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2019年04月01日

身体操作系トレーニングV S 筋力トレーニング 優秀なのはどっちだ!??

文:岩渕翔一

 
JARTAは身体操作系トレーニングがメインで筋力トレーニングをあまり行わないと言われたり。
選手やチームのためという目的は変わらないはずなのに、それぞれのメソッドを主張してトレーナー同士が縄張り争いや誹謗中傷したり。
そんなことがずっと繰り返されるのがもう嫌だしうんざりしています。
だからはっきりさせましょう。
本当に選手のためになるのは身体操作系トレーニングなのか筋力トレーニングなのか。
 

身体操作系トレーニングと筋力トレーニングの定義

そもそも身体操作系トレーニングってなんでしょう?
筋力トレーニングってなんでしょう?
これは我々がいつも言っていることですが、定義が曖昧なまま、それぞれの主観的定義づけでそれぞれが主張し合うから話が噛み合わない。
それほど不毛で生産性のない議論はありません。
まずは定義づけを。
 
 
[身体操作系トレーニング]
運動課題そのものが複雑で難しい。
運動そのものができない又は明らかにぎこちない状態から始まり、習熟していくことで運動学習による運動課題の遂行が滑らかになる。
その過程で起こる身体及び神経系の変化が機能的要素に対するトレーニング効果となる。

[筋力トレーニング]
主に重量の負荷を身体に与え、それに抗することを反復することで筋肥大を中心とした筋力強化を目的とする。
 
ここで扱う身体操作系トレーニングと筋力トレーニングはこのように定義します。
 
 

身体操作と筋力の階層

ここで一度2つの例を出して考えてみます。それぞれ身体操作、筋力両方の側面から考えてみます。
 
例1:ベンチプレス70kgを1セット7回しか上がらず10回できない。
[身体操作軸での解釈]
70kgのバーベルを10回連続で上げるという運動課題を遂行できない。
→70kgのバーバルを10回連続で上げるという運動ができるようになるよう、トレーニング。
[筋力軸での解釈]
大胸筋の筋力不足で70kg10REPを行えない。
→ベンチプレス70kg10REPができるよう大胸筋の筋力強化を行なって行く。
 
例2:逆立ちができない
[身体操作軸での解釈]
逆立ちという両手掌で構成された基底面内でバランスを取りながら両上肢中心で身体を支えるという運動課題を遂行できない。
→逆立ちという運動課題を遂行できるよう練習し、それを実現するための構成要素も個別で強化しよう。
[筋力軸での解釈]
上肢及び体幹の筋力不足で身体を支えることが出来ない可能性がある。
→全身を支えることができるだけの上肢や体幹の筋力を強化しよう。ただし、逆立ちができるようになるためにはバランスも重要なので他のトレーニングもしなければならない。
 
例1は一般的で代表的なウエイトトレーニングのため筋力トレーニングに分類。例2は逆立ちという身体操作を要する運動課題で分類としては身体操作に当てはまるトレーニング。
どうでしょうか?
筋力トレーニングであろうが身体操作系トレーニングであろうが他のどのようなトレーニングであろうがそれぞれ「運動課題」であることは同じです。
ということは、どのように解釈するのか?というのは捉え方や視点によって変わりますが、結果的にその運動課題が「より上手くできるようになる」という目的は一致しているはずです。
 
ここで見えてくるのは身体操作系トレーニングと筋力トレーニングというのはそもそも階層が違うということ。
 

 
 
このように階層としては、
競技パフォーマンス

身体操作

筋力トレーニング
となるため、どちらかが優秀であるとかどちらが必要だとかそんな考え方になるはずがない。
 
この階層で見ると競技パフォーマンスを発揮するための一条件が身体操作であり、身体操作を実現するための一要素が筋力であることは明白です。
となれば筋力トレーニングも身体操作も必要である。というシンプルな解にしか辿り着きません。
例えばこの表上で筋力と同じ階層になる柔軟性を強化するためのストレッチを全く必要ないとすることなどあり得ないでしょう。それと同じで筋力トレーニングが必要か否かと言われれば必要に決まっているということです。
 

筋力と身体操作は階層が違うという前提での評価を

 
[身体操作系トレーニングに必要な評価とメニュー構成]
身体操作系トレーニングを行なった際に行わなければならない階層間の評価は大きく分けてこの2つです。
・その身体操作は、どういった競技パフォーマンス場面に対する強化になるのか。
・その身体操作で強化されている機能はどのような機能で、強化できていない機能はどのような機能なのか。また、強化できていない機能は補填すべきなのか否か。補填すべきなのであればそれに対するトレーニングはどのようなものなのか。
また、オーバーユースになるような要素はないか。

[筋力トレーニングに必要な評価とメニュー構成]
筋力トレーニングを行なった際に行わなければならない階層間の評価は大きく分けてこの2つです。
・機能に特化したトレーニングを行うことで起こる、その他の機能に対する影響(プラスとマイナス両方)。マイナスがあるのであれば、それを補填するトレーニングメニューはどのようなものなのか。
・その筋力強化は競技パフォーマンスのどの場面で活かされるのか。また、強化なのか補強なのか。
 

 
身体操作と筋力強化。当然それぞれメリットとデメリットがあります。必要なのは詳細な評価と、両方必要に決まっているという前提です。
 
全てはパフォーマンスアップの為に。
 
手段に囚われない。選手のために必要なことをやる。
筋力トレーニングと身体操作系トレーニングのどちらが優秀なのか。そんなものは優劣つかない。選手のためであれば両方必要であるということです。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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