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2018年12月24日

スポーツにストーリーを

文:岩渕 翔一


なぜそのスポーツをしているのか?
なぜスポーツトレーナーをしているのか?
なぜその試合を見にいくのか?
なぜそのチームを応援するのか?
なぜそのシューズを履くのか?


クリスマスイブにお届けする、これからのスポーツの在り方。


全てにストーリーを

トレーナー界でいえばトレーニング理論で溢れている。JARTAのトレーニングもその溢れたトレーニング理論のうちの1つに過ぎない。

最新のスポーツギアは各メーカーともに優れた機能が備わった商品を販売している。

例えば1万円するランニングシューズであれば、NIKEもASICSもadidasもNew Balanceも、どのメーカーもその価格帯で相応の素晴らしい機能を備えている。

好みや嗜好、合う合わないを差し引けばどれを選択してもさほど変わらない機能性が備わっているはずだ。


質が良いのはもはや当たり前の世の中になりつつある。

プロ選手であれば強くてうまいのは当たり前。
トレーナーであれば良いトレーニングを提供できるのは当たり前。
教育者であれば良い教育ができるのは当たり前。




しかし今は、もはや質が高いだけでは生き残れない時代だ。

例えば、一昔前は美味しくないラーメン店は普通にあったが、現代ではラーメン屋のラーメンが美味しいのは当たり前だ。

どこもこだわりを強く持っている上に美味しい。しかし、潰れるラーメン店は多くある。こだわりがあって他にはない味で間違いなく美味しいのにも関わらず。

それはスポーツも例外ではない。


では何が選択されるための決め手になるか?生き残るための決め手になるのか?




それこそがストーリーだ。


人々は自身の想いや価値観をそのプロダクトに乗せ投影する。

スポーツであれば、想いや価値観を共有できる選手やチームを応援する。だからこそ見ているものは、まるで自分のことのように熱狂し感動する。

オリンピックで日本人として日本チームを応援するのはほとんどの国民が自然にしていることだろう。

それもストーリーがあるからだ。

4年に一度しか行われないスポーツの祭典で「同じ国で産まれた自分たちの代表が世界で戦っている」というストーリーがすでに無条件で出来上がっているからだ。

しかし、オリンピックのようにストーリーは勝手に簡単にはできないし、そんなトップの大会に出場できるのはトップの中のほんの一握りの選手だけだ。


心を刺激する、揺さぶる

NIKEが一週間ほど前に最新のアプリをリリースした。キャッチコピーは、
「ジブン仕様の、NIKE始まる。」
だ。

アプリを開くと分かるが、
「NIKEブレザーチャッカ:デザイン誕生まで」とか、「ジョーダンのデザイナーたちが、ゲーム用の最新シューズに秘められたストーリーを語り合います」とかキャッチーなストーリーを前面に出して商品の展開を行なっている。
(アプリ内の情報は2018年12月21日現在のもの)

しかも、画像や動画は例外なくカッコいい。

スポーツ界はここも重要だ。今やスポーツはファッションの一部になっている。「カッコいい」ことはスポーツにストーリーを乗せる上で必要不可欠なものだ。

「最初から最後まで機械で作られた大量生産商品」と「一流の職人がその手で時間をかけて仕上げた唯一無二の商品」というとおそらく後者に心を揺さぶられる人が多いだろう。

しかし待ってほしい。

前者が、「1000人の技術者が試行錯誤を繰り返し3年がかりでやっと完成したこれまでにない機械で作られた商品」だったらどうだろう?

このようにストーリーは勝手にできるものではない。そしてストーリーが「ない」ということもあり得ない。

ストーリーは「ある」ものでも「ない」ものでもない。作るものなのだ。



ストーリーそのものはカッコ悪くても泥臭くても構わない。必要なのは、
「カッコよく演出された人を惹きつけるストーリー」

これこそが今後必要になるものだ。


セルフプロデュース力が鍵になる

選手やチームであれば応援してもらうためやスポンサーを探すために自分自身にストーリーを作らなければならない。

スポーツトレーナーであれば選手やチームに知ってもらうため、使ってもらうためのストーリーを作らなければならない。

つまり、自分自身やチームを「セルフプロデュース」しないといけないということだ。これはスポーツ云々関係なく実はすごく重要なことで、「社会で生きていく力」を養う。

ストーリーを作るためには、

・自分自身をしっかり見つめなおすこと

・人々がなにに興味や関心を持ち、感情を揺さぶられるのかを感じる嗅覚



この2つがなければ、人を惹きつける魅力的なストーリーは作れない。
この2つは人間関係を良好に築くために必要なものだし、どんな仕事をする上でも必ず必要になるものだ。



実はアスリートがストーリーを作り、自身をセルフプロデュースするべき理由はここにもある。

アスリートのセカンドキャリアについてはスポーツ業界全体で取り組むべき課題だ。

今まで野球しかしてこなかった。野球がなくなった今、なにをどうすればいいのか分からない。このような話は多く聞く。

それは文字通り「野球しかしなかった」からだ。

しかし、ストーリーを作り、自身をセルフプロデュースすることをしていたらどうだろう?

人々が何に興味をもち、自分は何をどうアピールすればいいのか。
それはどんな仕事であれ仕事の根本そのものであるはずだ。

ストーリー作りはセカンドキャリアを歩む際や社会で生き抜くために、なにをするのかの選択と、どうすればいいかという行動を、スポーツをしている時から養うことに繋がるのだ。

今後、なにをするにも生き残るためには必ずストーリーが必要だ。
なによりストーリーを作るのは楽しい。

当然だ。人々が興味をもち熱狂するものを探す作業なのだから、その未来をみてワクワクしないはずがない。


スポーツにストーリーを

一度意識してみてはどうだろうか。


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