養をサポートする立場にあるが、不安がある方

▶︎JARTAスポーツ栄養セミナーの詳細はこちら

JARTAスポーツ栄養コース


 

Stage1の募集は始まっています。
(Stage2以降へは必要に応じて進学をご検討ください)

皆様のご参加をお待ちしております。

ーーー
Stage1 -基本の食事 大阪会場
※当セミナーはJARTA認定スポーツトレーナーコースに含まれません

▶︎日程 2019年2月17日(日)10:00~15:00(受付:9:30)
▶︎会場 アルファオフィス247大会議
▶︎講師 西洋編|片山真子、東洋編|伊藤直哉
▶︎申し込みフォーム https://beast-ex.jp/fx3952/NUOsaka

 

JARTA公式HP

https://jarta.jp

 
 




2019年02月08日

stadio SAPOイベントのご案内

 
3月10日(日) 13時より、studio SAPO様のスタジオにてJARTA認定講師の和泉が講師をつとめます。
日頃から運動をされている方、
ご自身のレベルアップをされたい方、
新たな発見をされたい方
にはぴったりの内容となっておりますので、ぜひご参加ください。
 
 
詳細はこちら



JARTA公式HP
https://jarta.jp
 

2019年02月07日

トラップの瞬間に軸足はどうする?

文責:岡元祐樹

 
サッカーの試合で”トラップ”を見ていると「軸足をあえて浮かしている場面がある」ことが観察できます。
軸足をつけたままの”トラップ”とどのような違いがあるのでしょうか?
 
(さらに…)

2019年02月04日

[動画付き]脱力がスポーツに重要な理由を論理的に解説します

文:岩渕 翔一

 
脱力することがスポーツに重要であることは多方面で聞かれるようになりました。一方、なぜ重要なのか?という核心的な部分においては未だ、抽象的な解説が多いようにも感じます。
・脱力している方が筋出力が大きくなる
・体性感覚が良くなる
・無駄な力が入らない分疲れにくい
・予備動作が起こりにくい分、動き出しが早くしかも相手に察知されにくい
 
このようなことが言われています。今回は、これらの「なぜ」をもう一段階深掘りし、論理的かつ具体的に考え、なぜスポーツにとって脱力が良いのか?を簡単な実験を交えて解説します。
 
 

重く感じることと、重くなることを区別する

 
こちらの動画をご覧ください。


 
1回目は軽く持ち上がる
2回目は重いけど持ち上がる
3回目では重くて持ち上がらない
動画を見ていただくとこのようになっていきますが、これは身体操作でいうと、
1回目脱力してない
2回目はそこそこ脱力している
3回目はおもいっきり脱力している
と変化をさせていっています。つまり、脱力すればするほど持ち上げる側からすると重くなるということですが、まずはなぜ脱力すると重くなるのか?を理解することが必要です。
 
この現象はよく、脱力している(力が抜けている)ので1つの物体として捉えづらく持ち上げにくくなるから重く感じるというように説明されることが多い印象です。
 
ようは、重さが変わっていないのに重く感じるのは、身体の使い方が問題だということですが、これは誤りです。
もちろんそういった捉えどころがないから重く感じるという要因はありますが実際、重さは変わっています。ここで大切なのは、「重く感じること」と、「重くなること」を明確に区別してください。そういう意味で力が入っているより、脱力したほうか重さは重くなります。
 
そのことを証明するために、体重計を使った簡単な実験を行ってみます。
体重計の上でスクワットをしてみてください。落下運動時は実際の体重より軽く、起立運動時は実際の体重より重く表示されるはずです。
次に体重計の上からジャンプをしてみてください。飛ぶ瞬間、数値が実際の体重より大きく表示されると思います。
 
これはなぜでしょうか?
体重計というのは、その人が持つ質量ではなく、その時に発生している抗力を計測しています。抗力とは、物体が接触している他の物体や地面等の固体の面を押しているとき、その力の面に垂直な成分に対し、作用反作用の法則により、同じ大きさで反対向きの固体の面が物体を押し返す力です。
 

体重計はこの作用反作用の法則を利用して体重を計測しています。そのため、体重計の上で静止することでその人の持つ質量とほぼ同程度の重さがその時に発生する抗力となるため質量と同程度の数値が表示されますが、体重計の上で動いていると数値が安定しません。これは誰もが経験したことがあるはずです。
 
先程の持ち上げる実験で見たように「脱力したほうが重さは重くなります」。しかし、その物体が持つ質量は全く同じままです。変化するのは、物体そのものにかかっている下向きの力です。質量は宇宙の中どこにあっても同じですが、重さは重力加速度(地球上では9.8m/s2)と質量の掛け算なので変化します。
 
質量とはその物体が有する量であり、どこにあっても変化しません。
重さというのは力であり、質量と加速度を掛けたもの(F=ma)です。地球上の物体には常に下向きの重力加速度(9.8m/s2)が掛かっているとうことです。
しゃがんだり立ち上がったりする際は加速度と加速度のベクトル方向(力の向き)が変化しているため体重計の数値はその瞬間瞬間で変化します。
 
 

脱力すると重くなる物理的解釈

 
では、スクワットの相で実際どうなっているのかをみていきましょう。分かりやすいように体重60kgの人を想定してみます(重力加速度はどの瞬間にも常に掛かっているためここでは省きます)。
質量60kgの場合、
・質量(身体)そのものが持つ下向きの力=60kg(これはどのような条件でも変わらない)
・その瞬間の作用力(作用点における下向きの力)=体重計に表示されている数値
・その瞬間の反作用力(身体が受ける上向きの力)=体重計に表示されている数値
それぞれこのようになります。
 
[立位で静止している時](作用反作用の法則の図参照)
この時はほぼ質量と同じだけの抗力を受けているので体重計には実際の質量とほぼ同じ数値が出されます。この際、体重60kgの人であれば、60kg分の抗力を身体に受けているため身体に対して下向きの力が60kg、上向きの60kgの力が働きます。
質量=60kg
その瞬間の作用力(作用点における下向きの力)=60kg
その瞬間の反作用力(身体が受ける上向きの力)=60kg
それぞれ同じ数値のため、プラスマイナス0で拮抗して安定し静止しているということです。
 
 
[しゃがみこんでいくとき]
このときは質量が下に向かって動いています。ですので、抗力は実際の質量より軽くなります。ここが最も重要で、抗力は小さくなっているが、質量は変わらないため身体そのものが持つ下向きの力は60kgのままであるということです。仮にこの際、体重計が40kgを示している瞬間を切り取った場合、身体が受ける反作用の力は40kgとなります。しかし、身体が本来持つ質量は60kgであるため、作用力は40kgであっても垂直下向きの力は変わらず60kgであるはずです。
質量=60kg
その瞬間の作用力(作用点における下向きの力)=40kg
その瞬間の反作用力(身体が受ける上向きの力)=40kg
身体に働いている反作用力は40kg、身体そのものが持つ下向きの力は常に60kgのため、下向きの力は静止している時に比べて20kg重いということです。

 
 
[立ち上がっていく時]
このとき、質量は上に向かって動いています。そのため、質量をさらに上に上げていくために、質量以上の抗力がかかるため、体重計の値は質量より重い数値が表示されます。仮に体重計の数値が80kgと表示されている場合、反作用である上向きの力は80kgですが身体そのものが持つ下向きの力は質量と同じ60kgなので、静止している時に比べ上向きに20kg分の大きい力が働いていることになります。
質量=60kg
その瞬間の作用力(作用点における下向きの力)=80kg
その瞬間の反作用力(身体が受ける上向きの力)=80kg
身体に働いている反作用力は80kgに対して身体そのものが持つ下向きの力は常に60kgのため、下向きの力は静止している時に比べて20kg軽いということです。
これが立ち上がる際ですが、立ち上がるスピードをどんどん速くしていけば、そのうち下向きの力を超えると上向きの力が身体に得られるため接地面から身体が離れる(ジャンプできる)ということになります。

 
 
次にこれを動画にある持ち上げる実験に置き換えて考えてみます。
最初1回目は体重計の上で静止している状態。つまり、質量と作用反作用全てが同じ数値で拮抗しているため、質量と同じだけの力がすでに上むきに働いています。
2回目はそこそこ脱力し自分自身の質量を自分自身で支えることを感覚的に半分くらい放棄しているため、その分抗力は減少します。しかし、実際の質量は体重が60kgであれば60kgで変わらないため、反作用である上向きの力が小さくなった分、下向きの力は強くなるため重くなります。
3回目は持ち上げられるタイミングで完全に脱力しているため、効力はほぼ0になっています。身体に働く上向きの力は0に近いため、下向きの力はいきなり質量60kg分がそのままかかっているのでさらに重くなります。
 
このように脱力することで抗力が小さくなり、身体に働く上向きの力が小さくなった分下向きの力は大きくなります。ですので、持ち上げるという行為を例にとった場合、脱力すればするほど実際に重くなる(下向きの力が大きくなる)ということです。
 
 

脱力がスポーツにおいて重要な理由と具体例

 
このことがスポーツにおいて重要であることは以下の通りです。
・落下運動そのものは、脱力を行い、限りなく抗力を0化することで重力加速度がそのまま質量に掛かり、最速の落下速度となる(外力が働かない場合)。
・脱力することで下向きの力が強くなるということは最終的に身体のある部分を着いて反力を得る瞬間、この脱力によりいかに下向きの力が大きくなっているかが大きい反力をもらうために鍵になる(例えばゆっくりしゃがむより速くしゃがむほうが、ジャンプが高くなることはこの原理)。
・格闘技やラクビー、バスケットボールなど対人または接触プレーがある競技において、瞬間的あるいは好ましいタイミングでの脱力が重要で、場面場面で小刻みな脱力を使うことで重さと抗力をうまく活用できる。
 
このような抗うことのできない普遍的な原理原則による効果があるため、脱力はスポーツにおいて重要だということです。脱力をスポーツで効率よくパフォーマンスにつなげるためには、単に脱力するだけではなく、脱力スピードとタイミングが鍵になることは想像できるかと思います。
 
 

まとめ

 
今回はいかに身体の質量をうまく使うかという観点で、脱力による落下運動をベースに実験を交えて具体的に解説しました。
スポーツにおける脱力するメリットは、より大きい力を生み出すための手段であるということです。 よりシンプルにわかりやすくする為、実際の計算では重力加速度やベクトル方向に関しては可能な限り省きました。
当然、スポーツの実際は瞬間瞬間で比べものにならないほど複雑なことが起こっているという前提なのはいうまでもありません。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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スピードとパワーは両立できる
投手のスタミナを考える 〜第1回:投手に必要なスタミナとは〜
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スポーツは科学だ
 

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2019年02月03日

冬のトレーニングだけでなく、体調管理も夏に影響する


 
まだまだ寒いこの時期、スポーツ選手は来シーズンに向けてトレーニングで自分と戦っている時期だと思います。
 
そこで今回はトレーニング以外にも食事面でも来シーズンに向けての準備ができる方法を東洋医学の視点からお伝えします。
 
〈前回の記事はこちら〉
手段に囚われない、食事面からのサポート
夏の食欲不振へのアプローチ
 
 
 

冷えは万病の元

あなたはカラダを冷やしていませんか?

この寒い時期に冷やすことなんて…
まさかですよね…

・冷たい飲み物
・果物
・生野菜(葉野菜)
・白砂糖
・アイス

抽象的にあげてみましたが、具体的に上げるともっと出てきます。

生野菜でも、トマト・きゅうり・レタス・ほうれん草・なすび…

これからカラダを冷やしてくれる効果がありますので、カラダに熱をもった時や夏のシーズンには余分は熱を取り除くには適しています。

 

が、寒い冬の時期に外から温めた熱を中から取り除いては本末転倒です。

食べるのは駄目なわけではありません!

もし冬の時期に食べるときは、冷やす作用があることを踏まえた上で温かいスープや飲み物で補って上げることが大切です。

 

悪いものを全て控えることは、今の現代では難しいですし
そう考えることがストレスにもなります。

 

セミナーでもお話しますが、ストレスからもカラダの冷えを生じます。

暑い夏には冷やす食べ物や食べ方を
寒い冬には温める食べ物や食べ方を

 

そして今回は冬に冷たいものを取りすぎることによって
夏のシーズンにどう影響してくるのかを東洋医学の視点から解説します。

 
 
 

夏の不調は冬に決まる

冬はカラダを温めるように
温かい気をカラダに閉じ込める時期です。


 

しかし、この気が逃げてしまうと
気がなくなり元気(気の元)がなくなります。

元気がない…

良く耳にすることないですか??

 

では、もしこの時期にカラダを冷やしてしまうとどうなるのか。

せっかく温めて閉じ込めた気を使ってしまわなければなりません。

もちろんこれだけで、夏のシーズンを迎える前に気の不足によりカラダの不調が出てくることもあります。

 

病院に行くほどではないけど、
なんとなくカラダがダルい…

これも症状の1つであり、不調のサインです。

 

その状態で夏を迎えるとどうなるのか。

夏は気を発散させる時期です。

冬は寒さからカラダを守るために気を閉じ込めていましたが、
夏になると今度はその気を発散させないと、カラダに熱がこもってしまいます。

 
 

しかし、
冬にカラダを冷やして、気を消耗させた状態で夏を迎えると…

カラダから気がなくなってしまいます。

元気がない…

 

また出てきましたね。

『冷えは万病の元』
現代人は平均して、1年通して気が不足してます。
カラダを冷やすことをしていれば、カラダを温める作用もつ気もなくなり、温めることもできない。

そんな状態では良いコンディションも維持できなければ、栄養を吸収するエネルギー(気)もないので、食べてもエネルギーを作れないし消化不良で胃もたれを起こしたりもします。

カラダがダルい、食欲がない、食べたくない…

 

夏のシーズンのパフォーマンス、食事事情、熱中症などの体調不良など、
冬の時期の過ごし方で起こるべくして起こっているかもしれません。

 

物事は必然であり、その症状には必ず原因があります。
それは半年前の冬の過ごし方にあるかもしれません。

 

1年通してカラダを考える。

ここにも選手の可能性を伸ばす伸びしろがあるはずです。

 

冬にトレーニングをして夏を迎えるように。
冬でも体調管理を意識し、夏に万全のパフォーマンスを発揮できるように。

 
 

 

今回JARTAではスポーツ栄養セミナーがコース化されました。

西洋と東洋、両方の栄養学を体系立てて学ぶことができます。
※参加条件はありません。どなたでもご参加いただけるセミナーです。

 

日本における栄養学は西洋的な観点を中心に発展してきましたが、実は東洋にも栄養学があります。

 

JARTAでは、西洋医学と東洋医学、そして西洋的身体観と東洋的身体観は、それぞれ補い合え、両者をそれぞれ使いこなすことで選手にとってより良いサポートが実現できるという考え方を持っています。

 

我々はこの考え方は栄養学にも当てはまると考え、西洋と東洋の栄養学の両者を使いこなせるようになることを目的としたセミナーを開催することにしました。

 

▶︎こんな方には特にお勧めいたします。
・西洋だけでなく東洋の栄養学も学びたい方
・スポーツ栄養学に興味があるけど、どこから学べばよいかわからない方
・スポーツ現場での応用編など、より深く学びたい方
・スポーツをしている方の栄養をサポートする立場にあるが、不安がある方

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JARTAスポーツ栄養コース


 

Stage1の募集は始まっています。
(Stage2以降へは必要に応じて進学をご検討ください)

皆様のご参加をお待ちしております。

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Stage1 -基本の食事 大阪会場
※当セミナーはJARTA認定スポーツトレーナーコースに含まれません

▶︎日程 2019年2月17日(日)10:00~15:00(受付:9:30)
▶︎会場 アルファオフィス247大会議
▶︎講師 西洋編|片山真子、東洋編|伊藤直哉
▶︎申し込みフォーム https://beast-ex.jp/fx3952/NUOsaka

 
 

是非、

パフォーマンスUPやケガをしないカラダづくりに、東洋医学の視点を取り入れて、食事や体調管理を考えてみてはいかがでしょうか。

 

参考にしていたけたら幸いです。

 
 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2019年01月31日

真価が問われるのはこれから

先月、東京・大阪の2会場で、2018年JARTA認定スポーツトレーナー試験行われました。
 
 

 

 
 
試験は、認定スポーツトレーナーコースのベーシック、アドバンスⅠ~Ⅲを受講された方が対象になります。
 
今年は、筆記試験が事前にオンラインで受ける形式になったため、
 
試験日が昨年の2日間から1日に変更になりました。
 
集合写真は、試験直後のプレッシャーから解放された表情です。
 
 

資格取得自体は目的にはならない

 
 
試験において一定の基準は設けていますが、
 
現時点では、トレーナーという立場でスポーツに携わるために、
 
必ずしも資格が必要というわけではありません。
 
活動の幅を広げるために肩書きとして必要なケースはありますが、
 
最終的に選手に貢献し、現場・選手から求められるトレーナーになれるかどうかは、資格の有無によるものだけではないはずです。
 
結局は、そのトレーナー自身が選手にとってどのような存在になれるかにかかっています。
 
それは、JARTAのコンセプトの中で説明している「トレーナーのトレーニング」が深く関わってきます。
 
要するに、トレーナーも選手と同様に必要な能力を高め続けて行くべきということです。
 
トレーナーとしての能力には、ここまでやればいいという規定はありません。
 
だからこそ、目の前の選手のために、日々ベストを追求し、進化を続けなければいけないのです。
 
 

成長し続けるために

 
 
JARTAで認定資格制度を導入している1つの理由に、「継続的に学べるシステムを使ってもらうこと」があります。
 
我々がセミナーなどでお伝えしていることは、頭で理解すれば大丈夫というものではありません。
 
自ら実践し、何度も練習やアウトプットをすることで、少しずつ選手に伝わる形ができてきます。
 
試験修了者の方は、再受講無料制度の利用、必須研修、合宿、イタリア研修などへの参加、プロ選手も含めたサポート場面見学などが可能になります。
 
JARTAは、セミナーを受けて終わり、試験を受けて終わりではありません。
 
試験の「その先」が何より重要なことであり、
 
トレーナーがその歩みを止めないことが、選手の成長のためには必要なことです。
 
昨年末に合格者へは通知が終了し先週、JARTAウェアが29名の新たなJARTA認定スポーツトレーナーの元へ届けられました。
 
新たに加わった力強い仲間と共に選手のために歩み進めていく所存でございます。
 
これからの認定スポーツトレーナー達の活躍にご注目ください。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2019年01月27日

女性トレーナーのすゝめ

はじめまして。
 
JARTA認定スポーツトレーナーの前谷涼子です。
 
私は鳥取で、
 
Body make studio スプリット
 
からだ作り専門のこじんまりとしたスタジオを開き
 
トレーニング指導(チーム、個人)
 
コンディショニング整体
 
インソール作製
 
セミナー講師や自分の経験を話すスピーカー
 
といった仕事をしています。
 
対象はアスリートから一般の方まで。大人も子どももいます。
 
(さらに…)

2019年01月24日

女性セラピストだから…を超えて「だからこそ」になる!

この記事を読んでくださっている方には男性が多いでしょうか。
それとも女性でしょうか。
今回の記事では、女性セラピストとして活動し、体験したこと・感じたことをお話しさせていただきます。
女性セラピストの方にとってどんな方向性でも何らかのヒントになれば、というのがメインになりますが、女性選手に関わる上で男性セラピストの方にも読んでいただきたいところがありますので、もしよろしければお付き合いください。
(さらに…)

2019年01月21日

投手のメンタリティの原点

文:岩渕 翔一

スポーツをするにあたってメンタルの重要性はいうまでもありません。例えば投手で言えば、ボール半個分インコースに投げれるのか投げれないのかたったそれだけがプロで活躍するか否かが決まる。そんな話も聞きます。
 
木曜日から日曜日まで九州に仕事に行っておりました。
JARTA代表の中野がサポートしている3人のプロ野球選手自主トレの同行から始まり、
金曜日は熊本でJARTA workout(内容は「胸郭の運動機能評価と呼吸コンディショニング)、日曜日は福岡で投手用トレーニングセミナーを開催しました。
それぞれたくさんの方にご参加いただき有意義な時間を過ごせました(写真全然撮ってないのですみません)。
 
土曜の夜に福岡でKOBESという会社の代表取締役をされている元プロ野球選手の小林亮寛氏とJARTAのトレーナー数名で食事に行きました。
小林氏は「ベースボールとフィットネスをデザインする」というキャッチフレーズの元、多くの野球選手の指導やイベントの企画運営をされています。
経歴も凄く面白くて日本のプロ野球からアメリカ独立リーグ、四国アイランドリーグ、台湾のプロ野球やメキシカンリーグなどかなりグローバルに活躍されていました。
今後の展望や野球界への想いなど色々情報交換をしたのですが、私が知らなかった投手のメンタリティの原点であるとも言える話を今回はさせていただきます。
 
 

野球とクリケットの繋がり

野球の原点とも言われることのあるクリケット。野球の起源に関しては諸説ありますが、野球とクリケットが深い関係があることはほぼ間違いありません。
クリケットのルールや詳細はここでは省きますが、ボウラー(投手)がウィケット(3本の棒)を目掛けて投げたボールをバットマン(打者)がアウトにならないようにブロックしたり打ったりします。
投手はウィケットにボールを当てれば打者をアウトにすることができるので、打者はそれを邪魔するわけです。これが野球の原点とも言われるクリケットと投手と打者の対戦の中身です。
 

 

野球における攻守

野球は、バットを持って打つ側が攻撃で、グローブを持って守る側が守備だと誰もが当たり前に思っています。ですので、投手は「守る側」だという認識が間違いなく無意識にあります。
しかし、野球の原点であるクリケットでは、武器(ボール)を持っているのは投手で、ウィケットに向かってボールを狙って投げる(攻撃する)。対して打者はそれを邪魔する(ウィケットを守る)守衛のような存在です。
投手は守る側ではなく、攻撃する側で、打者はウィケットにボールが当たらないようにする守備側だということです。
投手は守るのではなく攻撃する。
これはなかなか大きな事実ではないでしょうか?
 
打たれないように投げる、点を取られないように投げる、打ち取る。
そうではなく、投手が打者を攻撃しているという意識を持つだけでピッチングが大きく変わる。そんな気がしませんか?
 
自分自身が攻撃する側だと思えば、
・ストライクを取りにいく
・ボールを置きにいく
このような感覚はむしろなかなか持ちにくいのではないでしょうか。
 
野球は投手主導のスポーツです。投手がボールを投げなければプレーは始まりません。そして打者はそれに対して「タイミングを合わせる」ことから始動します。
当たり前のようにバットを持っている側が攻撃で、グローブを持っている側が守備だと私自身も疑いもしませんでした。選手としてプレーしている時はもちろんそうですし、トレーナーとして活動している今までもそうでした。
 
しかし、野球の原点や歴史を振り返った際、「投手は攻撃する側である」という有力な説があります。これは、守ることを無意識に意識していたであろう投手のメンタリティを劇的に変えるきっかけになる可能性を感じました。
 
一度、思い直してみてください。武器(ボール)を持っているのは自分だと。目の前に立っている打者は自分を攻撃する者ではなく、邪魔してくるだけの存在だと。
 
 
攻撃こそ投手のメンタリティの原点です。
 
 

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2019年01月17日

プロサッカー永里優季の「サッカーが上手くなるための脳と身体のトレーニング」

女子サッカー永里優季選手とJARTA

東海地方で活動するJARTA認定スポーツトレーナーの青木正典です。
JARTA代表である中野崇は海外で活躍し続ける女子プロサッカー永里優季選手のトレーニングサポートをしています。
そこで、今回は永里選手のインタビュー動画を紹介します。
動画の主な内容は永里選手がJARTAトレーニングを続けている理由とその効果、サッカーが上手くなるための身体操作やトレーニングを中野崇が指導している様子などです。是非ご覧ください。
 
 
 
 

<主な経歴>
2008年東アジア女子サッカー選手権優勝
2011年FIFA女子ワールドカップ優勝
2012年ロンドンオリンピック準優勝
2015年第7回FIFA女子ワールドカップ準優勝
<個人タイトル>
なでしこリーグベストイレブン:2回(2005年、2006年)
なでしこリーグ得点王:1回(2006年)
ブンデスリーガ得点王:1回(2012-13シーズン)
NWSL週間最優秀選手:1回(2018年第10週)
 

  • 女子サッカー選手永里優季選手のインタビューはこちらから

https://jarta.jp/dispatch/interview_nagasato/
 
 

インタビューの5つの質問

実際にインタビューを行った5つの質問を紹介します。
 
 
 
 

(永里選手 独占インタビューより引用)
 
 

【インタビューの5つの質問】

・女子サッカー選手永里優季×JARTA代表中野崇
・他のトレーニングとの違いは?
・JARTAトレーニングを導入して感じている変化は?
・JARTAのトレーニングを継続している理由
・永里優季がトレーナーに求めることは?
 
と具体的な5つの質問で、インタビューに答えていただきました。
 
 

永里優季選手の生の声

インタビューの5つの質問の一部をお伝えします。
【トレーニングを継続している理由について】
 
インタビュアー:JARTAのトレーニングを継続している理由とは?
 
永里選手:「自分のカラダが変化していると認識できる。変化していると、この先またさらに変化する可能性がある。これを継続してやれば、カラダも脳も伸びる。完全に無意識にできるまで身につけたい。無意識化できるまでやり続ければ、その壁を越えられる。」
 
 
動画ではサッカーだけでなく、自身の身体の感覚についても具体的に語ってくれています。
まだ動画を見ていないサッカー関係者の方は必見です。
見たことがあるよっていう方も、実際に海外で活躍する選手のトレーニングを見ることができる数少ないチャンスです。
動画ではサッカーが上手くなるヒントがたくさん含まれています。
繰り返し見て、パフォーマンスアップに是非役立ててください。
 
 

  • 女子サッカー選手永里優季選手のインタビューはこちらから

https://jarta.jp/dispatch/interview_nagasato/
 
 
今回は「サッカーが上手くなるための脳と身体のトレーニング」を紹介させて頂きました。最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp

2019年01月15日

日本一を目指す覚悟


 
 
明治大学ラグビー優勝報告
 
先日、全国大学ラグビーフットボール選手権決勝に勝利し、大学ラグビーでようやく日本一になることができました。
 
東京で活動してる真木伸一と申します。
 
トレーナーとしての活動を始めてから22年、面白いもので、私がトレーナーを始めた年に生まれた彼らが、私にトレーナーとしてのはじめての日本一をプレゼントしてくれました。
 
明治大学に関わってからは、6年かかりました。
その間、自分の足りないものを求め、JARTAには色々な気づきをもらいました。
(さらに…)

2019年01月14日

「マウンドが合わない」原因は眼と脳にあるかもしれない

文:岩渕 翔一

 
結果が出ない、よく打たれる、なにかしっくりこない。
ピッチャーがこういった傾向にある球場を指して「マウンドが合わない」と表現することがあります。
一般的には、マウンドの硬さや傾斜、高さなどを指してこのように言っていることが多いですが、それは本当にマウンドの問題でしょうか?感覚的に「しっくりこない」原因をなんとなくマウンドが合わないと表現してしまっていることはないでしょうか?
少なくとも、「しっくりこない」だけでは現象が曖昧で解決策を立てることができません。
そして、「マウンドが合わない」原因が、マウンドそのものにない場合が実は多くありますが、「マウンドが合わない」という言葉から無意識にマウンドそのものに意識が向いてしまいやすくなります。
 
今回の記事は「マウンドが合わない」という表現が一般化した今、もう一度その原因にどのようなものがあるか見直さなければいけないというメッセージです。
 
 

マウンドそのものに対する対応力

マウンドそのものの形状はルールで決められています。
直径18フィート(5.4864m)の円形に、土を盛り上げた構造で高さは10インチ(254mm)と定められています。
投手板(ピッチャープレート)はこのマウンドの中央に埋め込まれ、横24インチ(609.6mm)縦6インチ(152.4mm)の長方形で、ホームベース先端までの距離は60.5フィート(18.4404m)です。

しかし、実際は、ここまで厳密に管理されているマウンドはなく、
・人の手で整備されている
・使用している土は球場によって異なる
・気候(前日に雨が降ったなど)でマウンド条件が変わる
・投手自身がそれぞれ投げやすいようにマウンドを削る
こういったことからマウンドによって様々な違いが生まれるのは事実で、投手としては当然それに対する対応力というのは身につける必要があります。
これに関しては諸処の考え方や対応法がすでに多くありますので今回のテーマからは省きます。
 
 

しっくりこない原因をもう少し広く考える

当然ですが、野球をやるのは野球場(グラウンド)でマウンドがあるのは野球場の中です。そして、野球場そのものも球場によって大きさや形、フェンスの色などの違いがあります。また、どの方角を向いているかなどは太陽との位置関係や風を気にする野手にとっては重要です。
 
ここで注目したいのは、これら球場の持つ特徴です。投手板からホームベースまでの距離は決められているので、投手から捕手までの距離はどの球場でも変わりません。
しかし、球場によって大きく異なるのは、
・ホームからバックネットまでの距離と形状
・バックネットの色や形状、素材
投手に大きく関わる違いとしてこの2つが挙げられます。
球場によってホームベースまでの距離を近く感じたり、遠く感じたりすることがありますが、実際距離は同じはずです。それにも関わらず、そこに違いが生まれるということは「認識する過程の問題」の可能性が浮上します。
つまり、背景と環境は球場によって色々な違いがあります。その違いがホームベースまでの主観的遠近感の変化という現象を生んでいる可能性があるということです。
ここで、それを認識するための受容器となる「眼」と、その情報を処理する「脳」という観点が生まれてきます。

 
 

投手に必要なビジョントレーニング

アスリートがする眼のトレーニングというと真っ先に頭に浮かぶのは、動体視力のトレーニングでしょう。速く動くものをしっかり眼で捉えることや、眼で認識したものに対し素早く動くようなトレーニング(眼と身体の協応動作)です。
もちろん投手にとってもこういった動体視力の強化は重要ですが、実際はこれ以外にも必要な眼の機能はたくさんあります。
 
上記にあげた遠近感を適切に認識するという眼の機能で特に重要なのは、「深視力」です。
 
[深視力]
深視力とは、物体の位置関係や奥行き、距離感を適切に把握する力です。トレーニングによって鍛えることができる眼の機能は眼球運動と、焦点を合わせる力の2つで、深視力の強化には両方の機能が重要です。
その2つの機能両方に筋が関与しており、その筋は大きく分けて、内眼筋と外眼筋があります。
・内眼筋
内眼筋とは瞳孔括約筋と毛様体筋のことをいい、動眼神経という脳神経により支配されています。瞳孔括約筋は瞳孔を収縮させ光の量を調節します。毛様体筋は水晶体の厚さを変化させて焦点を合わせたりする筋肉です。
・外眼筋
外眼筋とは眼球運動を行う筋肉で、4本の直筋(内直筋、外直筋、上直筋、下直筋)と2本の斜筋(上斜筋、下斜筋)があり、動眼神経、滑車神経、外転神経に支配されています。
 
これ以上専門的になるとややこしくなるので、理解していただきたいのは以下の点です。
・眼球運動は両側の6本の眼筋(左右合わせて12本)全てがうまく組み合わさって作動してはじめてあらゆる方向に協調的に動く。
・外眼筋のうちどれか1つでもうまく動かせないと複視が生じ、対象物が網膜上に正しい像を形成できなくなる。
・例えばどんどん近づいてくる物体をみつめる時は、輻輳反射(広義の寄り目だと思ってもらっていいです)と調節反射が作用する。随意的にも反射的にも反応する(内眼筋、外眼筋両方が作用するということ)。
・眼のトレーニングは前頭葉のトレーニングと言われることがあり、イメージ力や動機づけに基づく意思決定や潜在的な意識の処理も行なっていると言われている(その局在性や正確な走行は未だ不明)。
 
つまり、深視力を強化するには内眼筋と外眼筋両方のトレーニングが必要だということです。さらに厳密には動体視力や身体との協応動作においても内眼筋と外眼筋のトレーニングが主になるため、この2つの筋に対する多様なトレーニングが眼の力を鍛えることに繋がります。
今回は深視力に着目した基礎的なトレーニングを紹介します。
 
[内眼筋のトレーニング]
このトレーニングはあえてそういう時間を作らずに、練習や試合の中で行うことを習慣化することを勧めています。
方法は簡単です。
1.自分の指もしくはグラブを目の前の視界に入るところに置く。グラブの場合は両目で行なったり、片目をグラブで隠して片目だけで行なったりすると良い。
2.そして、その奥にある物(具体的にはフェンス、自チームの選手、ホームベース、ベンチ、ポールなど)と交互に焦点をあてる。2点交互だけでなく3点や4点を設定し、順に焦点を合わすようにするなど行っていく。
これだけです。できるだけ色々な場所や球場で行うことで遠近感を適切に認識できるようになります。
 
[外眼筋のトレーニング]

 
基本的な眼球運動です。眼球運動は基本の運動として追従・跳躍・輻輳の3つがあります。
運動方法は以下です(運動方向は縦、横、斜め、円運動で実施します)。
・追従
目標物を目だけで追う。図の線を目で追う。
顔の前40cm前方、30cm四方の範囲で2往復ずつ縦横斜め、円方向2回を左右両周り。
・跳躍
2つの目標物を交互に見る。図の点と点を交互に視る。
顔の前40cm前方、30cm四方の範囲で2往復ずつ縦横斜め。
・輻輳
いわゆる寄り眼。両眼の間に目標物を近づける。眼から5cm以内まで両眼を寄せて視ることができるかが指標。
 
注意点は、頭頸部が眼の動きにつられて動かないようにすること、特に追従は眼球が一定のペースで動くことです。
眼前に両親指を立てて行ったり、紐があれば追従は紐を持って行います。また、円方向の追従はペアを組み、指を円方向に動かしてそれを追うようにすると良いです。
 
 

まとめ

・マウンドが合わない原因がマウンドそのものにない可能性があることを前提に原因を探る必要がある。
・受容器である眼と、認識する脳に原因がある可能性を考える。
・色々な球場で距離感を適切に把握するには深視力が重要である。
・深視力を鍛えるには内眼筋と外眼筋のトレーニングをする必要がある。
・内眼筋と外眼筋のトレーニングは動体視力や眼と身体の協応動作など、ビジョントレーニング全般の基礎となる。
・今回紹介した基礎的な眼のトレーニングは今行っている練習や生活の隙間時間で十分できるので習慣化していくことが重要である。
 
今回は「マウンドが合わない」原因の可能性の1つに言及しました。
もちろんマウンドそのものが合わない可能性もあります。今回のように眼に課題があるかもしれないですし、もっと他の要因かもしれません。
いずれにしても現場で起こる現象を抽象的なままで捉えていては、解決策は見出せません。「マウンドが合わない」という表現が抽象的であるからこそ、選手はその原因が特定できず困惑していることが想定されます。
だったらトレーナーや指導者はその原因をしっかり具体的に評価し、対策を講じていく必要があります。
 

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2019年01月13日

~球際で勝つために必要なもの~

【1対1の局面で勝てない】

サッカー前日本代表監督ハリルホジッチ監督は「デュエル」という表現を会見やインタビューで多用し、その言葉を日本サッカー界に根付かせました。
ルーズボールの競り合いだけでなく、1対1のボールの奪い合い、相手のボールを奪う、マイボールに相手が激しく来ても取られないフィジカルコンタクトの強さ。
 
こういったものを「デュエル」といいます。
 
そしてデュエルという単語を浸透させることによりフィジカルコンタクトの重要性を広めていきたいという狙いもありました。
 
結果的にワールドカップ直前にハリルホジッチ監督は解任されました。
 
その要因は、日本が目指す強化方針とのギャップがあったことも1つでしょう。
 
現在日本サッカー協会が打ち出している育成方針は
「Japan’s Way」
足りないものは高める努力をしつつ、
・技術力
・俊敏性
・組織力
・勤勉性
・粘り強さ
などの日本人のストロングポイントをさらに伸ばしていけるような育成を目指しています。
日本サッカー協会;http://www.jfa.jp/youth_development/outline/
このような育成方針を出していることからも、筋力的な側面を高めることだけでは世界との差は埋められないという考えがあるということです。
 

【フィジカルが弱い】

これまで日本人は
「フィジカルが弱い」、「球際で勝てない」とされてきました。
そしてこの「フィジカルが弱い」と「球際で勝てない」は同じように扱われてきました。
その結果「日本人はフィジカルが弱いから球際で勝てない」
このように解釈している方も多いのではないでしょうか。
※ここでいうフィジカルは筋力、パワーと定義。
当然球際で勝つためには体格、筋力も勝つ要素に含まれるでしょう。
しかし世界では小柄でも1対1の勝率が高い選手はたくさんいます。
ではその違いは何なのでしょうか。
球際、デュエルを身体的なパワーとパワーの力比べと定義してしまうと結局筋力が強い選手が勝ってしまう構図になります。
【球際で勝つための方法は1つだけではない】
そもそも球際で勝つとはボールをマイボールにすることであり、そこに至る手段はファールを犯さなければ自由です。
では筋力や体格で劣る選手がどのようにして勝つのか。
それは「ボールと相手の間に自分の体がある状態をいかに早く作ってしまえるか」
相手と横並びではなく縦関係の状況を作れることができれば相手は力を発揮しづらい状況となります。
ではどのようにしてその状況を作り出すか。
そのヒントが上半身の身体操作にあります。

【面を作る】

現在選手に指導する際、「面を相手に見せる」と言う表現を使用しています。
この面を相手に見せるとは上述したボールと相手の間に自分の体がある状態を作るための身体操作です。
「面を相手に見せる」とは言い換えると「相手に背中を見せる」ということになります。
上肢~体幹の動きの誘導により、相手と両肩が平行の関係ではなく、相手選手の脇の空間を通れるような角度に回旋させます。
この身体操作は攻撃、守備共に相手の前に入るうえで共通項を持った動きになります。

上半身操作により自身が進行方向に進むための空間を生み出し、相手の前に入る準備となります。
またこの回旋動作は回旋側の股関節を内旋、屈曲させ、殿筋/ハムストリングスといったアクセル筋の作用を最大化させる役割とも言えます。
これらの動きは上半身から下半身を連動させ、股関節の加速機能を引き出すうえでも大変重要となります。

ルール上、身体の後方からのチャージは反則となります。
トップ選手の被ファール率が高い一因として、上述のような相手に背中を見せる身体操作がうまいことも挙げられるでしょう。
これらの動きは単一的なものではなく上半身と下半身の動きが連動した状態で発揮され、そのためには現在のサッカートレーニングでは盲点となってきた上半身の身体操作性の向上が必須となります。
「デュエルに勝つ」
そのための方法は戦術が様々あるように1つだけではありません。
その選手の身体的特性や勝つための無数の可能性を引き出せるように。
サッカー上半身セミナーはこちらから
申し込み、詳細に関してはホームページをご参照ください。
https://jarta.jp/j-seminar/soccer/

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2019年01月09日

投手のスタミナを考える 〜第3回:投手のスタミナ強化トレーニング〜

文:岩渕 翔一

 
-前回の続き
 
第1回で、投手のスタミナを強化するには、持久力、筋力、リカバリー力の3要素が必要であることを解説しました。
第2回では、投手に走り込みは必要であることを解説しました。
 
第1回:投手に必要なスタミナとは
第2回:投手に走り込みは必要か
 
最終回の第3回では、具体的にどのように走り込み考え行っていけばいいのかをお伝えします。
 
 
その前に。今回論じているのはあくまで"投手にとって"であって、"野球選手にとって"の話ではありません。
DH制があるプロや社会人、大学野球と違って高校生までは投手も当然打席に立ちます。チームの中心選手であればあるほど、投球していないときは別のポジションを守り野手として試合にも出るでしょう。
野球選手にとってや、野手にとっての走り込みやスタミナとなるとまた少し内容も考え方も変わってきます。高校や中学で投手をしている選手は、投手のトレーニングに加えて、捕る、投げる、打つ、走るといった野球全般のトレーニングと練習をしなければならないことを念頭に置いてください。
 
では、ピッチングに有効な走り込みトレーニングについて。
 
 

ピッチングの運動構造(スタミナベース)

1試合9イニングを完投する投球数の目安はおよそ100球です(効率よく打ち取って行けた場合)。
また、1イニングの投球数はおよそ10〜20球です。
高校野球であれば1試合の所用時間は2時間程度なので、1イニングが12〜15分程度。つまり、6〜8分程度の中で10〜20球程度投球し、6〜8分ベンチで休み、またマウンドへ上がる。このような構造になります。
 
前回解説した、運動時のエネルギー供給機構をもう一度確認してみます。
 

 
一球一球の投球そのものは高負荷の運動になるため、まさにこのグラフとほぼ同じようにエネルギー供給が行われることになります。
グラフにある赤線の全エネルギーをみて分かるように、投手で言えば回を追うごとにエネルギー供給は枯渇していき、それがいわゆる疲労になります。
この曲線の右下りを極力抑え、疲労を起こさない、あるいは疲労を起こしにくくすることが投手にとってのスタミナ強化です。
 
このグラフ上でそのために必要なのは、
・無酸素系回路(ATP−CP系、解糖系)の速やかな回復
・有酸素系回路の強化
この2つです。
ATP−CP系の回復には3〜5分必要と言われ、その回復には有酸素系回路で生成されたATPとクレアチンが利用されます。解糖系回路ではその副産物として乳酸が生成されます。この乳酸は有酸素系でエネルギー源として利用されます。
 
つまり、有酸素系回路はそのものがスタミナに直接寄与していると同時に、無酸素系回路の回復にも寄与しており、有酸素系回路の強化がスタミナ強化、リカバリー力強化の両方に重要であるということです。
上記の運動構造でいうと、投球中や投球間での運動エネルギーの確保と、ベンチで控えている時間のリカバリー力に非常に重要であるということです。
 
 
遅筋↔︎速筋のタイプシフトは起こらず、速筋間のタイプシフトがあることは前回の記事でお話ししました。
この事実は、「有酸素運動で懸念される筋力低下は筋肉の分解による筋肉総量の減少のみである」ということです。
つまり、運動によって起こる筋肉の分解が筋肉再生を超えない範囲内であれば問題ないということです。
 
ですが、ここでもプロと学生では対応が異なってきます。プロ選手はオフシーズンとインシーズンとがあり、総じてオフシーズンに体重増加を図るケースがほとんどです。
 

 
これは、シーズン中になると先発であればローテーションを守り、中継ぎや抑え投手であれば常に投げる準備をします。
そのため、体調管理とリカバリーが主になり、積極的なフィジカルトレーニングやレジスタンストレーニングをなかなか行えません。
なので、シーズン中はいかに筋量減少→体重減少→筋力低下を起こさず過ごすのかというのが課題の一つです。
そういう意味で、強化を目的とした有酸素運動というのはやはり行いづらいです。
有酸素運動というのは筋力の強化にはならず、脂肪燃焼、筋肉の分解、呼吸循環器系によるスタミナ強化がその主な効果であるからです。
 
投手に必要なスタミナに、「1シーズン怪我なくこなせるスタミナ」をあげていますが、有酸素運動そのものがこの目的にマイナスになるようなら本末転倒です。
レジスタンストレーニングでも筋肉の分解は起こりますが、損傷後の再生で筋繊維は太くなっていきます(筋肥大)。なのでやはり併用していくことが基本ですが、それがシーズン中ではなかなか困難であるということです。
 
しかし、学生であれば、毎日試合があることはほとんどないので、この併用がトレーニングプログラム次第で十分できるはずです。
 
また、試合終盤になると足がつる(筋痙攣)投手が多くいます。筋痙攣を起こす部位のほとんどがふくらはぎ、ハムストリングスのためここの局所的なスタミナも重要です。
筋痙攣を起こす原因は完全には明らかにされていませんが、脱水、疲労、血圧低下、電解質異常がその主たる原因といっていいでしょう。ここで重要なのは筋持久力です。筋持久力の強化はその局所の血流量増加を起こすためです(第2回参照)。
 
 

投手のスタミナ強化走り込みトレーニングの一例

[長距離の走り込みはリカバリー力強化を目的とする]
長距離の走り込みはジョギング程度のペース。30分〜1時間程度を心拍数が高くても120〜150程度で抑え、有酸素系回路の強化を図るために行う。
 
[中距離の走り込みと短距離最長の走り込み]
原則としてオフシーズンや試合間隔が空いてる際にのみ実施。エネルギー供給機構の機能強化と持久力強化が目的。2〜3kmのタイムトライアル、300m程度の強度が強いランを2分の休憩を挟み5本程度行う。
 
[インターバル系の走り込み]
距離は塁間〜70m程度。強度は50〜70%程度で10本が目安。目的は筋持久力強化と、エネルギー供給機構の強化によるリカバリー力強化。
 
[ダッシュ]
10〜30m程度。全速力で行う。2本ダッシュ後1〜2分の休憩を3〜5セット。筋力と瞬発力、無酸素系のリカバリー力強化。
 
[坂道ダッシュとジョギング、ウォーキング]
トレッドミルがあれば傾斜15度で行う。最初は13分/km程度の速度で5分歩く。その後、10分/kmペースで5分ジョギング。その後5分休憩。これを1サイクルとし3セット程度行う。
足関節が常に伸張位になるため、持続収縮を強制的に促され、筋持久力と筋力強化に有効。試合終盤のふくらはぎの筋痙攣を起こす選手には特に推奨。
 
 
あとは原則的に、
・高負荷のトレーニング後に有酸素運動を行う
レジスタンストレーニング後は成長ホルモンの上昇がみられ、その後の有酸素運動中に遊離脂肪酸濃度が高まり、脂質分解や利用が亢進すると言われています。そういったことから筋肉の分解を抑えることができるため、原則はこの順で行うことが現時点では望ましいです。
 
・練習中の移動は走る
練習中の移動はトレーニングと認識します。2〜3時間の練習中に何度も行われる移動でその都度走ることでエネルギー供給機構の強化と筋持久力強化に繋がります。
また、試合中の運動構造と似ているためスタミナ強化に繋がりやすいです。
 
 
上記はあくまで例です。
目的を明確にし、これまで解説した生理学・解剖学的事項に沿って距離やインターバル、本数、休息時間を設定しています。
このまま現場で使うのではなく、目の前の選手に必要なスタミナ強化やトレーニングを熟慮し最善のメニューを適宜提案することです。
 
 
 
まとめます。
・スタミナ強化に必要な要素は、
[筋力][持久力(全身持久力・筋持久力)][リカバリー力]
・スタミナ強化で考慮すべき生理学的事項はエネルギー産生機構
・スタミナ強化で考慮すべき解剖学的事項は筋繊維のタイプ
 
これらを踏まえた上で多種多様な走り込みが必要であるということです。
 
 
全3回の中で、投手に必要なスタミナとは?から逆算し、解剖学的・生理学的背景を提示しました。
走り込みの効果はプラスばかりでないことを念頭に、その時何が必要なのか選手やチームの状況を考慮し、
それらを踏まえた上でどのように考え、トレーニングを考案しているかを解説させていただきました。
 
今回「走り込み」の定義は「走りのトレーニング全般」を指しています。
あえて触れませんでしたが、投手は他にフィールディングやベースカバーに入るなど投球以外の運動があることも踏まえていかなければなりません。
 
また、JARTAトレーニングは身体操作系が多いと言われることがありますが、こういった「走る」ということや「スタミナ」ということの基本的な解剖生理をおさえた上でトレーニングを行っていますし、行われるべきです。
今回のテーマであれば、「走りの質」や「スタミナを上げる効率的な身体の使い方」という部分を並行してみていきます。
 
とにかく、私が言いたいのは選手やチームの成長を望むのなら、トレーナーはとにかく考えつくし、専門家らしい論理と根拠を持って欲しいということです。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
第1回:投手に必要なスタミナとは
第2回:投手に走り込みは必要か
第3回:投手のスタミナ強化トレーニング
 
投手用トレーニングセミナーはこちら
 

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2019年01月08日

投手のスタミナを考える 〜第2回:投手に走り込みは必要か〜


文:岩渕 翔一

 
-前回の続き
 
第1回で、投手のスタミナを強化するには、持久力、筋力、リカバリー力の3要素が必要であることを解説しました。
 
今回のテーマは「投手に走り込みは必要か」です。
 
結論から言うと、投手に走り込みは必要です。全身持久力を高める有酸素運動系の走り込みも、筋持久力を高めるインターバル系の走り込みも、筋力強化に繋がるダッシュ系の走り込みも全て必要です。
 
 

有酸素運動系の走り込みについて

走り込みの賛否を語る際に議題の主役は「長距離のランニング」でしょう。多く聞かれる賛否両意見をみてみます。
[賛成派]
・走ることで根性がつく
・走ることで全身のバランスが整う
・走ることでスタミナがつく
 
[反対派]
・精神論とトレーニングの効果は別
・野球に長距離走が速くなるようなスタミナは必要ない
・筋肉が分解されて痩せてしまう
 
多く聞かれるのはこのような意見です。一つ一つを見てみるとどの意見も間違いではありません。
例えば、精神論は現代スポーツでは古いとされます。しかし、強い精神が必要ないのかと言われればそんなはずはなく、スポーツで結果を出したいのなら強い精神は絶対に必要です。
問題なのは、なんとなくやらせている(やっている)しんどい練習にきちんとした根拠がないことであって、精神論そのものが悪いわけではありません。
 
同じようにどの意見もそれだけを見れば間違いではないのですが、かといって正解でもありません。
トレーニングによるマイナスの効果があることと、そのトレーニングが必要か否かは別問題だからです。そもそもいいことずくめのトレーニングなどありません。
要はもっと思慮深く、色々なことを踏まえて考えていかなければいけないという至極当然のことです。
それでは色々なことを踏まえて考えてみましょう。
 
 

筋肉のエネルギー供給と速筋・遅筋

筋肉が働くにはエネルギーが必要です。
ATP(アデノシン3リン酸)が分解されADP(アデノシン2リン酸)が出来る時に出るエネルギーで筋肉は動いています。このATPが筋肉のエネルギー源になります。
つまり、筋肉が動き続けるにはATP産生が必要で、その産生過程は大きく分けて3つルートがあります。
 
1.ATP-CP系
酸素を必要としないエネルギー産生機構。運動開始時や短時間で強度の強い運動で主に利用される。このエネルギー源は7〜8秒で枯渇する。
 
2.解糖系
ATP-CP系と同様に酸素を必要としないエネルギー産生機構。2つを合わせて無酸素系と呼ばれる。強度の強い運動で利用される。このエネルギー源は35秒程度で枯渇する。
 
3.有酸素系
筋細胞の中のミトコンドリアで行われ、酸素を必要とする。酸素と脂肪とグリコーゲンの消費でATPを産生する。理論上エネルギー産生は無限に行えるが、実際は運動量に比して酸素供給が追いつく限り。
 
ATP-CP系>解糖系>有酸素系の順でエネルギーの供給速度が速く瞬発的な運動に適しています。
 
無酸素系のエネルギー供給は総じて42〜43秒程度です。陸上の400mが短距離に分類されるのはタイムがこの無酸素系エネルギー供給の限界値に近いからです。
何秒とかいうとすぐにエネルギーが枯渇して動けなくなりそうてすが、基本的に全てのエネルギー供給源を活用して動きますので、エネルギーそのものが枯渇して全く動けなくなるということはありません。
 

 
ピッチングは一球ごとの投球は高負荷ですが、運動時間でいうと長時間の反復運動になります。
ですので、ピッチングにおいても当然エネルギー供給はこの3つのルートを全て使っての運動になるため無酸素系、有酸素系ともにトレーニングする必要があります。
 
 
[2タイプの速筋と1タイプの遅筋]
筋繊維にはタイプがあります。
速筋と遅筋は専門家でなくても知っていると思いますが、速筋はさらに2タイプに別れます(厳密には3タイプですが、MHCⅡbというタイプはヒトの筋繊維ではほとんどないためここでは速筋は2タイプとします)。
 
・遅筋(Ⅰ型)
一番遅い筋繊維。赤筋とも呼ばれる。マラソンなどの持久力が必要な競技選手に多いとされている。
 
・速筋(Ⅱa型)
スピードと持久性を兼ね備えている筋繊維。ピンク筋とも呼ばれる。
 
・速筋(Ⅱx型)
最もスピードが速く持久力の乏しい筋繊維。白筋とも呼ばれる。
 
筋線維はこの3タイプに分かれます。トレーニングによって速筋↔︎遅筋のシフトが起こるかどうかですが、現時点では起こらないというのが定説です(そういう研究結果がない)。
しかし、速筋線維はトレーニングによってⅡxはⅡaに変化していくことがわかっています。しかも面白いことに、持久的なトレーニングをしても、いわゆるウェイトトレーニングのような高負荷のトレーニングを行ってもです。
つまり速筋線維はトレーニングによってスタミナも有した筋肉へシフトしていくということです。
 
 
少しまとめます。
・エネルギー供給には無酸素系2ルートと有酸素系1ルートの系3ルートがある
・エネルギー供給特性は3ルートそれぞれであるものの、基本的には全3ルートを全て利用してエネルギー供給が行われている
・筋肉は遅筋と速筋(2タイプ)
・遅筋↔︎速筋のシフトは起こらない
・速筋のⅡx→Ⅱaへのシフトはトレーニングによって起こる
 
ということです。
 
 

走り込みの目的

前回の記事で書いたように走り込みの目的はスタミナ強化と下半身強化であることです。
 
投手に必要なスタミナは、
・1試合投げ切ることができるスタミナ
・連投をこなせるスタミナ
・1シーズン怪我なく過ごせるスタミナ
であり、そのために必要なのは持久力、筋力、リカバリー力の3つであることを解説しました。
 
では、走り込みの目的と効果を考えてみます。
 
 
[長距離の走り込み]
全身持久力とリカバリー力の強化に有効。主に遅筋繊維の強化とⅡx→Ⅱaへのシフトを起こす。また、有酸素系のエネルギー供給力強化にもなる。
ここでもっとも懸念されるのが過度の長距離ランニングが筋肉の分解を起こすということです。
(ダルビッシュ有選手が懸念していたのもこの点)
ですので、このマイナス要素を考慮したトレーニング案が必要となります。
いずれにしても「精神や根性を鍛える」ほどの量は必要ない。また、ジョギング程度の負荷の走り込みは、体性感覚情報入力や全身バランスの改善、思考力アップなどの効果もあります。
 
[中距離(3kmまで)の走りこみ]
全身持久力と筋持久力の強化に有効。Ⅱx→Ⅱaへのシフトを起こす。
 
[インターバル系の走り込み]
筋持久力とリカバリー力の強化に有効。ピッチングの運動構造を考えた際、最も実践に近い走り込みトレーニングのため、投球のスタミナ強化に直結しやすい。
 
[ダッシュ系の走り込み]
筋力強化と筋持久力強化に有効。球速アップなどスタミナ面とは異なる効果を期待できる。
 
※筋持久力の強化が身体に及ぼす影響は、筋肉中の毛細血管が増え、筋肉の中を流れる血液量が増えるためリカバリー力強化に繋がります。
 
 
このように順を追って考えていくと、走り込みは必要であることが分かるかと思います。
ただし、それぞれプラスの効果とマイナスの効果があることも事実です。
必要であることが分かることと、目の前の選手に対し、いつ、何を、どの程度、どのように行えば良いのかの判断ができるかどうかは全く別問題です。
 
長距離の走り込みといってもどの程度の距離や時間をどの程度のペースで走れば良いのか?
マイナスをできるだけ起こさない、あるいはマイナスを補うためにはどうすれば良いのか?
走りこみのトレーニングが投手にとってより有効なトレーニングにするための工夫など。
 
トレーナーの腕の見せ所はここから先です。
 
 
次回、「投手のスタミナ強化トレーニング」で考察して行きます。
 
 
第1回:投手に必要なスタミナとは
第2回:投手に走り込みは必要か
第3回:投手のスタミナ強化トレーニング
 

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2019年01月07日

投手のスタミナを考える 〜第1回:投手に必要なスタミナとは〜

文:岩渕 翔一

 
スポーツトレーニングを考案する際、「なぜそのトレーニングをするのか?」という明確な目的と理由が必要です。
 
トレーニングを考案する方法は大きく分けて2つあります。
1つ目は競技分析を基に必要な動きや能力を導きだし、それらを強化するトレーニングを考案すること。
2つ目は「人の身体」という普遍的なものをより深く探求し、基盤となる身体と動きや機能そのものを強化するトレーニングを考案すること。
 
どちらかが大切ということではなく、目の前の選手やチームに対するトレーニングを考える上で両側面からの視点がなければ効果検証を行えず発展的に変化を作ることもできません。
 
常にプレーの側面から、身体や動きの変化の側面からの両輪で評価し、考案することが重要です。
 
 
野球選手。とりわけ投手の走り込みの是非というのは近年だけでなく、ずっと議論されているであろうテーマの1つです。
1〜2年ほど前にも、ダルビッシュ有選手が走りこみを無くすべきという発言をし、話題になりました。
 
 
投手が行う走り込みの目的は、主に「下半身の強化」と「スタミナ強化」であることは、走り込み肯定派も否定派も異論はないでしょう。
となると前述した、トレーニングを考案する際の2つ目。基盤となる身体と動きを強化するという点で走り込みの目的は共通の認識があるはずです。
そうすると、1つ目である競技から逆算し、トレーニングを考案する際の過程を明確にすればいいはずです。
 
つまり、投手に必要な「スタミナ」と「下半身強化」がどのようなものかを明確に定義しなければ、走り込みの是非は議論できないし、トレーニングも考案することができません。
 
 
 

投手に必要なスタミナと下半身とは

「スタミナ」という言葉はかなり曖昧で、体力、持久力、精力、耐久力などの意味を含むのが一般的です。
 
投手に必要なのは、
・1試合投げ切ることができるスタミナ
・連投をこなせるスタミナ
・1シーズン怪我なくこなせるスタミナ
こういったところでしょう。このスタミナを高めるためのトレーニングが投手に必要なわけです。
 
 
持久力とは、身体活動を疲労することなく長時間に渡って維持し得る能力のことをいいます。
また持久力は全身持久力と筋持久力という2つの要素があります。
 
<全身持久力>
全身持久力を鍛える方法はいわゆる有酸素運動です。
循環器系に過度の負荷をかけずに、少なくとも1回30分以上の持続が可能で代謝・内分泌系に進行性の変化を惹起しないレベルの運動(心臓リハビリテーション必携参考)で、全身の骨格筋の1/7〜1/6以上の筋肉が動員される全身運動です。
 
<筋持久力>
筋持久力には、動的筋持久力と静的筋持久力という2種類があります。
◯動的筋持久力
一定の動作を一定のリズムで何回繰り返すことができるのか。あるいは、一定の負荷を一定のリズムで何回持ち上げることができるのかといったもの。
最大筋力の20〜30%程度の負荷が動的筋持久力を評価、強化する方法として一般的です。
◯静的筋持久力
重りを持ち上げたままその状態をどれだけの時間維持できるのかといったもの。
動的持久力と静的持久力には相関があるので、動的持久力が高ければ静的持久力も高くなります。
 
持久力とはこの全身持久力と筋持久力から構成されます。
 
よく言われるのは、全身持久力や長距離の走り込みを指して、「そんな長距離を長々とスローペースで走る必要はない。むしろ筋の分解を起こしてマイナスだ」といういわゆる長距離ランニングを指しての走り込みの否定です。
これに関しては第2回で詳しく考察しますが、持久力が投手にとって必要なことは間違いありません。
 
 
話が少しそれましたが一般的には、
スタミナ = 持久力
と思われがちですが、
上記の持久力の構成をみてわかるように、投手に必要なスタミナは持久力だけではありません。
 
ピッチングにとって必要なスタミナは、あくまで前述した、
・1試合投げ切ることができるスタミナ
・連投をこなせるスタミナ
・1シーズン怪我なくこなせるスタミナ
であり、持久力はこの条件を満たす一要素でしかないことがわかります。
 
 
では、このピッチングに必要なスタミナの要件を満たすためにはほかになにが必要なのか。機能的な要素でいうと、「筋力」と「リカバリー能力」の2つです。
 

前提として投球動作は高強度の負荷を反復して行う動作です。
ですので、筋力の絶対値を上げることで、一球ごとの負荷を軽減することができるので持久力は結果的に向上します。
 
さらに、野球は攻撃と守備を交互に行っていくスポーツです。
自チームの攻撃中は当然投球しないため、その時間で、筋温や体温を落とさないこと(キープウォーム)。またベンチにいる時間で身体を回復させる能力が重要です。
 
また学生野球の投手や、中継ぎや抑え投手の場合は連投を想定しなければなりません。
 
このように1試合を投げ切ることや連投に耐え得るスタミナという観点に立つとリカバリー能力は必ず必要になります。
 
 
これが投手に必要なスタミナです。トレーニングを考案する際はこれら要素の強化と相互関係(関係主義)を考慮する必要があります。
 
 
次回、これを基に「投手に走り込みは必要なのか」を考察していきたいと思います。
 
 
 
第1回:投手に必要なスタミナとは
第2回:投手に走り込みは必要か
第3回:投手のスタミナ強化トレーニング
 

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2019年01月01日

2019年新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。
 
株式会社JARTA international代表取締役、JARTA代表の中野 崇です。
 
 
昨年は格別の御厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます。
選手を支える立場にある我々もまた、誰かに支えられているということに感謝を忘れることなく、本年もJARTA一同、誠心誠意の活動を心がける所存でございます。
何とぞ、昨年同様のご愛顧を賜わりますよう、お願い申し上げます。
 
1.手段にとらわれず、真に選手に貢献することを最重視する。
2.技術・知識だけでなく、人間力も含めて世界レベルのアスリートから小学生まで、すべての関係者から信頼されるようなスポーツトレーナーを育成し、スポーツトレーナーという仕事の社会的信頼と存在意義を向上してゆく。
 
変わらずこの2点をJARTAのミッションとし、本年も引き続き一貫した活動を行っていきたいと思います。
 
 
皆様のご健勝と益々のご発展を心よりお祈り致します。
本年も、何卒よろしくお願い申し上げます。
 

 
 
JARTA代表
株)JARTA international 代表取締役
中野 崇
スタッフ一同
 

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