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記事一覧

2020年12月23日

年末年始休業のお知らせ

いつもJARTA公式ページをご覧頂き、誠にありがとうございます。
 
2020年12月29日(火)〜2021年1月3日(日)は年末年始休業日となります。
この間にお問い合わせのあったご連絡につきましては、新年1月4日(月)以降に対応させて頂きます。
 
皆様にはご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
 
 
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2020年12月19日

囚われないという捉え方

文:赤山僚輔

 
『手段に囚われない』
これはJARTAが創設当初から、一貫してお伝えしている考え方になります。
 
今回は改めてこの”囚われない”という捉え方について共有したいと想います。
 
皆様は生きていく中で、ひとつやふたつは譲れない、”こだわり”のようなものがあるのではないでしょうか?
 
 
『自分に嘘はつかない』
『ビールはキリン』
『物を粗末に扱わない』
 
などなど。
 
上記は赤山のこだわりですが。
 
何かにこだわることと、何かに囚われることは一見よく似ていますが実態は全然異なります。
 
囚われるという漢字は人の周りが囲われてしまっています。
 
まさに八方塞がりといった感じでしょうか。
 
無意識に生きていると、自分が気づかぬうちに多くのことに囚われていることに気づくことができません。
 
〇〇はこうじゃないといけない。
▲▲はこうあるべきだ。
 
ここにはジェンダーの問題も内包しています。
女の子が〇〇のスポーツをするなんて・・・。
男の子がピンク色を選ぶなんて・・・。
 
全世界的にもジェンダーレスの思考が拡がり、我々が多くの既成概念やバイアスによって囚われていたことにも気づき、囚われていた思考からの解放が急激に進みつつあります。
 
ではスポーツトレーナーやセラピストとして、何かに囚われていることはないでしょうか?
 
それはトレーニング方法かもしれませんし、治療手技かもしれません。
 
〇〇のトレーニングをしているのだからこうなるはずだ。
▲▲の治療方法で治るはずだ。
 
我々は得てして、新たな知識や情報を入手すると、それがあたかも真っ当な解答であるかのように目の前の事象に当てはめてしまいそうになります。
 
〇〇はこうに違いない。
 
何かに囚われているというのはまさにこのような状態のことを指します。
 
ひとつのトレーニング方法や治療方法を追求し、探求し、精度を上げていくことは当たり前に重要なことです。
 
しかし、そのひとつの分野を追求して学び深めていくことと、目の前にクライアントに対してそれを無理やりに当てはめてパフォーマンスの向上や不調の改善を目指していくのは問題解決の思考が少し異なります。
 
残念ながら、ひとつの手法で10人を救うことはできても100人を救うことは難しいです。
 
もちろん大勢の中から100人の効果が得られる人をピックアップすることは可能でしょう。
 
しかし100人しかいない目の前のチームにおいて、一つの手法で全員が解決することは難しい。
 
そのように考えています。
 
これはトレーニング方法も治療方法も同様です。
 
あるトレーニングをすると100人のフィジカルの数値としては100%向上するかもしれません。
 
しかし100人ともに本人が望むパフォーマンス向上の方向性に進化しているかというとそうとは限らないのです。
 
何かを探求する際に徹底的に拘り、貪欲に深めていくことは重要ですが、気づけばそれにこだわりすぎて、もしかしたら他に解決策があるかもしれないのにそれに対して盲目になっている。
 
そんなことも多いような気がしています。
 
そしてそれはJARTAでお伝えしているトレーニングやコンディショニング方法についても同様な視点でJARTAの手法だけに囚われて欲しくない。
 
このようにも考えています。
 
アスリートの不調を解決し、パフォーマンスを向上させる最適解は選択肢としてはスポーツトレーナー側に用意する必要性があります。
 
しかしその選択肢の中で、その時々での最適解は現象としての結果含めてアスリートが教えてくれます。
 
この際にスポーツトレーナー側が何かの選択肢に固執するように囚われていると、盲目的に選択肢を狭めてしまい、結果的にアスリートの成長を阻害したり、不調が解決しないといった結果となるのです。
 
文章で読むと、そんなことはない。
自分は目の前のクライアントの為に最善の選択肢を用意している。
そう思う方も多いでしょう。
 
では目の前のクライアントの不調は全て解決していますか?
全てのアスリートが満足のいくパフォーマンスアップを遂げていますか?
その進化のスピードはアスリートが描く目標に対して間に合うペースですか?
 
囚われてなんかいない。
このようにこちら側の主観で捉えることは簡単です。
 
囚われているかどうかを指し図るのは目の前の選手の結果であり、その現象が全てです。
 
もしうまくいかない事例が目の前にあるとしたら、自分が何かに囚われていないか。
 
今一度振り返って考えて見てもらいたいと想います。
 
そして何に囚われているかに気づけるきっかけにJARTAの各種セミナーがなれれば幸いです。
 
自分自身もかつて気づけなかった囚われていた視点を知ることで、現在進行形で変化し続けています。
 
囚われていた自分を捉えるだけで、前への進み方が変わってきます。
是非この機会に振り返って見てください。
 
きっと明日会う選手が自分が何に囚われていたかを教えてくれるはずです。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 



2020年12月12日

認定スポーツトレーナー紹介/荻原和希(OGIHARA Kazuki)

JARTA認定スポーツトレーナー


今回の記事では全国で活動するJARTA認定スポーツトレーナーの中でもトップレベルの身体操作レベルを誇る、栃木で活動する”荻原和希”トレーナーをご紹介します。
 
ご本人のInstagramでも様々なトレーニングの模様が公開されており、JARTA認定コースでお届けする内容もご紹介、共有されております。
 


また本人も競技者として経験のある空手の指導にも関わっており、全身で手本をそして背中を見せて伝えております。
そしてその空手道のアスリート時代にJARTAとの出会いがあったそうです。
 

 
 


 
スポーツクリニックでは学生アスリートに関わることも多く、日々自己鍛錬を継続しながらも業務に従事されております。
今後の活動から目が離せません。
是非ともご注目いただければと思います。
 
このように、JARTA認定のスポーツトレーナーは様々なバックグラウンドと持ちながら、ご自身の特性を生かして全国で活躍しております。
認定スポーツトレーナーへのご依頼は以下よりご確認ください。
 

トレーニングサポート依頼


 
 

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2020年12月06日

障害の発生要因をあなたはいくつピックアップ出来ますか?

文:赤山僚輔

 
痛みや不調の要因が何なのだろう?
常に我々スポーツトレーナーを悩ませる命題に対して、皆様はどのような用意を、自分なりの答えや解釈を用意していますか?
特に慢性障害に関していうと、症状発生の要因が一つであることはほとんどなく、複合的に要因が重なり合い症状が出現したり長期化することが考えられます。
これは単に、オーバーユースという側面で負荷量の増加に伴う症状の悪化や炎症の慢性化を要因に帰結して、安静期間を設けるだけでは根本的な解決にならない多くの事例からも気づかされる事だと思います。
 
今回はシンプルでありながらも、障害発生の要因を探求する思考プロセスをご紹介します。
 

ハインリッヒの法則をご存知でしょうか?

 
ハインリッヒの法則とは、労働災害における経験則の一つであり、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。

傷害を伴った災害を調べると,傷害は伴わないが類似した災害が多数発見されることがよくある。潜在的有傷災害の頻度に関するデータから,同じ人間の起こした同じ種類の330件の災害のうち,300件は無傷で,29件は軽い傷害を伴い,1件は報告を要する重い傷害を伴っていることが判明した。このことは5000件以上について調べた研究により追認されている。
(–H. W. ハインリッヒ、D. ピーターセン、N. ルース(著)井上威恭(監修)、(財)総合安全工学研究所(訳) 『ハインリッヒ産業災害防止論 海文堂出版(株) 1987年(昭和62年)9月 2版 ISBN 430358052X p59-60』)※Wikipediaより引用

これをスポーツ障害に拡大解釈して当てはめると、目の前に発生している痛みや不調の背後にある軽微な症状や要因をまずは29個ピックアップすることを試みます。
おそらくこの程度であれば普段の臨床で実施している方も多くいるのではないでしょうか?
数十個の要因を整理していなければ、単に膝や腰が痛いという状況に対して根本的な解決は難しいと思います。
しかし痛みや不調を前にして、一時的に症状が軽減しても再燃する場合や、再発を繰り返す事例を経験する場合にはこの先の探求が非常に大事になってきます。
 
その先には本人にとっては無症状であるが、29個の軽微な症状の要因となる要素が300個ある可能性があります。

 
 

一気に300個ではなくツリー構造を利用してピックアップしていく

症状のない障害発生の元要素を300個ピックアップすることは最初は難しいかもしれません。
しかしまずは29個の軽微な症状のひとつについて10個の要素をピックアップすることはさほど難しいことではないのではないでしょうか?
 

イメージとしては上記図のような流れです。
仮に前鋸筋に痛みが発生していた場合、痛みの要因である要素をまずはピックアップします。
その要素が発生した要因をさらに10個程度ピックアップするという流れです。
ここで重要なことは、痛みや自覚がなくてもその要素の要因になる問題が日常生活やその方のこれまでの過ごし方などから無限にありえるということです。
本人に心当たりがあればすでに気をつけて解決できている可能性が高いので、関わっているスポーツトレーナーが本人が気付いていない些細な無症状の要因をピックアップすることが重要となります。
それは関節のアライメント異常かもしれませんし、食事の影響や用具の問題かもしれません。
この探究する過程は正直面倒に感じると思います。
しかし目の前の症状が解決仕切らないときにはこのような思考プロセスが非常に重要になります。
 
じっくりと要素を捻出するだけで、またそのような視点でクライアントから注意深く問診や評価をするだけで繋がってくる事例も多々あります。
自分がすでに用意している要因で帰結することを目指すだけでなく、このような要素のピックアップにはクライアントにも協力してもらいながら、探究していくことも重要です。
そして本人のちょっとした気づきや違和感からヒントが得られることもあり、その繰り返しで300個のピックアップも容易になってくるのです。
 
現在開講しているトレーナーカレッジではこのような思考や具体策について共有しながら、一緒に学び進めるプロセスを行っております。
ご興味がある方は以下よりご参照ください。

JARTAトレーナーカレッジ


 
少しでも根本的な要因をピックアップして、痛みや不調で困ることなく多くのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮できることを祈念しております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年11月22日

頑張りすぎない頑張り方を習得する

文:赤山僚輔

 
スポーツに限らず、オンとオフの重要性は言わずもがなかと思います。
 
それを頭で理解していながらも、試合当日に興奮しすぎて感情的になったり
いまいちスイッチが入りきらずにボーッとした感じになってしまった経験は
誰しもが1度や2度はあると思います。
 
今回は”頑張りすぎない”という観点から紐解いて
 
試合当日に最良のパフォーマンスを発揮する為のヒントをお伝え致します。
 

スポーツ場面以外のオンとオフに目を向ける

 
アスリートのパフォーマンス向上目指していくなかで
練習内容や強度、リカバリーの手法や習慣具合など
パフォーマンス具合を指標に設けながら様々な準備をしていると思います。
 
しかし練習や試合における集中力の程度が練習や直接的な身体の状況が影響する場合もあれば
それ以外の多くの要因がいまいち集中し切れない要因になっていることも多々見受けられます。
 
その代表的なケースが日常生活の影響により自律神経が乱れているという事です。
 
自律神経は交感神経と副交感神経の2つの機能から成り立ちますが、我々が普段暮らす中で重要な生理機能の多くもこの自律神経のコントロールによって成り立っています。
 
この自律神経の機能が現代社会においては乱れている方も多く、それはアスリートも同様です。
 
自律神経の乱れが示唆される心身の症状として、睡眠障害や下痢・便秘などの内臓の不調。
また頭痛や動機などが出現する事例もあります。
 
アスリートのパフォーマンス向上を目指す中で、筋肉、骨格系の痛みや不調だけでなく
このような自律神経系の不調に目を向けることは避けては通れません。
 
この自律神経の不調を招く要因としては様々な要因が挙げられますが
アスリートに関わっていて多く経験するのが
・夜間遅くのスマホや映像チェック
・深夜のコンビニや消灯をせずに電気をつけたままで寝てしまっている
・睡眠前の過度なストレッチ
このような要因です。
 
スマホで長時間ゲームをしているのであればもちろんそれは時間を制限したり
コントロールする必要性がありますが、少しでも上手くなるために映像での勉強。
また様々な情報収集やデータのチェックなど。
そして睡眠前のストレッチ含めて上手くなりたいと頑張りすぎていて
それが結果的に自律神経の不調を呈する要因となっている事例が
多いように感じています。
 
 
頑張ることは悪いことではありませんが、心身の状態をしっかりと俯瞰して
その頑張りが、今本当に必要な取り組みなのか?
 
これを吟味する視点がなければ、結局試合当日に朝疲れが取れていない。
いまいちスイッチが入りきらずボーッとしてしまう。
といった状況に陥ってしまうのです。
 
はっきりとした痛みや不調があると、自分が行っている行動がネガティブ働いているかもしれないと想起することができます。
 
しかしこのような自律神経の不調の場合、複合的に要因が重なっているので、自分の普段の行動がどのようにネガティブに働いているかは想起しづらい場合もあります。
 
そんな時に大事になってくるのが、寝起きや疲労感などの日々の変化を記し残しておくことです。
 
からだのだるさが強い朝には、前日にどのような過ごし方をしていたかを振り返り記しておきます。
逆に疲労が少なく感じる時にも前日にどのように過ごしていたかを記し残すことも重要です。
 
このような事の繰り返しで、自分が普段行っている行動の中で、自律神経のバランスを乱す要因がどのようなものがあるかを顕在化することができるようになるのです。
 
それらを俯瞰する過程で、自分ががんばらなくても良い状況で、頑張りすぎていることにも気付けるかもしれません。
 
押しては返す波のように、大きなピークを持ってこようと思うとしっかりとしゃがむことも重要です。
 
自律神経の観点で表現すると副交感神経がしっかりと働いて、オフのスイッチが入れられていないとアクセルの役割である交感神経の働きも十分に機能しません。
 
自分がアクセルを踏まなくても良いタイミングで踏んでいないか。
この問いかけを自身の心身に耳を傾けながら過ごすだけでも
本当に頑張りたい時に頑張れるように変わっていきます。
 
今一度アスリートだけでなく、スポーツトレーナー自身も頑張りどころを間違っていないか
自問自答してみてください。
 
このような観点で実際にどのようなワークや取り組みが効果的かをオンラインワークアウトで実施予定になっております。
 
ご興味のある方は下記より詳細ご確認ください。
 

少しでも良い状態へと向上する為のヒントとしてこのような頑張りすぎない、自律神経の観点が参考になれば幸いです。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年11月14日

基本をおろそかにすることなかれ

文:真木伸一

このブログをお読みいただいている皆様は、少なからずJARTAの活動にご興味を持っていただいている方という前提で今回はお話ししたいと思います。
あなたは、JARTAのどのような活動にご興味を持たれていますか?
スポーツ選手を指導できるトレーナー環境、トレーニング内容、東洋・西洋の枠にとらわれないコンディショニングスキル体系、それぞれの置かれた立場によって、その興味の方向はそれぞれだと思います。
 
認定講師を務めております、真木です。
 
トレーナーとして20年以上現場におりますが、選手の問題を解決するために私自身が一番大事にしているのは、「評価」です。
トレーナーとしての仕事の領域は多岐にわたります。
チーム内でのマネジメント業務から、外傷・障害への対応、リハビリテーション、トレーニング指導、障害予防、そのそれぞれに基盤となる知識が必要であることは言うまでもありません。
私自身は、理学療法士の免許を取得してリハビリテーションを学びましたが、学生のときに学んだ評価・統合と解釈・考察の立て方は、今でも大切にしています。
経験を積めば選手の動きや主訴から問題の答えを導くパターン認識と言われる方法を用いることが可能になってきます。
理学療法について学んだ方はこれを、動作分析から評価内容を導くトップダウンの評価方法と学んだかもしれません。
対して、学生の時の臨床実習などでは、すべての評価項目を網羅的に実施してその中から問題の答えを導いていく徹底的検討法といわれる方法をもちいた考察を指導されたのではないでしょうか。
これをボトムアップの評価方法と習ったかもしれません。
アスレティックトレーナーの評価においても、この手段はカリキュラムに組み込まれています。
いずれの場合においても、選手のエピソードの聴取(医療面接)、理学所見の収集、動作分析の過程を経て、その結果を統合して解釈し、考察をたてて介入する、ということを教えてもらいました。
 
 
 
臨床(スポーツ)現場に出るようになってからは、学生時代に行った関節可動域測定・徒手筋力測定法・整形外科的テスト法や各種タイトネスの評価方法などを組み合わせて使いながら、更に細かいアライメント評価やアライメントの修正によって疼痛が減弱するかどうかをみる疼痛減弱テスト・その反対に崩れた方向に誘導する形で疼痛が増悪するかを判定する疼痛増悪テストなどを用いて、より確証を得られる道筋を探します。
こうして得られた情報を用いて、選手の体に結果として現れている問題(痛み・主訴)とそれを引き起こしている要因(原因)を整理して結果として現れている問題を解決すると同時に(これをJARTAではファーストタッチの原則という形で説明しています)、原因因子に対してアプローチすることで、選手の主訴が本質的な解決を得られるよう導くための設計図をまず描くわけです。
このコンディショニングの「設計図」は、建設に必要な素材を集めて目の前に並べてみてはじめて実現可能なものになるわけです。
設計図があれば、組み立てる順番をどこで間違えたのか、パーツを取り違えたのはどの部分だったのか、介入がうまく行かなかったときにも立ち返る場所があります。
ところが、設計図を描かずに結果として現れている問題にアプローチして(とりあえず固まっている筋肉をほぐす、など)、痛み・硬さが取れなかった場合、またはその場では良い感触が得られても後に疼痛が増悪するなどの問題が生じたとき、その原因が何だったのかを追求することが困難になります。
 
因果応報、良い刺激が入れば人の体はそれに反応して良い結果に向かいます。逆もまた然りで、見当違いの刺激を入れることで、良くない反応を生み出すこともあるわけです。
そのときに、どのような評価に基づいてどのような推論を導いてその介入を行ったのか、が明らかになっていれば、道筋をたどって修正することができます。
推論という「設計図」なくしてパーツを組み立てていくのは、博打の要素をはらんでいるといえます。確率として極めて精度の高い推論を立てられるようにするために必要なことは、選手の話を引き出すための問診スキルを駆使してよく話を聞くこと、解剖・運動学などの基礎医学、理学所見のとり方を頭と体に染み込ませることです。
 
選手の心と体に生じたエピソードをしっかりと理解できていますか?
学校を卒業してから、ゴニオメーターを何回使いましたか?
スケールを用いた大腿周径は、誤差なく図れる検証をしていますか?
MMTの評価なしに「筋力低下」を判断していませんか?
医学の世界の評価方法は、先人たちが問題の原因にたどり着くために極めてシンプルに不要なことを削ぎ落としつつまとめてきてくれた体系です。
魔法のような治療法も、一瞬で結果が出る徒手療法も、すべては基本の上に成り立っています。
基本をおろそかにして、いつか魔法を手に入れることはできません。まずは各関節の正しいアライメント・挙動の理解、筋・筋膜・皮膚などの軟部組織特性、神経・血管の走行など構造の理解をもとに、適切な理学所見から問題の原因を説明できる推論をたてられるように訓練していくこと。
選手のコンディショニングを任される立場として最低限のたしなみをおろそかにすることのないよう、日々考えることの大切さを伝えたい。
 
 
JARTAのコンディショニングスキルコースでは「評価」の重要性をお伝えし、実際に受講者の方々とともに問題の原因を解決する手段を学んでいただきます。
また、新たに始まったオンラインカレッジにおいては、「臨床推論」という講義の中で、各関節の外傷・障害に対する考察の立て方をともに学んで頂くことができます。今一度、自身の介入を振り返り、基本的なことが網羅されているかどうか、不足しているとすれば何が足りていないのか、ともに学んでみませんか。
 
目の前の選手の問題を解決する手段に、「魔法」はありません。もし魔法を使うセラピストがいたとすれば、それは積み上げてきた「基本」に裏打ちされた確かなスキルにほかならないということを忘れないようにしましょう。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年11月08日

試合本番で最高のパフォーマンスを発揮する為に

文:赤山僚輔

『ピークコントロール』
この言葉を聞いたことがない方はスポーツトレーナーをされている中では少ないのではないでしょうか?
 
アスリートに関わる上で、痛みや不調を解決し、パフォーマンスを向上させていく先には、試合当日のパフォーマンスを最高のモノにしたい。
 
そしてその為にはどのような準備をすればよいか?
このような問いが現場では日常的に転がっており、我々の前にハードルとして命題をつきつけてくれます。
 

調子の波をどう捉えるのか?

 
調子の波を捉えるには、パフォーマンスに影響を及ぼす因子をどれだけピックアップできるかにかかっています。
今回は数限りない上記要素を4つに大別してお伝えしたいと思います。
 
①Condition
一つ目は当たり前ですが、コンディションに直接関与するものです。
痛みや不調の要因となる問題が解決できているかどの程度残っているのか?
ここには違和感や元来あるタイトネスや、筋力の不均衡などの問題も含まれます。
また内臓の状態や呼吸の状態も加味しなければ最高のパフォーマンスに向けての準備が整っているとは言えません。
 
②Time
2つ目は時間の捉え方です。
競技が実施される長さや時間帯は選手のパフォーマンスに大きく影響を及ぼします。
朝が苦手な選手もいれば、試合開始早々には最高のパフォーマンスを発揮できない選手もいます。
それを仕方ないで片付けるのではなく、なぜそのようにパフォーマンスが試合内や1日の中で変化するのかを深く洞察することが必要です。
またもう少し、期間を拡大して考えると夏場と冬場でのパフォーマンスの違いなど季節によっての違いも影響がありますし、部活動であれば学年、所属チームであれば所属年数の影響も考えられます。
 
③Mental
3つの目のメンタルがパフォーマンスに影響を及ぼすことは言うまでのないかと思います。
ここではパフォーマンスに関与するメンタルについて少しでも良い状態で試合を迎えるための準備として以下の項目をご紹介したいと思います。
・自分を知ること
・相手を知ること
シンプルではありますが、この2つが徹底できるだけで試合時によいメンタルやマインドで臨むことができます。
 
具体的に提示すると、どんな時に自分が緊張するか?
どんな時に楽しくプレイができているか?
これまでのパフォーマンスが高かった時にはどのようなマインドで望んでいたか?
このような問いを自分に投げかけ、振り返り整理しておくだけでも試合時にこれまで通り、これまで以上のパフォーマンスを発揮することが可能となるのです。
 
④Place
最後に場所の影響です。
これはパフォーマンスに大きく影響を及ぼし、多くの選手がいつも通りのパフォーマンスを発揮する為に創意工夫している部分なのではないでしょうか?
大きな大会になるほどに、初めての会場で試合することも少なくありません。
場所によってパフォーマンスが変化するとして、普段の練習環境と何が異なるのか。
何が異なる時にパフォーマンスが変化するのか。
サーフェスの違いや観客席の有無や大きさ。応援の数や照明など。
また会場までの導線などが影響を及ぼす場合もあります。
以前神戸のチームをサポートしている時に全国大会が北海道で開催され。
移動の雪に足を取られ、移動だけで疲労していた選手の姿が印象的でした。
 
このような多岐にわたる要素の中で、どのような時にどのような要素が調子の波を左右しているのか。
これらをひとつひとつ整理して調子が悪い時の共通点、調子が良い時の共通点。
そしてそれを試合だけでなく練習での調子の波や、普段の日々のコンディションの波とも統合しながら考慮していくことでより再現性が高い形でのパフォーマンスの発揮が可能となるのです。
 
このような関わりの精度を上げるためのヒントとして、スポーツトレーナー自体が日々の調子の波やコンディションを左右する要素について数限りなくピックアップすること。
 
そしてそれらを変えられないものと変えられるものを大別し変えられるものに対して試験的に変化させどのように調子が変わるかを整理していくことが重要です。
 
机上の空論だけでなく、日々実践してコンディションを上げ続けているスポーツトレーナーでれば選手にそのような状況を設定することはそう難しいことではないのではないでしょうか?
 
私自身、まだまだ自分のピークコントロールに伸び代満載ですが、数年前よりも大事な時によいパフォーマンスが発揮できるようには変化してきました。
その為には前述したような過程を時間がかかっても記し残していくことが重要です。
 
もし選手に大事な試合で最高のパフォーマンスを発揮してもらいたい。
そのように感じているのであればまずは実践、行動することをお勧めします。
 
その繰り返しで最高のパフォーマンスを目の当たりにされることを具体的に想定しながら。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
赤山が講師を務めるコンディショニングスキルコースの詳細は以下よりご参照ください。

コンディショニングスキルコース


 

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2020年10月31日

トレーニングがパフォーマンスアップにつながらない理由

文:平山鷹也

 
毎日頑張ってトレーニングを行っているのにパフォーマンスが変わらない、
ストレッチをやって柔らかくなっているのにプレー中は硬くなってしまう。。。
 
 
このような悩みを持つ選手は意外と多い。
 
 
そんなとき、トレーナーとして考えるべきことは何か。
 
 
今回はトレーニングを指導するトレーナーの方に向けて、
トレーニングを指導する際の一助になる考え方を共有したい。
 
 
 
トレーニングがパフォーマンスアップにつながらない理由の1つとして、
難易度が適切でないことが考えられる。
 
 
難易度とは、非常に多くの要素によって決定される。
 
 
JARTAの認定トレーナーコースでも、トレーニング理論Ⅰの中で解説している。
 
 
コース内では、支持基底面という観点から難易度を考えてもらっている。
 
 
もちろん支持基底面が広ければ難易度は下がり、狭くなれば難易度は上がる。
 
 
 
例えば、JARTAトレーニングの1つである「八の字」。
 

 

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上半身の可動性や連動性を引き出すトレーニングだが、
最もベーシックなやり方は動画のように肩幅よりも少し開いた、
パワーポジションと呼ばれる姿勢で行う方法である。
 
 
これを支持基底面を狭くすることで難易度を上げようとすれば、
例えば両足を前後にそろえるタンデムや、
もっと狭くするなら片脚立ちで行うことができる。
 
 
支持基底面が狭くなるほど、
上半身の動きの中心がぶれないように行わなければ倒れてしまう。
 
 
支持基底面を狭くする意味について、一例をあげて考えてみる。
 
プレー中に上半身が固まってしまう選手に対して、肩幅の八の字を指導したとする。
 
結果としてトレーニングは上手くなったがプレー中にはやはり上半身が固まってしまう。
 
 
このようなケースは結構多い。
 
トレーニングは上手くなったがプレーは上手くなっていない。
 
 
この原因を難易度という観点から考えていく。
 
 
ここで八の字が上手くなったというのは、
「両足のパワーポジションでは」
上半身を動かせるようになったということである。
(あくまでも支持基底面という観点では)
 
そこでタンデムや片脚立ちで同じように八の字をしてもらうとする。

 
そうすると動きが遅くなったり、上半身が固まって動きが小さくなったりする。
 
 
ここではじめてこの選手の伸びしろが明確になる。
 
 
不安定な状況下で上半身を固めることでバランスをとろうとしているのだ。
 
さらに深掘りすると、その原因が股関節や足部の機能不全、身体感覚の低下などにいきつくかもしれない。
 
 
支持基底面が狭くなることで、
バランスをとりながら上半身を動かすというデュアルタスクになる。
(2つ以上の能力を同時発揮することを、JARTAではアブレスト能力と呼ぶ)
 
 
今回の例で挙げた選手の場合、上半身が固まってしまうことが問題ではなく、
「バランスを取りながら上半身を動かすこと」が伸びしろだったとわかる。
 
 
この選手に対して、
「安定した状態」で上半身を動かす練習だけではパフォーマンスにつながりにくい。
 
 
それがわかればバランス能力について評価が必要かもしれないし、
他のトレーニングも必要かもしれない。
 
 
今回はわかりやすくするために支持基底面だけで考えてみたが、
他にも難易度を構成する要素はたくさんある。
 
 
運動スピード、移動量、重りの有無、モーメントアームの長さ、外乱、道具の有無。
 
 
様々な観点から難易度を調整していくことで、
その選手にとってプレー中の伸びしろと一致した反応がでるものを探していく。
 
 
それを改善することができればパフォーマンスアップにつながりやすい。
 
 
 
しかし適切な難易度設定をすることは、言葉で言うよりも難しい。
 
 
簡単すぎる難易度で行っていたり、
逆に難易度が高すぎて目的とした運動が引き出せなかったりしていることが意外と多い。
 
 
難易度を構成している要素を自分なりに整理して、
どの要素をどのくらい変えると、どんな反応が返ってくるのか。
 
 
トレーナーはこの繰り返しによって引き出しを増やしていくことが求められる。
 
 
 
 
今回は難易度設定からトレーニングとパフォーマンスの関係について考えてみた。
 
 
もちろん難易度設定だけで必ずパフォーマンスを上げられるわけではない。
 
しかし、スポーツパフォーマンスとは非常に複雑な運動の組み合わせとその連続である。
 
そしてトレーニングはその要素の一部を切り取って行うものだ。
 
トレーニングを指導する我々は、
パフォーマンスとトレーニングの関係を考え続けなければならない。
 
 
それが、トレーニングをパフォーマンスにつなげるコツだ。
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年10月21日

投手用トレーニングセミナー開催

今年3〜4月に予定していた当セミナーですが、皆様もご周知の通り、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言により開催が困難となり中止延期となっておりました。
申込みいただいた方にはご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。
 
今回、感染予防対策を行った上で、安全に開催できる目処が立ちましたので、大阪、東京、福岡の3会場で開催することといたしました。
ソーシャルディスタンスを保つため、従来より募集人数を絞って開催いたしますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。
 
なお、本セミナーの今年度開催は今回案内する3回のみとなります。
また、来年度はトレーニング内容の刷新と投球障害にフォーカスした内容を加え、より充実した内容で行なっていく予定ですので、現状の内容をお伝えするのはこれが最後となります。
※内容が刷新しても再受講はこれまでの規約通り受講いただけます。
 
 

投手用トレーニングセミナー

投手には色々なタイプの投手がいます。自分のスタイルを確立していくことは投手として生き残るためには重要な課題です。
しかし、どのようなタイプ・スタイルの投手であっても球速とコントロールは必ず生命線になります。
 
この投手用トレーニングセミナーは、
・ 球速アップに必要な身体機能及び身体操作を強化するトレーニング
・ コントロール向上に必要な身体機能及び身体操作を強化するトレーニング
・ 球速アップとコントロール向上に取り組みながら障害予防を行なっていくためのチェックポイント
の3つを学んでいただけます。
 
 
■開催地域
大阪会場 2020年11月22日(日)
東京会場 2020年12月27日(日)
福岡会場 2021年1月10日(日)
 
詳細はこちら

投手用トレーニングセミナー


 
 

参考記事

コントロール向上の鍵
下半身を使うの正体
150km/hのボールを投げるには「かためる」力が不可欠
投手の「タメ」の作り方には2つのパターンがある

JARTA公式HP
https://jarta.jp



2020年10月17日

貪欲に成長し続ける為に

文:赤山僚輔

 
知識や技術が増えれば成長できると思っていた。
 
これは過去の自分のことを指しています。
 
『成長したい』
 
それは、そう願う選手を前にして、彼ら彼女たちの思い描く成長が目標とする場所に到達しなかった時や間に合わなかった時により痛感してきました。
 
私はスポーツ現場に立ち続けて、そのような悔しい経験を幾度となくしてきたからこそ、嬉し涙よりも悔し涙の方が見た回数は圧倒的に多いです。
スポーツトレーナーをしていて怪我で悩む選手や不調でパフォーマンスが発揮できずに困る選手が減ってもチームが成果を残すことができなければ選手も指導者も満足していませんでした。
その不満げな、悶々とした表情を見るたびに、自分にできることはまだないか。
そう問い続ける日々を送ってきました。
 
成長とは時に残酷で、いくら成長していても対戦相手の方が成長していれば結果は伴わない。
 
そう、常に勝負の世界にいる限り成長とは相対評価。
 
もちろん自分を基準にした成長曲線においてはある一定の絶対評価である側面はあります。
 
しかし選手にチームにサポートする上で成長の一端を担うとしたら、常に
“その成長スピードで充分か?”
この問いが命題として突きつけられてきます。
 
私は何度も甘い自分が災いして、基準を自分だけに置き、成長を冒頭にあるように知識や技術が増えることによって自分自身が成長していると過信している時期がありました。
 
ほんの5.6年前の話です。
 
目の前の選手が悔し涙を流し、指導者の唇を噛み締める姿を見るたびに、また間に合わなかった。
終わってみれば気づけた観点や介入できた要素や伝えられた言葉があった。
そのように猛省する日々をこれまで繰り返してきました。
 
 
“その成長スピードで充分か?”
 
その命題を突きつけられた数だけ怠惰な自分と闘う日々を過ごしてきました。
 
そんな繰り返しの日々の中で私は2016年にサポートチームが10数年ぶりに全国高校サッカー選手権出場を決めて、スタンドから観戦していて自然に涙がこぼれ落ちました。
 
スポーツトレーナーとして初めて勝って泣いた瞬間でした。
 
この思いを経験した時から、関わるスポーツトレーナーや JARTAで指導している認定スポーツトレーナーにもそういった興奮や感動を味わってもらいたい。
そのように感じるようになりました。
 
成長スピードの相対的な不足を感じ、猛省し、軌道修正しての繰り返し。
 
気づけば成長することに対して不安はなくなり、楽しめるマインドも備わってきました。
 
多くの選手は自分の伸び代や成長に対して疑心暗鬼になっています。
そんな選手に光明を見出させるのがスポーツトレーナーの役割です。
 
では我々スポーツトレーナーは自分の成長に対して疑心暗鬼になっていないだろうか?
セミナーで習得した技術や知識が増えるたびに成長を実感できているだろうか?
その技術や知識が活かし切れていないのは何が問題なのだろうか?
 
新しく始まるJARTAトレーナーカレッジでは、ハイパフォーマンスを実現する為にアスリートへサポートするスポーツトレーナーにとって成長し続けるきっかけとなり得る機会になります。
 
赤山が講師を担当するリコンディショニングスキル、ピーキングスキル、指導スキルにおいては現在進行形で更新し続けている自己鍛錬の手法や選手やチームとの関わりにおいて重きを置いていること。
 
そしてそのような情報や手法をどのようにアップデートしているかについてもお伝えしてまいります。
アスリートが1年前と今の自分とでは別人のように変わっているように。
スポーツトレーナーとしての赤山僚輔も1年前とはある意味では別人であると感じています。
そしてカレッジの1期生が終わる2021年の10月末にはまた今の自分とは別人のように成長している姿を明確に想像できています。
 
他の講師陣と、そしてカレッジを受講される皆様と共に、また新たな学び、として成長の機会を共有できることを心から楽しみにしております。
いつ、どのタイミングで急成長を期待する選手が目の前にやってくるかはわかりません。
選手に試合までに最高の準備をするように伝えるのであれば、スポーツトレーナーとして、いつ大一番が来てもよい準備を共にしていきましょう。
 
成長に対して貪欲であればあるほどに、自分の伸び代には無限に気づけます。
自分の伸び代に無限に気づけるスポーツトレーナーは選手の伸び代に無限に気づけます。
 
成長できないことを選手のせいにしていませんか?
 
共に成長していきたいと思う皆様、以下より詳細ご確認ください。
 

JARTAトレーナーカレッジ


 
共に歩んでいきましょう。
目の前の選手達の為に。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年10月15日

11月より開講|JARTAトレーナーカレッジ

トレーナーの能力アップに特化したオンラインスクール JARTAトレーナーカレッジ が11月に開講いたします。
 
JARTAトレーナーカレッジは、スポーツトレーナーとしての在り方・考え方を最重要事項として体系立てたカリキュラムを組み、
思考回路のレベルアップそのものを成長の対象としたオンラインスクールです。
 
最も厳しいプロや日本代表というステージで現在進行形で指導をしているトレーナーたちが講師となり、
現場での気づきや視点、時には悩みをリアリティを持って共有しながら学べます。
12ヶ月(24講義+12ライブ)で完結し、
1ヶ月ごとに配信される2つの講義と、講師に直接質問もできる月1回のライブ配信を受講いただけます(その後は無料でライブと講義が見放題)。
 
11月入学受付は今月20日正午12時までです。
ご希望の方はお早めにお申し込みください。
 
JARTAトレーナーカレッジ公式ページ・お申し込みは下記より

JARTAトレーナーカレッジ


 

JARTA公式HP
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2020年10月04日

武士道の精神がパフォーマンスを最大限に引き出す

文:影山大造

 
2020年3月、新型コロナウイルスが世界中に感染拡大した為
東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まりました。
 
それから半年、今、選手やコーチなど
オリンピックに関わる方達は
どんな思いで過ごしているのでしょうか?
 
今回のオリンピックは
これまで以上に選手の準備が難しくなります。
 
そこで私達トレーナーも、アスリートが最善の準備をするために
必要な要素を再考してみるべきではないでしょうか。
 
私は、その要素の一つに
【武士道の精神】があると考えています。
 
以前より、日本には
【武士道の精神】というものが存在します。
 
しかし、現代においては、
この【武士道の精神】を取り入れている事例は
少ないでしょう。
 
そこで、日本がすでに兼ね備えている【武士道の精神】を
スポーツにおいても取り入れて実践する事で、
現代でも【武士道の精神】をパフォーマンスアップさせるための
要素として、活用する事が出来るのではないでしょうか。
 
 

 そもそも【武士道の精神】とは何なのか

 
私が言う【武士道の精神】とは、
新渡戸稲造が記した著書「武士道」で書かれている
「義」・「勇」・「仁」・「礼」・「誠」・「名誉」・「忠義」
の7つの徳を指しています。
 
 
この7つの徳、一般的には
「義」・・・道理に従って決断する力
「勇」・・・どんな状況でも恐れず立ち向かっていく強い心
「仁」・・・愛や寛容、そして他者を思いやる心
「礼」・・・相手を尊重し、思いやる心
「誠」・・・自分の言った事を成し遂げる信念の強さ
「名誉」・・・個人の誇り
「忠義」・・・主君に対しての忠誠心
と言われています。
 
この【武士道の精神】である7つの徳を
スポーツに活かすためには、普段の生活から
意識する事が重要になります。
 
それでは具体的に、どのように取り入れるかと言うと
「義」
普段から、利害や損得で行動するのではなく、
また他の影響を受けずに、自分で考えて正しい行いをする事で
自立した人間になります。
 
そうすることで、競技においても、周囲に影響されることなく、
自分で考えて行動できる自立した選手になります。
 
「勇」
肉体的だけでなく精神的にも訓練することで
どんな状況でも常に動じない心でいられる様になります。
 
そうすることで、競技においても常に平常心を保てるようになり、
どんな状況でも常に動じない選手になります。
 
「仁」
普段から周囲の人に対して感謝の気持ちを持つことで
人に優しくなることができ、思いやりの精神を持てる様になります。
 
そうすることで、競技においてもチームメイトや監督・コーチなど
周囲の人に対して感謝の気持ちを持つことが出来るので、
いつも心が穏やかで気持ちのコントロールが出来る選手になります。
 
「礼」
家族や親しい友人など、相手へのリスペクトを忘れずに、
相手の意見を尊重する心を持ちます。
 
そうすることで、競技においても
チームメイトへのリスペクト・尊重する心を持つことができ、
練習の雰囲気はもちろん、より良い意見交換が出来るので
練習の質が上がり、結果的にチームワークも向上します。
 
そして試合においては、相手に対しても気持ちよく
正々堂々と勝負が出来ます。
 
「誠」
日常生活においても、自分で小さな目標を立て
成功・達成する経験を積み重ねることで自身につながります。
 
そうすることで、競技においても自分で立てた目標を成功・達成を
繰り返すことができ、競技に対して選手の自身につながります。
 
「名誉」
常日頃から、自分がどんな人間でありたいのかを考えて、
それに沿った行動・生き方をします。
 
そうすることで、競技においても自分がどうなりたいのかの考えを
しっかり持つことができ、練習はもちろん、練習外でも
それに沿った行動・生き方を自発的に行うようになります。
 
「忠義」
自分が考える道徳上守るべき道筋・礼儀に対して、正しい行動をする事=「義」を、
自分の心の中心に置く=「忠」ことで、普段から「忠義」を尽くします。
 
忠義とは他人に対する道理だけではなく、自分自身への「忠義」でもあります。
 
そうすることで、競技においても自身の考える6つの徳に対して
忠義を尽くす(忠実に)行動をするようになります。
 
このように、各項目について一度考えてみることで、
選手のパフォーマンスアップにつなげることが出来ると考えています。
 
私がこのような考えに至った背景には、
私自身の過去の体験があります。
 
というのも、私は【セラピスト】 兼 【経営者】でもありますが、
この10年で飛躍的に成長できたと感じています。
 
その理由として、業務中はもちろん、
業務以外での意識を変えたからです。
 
具体的には、まず私は自身の会社に
理念、ミッション(使命)、ビジョン、そしてクレド(行動指針)を作りました。
 
最初に理念に取り組んだのですが、理念を決めたことで、
具体的にどのような事をするのかのミッション(使命)が決まり、
そして理念を実現するために、今後どのようなプロセス経ていけばよいかの
ビジョンが自然と決まっていきました。
 
そして、理念の実現には勤務時間はもちろんですが、
業務以外の時間のあり方も、どうあるべきかを考える様になりました。
 
その結果、普段の行動の在り方をクレド(行動指針)に集約させたのです。
 
この様に、会社や自分がどうなりたいかの方向性を理念として明確に掲げることで、
理念実現のために自分がどうあるべきなのかがわかり、
理念に沿った行動・生き方をするようになったのです。
 
その結果、限りなくマイナスの要素が削ぎ落され
目的に対してのプラスの要素を積み重ねることで
会社だけでなく個人としても飛躍的に成長できたのです。
 
私の場合は、武士道で言う【名誉】が理念、それ以外の5徳がクレド、
これらに対しての正しい行動が【忠義】と同様ではと考えています。
 
競技においても、自分がどうなりたいかが決まると
それに沿った行動指針が決まり、後は正しく行動すること
と置き換えることが出来るのではないでしょうか?
 

 
また、【武士道の精神】は、潜在的に私達に存在するものでもあります。
 
というのも、新渡戸稲造がドイツに滞在していた時のエピソードですが、
海外の学者に「日本には宗教教育がないのか?」と聞かれて
「ありません」と答えた時に驚愕されたという話があります。
 
これは、海外の方からすると宗教教育がない中で、
道徳教育が成り立つことが考えられない事だったからです。
 
私たちの根底にある道徳とは、
学校で習ったものではなく、古くから大事にしている考え方が
今も自然と受け継がれているものなのです。
 
それは、神道・仏教・儒教・朱子学などの総合的なものになります。
 
そして、そこから形成され受け継がれたものの1つに
【武士道の精神】があるのです。
 
私達には、すでに道徳観の一つでもある
【武士道の精神】そのものが備わっているのです。
 
ということは、潜在的にある【武士道の精神】を、
明確にスポーツに置き換えることで、選手たちのパフォーマンスが
最大限に引き出すことが出来るのではないでしょうか?
 
また、【武士道の精神】を明確にすることで、行動指針ができ、
どんな状況下でも進むべき方向が定まっているので、
最善の準備が出来ると考えられるはずです。
 
ということで、今回はいつもと少し違う視点で
『武士道の精神がパフォーマンスを最大限に引き出す!』
という内容でした。
 
是非、選手だけでなくあなた自身も【武士道の精神】を
今日から活用してみて下さい!!

 
JARTAでは、代表中野をはじめ、講師陣は
【武士道の精神】を特に大事にしています。
 
特に、代表中野は、武士道の根底にある「上に立つ者の義務」として
7つの徳をもってJARTA認定トレーナーを束ねて
業界の発展のために導いてくれています。
 
そんな熱い代表に集う講師陣もまた
侍(サムライ)ばかりです。
 
そして、内なる熱い思いを持った講師陣にも
是非、皆さん会いに来てください。

JARTA公式HP
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2020年09月26日

成長し続ける選手の共通項とは


文:平山鷹也
 
日々練習に取り組んでいる選手たちすべてが、昨日の自分よりも少しでも成長したいと思っている。
 
 
しかし実際にはどんどん成長し続けている選手と、そうではない選手がいる。
 
 
この記事を読んでいる選手の皆さん、あなたはどちらだろうか。
 
そしてそれがなぜかを考えたことはあるだろうか。
 
 
今回は成長し続けることができる選手の共通項について私なりの考えと、具体的な方法をいくつか紹介する。
 
 
 
結論は、「自分の内側から外側を見ようとし続けられるかどうか」である。
 
 
少しわかりづらいと思うので説明していく。
 
 
自分の内側とは現在の自分のスキルや知識、さらにその根底となるところまで範囲を広げると思考の癖や生い立ちなどが含まれる。
 
 
つまり自分自身のことである。
 
 
そして自分の外側とは自分以外の他者のスキルや知識を含めたすべてのことである。

 
 
成長とは、外側にあるものを吸収して自分の内側である青色の円を大きくしていくこととして今回は話を進めたいと思う。
 
 
ここで大切になってくることは、自分の内側を通して外側を見ること(パターン①)。
つまり内側のことも深く知っている必要があるのだ。

 
 
内側を知ることについては、以下の過去記事を参考にしていただきたい。
(自分を知ることは、他者を知ること)
 
 
自分を知った上で外側を見ることができるようになると、今の自分のスキルはこのくらいで、目指している選手の動きとの違いは何だろう、と考えることができる。
 
 
そして、なかなか成長できないと感じている選手に多いのは以下の2つのパターンだ。
 
 
パターン②は自分の内側しか見ることができないこと。

 
このパターンでは、常にベクトルが自分に向いてしまっている。
 
よく聞かれる発言としてはネガティブなものが多い傾向にある。
・どうせ自分なんて
・自分は下手だから
 
そして他人へ興味が薄いこともこのパターンの特徴だ。
 
 
実は、選手だった学生時代の私もこのパターンに近かったように思う。
 
 
そしてパターン③は、内側が見れずに外側ばかりみてしまうこと。

 
こちらは、自分と向き合えずに悩む選手が多い。
 
 
発言としては、他者批判が多くなる傾向にある。
・あいつのこういうところが嫌い
・~もしてないのに~ばかりしている
 
 
パターン③では自分の思考の癖なども理解が浅いことが多く、自分が理解できないことを発言したり行動している人に対して批判的になりやすい。
 
 
 
自分がどのパターンに近いか考えてみてほしい。
 
パターン①の選手はおそらくすでに成長し続けるための具体的な行動はわかっているはずだ。
 
 
なぜなら、内側から自分を知りその上で外側を見ることで現在の自分の伸びしろが明確になりやすいからだ。
 
 
自分がどんな動きをしていて、上手い選手はどうやって動いているのか。
現状と今後の目標とのギャップに対して、どんな行動をとるべきか。
自分にはどんな思考の癖があって、それが成長をどのように妨げているのか。
 
 
成長のヒントは、今の自分を正確に捉えて的確な目標を設定することである。
 
今の自分を知ることが、内側から自分を見ることになる。
その上で的確な目標設定をするためには、自分の外側にある情報が必要となる。
 
 
外側を知るための手段はたくさんある。
・有名選手や目指している選手のプレー動画を自分と見比べてみる
・インターネットなどで練習メニューやトレーニングの情報を集める
・本をたくさん読む
・監督やコーチに自分に足りないものを聞いてみる
・環境を変えてみる(自主トレの場所、外部トレーナー、チームの変更など)
 
どれもが、少し手間がかかったりちょっとの勇気を必要としたりするものである。
 
 
しかし、成長し続けられる選手はそのちょっとの勇気を出し惜しみしない。
 
今の自分にそれが必要だとわかれば、すぐ行動に移すことができる。
 
成長とは変化であることを本能的に知っているのだ。
 
 
 
さて、それではパターン②や③の選手は何をすればよいのだろうか。
 
これまで述べてきたように、内側しか見れないパターン②の選手にとっては外側を知ることが、パターン③の選手にとっては内側の自分自身を知ることが大切となる。
 
 
外側を知るためには、外部にアンテナを張って情報収集をしたり、見学や体験などに積極的に参加したりすることも良いだろう。
 
内側を知るためには、時間を作って自分の人生を振り返ってみたり、家族や友人と自分自身のことについて色々聞いてみるのも良いと思う。
 
 
これらのことは、成長するために必要なことである。
 
そして成長「し続ける」ためには、これらのことをし続ける必要がある。
 
半年前には勇気を振り絞って飛び込んだ世界も、今は少しずつ慣れてきているのであればさらに踏み込んでいかなければならないかもしれない。
 
なぜなら半年前に見えていた自分の外側の世界は、成長した今のあなたにとっては内側になっているからだ。
 
 
自分の円が大きくなったら、さらに外側の世界を見ようとすると、半年前には見えていなかった世界が見えるようになる。
 
そして新たに見えるようになった世界に飛び込む。
 
 
成長し続けるとは、その繰り返しだ。
 
 
 
 
多くの場合、自分に足りないことを認識することも、それを改善するための行動を起こすことも本人にとっては苦痛を伴う。
 
 
だが、もしあなたが今の自分に必要なことだと思ったら苦痛を受け入れ、乗り越えていってほしい。
 
 
その先に、新たな世界と成長が待っているはずだ。
 
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年09月20日

ハッシュタグ『JARTA』で検索!!!


 
本日のブログではJARAT公式Instagramでご紹介している、JARTA認定スポーツトレーナーの活躍をご紹介したいと思います。
 
現在全国に200名弱がJARTA認定スポーツトレーナーとして様々なフィールドで様々なカテゴリーの選手たちをサポートしております。
もちろん全員がアスリートに関わっているわけではありませんが、JARTAのセミナーを受講する前にはアスリートに関わることがなかったような方もセミナーを受講中や認定資格取得後に様々なご縁で選手やチームと繋がり活動を開始して継続しております。
 
なかなかそのように活動している認定スポーツトレーナーの皆様の活動をご紹介する機会がなかったのですが、今回は公式Instagramでリポストさせていただいている記事を中心にご紹介したいと思います。
 
 
まずは講師としても活動を開始している東京の平山鷹也トレーナー。
 
https://www.instagram.com/p/CDzl0jCBb95/?utm_source=ig_web_copy_link
 
続きまして
 
関西で活動する山岡俊也トレーナー
 
https://www.instagram.com/p/CEnIik6hvxs/?utm_source=ig_web_copy_link
 
続いて関東で活動している
鎌田利武トレーナー
 
https://www.instagram.com/p/CEsUUXlhR0Q/?utm_source=ig_web_copy_link
 
今回のご紹介の最後は
中野崇と共にブラインドサッカーの日本代表のフィジカルコーチも務める
高塚政徳トレーナー
 
https://www.instagram.com/p/CFLPMAihVCn/?utm_source=ig_web_copy_link
 
このように様々な認定スポーツトレーナーが多くの選手やチームのサポートを継続しながら共に成長を続けております。
JARTAトレーニングにご注目される方はこのブログをお読みの皆様の中では多いと思います。
しかしトレーニングだけでなく、どのようなトレーナーがどのような現場やカテゴリーで活動しているのか。
 

#JARTA

 
ハッシュタグ『JARTA』で一度検索してみてご覧になってみてはいかがでしょうか?
 
トレーニングだけでなく活動しているトレーナー自身の成長にも要注目です。
終わりのない成長に向き合い、共に成長し続ける認定スポーツトレーナー達の”いま”と”これから”にご注目ください。
 
もちろんサポートしている選手へのご注目とご声援は第一にですが。
 
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
 
 
引き続きJARTAの活動にご注目ください。
 

JARTA公式HP
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2020年09月12日

東西融合の視点を臨床応用する為に

文:赤山僚輔
 
いつもJARTA公式ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回はJARTA創設時から踏襲し続けている東洋医学的観点を臨床応用する思考方法を西洋医学的観点とどのように統合させていくのか。
この点について改めて整理してお伝えしていきたいと思います。
 
私はスポーツトレーナーとしての学びを先に進めながらその過程で理学療法士という資格を知り、取得し医療機関に勤め、今は保険外の領域で活動をしております。
 
医療という枠組みは一般的には現代医療であり西洋医学とも捉えられます。
(厳密にいうと病院の中に東洋医学的観点での診療や処方をされる機関もありますが今回は割愛します)
 
それに対してスポーツ現場では様々な職種の方々が活動をしており、指導者が参考にしている心身に対する手法も多岐に渡ります。
 
鍼灸師や中医学の医師などと親交がある指導者であればそういった視点での対処やアプローチに対して積極的に取り組んだり選手対応時に実践されることもあると思います。
同じように理学療法士やATCの方などと一緒に活動してきた指導者の方は、病院との距離感含めて病院での判断を第一に様々な選択をされていると思います。
 
 
ここでは良い悪いの議論は横に置いて観点、価値観として共有する前提で話を進めていきます。
 
 
 
医療機関に勤めながら現場に行っている時に、ある疑問を感じることがありました。
怪我をしたり、痛みを有する選手が第一選択として画像診断や病院診察をチョイスしておらず指導者もそれを推奨していない事例が比較的多く見受けられる。
といった事象に対しての疑問でした。
 
 
皆様も現場に出入りしているとそういった事例を経験したことがあるのではないでしょうか?
 
ここに西洋医学と東洋医学の特徴と現場ば求めるニーズなど複雑な問題が重なり山積しています。
 

白黒つける西洋医学

 

病院へ行きたがらない、選手や指導者と何故なのか話をしたことがあります。
スポーツトレーナーとして現場に行って、病院で行なっていることが最善であると疑いの余地もなかった若かりし頃の話です。
どうして怪我をした時にまず、病院へ行ってどういう状態になっているかを調べたり、長年痛みが引かない状況があった時に精密検査をしないのか?
 
これに対して選手も指導者も同様の答えでした。
『ドクターストップされて、練習できなくなったり試合に出れないと困るから』
その時の自分にとっては衝撃的だった事を覚えています。
 
自分の状態を知ることよりも
 
目の前の練習や試合に参加することの方が意義深いとみなされていたのです。
 
これではどうしようもなくなってしまってから皆が病院に来るのもうなづける。
そのようにその時の自分は感じ現場に出続けることでしか、この命題に対する最適解を模索することはできないと感じました。
歴史的にも文化的にも要素還元主義で人を部分の集合体として捉える西洋医学において、患部の状態を客観的に精査したら白黒つけるのは必然の流れです。
 
それは善悪を語れる事象ではなく、必然なのです。
患部で何が起きているか不明瞭ではっきりさせる必要性がある場合、これは西洋医学において得意分野であると言えます。
もちろん手術などの外科的な処置が必要な時に西洋医学の観点がなくてはならないことは言うまでもありません。
 

部位を観ず、人を観る東洋医学

 

それに対して病院以外の施設ではどうなのか。
病院以外が全て東洋医学というわけではないのでシンプルには捉えにくいですが、今回は比較をしやすくする為に東洋医学の特徴を例に出して話を進めていきます。
東洋医学の観点において傷病者に対しては痛みがある部位を観るだけでなく全身のつながりや精神性を含めて人を観るということが特徴としてあげられます。
これは痛みや不調は結果であり個人の自然との調和が乱れたり精神がバランスを崩すことが病気や不調の原因。
そのように考える東洋医学の特徴からくる観点になります。
東洋医学的観点から考察をすすめていくと、ひどい痛みがなくても未病とよばれる不調の要因となる要素をピックアップすることも可能となります。
 
特に慢性的な障害において画像上はっきりしないような症状がある事例については東洋医学の得意分野とも言えます。
経験的にも痛みがある部位だけで問題が帰結せずに全身から問題を探求する際に、単に運動連鎖や筋膜の繋がりだけでなく東洋医学的な観点によって解決のヒントが得られたことは数えられないくらいにあります。
 

対象によって東西の良さを活かすための準備

西洋医学と東洋医学の良さを最大限に活かすには双方の特徴や歴史、現代における状況を整理する必要性があります。
二項対立ではなく双方を融合する為には自分がどの立場でいるかというポジショニングと共に、違う観点の情報を知ることが重要となります。
孫子の兵法で有名な孫子の言葉で
「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」
という言葉があります。
勝負ではないですが、仮に理学療法士という立場であれば東洋医学を知ること。
そして自分の立ち位置を知る為に西洋医学をさらに研鑽をすすめ、情報をアップデートすること。
そうすることで二項対立ではなく現場で選手の問題に向き合った時に双方の良い部分を活用することができるのではないか。
 
そのように考えています。
 
 
実際に現場で活用するには、際限なく東洋医学と西洋医学について理解を深めることが必要であり、現場でよく遭遇する事例に対して無意識的に自分が自分の立場での価値観を押し付けるようにしていないかという俯瞰的な視点も必要となってきます。
 
今月開催される東洋医学と西洋医学を融合する為のオンライン講義ではこのような観点での深め方と臨床応用について2回に渡ってお届けしていきます。
ご興味のある方は以下より詳細ご確認ください。

JARTAオンラインセミナー


 
長くなりましたが、このような視点の広げ方と集約の仕方が何かの問題解決のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

JARTA公式HP
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2020年09月02日

選手も手段に囚われるな

文:平山鷹也

 
練習環境が悪い、時間がない、練習時間が長すぎる(短すぎる)。
 
あなたは、現状に何かしらの不満や物足りなさを感じていないだろうか。
 
 
自分が不満に感じていること、例えば良い練習設備がない、と感じている選手にとっては、その設備がある環境が羨ましく映るかもしれない。
 
「もしあの設備があれば俺だって」
 
 
このように考えてしまう選手は、手段に囚われている可能性が高い。
 
 
いい設備がある=上手くなれるという思考に囚われてしまっているからだ。
 
 
たとえその設備があったとしても、この思考の癖があると他のところで不満を感じてしまう。
 
 
 
 
 
 
JARTAでは、認定トレーナーコースの中で
「手段に囚われず選手のパフォーマンスアップに貢献する」ための思考法をお伝えしている。
 
 
今回は、選手目線で「手段に囚われない」ことの重要性について考えてみたい。
 
 
まずは誤解がないように、
・手段を選ばない
・手段に囚われない
 
この2つの違いについて整理しておく。
 
 
手段を選ばない、とは目的を達成するためにはどんなことでもするという意味を持つ。
 
試合で例えると、勝つためならルール違反を犯して相手選手に怪我をさせてもいい、ということになる。
 
 
 
 
一方で、囚われる、は固定した価値観や考え方に拘束されることを意味する。
 
同じく試合で例えると、右サイドからのセンタリングじゃないと得点できない、三振をとれるのはフォークボールだけだ、というような考え方に固執することである。
 
 
このように整理すると、両者は全く違うことがわかる。
 
 
そして「囚われている」状況は、他者から見ると明らかに不自然に感じるのではないだろうか。
 
 
中央からパスをつないでゴール前まで運んだっていいし、高めの釣り球で三振を取ったっていいと思うはずだ。
 
 
だが当人たちからすると、無意識的にそのような思考に「囚われて」しまっている。
 
 
どれだけ無理な形になっても右サイドにボールを集めようとするし、追いこんだらフォークボールを投げ続ける。
(この背景にはそれで上手くいった体験や、他の方法で失敗した記憶が原因になりやすいが、ここでは原因についての考察は割愛する)
 
 
 
手段に囚われているという状態は、試合だけではない。
 
 
アスリートにとって最もデメリットになるのは、もっと上手くなるための方法を考えるときに「手段に囚われている」ことである。
 
 
・動き出しを速くするためにはダッシュを繰り返し行うしかない
・パワーをつけるためには筋トレするしかない
・切り返しが速くするトレーニングはラントレーニングだけだ
・体力をつけるためにはたくさん走るしかない
・疲労を回復する方法は休むしかない
・いい設備がないから効率的な練習ができない
 
 
ここで、「本当にそうなのか?それしかその目的を達成する手段はないのか?」
と自分に問いかけてみてほしい。
 
 
筋トレや走り込みなどのトレーニングが必要な場面が多いのは間違いない。
 
しかしこれも手段の1つでしかない。
 
 
動き出しを速くするためには、
・瞬発的な脚のパワーを上げる
・下肢の筋力を上げる
・重心を利用する
・上半身を活用する(スピードを上げたければ協力者を増やせ。)
 
このように、あなたの伸びしろを伸ばすための手段は決して1つではない。
 
 
これは、トレーニングだけの話ではない。
 
良い環境設備がない、という自分では変えられない問題においても、
「その設備があれば何がどのように良いのか。」
 
この質問の答えがあれば、今の環境でその目的を達成する方法がないかを考えられる。
 
 
 
ウエイト器具が身近になくても、全身をうまく使えるようになれば今よりもボールや相手に伝えられる力を強くできるかもしれない。
 
ピッチングマシンがなくても、ゆっくり山なりのボールを自分のタイミングで姿勢を崩さないように打てるように練習することで、速い球に対応できるようになるかもしれない。
 
 
 
全てのトレーニングやケアは、目的を達成するための手段だ。
 
 
練習時間が長くて疲労が常にたまってしまっているのなら、より全身の疲労を回復できるようなケアが必要かもしれない。
 
パーソナルトレーニングを受けてみたいが時間がない、と思うのなら何に自分が時間をとられているのかスケジュールの整理が必要かもしれない。
 
 
これらすべての問題に対して1人だけでは解決できないこともあるだろう。
 
そんなときは他の選手や監督、コーチに頼ればいい。
 
 
ここでも、「他人に頼ってはいけない」という考えに囚われている選手は意外と多い。
 
悩みを共有し、ともに解決していくことがチーム力向上につながっていく。
(1人より2人の方が成長できる3つの理由)
 
 
自分の周囲だけでは解決できない問題があったら、ぜひ我々にも頼ってほしい。
 
 
きっと現状を打破するための手段を提示できるはずだ。
 
 
この記事が、「自分は手段に囚われていないだろうか。」と再考するきっかけになればと思う。
 
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年08月26日

「運」は平等?不平等?

文:永井貴大(認定スポーツトレーナー)

 
「僕は、私は運が悪い…」
「どうして僕だけが、私だけが…」
「どうしてあの人は!」
 
多くの人が1度は口にしたことがある言葉だと思います。
 
私自身も何度も口にしたことがあります。
私は12年間の競技生活(野球)のなかで3度の手術を経験しており、手術を要する怪我をした際によく運が悪いと言っていました。
 
「なんで自分ばかり怪我をするのか」
「なぜ野球の神様はこんなにも試練を与えるのだろうか」
「運は平等ではない」
「野球の運を持っていないから怪我をしても仕方ない」

 
ですが、引退して3年経ちこの思考に変化がありました。
きっかけはYouTubeである動画を視聴している時でした。
その動画の後半にこのような言葉が出てきます。
 
「運が良い人、運が悪い人とよく言うが、太陽が万物を等しく照らすように、運は万物に平等に与えられている」
 
この言葉に出会いの私の運に対する思考は180°変化しました。
そして、野球をしていたときの私の1日のスケジュールを振り返ると、練習をしている記憶はあるのに身体のケアをしている記憶はありませんでした。
身体のケアの時間がないため練習による疲労は蓄積し続け、怪我をするのは必然のことです。
 
こうなると怪我をしたのは本当に運が悪いのでしょうか?
運が悪いのではなく、身体のケアをするという行動を取らなかったから怪我をしたのです。
それから「運」について追求するようになりました。
「運」を引き寄せるためにどうすれば良いか思考し、先輩方に質問もしました。
そこで1つの答えを出すことができました。
運を引き寄せるためにはまず、運の構造を理解しなければならないということです。
私が運の構造分解をしたものが下記になります。
 
「運」と一言で言っても多くの種類が存在しますが、大きく分類すると2つに分けられます。
「自分でコントロールできる運」と「自分でコントロールできない運」です。
そしてこれらはさらに2つずつに分けられます。
自分でコントロールできる運とは、「開発できる運」と「管理できる運」です。
前者を「機会」、後者を「確率」とします。

(上記画像https://studyhacker.net/masakazu-sugiura-01より引用)

 
自分でコントロールできない運とは、「事前に決まっている運」と「結果がわからない運」です。
前者を「宿命」、後者を「偶然」とします。
今回は自分でコントロールできる運である「機会」と「確率」についてです。
 
機会とは自ら運を開発することで運を引き寄せているものになります。
自分将来について思考し自ら未来を開拓しようとしている人としていない人では前者が運を引き寄せています。
 
確率とは意思決定の質を上げていくことで引き寄せられるものになります。
意思決定により物事が上手くいく確率が50%の場合、その確率を51%に引き上げることができたら長い人生の間に多くの意思決定の瞬間が訪れるため1%の確率が引き上げられるだけで、運を高めていけます。
 
では、どのように自分でコントロールできる運を高めていくかについてご説明します。
まずは機会からになりますが、機会も運である以上偶然は存在します。
しかし、偶然に任せているだけでは良い機会は訪れません。
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は「望ましいキャリアを得た人は偶然を友にし、機会を変える努力を怠らない」と述べています。
そして、偶然を友にしている人が持つ共通項として以下の5つを挙げました。
 
・好奇心
・持続性
・柔軟性
・楽観性
・冒険心
 
この中で冒険心と持続性が大事だと私は考えます。
まず機会を得るためには冒険をしなければなりません。
新しいことを始める、新しい世界に飛び込むことはとても勇気がいることです。
失敗するかもしれない、見ず知らずの人に笑われるかもしれない。
多くの不安や迷いのなかでその1歩を踏み出すことができるか。
踏み出すことができた人には新たな機会を得るための環境が待っています。
踏み出すことができなかった人には現状維持しかありません。
そして、現状維持は衰退を意味します。
 
自分でコントロールできる運は平等に与えられています。
でもその運を掴めるか、掴めないかは平等ではありません。
そこには冒険心に対する行動力がが求められるからです。
運が良いと思われる人は行動して、運が悪いと思われる人は行動していません。
 
そして足を止めてはいけません。
常に歩き続けなければ、新たな機会は得られません。
だから持続性が大事になってきます。
 
運を引き寄せたい人は冒険心を持った上で行動し、その行動を持続させていきましょう。
 
最後までお読み頂きありがとうございました。
 

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2020年08月22日

選手の変化に対応する為に時代の変化に対応する

 

文:赤山僚輔

突然ですが、このブログをお読みの皆様は自分自身が扱う情報の更新はどの程度行なっていますか?
聞き方を変えると、どんなペースで自身のアップデートをしていますか?
 
私は現在38歳で、スポーツトレーナーとして活動し始めて17年ほどになります。
10年ほど前であれば、月に1回勉強会に行っているくらいでも周囲の仲間と比較するとよく勉強をしている方だと捉えられアップデートし続けていると自覚もしていました。
しかし今、時代は急速に変化を遂げ、情報が広がり、変化するスピードが5年や10年前とは比べものにならなくなってきました。
 
世界のインターネット上の情報量(1日当たり)は1992年(平成4年)に100GBでしたが、2017年には40億GBとなるなど飛躍的に増大し、2022年には130億GBになると予想されています。
このような中、例えば、世界における写真の撮影枚数(年間)は、2000年代から急激に増大しています。
世界全体で撮影された写真の枚数の推移は以下のようになっています。

年数 億枚
1970 100
1980 250
1990 570
2000 860
2010 3,800
2017 13,000

※国土交通白書 2019(国土交通省)を元に作成、引用
 
そしてSNSの利用の拡大によりこれらの写真や動画が凄まじいスピードで出回り、キャッチすることができるようになりました。
選手や指導者、また保護者の皆様は少しでも不調を改善、そしてパフォーマンスアップできるようにとそれらの情報を日々チェックし有効活用しておられます。
 
選手の変化や進化のスピード。
そして時代の変化や進化するスピードに対して我々は常にアップデートし続けることが求められます。
よく人間の脳とPCを例えられたりしますが。
皆様は今お使いのPCは何年前に購入されたものでしょうか?
そしてハードディスクやクラウドへの保存容量はどの程度利用していますか?
これは総務省が発表している参考資料になります。
 

(出典)総務省「通信自由化以降の通信政策の評価とICT社会の未来像等に関する調査研究」(平成27年)

私が理学療法士として医療機関に勤務していた2008年頃から比較すると比べ物にならない通信速度になっていることは言うまでもありません。
当時と同じPCを使っていたのでは今の時代には追いつけないどころか、必要とされなくなってしまうでしょう。
 
ではPCをスポーツトーレナーの脳と仮定して考えてみた時に、皆様は数年前と比べて情報を処理するスピードや発信するスピードは変わっていますか?
 
スポーツ現場や選手自身を取り巻く環境は間違いなく変わっています。
そんな選手たちに求められる、伸び代を提示し続けられる存在としてスポーツ分野に関わるのであればこの変化のスピードに対応することは避けては通れなくなりました。(もちろんスポーツ分野に限りませんが)
そして通信速度だけでなく処理速度や容量についてもこのようなデータがあります。

(出典)総務省「通信自由化以降の通信政策の評価とICT社会の未来像等に関する調査研究」(平成27年)

どちらも少し古いデータにはなりますが、考え方としてこれからの我々の姿勢を再考するきっかけになればと思い共有させていただきました。
 
自分自身も少し前まではSNSとの距離感については最大限に活用できているとは言い難い状況でした。(もちろん今もまだまだですが)
それよりもリアル体験としてのセミナー受講や書籍から学ぶことの方が性に合っていると感じていました。
 
しかし選手が変化するスピード、キャッチアップしていく情報量を考えるともはやSNS含めてネット上からの情報収拾からは避けては通れない時代になったなと痛感しています。
 
PCが普及し始めた頃、いち早く導入する方もいれば、ギリギリまでアナログでいこうと奮闘した方もおられると思います。
 
そしていま、youtubeやInstagram、FacebookやTwitterなど各種SNSの利用になかなかついていけずに2度足を踏んでいる方も多いと思います。
しかしこれらを活用せずにこれからの選手の変化や業界の変化に追随し、そして選手へ伸び代を還元することはもはや不可能に近いと考えています。
 
 
スポーツトレーナーとは選ばれる存在です。
 
選手は多種多様な情報の中から、少しでも自分にとって有益である思われる情報や選択肢を選定します。
その選択肢であり続ける為には、変化を恐れずアップデートし続けることが必須となります。
アップデートし続けることは時に過去の自分を再構築することであり、変えたくない側面と向き合うこともあるかもしれません。
 
しかし自らの拘りや”よくわからない””面倒くさい”といった一時の感情の影響で、気づけば型落ちのPCをいつまでも使っている。
 
というような状況に陥らない為にもポジティブな意味でもアップデートは是非とも継続していければと考えています。
 
文字や画像、映像やウェブセミナーなどなど。
どういったインプットがすんなり受け入れられるかは人それぞれです。
自分にあった手法から実践していくことをお勧めします。
 
今回は最近、JARTA認定スポーツトレーナーの活動状況もリポストさせていただいている。
JARTA公式のInstagramの記事を合わせてご紹介したいと思います。
https://www.instagram.com/p/CDkN2Frh7ib/?utm_source=ig_web_copy_link
https://www.instagram.com/p/CDzl0jCBb95/?utm_source=ig_web_copy_link
https://www.instagram.com/p/CEGoQW6hMHs/?utm_source=ig_web_copy_link
ぜひ情報のアップデートの一端にこのような配信も有効活用していただければと考えております。
 
時にスポーツトレーナーには時代の先を読み、想定し、先回りして行動することも求められます。
アップデートするペースが5年前と同じでは2020年が気づけば終わってしまいます。
これは自分自身への戒めでもあります。
 
日々成長し、時代の真ん中を生きる選手たちと共に。
我々も日々成長し続ける。
そんな存在でJARTAは在りたいと強く願っています。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年08月19日

第5回パーソナルトレーニングフェスタin神戸開催のお知らせ

 
2020年11月3日 文化の日に開催される「パーソナルトレーニングフェスタin神戸(第5回PTF)」
に弊社代表 中野崇が登壇致します。
 

 
中野 講義
『リカバリーの考え方と実践(講義+実技)』
○セミナー内容
競技において、本来のパフォーマンスを発揮できない要因は複数あり、それらはパフォー マンスアップをサポートする上でトレーナーが必ず対処しておかなければならない事柄で す。 そのうちの一つである「疲労」は特に重要な要因であり、疲労のメカニズムおよび疲労に 対処するための知識はトレーナーには不可欠です。 またCOVID-19の影響にて、例えばJリーグが週に2回開催されるなど多くの競技で試合間 隔が短くなる傾向にあるため、疲労回復の重要性は今後さらに高まってくることが想定さ れます。 この講義では、疲労のメカニズムおよび対処法について講義および実技で学習していきます。
 
○得られるもの、学んでほしいこと
パフォーマンスアップをサポートする上での重要分野である疲労について、スポーツト レーナーが知っておくべきことを学ぶことができます。
 
 
【会場】
兵庫県立文化体育館(兵庫県神戸市長田区蓮池町1-1)(駐車場あり)
JR・市営地下鉄「新長田駅」北へ徒歩約10分
山陽電鉄「西代駅」or神戸市営バス「西代停留所」徒歩1分
(当フェスタでは感染症対策を最大限講じた上で開催致します。オンライン参加としてYouTube配信行います)
 
【お申込フォーム⇩】
リアル参加・オンライン参加共に先着40名様で締め切らせていただきます。
お申込み順ではなくご入金先着順とさせていただきますので、予めご了承くださいませ。
JARTA認定スポーツトレーナー(修了者の方)は早割価格でお申込み可能となっております(先着20名)
申し込みの際にJARTA認定トレーナー・修了者とご記載ください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/07639323669505
 
 
その他内容・詳細は、パーソナルトレーニングフェスタin神戸のページを参照ください。
 
 
【ご質問はこちらから⇩】
personal.training.festa@gmail.com
(担当…PTF事務局 岩瀬)
 

2020年08月08日

競技別コンディショニングの捉え方





文:赤山僚輔

『障害部位を競技種目別に原因を紐解く』
同じような部位の障害や痛みであっても競技種目が異なることで考慮すべき事項が違うことは言うまでもない周知の事実です。
今回の記事では今一度、競技特性やポジション特性によりコンディショニング時に留意すべき事項を一部分ではありますが紐解きながら解説していきたいと思います。
 

膝前面の痛みの原因は?

中高校生に頻発する膝前面の痛みですが、原因はもちろん千差万別です。
そんな中でも今回は3つの競技の角度から原因について考察していきたいと思います。
 
①高校男子バスケット(ポジション:ポイントガード)
②高校女子バレーボール(ポジション:ウイングスパイカー)
③中学男子サッカー(ポジション:フォワード)
この3つの競技とポジションの選手が同じような膝前面に痛みを訴えていることを想定してください。
 
皆様はどのような原因を考え、どこに対して評価を実施し、どのようなアプローチ及び再発に向けての指導を実施しますか?
 
まずは大別する上で頻回繰り返す動作を整理したいと思います。
 
①ダッシュ、ストップ、ターンなど360°方向への急激な方向転換と常に低い姿勢での構えが求められる。
②ジャンプ踏み切り、ジャンプ着地など繰り返しの上下方向への反復動作が求められる。
③キック動作など足をスイングしてボールを蹴る動きの繰り返しが求められる。
(もちろんその程度はチームレベルや戦術や指導体系によって異なる)

 

障害発生はアライメントだけでなく強度にも影響を受ける

この世代の特徴として試合よりも練習の中での負担のかかり方が影響を受けることが多いです。
例えば、サッカーのフォワードの選手が試合でシュートを打つのは10回もないかもしれません。
しかしチーム練習や自主練習などではその何倍ものシュート動作を繰り返すことになります。
それは前述したバレーやバスケットにおいても同様です。
大まかな競技における反復される動作が想定できれば、評価の中で重要な視点としてそのチームがどのような練習メニューが多く、その選手がどういった役回りをすることが多いかを整理することが重要になります。
 
バスケットのポイントガードと言ってもパスやドリブル、チームオフェンスの練習を繰り返すチームもあれば、ディフェンスの練習をひたすら繰り返すチームもあるでしょう。
その練習スタイルの賛否はここでは議論を避けますが、膝の痛みを評価する上でそういった要素を加味しなければどのようなアプローチが必要かも変わってくる。
このような視点が競技別のコンディショニングにおいては重要となるのです。
 

どの組織への負担を想定して評価していくのか

当たり前ですが、ストップ動作に使われる筋肉や身体操作とジャンプ動作に使われる身体部位や身体操作は異なります。
仮に同じような膝の前側の痛みがあったとしても評価部位は異なります。
ストップ動作に問題がある、もしくはその動作を頻回繰り返す競技やポジションであれば、ストップ動作に必要とされる関節の可動域や膝前面の筋肉と共同的に働く部位への評価が必要となります。
それは例えば、大臀筋であり、ハムストリングかもしれません。
これがジャンプ動作である場合、そもそも膝蓋腱の柔軟性が十分に確保できているかの視点が重要となります。
その上で、ジャンプ動作に重要となるアキレス腱の柔軟性やその他ジャンプ動作で使われるべき身体部位の評価の視点が重要となるのです。
 
同じようにそれがキック動作であれば、膝前面の負担がかかっている時点で膝下だけでのキック動作になっている可能性もあり股関節の伸展動作やクロスモーション含めてダイナミックな動作が行えているか、股関節の柔軟性が確保できるかは非常に重要な視点になります。
 
筋肉、関節、腱。
言葉にすると簡単ですが、どの部位への負担を考慮するかは患部の痛みを追っているだけでは見逃すこともあります。
そんな時にその選手の競技特性やポジションにおける身体特性を十分に考慮して関わることは症状の早期改善だけでなく再発予防においても大切です。
決して膝の前面に痛みがあるから大腿四頭筋のストレッチや筋力強化、あるいは股関節周囲の筋力強化と画一的に対処すべきではないと考えています。
復帰期が近づくにつれ、アスレティックリハビリテーションの手法が競技によって異なるのはいうまでもありません。
今回は障害後早期においても競技別における評価の視点や方向性を熟慮する必要性についてお伝えしました。
 
今回の記事内容の続きをより詳しく8月11日と18日のオンライン講義にてお伝えする予定になっております。
スポーツ障害の種目別の捉え方について整理してブラッシュアップしたいと思われる方は是非以下URLよりご確認ください。

JARTAオンラインセミナー


 
 
また今後も様々な視点でコンディショニング、トレーニングが実践できる為の思考や手法をお届け予定にしておりますので乞うご期待ください。
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年08月02日

ジュニア世代に必要なトレーニングとは





文:平山鷹也

 
トレーニングもスキル練習も日進月歩で進化しており、ジュニア世代と呼ばれる小中学生から専門的な練習を行っている選手も多い。
 
その結果として、高校野球では20年前には考えられないくらいのスピードを投げるピッチャーが多く輩出され、サッカーでも低年齢から海外でプレーする選手も増えてきた。
 
JARTAにも、ジュニア世代と呼ばれる選手たちのサポートが増えてきている。
 
そんな中で、ご両親やジュニア世代の育成に関わっている指導者、トレーナーの方にぜひとも知っておいてほしいことがある。
 
結論を先に言うと、「ジュニア世代のトレーニングは、スポーツ独自の動きだけを練習すべきではない」ということだ。
 
野球でいえば投球やバッティング動作、サッカーならボールを使った練習ばかりを行うだけでは、将来の成長を考えると少しもったいない。
 
たしかに短期的にはその競技自体は早く上手くなれるかもしれない。
 
しかし、なぜ長期的には競技独自のトレーニングだけでは不十分なのか、
「発達」という観点から考えてみる。
 
 
 
 
まずはこの図を見てほしい。

 
こちらはスキャモンの発達・発育曲線という有名な図である。
 
20歳の発育量を100としたときの一般型、神経型、リンパ型、生殖型の発達・発育パターンを図にしたものである。
 
今回注目してほしいのは神経型の発達である。
神経型の発達は5歳ころまでに80%を超え、12歳前後には100%になる。
 
 
赤ちゃんが寝返りをできるようになり、四つ這い、つかまり立ち、歩行と成長していく時期に合わせて神経系も発達していく。
 
これは赤ちゃんからすると新しい動きを覚えていく時期であり、失敗を繰り返しながら
「できない」⇒「できる」を経験している時期でもある。
 
つまり12歳までは新しい動きを覚えていくことに向いている時期であり、習得も早いと言える。
 
 
 
この時期に1つの競技にしぼった練習を行うことで考えられるメリットとデメリットを整理しておこう。
 
メリットは、その競技特有の動きを習得しやすいこと。
これは昨今の競技レベルの向上を考えても間違いないだろう。
 
 
一方デメリットは、競技特有の動きでは引き出されにくい動きの基礎がないままに成長してしまうこと。
 
一見そのスポーツは上手くできているように見えても全身が連動しておらず、学年やカテゴリが上がったときに怪我が増えたり、壁にぶつかったりする理由の1つでもある。
 
 
 
 
それでは、具体的にどんなトレーニングをするべきなのだろうか。
 
答えは、すごくシンプルだ。
 
 
いわゆる、体育の授業で行うような前転や後転などのマット運動、反復横跳びやボール投げなどの体力テストで行う運動、縄跳びや跳び箱などのジャンプ系の運動などをまんべんなく行うことである。
 
しかし体育の授業で行っているから大丈夫、と考えるのは少し早いかもしれない。
 
実際私がサポートしている選手たちでも、上で挙げたような運動を行ってもらうとうまくできないことが多い。
 
 
そしてそこに、その選手の伸びしろがある。
 
前転が上手くできない選手は頚部や背骨のコントロール、重心移動に課題があり、プレーの中で本人が感じている課題とも関係していることが多い。
 
 
これらの課題に対して競技特有の練習だけでは解決できない場合、基礎的な運動に戻ってトレーニングすることが最も近道となる。
 
これが、ジュニア世代に必要なトレーニングである。
 
そしてもう一つ。
 
 
いかに子どもたちの興味を引き出すか、という視点も忘れないでほしい。
 
この視点に関してはこちらの動画も参考にしていただきたい。
子どもの集中力を持続させる“ある作戦”
 
子ども扱いをすることはよくないが、子どもの特徴を把握して指導に活用することはジュニア世代に関わる上で必要不可欠である。
 
 
より多い種類の運動ができ、子どもたちも飽きずに行うことができることが求められるということだ。
 
実は、一昔前の子どもたちは知らず知らずのうちにこのトレーニングをやっていた。
 
 
それは、公園や学校のグラウンドなどで自分たちでルールを決め、自由に遊ぶということだ。
 
 
この「自由な遊び」こそがこの時期の子どもたちに必要な要素だったのだ。
 
 
しかし現在は安全性や多くの社会的情勢から、そのような自由な遊びが減っているように思う。
 
 
だからこそジュニア世代に関わる我々は、子どもたちから自由な発想と動きを引き出すような環境設定や指導を考えなければならない。
 
 
 
 
 
今回は、ジュニア世代のトレーニングに関して発達という観点から考えてみた。
 
以前の記事でも、トレーニングをパフォーマンスアップにつなげるためにはより多くの観点から考えていくことが大切であると書いた。
トレーニングをパフォーマンスアップにつなげるコツ
 
 
ジュニア世代においては「発達」という、成人とは別の観点も必要になる。
 
 
 
 
ジュニア世代に関わる指導者やトレーナーの方は、ぜひこの観点も忘れずにトレーニングを構成していってほしい。
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年07月21日

身体を固めてはいけないのか。柔らかいことが良いことなのだろうか。

文:萩潤也

スポーツ分野においても以前より科学的に分かってきたことが沢山ありつつ、まだ説明がつかないことも沢山あるかと思います。
 
以前は肉体を鍛え上げ、より力強さを高めていくトレーニングすることに着目したものが多かったかと思いますが、近年は動きの中での柔らかさやしなやかさやなども重要視されるようになりました。
 
ですが逆転したかのように、「身体を固めてしまっては動けない、身体が固まる瞬間などない」ともいわれ、そのような様式でのトレーニングを否定する意見も良く聞かれるようになったようにも感じます。
 
あなたはどう思いますか?
 
言葉の綾とも言えるかもしれませんが、「固めること」と「固まっていること」は同義ではありません。
 
「固めること」は数ある選択肢の1つを選んでいる状態であり、「固まっていること」は他の選択肢を取ることができない状態です。
 
その意味を踏まえれば「固めること」は能力の1つとしてやはり重要ですし、もちろん「固まらないこと」も身体の状態として重要です。
 
例えばフィジカルコンタクトがあるスポーツにおいて、相手のDFが身体をぶつけるようにプレッシャーを掛けてきた場面の選択肢として、
 
①相手を逆に押し返し勝つ
②相手に押され負けないようにバランスをキープ
③相手の押す力を利用して方向を変える
④相手の押す力を受け流す
⑤相手に押される瞬間にかわす
というような方法が取れると思いますが、どの選択肢も時と場合によって良くも悪くも成りえます。
 
相手の体格・自分の体格・スピードの乗り具合・敵味方の配置など、同じシチュエーションででも状況が変われば必要な能力や選択も変わり得ます。
 
基本的には1つの方法で万能なものなどありません。
なぜならスポーツの動き自体がそもそも1つの要素では成り立ってはいないし、状況によって変化することが当たり前だからです。
 
私はこの「自由に変化できる」ということを「水のような身体」と例えて表現することがあります。
 
水は器の形に合わせて臨機応変に形を変えることができます。
また、時には氷のように固く、水蒸気のように形が無くなることも。
ゆるやかに流れて柔らかく優しい性質もあれば、一度勢いがつけば人を飲み込んだり、鋼鉄を切るような荒々しい強さも。
 
ブルース・リーの名言「Be water:水になれ」でも有名ですね。
これも元は宮本武蔵の五輪の書「水の巻」で説かれていることから来ているとも言われています。
 
少し話が逸れましたが、
状況は変化するという前提のもとであれば、臨機応変に対応できる能力・多様な選択肢を持つ身体と心が重要なのではないでしょうか。
 
では普段取り組んでいる練習、トレーニング方法ではどうでしょう。
 
自分という個人の能力やチームという集団の能力、競技の特性等を踏まえて何を優先にしたり、どんな要素を取り入れてトレーニングしていくのか。
 
そのようなことを今一度整理するための考え方や、自重で行えるトレーニング方法などを紹介するオンラインワークアウトを行います。
 

【アスリートに必要な体幹~剛柔併せ持て~】

今回は部位としては「体幹」に焦点を当てていますが、根本的な考え方は身体全体としても拡げられるような内容となっています。

【トレーニング例】

〇飛びつきクレーン
https://www.instagram.com/p/B-Qfyn-BcAE/?igshid=1j4hywclnv5p
 
〇回転
https://www.instagram.com/p/B-jo3tKh4US/?igshid=7hf4qu3usoph
 
 
〇クロスオーバープランク
https://www.instagram.com/p/CAcpFuaB2pM/?igshid=yvn03aqt2h0s
 
 
 
 
講義メイン・トレーニングメインと2部制になっていますので、両方でも・どちらか一方だけでも可能です。ご興味ある方のご参加をお待ちしております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年07月08日

歌手の身体が楽器ならスポーツトレーナーの身体は・・・。

 

文:赤山僚輔

 
先日ラジオを聴いていると、出演されている著名な歌手の年齢に見合わない体型に驚いたパーソナリティの方がどのように身体作りをしているか問うていました。
 
その際にその歌手の方が、ごく自然に、そしてあたかも当然であるように
「歌手にとっては身体は楽器なので、良い声や歌を届ける為には身体はメンテナンスし続けていかなければいけないと思っています」
そのように答えられていました。
それをプロ意識が高いと捉えるか、そりゃそうだ、当然だろうと捉えるかは人それぞれ異なると思います。
今回お伝えしたいことはJARTAの原点の一つでもある、スポーツトレーナー自身の準備の重要性についてお伝えしたいと思います。
 

ピラミッドの最下端はスポーツトレーナー自身のコンディションであり準備


この図はJARTAベーシックセミナーの冒頭でお伝えする、JARTAコンセプトのひとつ『全てはパフォーマンスアップのために』という内容説明時に使用するものになります。
 
昨今、様々なトレーニング方法が出回り、ネット上から簡易的に情報収集ができるようになりました。
選手への身体環境作りで用いるコンディショニング方法も同様です。
少しでも良い手法はないかと模索し、ブラッシュアップし続けている方がほとんどだと思います。
そんな中でJARTAではそういったトレーニング方法やコンディショニング方法をお伝えしながらも、それを扱うスポーツトレーナー自身のトレーニングや身体環境作りについて最重要視してお伝えしております。
 
自分自身が身体に不調があると目の前のクライアントへの改善が難しいように、トレーニングの手本が自分自身が出来ていないと伝える際の説得力が乏しくなることは言うまでもありません。
 

スポーツトレーナーにとっての身体は最大のコンディショニングツール

繊細な評価を実施しようと思えば、スポーツトレーナー自身の身体の感度や身体感覚はどこまでも研ぎ澄ませていく必要性があります。
 
たとえば、左右の筋肉の硬さや関節の動きにくさ、重さやスムースさを見比べるとして。
あるスポーツトレーナーは問題ないと評価しても、違うスポーツトレーナーは左に〇〇の問題があるという評価結果になることもあります。
 
評価視点が仮に一緒であっても違いを判断できるかどうかは、そのスポーツトレーナーの身体のクオリティに関わってくるのです。
 
私も以前は先輩セラピストが指摘するポイントに対して、その違いや問題すら気付けない、見抜けない事が頻繁にありました。
 
また、治療技術をセミナーで聞いてきても何度やっても講師の先生方と同じような効果を出す事ができず、時には自分の状態を棚に上げてその技術が効果がないと表現することすらありました。
 
歌手が身体を楽器に見立てて磨き続けるように、スポーツトレーナー自身が自分の身体環境を換えのきかない唯一無二のコンディショニングツールであると顕在化した時、伸び代は無限大に広がっていきます。
 
私は以前よりも自分の体の硬さや重さ、重心のブレ具合が認識できるようになりました。
また力を使う際にも余計な力が入っている事に気づく頻度も多くなったように感じます。
そうなると対象者の身体をみていても、硬さの変化や左右さ、力みに対して以前よりも繊細に気づく事ができるようになってきました。
 
誰しもが基準というのは自分であること圧倒的に多いです。
これは無意識的にも意識的にもそうなってしまいます。
 
評価基準である自分
治療の効果判定を知るための治療ツールである自分
もちろんこれらはつねに一定であるという方向性も大事です。
 
しかし皆様が常に新しい携帯に買い換えるように、自らが使うコンディショニングツールである自分の身体に対して数年前と同じ状態では新たなアプリであるトレーニングメソッドや治療手段を手に入れても自由自在に使えないどころかそのアプリの機能を使えていないかもしれないのです。
 
JARTAで繰り返しお伝えしてきている事であり、自分の中で当たり前になっていた事象でしたが
歌手の例を聞いた事で、今一度この部分の向き合い方について再考する貴重な機会となりました。
 
あなたは1年前の自分よりもコンディショニングツールがブラッシュアップできていると自信を持って言えますか?
私は言えます。
そしてそれがこれからもブラッシュアップできるように自分に向き合い続けたいと思います。
 
このようなコンセプトをベースにお届けするJARTAのオフラインコースも徐々に再開しております。
オンラインセミナーと合わせて、ピラミッドの最下端であるスポーツトレーナー自身のコンディションを整え、最良のツールとなるように共にブラッシュアップしていきましょう。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年07月05日

1人より2人の方が成長できる3つの理由

文:平山鷹也

 
インターネットが普及して無数のトレーニングが簡単に手に入るようになっているが、見よう見まねでトレーニングを行うことは思った以上に難しい。
 
そこでチーム練習以外の時間を使ってパーソナルトレーニングを行う選手たちも増えてきている。
 
しかし自分がお金と時間を使って得た情報を教えることに抵抗があり、チームメイトに共有できていない選手も少なくない。
 
 
そこで今回はそのような選手たちに向けて、トレーニングを最速で身につけ、自分のプレーに結びつけるための方法を紹介する。
 
結論から言うと、「自分が学んだことを出し惜しみせずにチームメイトに共有する」ことである。
 
 
1人でトレーニングをすることで失っているチャンスと弊害について3つの観点から考えてみる。
 
 
1つ目は、アウトプットすることによって学びが深まるという視点から。
 
ラーニングピラミッドという言葉をご存じだろうか。
これは、学んだことが実際にどれくらい自分のものになっているかを学習形式によって分類したものである。

 
最も低いものは「講義を受ける」で5%、そして最も高いものは「他の人に教える」で90%である。
 
この理由はいくつか考えられるが、一つは他者に教えるためには自分だけの理解では不十分で、もう一段階理解を深める必要があるからだろう。
 
そして他者へ教えることは最大のアウトプットであり、自分の記憶にも定着しやすい。
 
例えばJARTAトレーニングの1つでもある、コモドドラゴン。
https://www.instagram.com/p/B9jOJgnhSkJ/?igshid=15ttmx4u7hnld&fbclid=IwAR3wq80m1X4nqMQUFyZYSEnnxfCQJgHtggq_peZgfIWJqsFYlqwgbClZNeA
 
チームへのトレーニングとして用いることもあるが、選手によってすぐに動きを理解できる選手と、なかなかうまくできない選手が必ずいる。
 
そんなときに選手同士でここはこんな感じでやると上手くいくよ、
こんな意識だと上手くいくよ、
といった声かけが自然と出るチームはチーム全体の上達速度も速い。
 
そういった空気を作ることもトレーナーや指導者の役割ではあるが、選手同士でもぜひ意識してみてほしい。
 
 
 
 
2つ目は、教え合うということのメリットについて。
 
教え合うことで選手間でのコミュニケーションが生まれる。
 
あなたも、ポジションやチーム内での立ち位置、友達としての仲の良さなどによって、よく話す相手とあまり話さない相手がいるのではないだろうか。
 
チームスポーツであれば、選手間のコミュニケーションも勝利に関わる大切な要素である。
 
学年やポジションなど関係なくコミュニケーションをとれるようなチームは強い。
 
それがトレーニング、つまり自分たちが上手くなることにフォーカスした会話ならなおさらだ。
 
さらに別の視点では、自分以外の考え方に触れられる機会が増えるとも言える。
 
例えば、自分がコモドドラゴンをするときは背骨の動きを意識すると上手くいったが、他の選手は手をできるだけ遠くに出すようにしたら上手くいったと考えているかもしれない。
 
それらに正解はなく、1つのトレーニングに対して様々な見方ができる方が自分のパフォーマンスとの関係性を考えやすくなる。
 
 
 
そして最後に、知識もプレーも出し惜しみ癖をつけないという話をしたい。
 
これは科学的な話ではなく、私の体感の話になる。
 
例えば自分が知っている知識を誰かに話すとき、いつも少しだけ出し惜しみをしている選手は、いざというときも自分の全力のプレーを出し切れないことがあるように感じる。
 
逆にいつでも自分の知識も技術も出し惜しみなく伝えられる選手は、いざというときでも自分の最高のプレーを出し切っているように思う。
 
いつも自分の知っている範囲や、できるプレーの限界まで出し切ることができる選手は自分の限界に挑戦していることになる。
 
それはつまり、常に自分がどこまで知っているのか、できるのか、
どこから先がわからないのか、できないのかが明確になりやすいということだ。
 
だからこそ、今向き合うべき課題もわかりやすく、どんどん成長していける。
 
 
 
様々な観点から「自分が学んだことをチームメイトに共有する」ということのメリットについて考えてみた。
 
自分が時間やお金をかけて学んだことをチームメイトに共有することに抵抗がある選手もいるかもしれない。
 
しかし実は、教えることで得られるメリットは非常に大きい。
 
自分のために、そしてチームの勝利のためにぜひ切磋琢磨していってほしい。
 
 
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 

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2020年06月24日

最高の結果の定義をあなたは持っていますか?

 

文:赤山僚輔

 
『自分の中の一番か、大会での一番か。』
これは記録を目指す競技者ではなくても、一度は自分に問うたり問われたりしたことがあるのではないでしょうか?
 
あなたは自分史上最高のパフォーマンスを発揮しての銀メダルと自己ベストではないパフォーマンスでの金メダルどちらが嬉しいですか?
 
これは球技など対戦系の競技であればイメージしにくいので、今回は私がサポートする空手道競技の”形”を例にとって話を進めていきたいと思います。
(陸上や水泳、体操など記録や採点競技に関わる方や選手は重ね合わせながら読み進めてください)
 
現在空手道競技の形においては採点性が用いられています。
数人で競技を行い、点数の多い選手が勝ちとなります。
 
繰り返し練習を積み重ねてきた選手たちは自分の演技に対して、過去の自分のパフォーマンスと比較し出来栄えを自己評価します。
またその採点によって過去最高の出来であったかを客観的な材料とします。
 
例えばインターハイの決勝戦。
今まで出したことがない高得点と過去最大のパフォーマンスを発揮して銀メダルに終わった時と
点数はあまり伸びず、パフォーマンス的にも満足がいかない内容でも金メダルに終わった時
あなたならどちらの結果を求めますか?
 
どちらの選手で居てほしいと願いますか?
 
この話を知った新聞記事ではかつてのオリンピック金メダリストは自己ベストでの銀が良いと答えたそうです。
 
しかしインタビュアーの選手はオリンピックで日本新の銀メダルで終わり、金メダルが欲しかった、悔しかったとおっしゃっていました。
その記事を読んで、自分との戦いに勝つ、自己ベストの更新や常にライバルは自分自身であるとそれこそ自分に対して問いかけ続けていた赤山にとっては考えさせられるエピソードになりました。
 
いくら自分自身との戦いに勝利し過去最高の結果を残したとしても、大会や試合の結果など相対的な順位において劣った時、”悔しい”という感情がやはり当事者としてはでてくるのだろう。
 
だとすれば自分との戦いに勝つというある意味綺麗事だけではなく、勝負にこだわり、一番にこだわり、金メダルにこだわるような時期やフェーズがあっても良いのではないだろうか。
 
そのように再考のするきっかけになりました。
 
話を空手道に戻します。
 
もしサポート選手が不本意なパフォーマンスだったとしても金メダルを取って帰ってきた時、その場に自分が居たとしたらどのように声かけをするだろうか。(本人は不満げであるという前提で)
 

(昨年の国体では日本一になりましたが全員が満足のいくパフォーマンスであったわけではありませんでした。)
 
そのように考え準備をしてみました。
 
『この大会の一番は間違いなく〇〇選手なんだから、そこは自信を持って前を向こう。そうじゃないと敗れた選手はもっと悔しい思いをしているはずだよ。過去最高の自分を更新する機会はまた次の機会にチャレンジすればいいんじゃない。』
 
こんな風に言うのだろうかと思案しています。
 
これはそういった場面でこういう風に言うべきだ、言うのが正解だという事を伝えたいわけではありません。
 
時にスポーツトレーナーはパフォーマンスアップだけでなく試合後のフォローや心身のサポートに対しても求めらえることがあります。
 
そういった時に、選手がどういった心情になる可能性があるかと言う事をいかに想定し、準備をしておくのか。
 
これこそがこのような視点を共有する意義であると感じています。
 
選手がスポーツトレーナー自身が想定していないリアクションをしているときには、どのように声かけして良いか分からず選手やチームを余計に困らせてしまうかもしれません。
 
学生スポーツであればそういった状況や姿勢を後輩たちはみていますし、最後の大会でなければそういった時のコミュニケーションは最初の次へのスタートでもあります。
 
私自身は勝っても負けても、試合後に選手に対してどのような関わり、声かけをするかについて常に熟慮しています。
 
それは試合後に選手と同じように感情的になってしまって、何も言えず、何も伝えられず、そのまま引退して言葉を交わすことがなくなった選手を何人も経験したからこそ避けては通れないスポーツトレーナーにとっての課題である認識しているからなのです。
 
あなたは仮に自己ベストで銀メダルだった選手が目の前にきた時に、どのように声かけをしますか?
 
そんなことを考えるよりも解剖の勉強の方が好きだと言う方もいるかもしれません。
 
しかしスポーツ現場はこのように正解のない、問いが無限に転がっています。
だからこそ、その状況を想定して最善の準備をする事こそに意義があると痛感しています。
 
 
多くのスポーツトレーナーとこんな”たられば”の話をゆるーくできる機会があればよいのになと感じる今日この頃です。
 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
シビアな勝負が少ないこの夏、しっかりと来たるべく未来に向けてイメージだけでも準備をしておきましょう。

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現在募集中のオンラインセミナーは以下よりご参照ください。

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2020年06月17日

夕方にパフォーマンスが下がるスポーツトレーナーの皆様へ

文:赤山僚輔

あなたは1日に何人のクライアントを対応していますか?
 
そのクライアントへの対応のクオリティや疲労感は午前中と夕方以降で差はありますか?
 
差がなく、夕方以降にパフォーマンスがどんどんと向上していくようなセラピスト・スポーツトレーナーの方は今回の記事はスキップして良いかと思います。
今回のタイトルに対して少しでも引っかかる部分がある方は是非とも最後までお読みください。
 
夕方以降のパフォーマンスを低下させない具体的な手法を今回は3つお伝えいたします。
 

なぜ夕方以降にパフォーマンスが低下するのか

多くのクライアントへの対応が必要な場合、人数が多くなるにつれサポートしているスポーツトレーナー自身のパフォーマンスが低下する要因にはどのような事があるのでしょうか?
・体力が持たない
・集中力が持たない
・足腰が痛くなる
・指や腕がだるくなる
・お腹が減って力が入らない
・うまくいかなかったクライアントの事が頭から離れず悶々としたまま次のクライアントに対応してしまっている
 
など上記以外にも様々な要因があると思います。
体力仕事である側面はもちろんあり、仕方がない。と片付けてしまう方も多いでしょう。
食事は昼にしっかりと取るとして、では疲労によりパフォーマンスが低下してしまう上記の要因は本当に全てが仕方がない問題なのでしょうか?
 
かつて医療機関に勤務している時の私自身もそのような状態でした。
現場や大会帯同でも深夜が近づくにつれてコンディショニングのクオリティが明らかに落ちて本当に選手に申し訳ないなと思っていた時期もありました。
そしてそんな自分が歯がゆく、どうにか解決したいと思っていました。
 
クリニックでは夜になってからトレーニングの手本を見せる必要性がある学生アスリートが多く、夕方以降にパフォーマンスが低下してしまうのでは本末転倒だと感じていたからです。
 
そしてこの夕方以降にパフォーマンスが低下する要因としてその時の私自身が抱えていた解決可能な課題は以下の通りです。
・腕や指の使い方が悪くそもそも指を痛めやすいような施術を行なっていた
・姿勢が悪く立ちっぱなしでも疲労が蓄積されるような状態であった
・呼吸が浅く、自律神経の不調も抱えている状態で重度な症状を抱えるクライアントが重なるほどに自分の疲労度が増していくような状態でした。
 
自分の体もうまく支えられていない、自分の心身も調整できていない、硬さを取るためのマッサージが自分の体の硬さを生むようにしていたのでは夕方以降のパフォーマンスが低下して当然でした。
 

施術の際に対象者だけではなく自分自身の状態に意識は向いているか

例えば、再現性高く施術を行おうとした際に限りなく少ない力(生み出そうとする力)で指圧を行えた方が結果的に相手に伝わる力(生み出される)が同じなのであれば身体への負担や疲労は少なくなります。
身体操作のトレーニングに注目が集まりがちなJARTAのセミナーですが、コースの中ではその身体操作の考え方や操作方法を駆使してコンディショニング時のポジショニングについてお伝えしております。
 
実際に余計な力みが取れる事で触診時の感度があがることや、肩周りの緊張が軽減するだけで呼吸がしやすい状態でセッションを遂行することが可能となります。
 
自分の状態について認識するような”内的認識力”の重要性についてトレーニング指導時に繰り返しお伝えしていますが、これはそのままセッション時のスポーツトレーナー自身の状態を認識する為にも応用できるのです。
 
自分がどのような状態で行なっているかが不明瞭なままでは力みや使い方の偏りから必要以上の疲労が蓄積されもおかしくありません。
 

 

セッション中に意識すると良い3つのポイント

①常に自身の呼吸に意識を向けて、少しで呼吸がしやすい姿勢を意識する
余計な力みや無理な姿勢での施術を行なっていると無意識的に息が止まっていることもあります。
息が止まった状態では循環が悪くなっているのは言うまでもありません。
そしてその力みは手を触れているクライアントへも伝わるのです。
同じ施術をしているとしても少しでも呼吸がしやすい姿勢や脱力を意識してみましょう。
 
②力を生み出す力点を変える
指で押すのと肩甲骨を使って押すのでは随分と力の伝わり方が違います。
そういった意味でもJARTAのコース最初に肩甲骨の操作性が向上できるような内容をお届けしています。
また押したり引いたるする際に足がしっかりと床についている状態とそうじゃない状態とでは力の伝え方が随分と異なります。
足を組んだままでマッサージを行ってしまう方がいたら、両足をつけて施術を行ってみてください。
力の伝え方の違いに気づかれるはずです。
足を組んでその場は楽に一時的に感じていても不安定な状態でのマッサージでは積み重なっていく身体への過労は大きくなるばかりです。
 
③セッションごとに深呼吸をしてリラックス、リセットをして次の備える
特に症状の強いクライアントやどうしても力を必要とするマッサージが重なった場合、そのセッションが終わっても無意識的な力みを残したままで次のクライアントの対応に移っている事があるのではないでしょうか?
集中して問診をしたり指導をすればするほどに自分の状態が認識しにくくなります。
一息でもよいのでリセットをする習慣、そして改めてリラックスをする習慣を取り入れるだけで疲労の蓄積は和らげることができます。
もちろん次の患者様の目の前で大きなため息をつかないように留意しましょう。
 

ポジショニングも関係性作りもセッションや治療の一環

どうしても実際に手を施す手技方法や評価方法に意識が向きがちですが、人が人に関わる限り直接手が触れなくても影響を及ぼす事項は無限にあります。
そして前述したようにセラピスト・スポーツトレーナー自身の状態(ポジショニング)も大きく影響を及ぼし、広義では治療の一部であるとJARTAでは繰り返しお伝えしています。
“インターロックポジション”というJARTAオリジナルの概念はこのようなポジショニング作りを通して効率的にコンディショニングを行うための手法になっております。
次回、来週開催予定のJARTAオンライン講義ではこのインターロックポジションとセラピスト・スポーツトレーナー自身の準備ということで内容を予定しております。
 
夕方になってパフォーマンスが低下することに困っている方は是非とも下記より詳細をご確認ください。
 

JARTAコンセプトを応用したコンディショニングの基礎

インターロックポジションと調和(関係性作りの重要性)
講師:赤山僚輔
料金
ライブ参加+録画視聴 7,000円(税別)
録画視聴のみ     6,500円(税別)
□ライブ配信
2020年6月23日(火)
21:00〜22:30(準備20:45〜)
□録画視聴期間
2020年6月25日〜27日

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2020年06月10日

筋力もある、柔軟性もある、でも試合で活かされない

文:伊東尚孝

 
 
私が実際に現場で聞いたことがある言葉です。
 
ベンチプレスの重量が増加し、開脚の幅が広がり、明らかにトレーニングでのパフォーマンスは上がっているのにもかかわらず、試合ではうまくいかないという悩みを抱えていました。
筋トレやストレッチなどによって筋力や柔軟性の水準を高めることができ、パフォーマンスアップが期待されるのは確かです。
しかしこの場合、その選手の課題が「筋力・柔軟性」であることに限ります。
 
上記の選手のように、筋力や柔軟性をトレーニングしているにもかかわらず試合でうまくいかないのであれば、その原因は「スキル(技術)」が足りないからだ、と感じる選手や指導者は多いと思います。
ではその選手が習得すべき「スキル」とは何なのか。
トレーナーとして提供すべきトレーニングとは何なのか。
 
 
『試合で活かされない』
 
この訴えにパフォーマンスアップのヒントが隠されていると考えます。
 
「試合で」ということは、普段の練習ではある程度のパフォーマンスを発揮できているのにもかかわらず、試合になると調子が出ないことが推測されます。
 
 
少し話は逸れますが、スキルの下部構造には身体操作があります。
例えば、バッティングのスキル(技術)を簡潔に言うと、バットを効率よくスイングし的確にボールに当てるための身体操作が必要となるということです。
しかし、対戦する投手や投球によってスイングの軌道や体勢を瞬時に対応させなければ打てないことは言うまでもありません。
そこにはバッティングという「動き」だけではない視覚やバランスなど様々な要素が総合された結果、試合で打つことができるバッティングが成立する構造となっています。
つまりスキルには、「動き」だけではない様々な要素が総合しているといえます。
 

 
先ほどの選手に話を戻すと、
その選手に必要なのは、試合中の「動き」を阻害している「その他の要素」である可能性があり、それらを考慮してトレーニングを構成しなければなりません。
 
 
 

あらゆるトレーニングに加えるべき認識力

 
では、スキルの一要素である「動き」ではない「その他の要素」とは、具体的にどのようなものがあるでしょうか。
 
例えば、対人競技では相手との接触によってバランスを崩すこともあるが、次のプレーへ素早く移るためにも姿勢を修正(リロード)する必要があります。その姿勢の変化を認識するためには、筋肉や腱にあるセンサー(筋紡錘・ゴルジ腱器官)などの固有感覚が働く必要があります。
また、相手や味方などの位置を把握する周辺視野も必要となり、視覚から得られる情報処理の速度もパフォーマンスに影響されます。
さらに、対戦相手や大会の規模などはメンタルにも影響します。緊張によって呼吸が浅くなり動きが固くなることでパフォーマンスが下がる可能性があります。
 
まとめると
・バランスを保つ、もしくは素早く修正する(固有感覚の活性化)
・相手や味方の位置を把握する(周辺視野)
・緊張による身体の変化(呼吸、精神状態)
(ほんの一例ですので、他にも様々な要素が存在します。)
 
これらの要素が、試合中の「動き」を阻害する可能性があるものとなります。
すなわち、これらの要素を加えたトレーニングの構成が必要となります。
 
そのトレーニングの一例としては、
・片足立ち、タンデム立ちなどの不安定な状況で、脊柱の分離運動を促す要素を加えたトレーニングを行う。
・頭部が傾くと平衡感覚を司る前庭系に影響することから、目線を水平に保ちながら(対象物から目線をそらさないように)バランスまたは筋力トレーニングを行う。
・筋トレやストレッチの場面でも周辺視野を意識する。(中心視野になる傾向がある。)
・特定の色を識別しつつ、周りの選手の動きも把握しながらのスキルトレーニング。
・眼球の動きにくい(動かすと呼吸が浅くなる)方向を認識する。
 
挙げるとキリがありませんが、重要なのは多くの要素を一度に実現させることができるかということです。
 
このことを、アブレスト能力と呼称しています。
 
上記で挙げた例のように、自身の変化に対する認識力を内的認識力といい、それ以外の天候や気温、グラウンドコンディション、道具、相手や味方などを認識することを外的認識力といいます。
冒頭の選手は、要求される「動き」と試合中の様々な「認識力」を両立することができず、パフォーマンスを発揮することができなかった可能性があります。
 
スキルという「動き」だけに捉われず、このような「認識力」を同時に実現させる、すなわちアブレスト能力を高めたトレーニングをすることで、パフォーマンスアップにつながります。
(今回はフィジカルについて触れませんが、パワーやスピードも同時並列的に実現させることも重要です。)
 
 
 

アブレスト能力の落とし穴

 
以上のことから、
◯ スキルとは「動き」だけではなく、「認識力」や「フィジカル」と相互関係にある。
◯ パフォーマンスアップの手段の一つに、アブレスト能力の向上があり、一度に多くの要素を実現させることを指す。
◯ プレー中には様々な「内・外認識力」が必要となり、アブレスト能力の向上には欠かせない要素となる。
 
このようにまとめることができます。
アブレスト能力を向上さるためには、「多くの要素を認識させたトレーニングをすればいいのか」と解釈される方もいるかもしれません。
 
しかし、ここで明確にしておきたいのが、
多くの要素を一度に「実現」させることと、
多くの要素を一度に「認識」することには大きな違いがあるということです。
 
 
 
これまで多くの研究で、自分の身体に注意を向けながら行うパフォーマンスは、外部に注意を向けたパフォーマンスに比べて低下する傾向があることが報告されています。
つまり、アブレスト能力を向上させようと身体の傾き(バランス)や筋出力などの「内的認識力」に注意を向けながらプレーしてしまうと、逆にパフォーマスを下げる可能性があるということになります。
 
では、多くの要素を一度に「実現」するためにはどうすべきか。
それは、身体操作を「自動化」させるためのトレーニングが必要となります。
 
スキルの下部構造には身体操作が存在することを冒頭で解説しましたが、身体操作すなわち「動き」を自動化することができれば、バランスや筋出力などの内的認識力に注意を向ける頻度を抑えながらも、要求される動きを「実現」することが可能となります。
 
身体操作を自動化させるためには、全身の連動した運動や反射を利用した動きの習得、日々の生活レベルから繰り返して行うルーティンなどをトレーニングに取り入れることが必要です。
 
つまり、JARTAトレーニング4原則が相互関係にあることを示し、パフォーマンスアップのための重要なプロセスとなります。
今回紹介したアブレスト能力は、「同時実行の原則」に当てはまり、決してこれだけを習得することが全てではないことを改めて認知していただけると幸いです。
 
 
 

まとめ

 
パフォーマンスを構成している要素は多岐にわたり、それぞれが相互関係にあります。
その選手に必要な要素を導き出し、より良い方向性でトレーニングを選択することがパフォーマンスアップのためには必要です。
 
詳しいトレーニグ内容や理論を取りれたい方は、JARTAトレーナーを利用してみてはいかがでしょうか。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年06月03日

ストレッチをパフォーマンスアップにつなげるコツ

文:平山鷹也

 
ストレッチは怪我予防のためにするものだ。
身体の柔らかさとパフォーマンスは関係ない。
柔らかくなってきたけど、プレーが変わっているかわからない。
 
 
ストレッチが重要なのはわかっているが、ストレッチの効果をプレーの中で実感できていない選手も多い。
 
 
そこで今回は、ストレッチをパフォーマンスアップにつなげていくためのポイントについて解説する。
 
 
キーワードは、「全身のつながりを感じる」こと。
 
 
つながり、と言うと少し曖昧なので具体例をあげてみる。
 
 
わかりやすいのは、筋膜によるつながりだ。
 
 
Thomas W. Myersの著書として有名な「アナトミー・トレイン」によると、
“筋は、それぞれがどのように機能しているとしても、筋膜網内で機能的に統合された全身の連続体に影響を及ぼす”と記載されており、1つ1つの筋肉はそのつながりによって全身に影響を及ぼすことを示唆している。
 
 
だとすれば、1つの筋肉を単独で伸ばしていく一般的なストレッチだけでは、パフォーマンスアップのためにはまだ足りない。
 
 
全身のつながりを考えて行うストレッチの1つに複合ストレッチがあり、一度に複数の筋肉を対象にストレッチする。
 
例えば、JARTAトレーニングの1つでもある「コモド胸セパレート」をストレッチとして行った場合。

 
 
今回はあえて筋膜という観点のみに注目してみると、このストレッチはスパイラルラインの複合ストレッチとも言える。
 
 
スパイラルラインは、スポーツ動作で言えばサッカーのゴールキックやアメフトのパントキックのように大きなモーションで蹴る動作、投球やテニスのスマッシュのように一度身体を開いてから腕を振りぬくような動作で使われている。
 
 
この筋膜ラインは、
(中略)~腸脛靭帯~大腿筋膜張筋~内腹斜筋~反対側外腹斜筋~反対側前鋸筋~(中略)というつながりがある。
 
 
これを上記の画像と見比べてみると、
右股関節伸展・外旋、脊柱左回旋、左肩甲骨内転となり、上記の筋をすべて伸張している肢位となる。
 
 
このストレッチがうまくできない、もしくは一か所に負荷が集中している場合にはスパイラルラインのどこかに問題があると考えられる。
 
 
その原因は柔軟性だけでなくその運動をコントロールするような筋肉や神経系の機能など多岐にわたる。
 
 
このように全身のつながりを考慮した方法でストレッチを行うことで、実際のプレーとのつながりが見えやすくなる。
 
 
そしてそこから苦手なプレーを想像することもできる。
 
 
例えば、上で紹介したストレッチで肋骨周囲の硬さを強く感じる場合。
 
これは前鋸筋や腹斜筋の硬さを示唆しており、ストレッチ方向への回旋が必要な動作や強い収縮を求められる動作が苦手な可能性がある。
 
ゴールキックの予備動作(蹴る直前の胸の開き)が小さくなることもあれば、野球肩やテニス肘などにも関係する。
 
 
筋肉が硬いときは、伸ばせないだけでなく上手く力を入れられないことが多い。
 
 
このように考えていくと、ストレッチがどのようにパフォーマンスにつながっていくか具体的に整理できる。
 
 
そこから個別のストレッチを行ったり、トレーニングの構成を考えていくことでパフォーマンスアップへの近道となる。
 
 
今回は筋膜という観点にしぼってストレッチを考えてみたが、実際は各関節の関係性、運動連鎖、認識力などもっと多くの観点から全身のつながりを考える必要がある。
 
 
ストレッチを指導する立場にある方は、ぜひより多くの「全身のつながり」を意識して指導してみてほしい。
 
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 

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2020年05月27日

皮膚にもセルフケアを

文:岡元祐樹

 
 
今回は『皮膚』について書いていこうと思います。
 
スポーツにおいて、動きを構成する要素として重要視されるのが関節や筋肉です。
 
しかし人間の身体を覆っている皮膚に問題があると、関節の動きが制限されることが報告されています。そしてその分、より大きな筋力を発揮しなければならないことも想定できます。
 
つまり動きが悪くなるということです。
 
動きのパフォーマンスを向上させたい。例えば、もっとパワーを発揮したい、もっと長時間動けるようになりたいといった願望があるのであれば、皮膚の状態も考慮する必要があります。そして可能な範囲でセルフケアをする習慣を身につけてほしいです。
 
 

実は運動に影響を与える皮膚

 
皮膚の役割というのは多種多様です。主な役割として一般的には次のようなものが挙げられます。
 
・水分の喪失や透過を防ぐ
 
・体温を調節する
 
・微生物や物理化学的な刺激から生体を守る
 
どれも生命を維持する上で重要な役割であると言えます。
 
これに加えて、運動への影響もわかってきています。関節の動きに応じて、皮膚もわずかに動いているのです。
 
逆に皮膚の動きが少ないと、関節が目一杯曲げ伸ばしできなかったり、動かすために余計に筋力を発揮しなくてはならなくなります。
 
試しに肘を伸ばしたままで肘周囲の皮膚をしっかり掴んで引っ張った状態を作ってみて下さい。その状態で肘を曲げようとすると、曲げていくにしたがって曲がりにくくなってきます。
 

 
各関節がどのように動くと皮膚がどう動くのか?については細かい話になってしまうのでここでは説明できませんが、皮膚の動きが乏しいと関節運動にマイナスに作用する可能性があることを頭に入れておいて下さい。
 
皮膚の動きと言われると一般の方はあまりピンとこないかもしれません。
 
足の裏や手のひらなどの特定の箇所を除き、皮膚は薄くつまんで引っ張ることができます。
 

 
これは皮膚が筋肉(浅筋膜)との間で滑るような動きが生じるためです。皮膚のゆとりとも言えます。
 
この動き(ゆとり)がないと関節はかなり動かしにくくなります。きついジーパンを履いていると運動しにくいことと同じです。
 
リハビリテーションの場面では、手術後の創部周囲の皮膚の固さや、火傷による皮膚の損傷により関節が動かしにくくなる症例が多く存在します。
 
 
手術痕や何かの傷痕のように目に見えやすいものであれば対策は比較的立てやすいのですが、発見しにくい皮膚の障害もあります。それは長時間の皮膚への圧迫による機能障害です。
 
この長時間の圧迫が極端に重症化すると褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれと呼ばれる状態になります。
 
長時間座っているなど同一の姿勢で特定の皮膚に圧迫が生じてしまう場合、その部位が固くなる要因ができてしまうことは褥瘡の発生メカニズムからも言えると思います。
 
皮膚が固くなる原因は圧迫だけではありませんが、知らず知らずのうちに皮膚というのは固くなる可能性があるということです。
 
 

チェックとケアのやり方

 
精密さには欠けるかもしれませんが、ここで選手自身が行える皮膚のチェック、ケアの方法をお伝えします。
 
ここでいう『チェック』とは、自身の身体において皮膚が比較的固くなっている箇所を調べることです。
 
皮膚を薄くつまめるかどうか?シンプルにこれでいいと思います。
 
他の箇所にくらべてつまみにくい、やたら痛いという部分は何かしらの原因で皮膚が固くなっている可能性があります。
 
 
次に『ケア』ですが、ここでいうケアは皮膚の動きを向上させるための方法のことです。
 
チェックにおいて固さがあると思われる箇所を見つけたら、そこをつまみながら
 
①皮膚を上下左右などあらゆる方向に動かす
 
②近くの関節を動かす(例えば膝周囲の皮膚をつまみながら膝を曲げたり伸ばしたり)
 
というように動かしてみて下さい。
 
十数秒で関節が動かしやすくなる場合もあります。
 
個々の身体によって固くなる部位は異なりますが、代表的な部位を挙げておきます。
 
・内くるぶしの前側の皮膚
この部位は足関節捻挫の経験がある選手は特に固くなりやすいのでチェックが必要です。
 
・お尻の側面の皮膚
横向きで寝ることが多い選手はここが圧迫されて固くなりやすいのでチェックが必要です。
 
 
この他にも手術痕や傷跡があるのであればそこを中心に動きが固くなっていないかチェックしてみましょう。
 
固くなっている場所は固くなる何かしらの原因が存在します。その原因が解消不可能なものである場合、この皮膚のチェックやケアは常日頃行っておくことをオススメします。
 
 

あらゆる運動の基礎として

 
今回は運動に関係する『皮膚』につてお伝えしてきました。
 
前回の筆者の記事において、皮膚の滑走性について記載しました。
 
短くまとめると、座り心地の良い椅子に長く座っていると、圧迫され続けるお尻や太ももの後面の皮膚が固くなってしまう可能性があるという記載です。
 
前回の記事 生活の変化は身体の変化へ
 
自宅であればソファに座っている時間がそれにあたるでしょうか?
 
あらゆる前提条件の違いはありますが、褥瘡の発生条件も考慮すると、座っている時間が増えることで皮膚への圧迫時間が増えます。その結果、皮膚の固さに変化が出てくる可能性はあります。
 
皮膚は直接触れることができ、感覚や動きに大きな影響を与える臓器です。
 
そして大雑把なレベルの話ですが、その滑走性を向上するにあたっては、そこまで難しいスキルは必要ありません。
 
自宅でトレーニングをする選手が多いと思われる現状です。
 
自宅でふとソファに座った時、この記事のことを思い出して皮膚のチェックを行える選手が増えれば幸いです。そのことがその他のトレーニング効率を最大化することに繋がります。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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参考文献
・福井 勉:皮膚運動学. 三輪書店,2010
・清水 宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店,2018



2020年05月20日

入念なスモールステップで負荷設定を

文:赤山僚輔

 
緊急事態宣言期間中、皆様はどのように過ごされていましたか?
 
毎日のように部活動をしていた生活、チームでの練習やトレーニングが当たり前だった生活から
大きな変革を余儀なくされたこの期間が我々に教えてくれたことは余りにも大きく。
そしてそれが今後我々にどのような影響をもたらすのか、まだまだ想定しきれない部分があります。
 
そんな中、徐々に活動再開されているクラブもあり本日は今一度、運動再開に向けての注意事項や考え方について過去記事や各種団体が発表してる指標なども参考にしながら共有させてもらえればと思います。
 
 

この時期に大事にしたい”振り返る”という行為

ただ過ぎる時間の中で、今自分のいる位置や状況について整理する為にも “振り返る”という行為は非常に有効です。
4年に一度など、大きな大会に向けて強化を継続していくと自分を見失いそうになることがあります。
そんな時に自分を見失わずに、自分を知る為の手法の一つとして”振り返る”という行為の重要性については様々な指導者やメンタルコーチから私自身も教わり実践している部分になります。
今回の休校やスポーツ活動休止が決まった頃に公開している記事について是非ともご参考にしてみてください。

今こそ立ち止まり振り返ってみよう


 
 

すぐにいつも通りの練習をしたいけど・・・。

指導者もおそらく選手も、ここまでの長期間競技から離れた経験がほとんどないので。
競技をする楽しさも再認識され、楽しく長く、そしていつも通りの練習を1日でもはやくしたいと願っているはずです。
強度設定については各団体の指標を後述しますが、トレーニングの強度設定の前に考えていただきたい内容が過去記事の中で掲載しております。
是非ともこの機会にチームのコミュニケーションを深め、状況確認の精度を深める意味でも参考にしていただきたいと考えております。
 

練習再開その前に


 

早く成長を望むのであれば練習時間以外の使い方を再考する

おそらく、多くのクラブやスポーツ団体において以前のような練習時間の確保が難しい状況が続くと思います。
ただでさえ、日本においては欧米と比較し部活動やクラブにおいて練習時間が長い傾向があると言われています。(各国や競技によって差異が大きいので具体的な言及は今回は避けさせていただきます。)
指導者にとっては物足りなさを感じ、選手も同様に感じるかもしれません。
実際にサポートしている選手がチーム練習再開後、オンライン指導時に「もっと練習したかった・・・」と物足りなさを訴えている場面もありました。
そんな時には以下記事でも言及されていますが、ライバルとの差をつけるという意味でも練習外の時間を是非とも有効に活用してもらいたいと思います。
具体的な手法は記事中にもあるので是非とも参考にしてみてください。

ライバルの7倍早く成長するために


 

熱中症対策も忘れずに

休校開始が始まった2月末、3月初旬と比べると季節は全くと言っていいほど変わっています。
順化する期間を設けずにこの時期の気候へと身体が慣れるには運動強度以上の負担や想定外の事態も想像できます。
水分摂取の目安などこちらも過去記事にて筋痙攣をテーマに掲載されておりますので是非ともご参考にしてみてください。

脚が攣る(筋痙攣)ことがある投手へ


 
 
 

最後に

あくまでも参考レベルですが、各種団体が競技再開時の強度設定やスモールステップの仕方について指標を公開しています。
何も指標を設けずに実施するよりは少しでも参考になればと思い共有させていただきます。
あくまでも参考情報として取り扱っていただくことと、感染対策に対する指導や推奨事項ではないことはご留意していただければと思います。
 
今後の活動に向けた段階的準備の考え方(ハイパフォーマンススポーツセンター:HPSC)
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/dankaitekijunbi.pdf
国内スポーツの競技力向上サポート機関「HPSC」のガイドラインになります。
主にトレーニング施設での段階的なトレーニング再開に特化した情報が掲載されております。
段階的な準備の考えたの一つとしてご参考にしてください。
 
トレーニング活動再開に向けた留意点(日本サッカー協会:JFA)
http://www.jfa.jp/mie/news/00024907/
上記サイト内の第一報(修正版)では年代別のフェーズ訳や強度設定の目安が公開されております。
他競技にいかせる内容も十分にあり再開スケジュールが具体的に提示されておりますので参考にしていただければ幸いです。
 
今後各種団体からの指標も随時公開される可能性もありますが、現時点でのJARTA過去記事の引用とHPSCとJFAの考え方、留意点について今回は共有させていただきました。
 
待ちに待った競技再開後に防げる怪我や不用意な事故が一件でも減るように願っております。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 

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2020年05月10日

”植わったもの”と”動くもの”


文:赤山僚輔
 
皆様は自分が動物っぽいなーと感じる瞬間はありますか?
例えば本能のままに異性を追いかけてしまったり。
 
あるいは自分が植物っぽいなーと感じる瞬間はありますか?
「うわー、いま自分、光合成してるかもー」みたいな。
 
 
このように人間には動物的な器官と植物的な器官がある。
新しいコンディショニングスキルコースでお届けしている内容になります。
そして表題の”植わったもの”と”動くもの”とは
参考書籍にも挙げさせていただいている
三木成夫氏の『ヒトのからだ-生物氏的考察』文中の表現になります。
 
 
今回はコンディショニングスキルコースでお届けしている内容を一部公開する形でお届けいたします。
 
ヒトがどんな動物や植物よりも優れた存在である。
そのように顕在的にも潜在的にも確信している人はこの状況であればそう多くないと思います。
 
自分自身もJARTAと共に自分の心身に向き合うなかで、ごく自然に、自分の中にある動物的な側面や植物的な側面に対しても意識が向くようになり動物の尊さ、植物たちの偉大さを日々痛感し感謝するようになりました。
今回は今後認定コースを受けられなくても、これから受けることに興味がなくても。
1人でも多くの方が自分の中にある動物的な側面や植物的な側面に意識を向けるきっかけになれればと思いお届けいたします。
 

植物は動物のように欲張らない

両者の違いを色々な角度から切り取った表現があります。
その中で自分が印象的な違いとして、植物は”植わっている”だけなので自分が成長するために何かを取りに行ったり誰かから奪ったり、何かを殺したりすることは基本的には行えません。(一部例外はあるが)
豊かに降り注ぐ太陽の光の下で、地上のどこにでもある材料、つまり簡単な無機物・水・二酸化炭素をもとにして、自分の力で生命の源を作り上げます。
そこでは植物たちは自然の全て、すなわち地・水・火・風の”四大”を、あますところなく利用して、みずからの体を養っていくのであるが、その時かれらは、大空と大地へからだを伸ばしきる。そして、生ー殖ー死のリズムを、四季の変化にそのままにしたがわせていくのです。
このように植物たちの生活は、まさしく地球の条件に、最も素直に応じたもので、彼らの生き方がいかに自然なものであるかを知ることができると思います。
 

 
それに対して動物は”動くこと”が出来る為、自分が成長する為に植物をむしり取り、自分より弱い生物を殺し自分の栄養とします。
いわゆる弱肉強食の世界です。
生まれながらに合成能力にかけた生物たちの姿である動物は、豊かなこの大自然の中で、かれらの利用し得るものは、”空気”と”水”だけでたいせつな栄養源は植物たちが作り上げた平和の実りにあおがざるを得なくなります。
つまりいながらにして自分を養うことができない動物たちは、ついにこの植物という餌を求めて、動かざるを得なくなってしまったのです。
泳げるようになり(魚類)
のたうちまわれるようになり(爬虫類)
飛べるようになり(鳥類)
歩くことができるように(哺乳類)
なりました。
 
これらは地球の重力などに逆らう行為であり、冒険の連続でした。
その為、リスクを少しでも避け、子孫を残す為にも群れるようになりました。
 
食料の確保が難しい環境においては常にエネルギー争奪戦が繰り広げられ、
現在の仲間同士が争い合う人類としての様々な無理な生活の道を考え出すことになってしまいました。
 
自然に逆らわずにどう生きるか
このような動物たちの暮らしがいかに自然の流れに逆らったものであるかということは、考えるまでもないと思います。
自然の流れに逆らいながらも、自然の恩恵を大いに受けている。
この矛盾の中に我々の日々の暮らしがあり、スポーツ活動があります。
植物のように暮らすことも、動物のように暮らすこともヒトには難しいです。
しかし今よりも少しだけでも植物的な側面に意識を傾けること。
今より少しだけでも動物的な感性を取り戻すこと。
 
これは快適に生活を営むだけでなく、アスリートのパフォーマンスにおいても非常に大きなヒントが無限に眠っています。
 
ホルモンや各種生体のリズムにおいて自然の恩恵を受け、自分たちが循環しリカバリーしていることを実感している方は多いと思います。
このような情報を獲得し理解することは人間だから成せる行為です。
この行為を通して理解の先にある体感を得られれば、理解の前にある体感を感じる日々もそう遠くないと常に感じています。
 
頭で理解しないとなかなか行動に移せないようなタイプの選手やこのような情報や書籍は多く出回っています。
しっかりと整理を進めながら歩みを止めずにいきましょう。
 
理解よりも体感を渇望している選手は、動物の動きや植物の姿、そして大自然や大地の変化について限りなくバイアスなく観察し五感全てで感じてみてください。
そこから得られる身体感覚の全てがパフォーマンスアップへのヒントとなるはずです。
 
このような内容についてコンディショニングスキルコースの前半でより具体的な事例も提示しながらお伝えしています。(もちろんコースのごく一部ですが)
 
コースの再開がまだまだ不透明な状況なので、公式ブログでもこれまでセミナーでしかお伝えしていなかった部分を徐々にお伝えしていければと思います。
 
少しでも自分の体やアスリートのパフォーマンスアップへのヒントに役立てて頂ければ光栄です。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
引用、『ヒトのからだー生物学的考察』著三木成夫 うぶすな書院 1997年第1刷発行

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2020年05月02日

ライバルの7倍早く成長するために

文:平山鷹也

目次

 

絶対に負けたくない相手

あの選手には負けたくない、あのチームにだけは勝ちたい。
 
 
スポーツをする誰もがそんな相手がいるはず。
 
 
その相手はチーム内にいるかもしれないし、有名な強豪校かもしれない。
 
 
ライバルや仲間の存在のおかげで自分の限界を超えられるのは、スポーツの醍醐味の1つである。
 
陸上や水泳などのようにタイムで結果が明確に出る競技ではわかりやすいが、自分と同じくらい、もしくは少しだけ強い(速い)選手が相手だと自己ベストが出やすくなる。
 
 
常に限界に挑み、最高の舞台でその限界を超えていく姿は本当にかっこいい。
 
 
最高の舞台で最高の結果を出すために、私たちスポーツトレーナーも日々選手たちに向き合い続けている。
 
 
今回は今よりもっと早く成長したいと切望している選手たちに向けて。
 
ポイントは練習時間内の密度を高めること、そして練習外の時間も上手くなることができるかどうか。
 
 
どちらも「時間」が関わってくるので、まずは時間が平等であり不平等であることを簡単に説明し、今回は主に練習外の時間について考えてみたいと思う。
 

時間は平等で不平等

1日は24時間で、1時間は60分だ。

 
これは、地球上の全人類で平等に与えられた時間だろう。
 
 
だが、同じ60分の練習の中でも一気にコツをつかめる60分もあれば、全然上達を感じられない60分もある。
 
 
これこそ、時間が平等であり不平等である理由だ。
 
 
つまり、60分という練習時間は平等に与えられているが、その60分での成長具合は平等ではないのだ。
 
 
だとすれば、平等に与えられた時間をライバルよりも意味のある時間にしなければ、差は縮まらない。
 
 
練習の密度を高めるための手法はこれまでの公式ブログにたくさんのヒントがある。
 
 
そして残りの時間は、平等に与えられた練習外の時間、である。
 
 
 

練習外の時間は練習時間の7倍もある

平日の練習時間を3時間とすると、1日で練習していない時間はその7倍もある。
 
 
その時間が競技にどう関わってくるのか考えたことはあるだろうか。
 
その時間で自分の伸びしろを伸ばす方法を考えたことはあるだろうか。
 
その時間が自分の競技に生かせることを考えたことはあるだろうか。
 
 
「いやいや、毎日7時間前後は寝てるからその時間は関係ないでしょ?」
と思う方もいるかもしれない。
 
 
しかし、睡眠は翌日の心身の状態や内臓・自律神経のコンディションへ大きく関わる。
つまりパフォーマンスへ大きな影響を与えているのだ。
 
 
簡単に言えば、寝起きが最悪な日に最高のパフォーマンスは発揮できない。
 
 
このようにあらゆる時間の過ごし方が心身へ影響を与え、アスリートであればそれがプレーにも影響する。
 
 
例えば学生であれば日中の多くの時間は座って過ごすことが多い。
 
 
その座る姿勢が猫背だとしたら、おそらくプレー中も猫背になりやすい。
 
 
もしくは猫背によって肩甲骨周りやお腹の筋肉が硬くなってしまうこともある。
 
 
なぜなら学生の座っている時間は練習時間よりも長いことが多く、猫背で過ごす時間の方が練習時間よりも長くなってしまうからである。
 
 
このように考えると授業中の姿勢すらもパフォーマンスアップにつながっていく。
トップアスリートは座っている姿勢や立っている姿勢もトップなのだ。
 
 
ぜひそんな視点からも普段のスポーツニュースを見てほしい。
 
 
他にも、
・階段を上るときに裏ももの筋肉を使うように意識する
・体育の授業で他の競技の動作から自分の競技の動作にどうつながるか考えてみる
・友達との雑談では言いたいことを言えるのに、チーム内では言いにくいのはなぜか考えてみる
・スマホやパソコンを見る姿勢に意識を向けてみる
・時間の使い方を見直してみる
・テスト勉強をできるだけ短時間で集中してできる方法を考えてみる
・通学路の景色の違いを毎日意識して周辺視野を鍛える
 
あらゆる日常生活を競技に結び付けて考えられると、24時間パフォーマンスアップに利用できる。
 
 
このように、座っている姿勢も競技を意識している選手と、練習とそれ以外の時間を分けて考えている選手では、上手くなるために費やしている時間に差が出てくる。
 
 
逆に言えば、練習時間は同じはずなのになぜか差が開いていくライバルは自分が意識出来ていないところまで普段から意識しているのかもしれない。
 
 

全てはパフォーマンスアップのために

JARTAでは、「全てはパフォーマンスアップのために」という言葉をよく使う。
 
 
これは施術やトレーニングは全てパフォーマンスを向上させるためにあり、施術やトレーニングそのものが目的にならないようにということである。
 
 
もちろんこの言葉はそれだけを表しているのではない。
 
 
選手に置き換えて考えてみると、あらゆる日々の活動をパフォーマンスを向上させる意識をもって行えているか、ということになる。
 
 
もちろん自主トレやストレッチ、身体のケアをする時間を確保することも非常に大切なことである。
 
 
しかしそれでもなおライバルとの差が縮まらずに悩んでいる選手は、普段の過ごし方にヒントが眠っているかもしれない。
 
 
もし、どうしても勝ちたい相手がいるなら、練習外の時間で成長する方法を考えてみてほしい。
 
 
「全て」は、パフォーマンスアップのために。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年04月29日

サイクルを見直し、自らの身体に良い循環を!!!


 

文:赤山僚輔

 
部活動だけでなく、多くの企業でテレワークが推奨され外出の自粛が続くなか通常の生活サイクルを維持することが難しくなっている方も多いのでないでしょうか?
生活サイクルを構成する日々の習慣は体調を維持するだけでなく、パフォーマンス向上においても非常に重要な観点になります。
今回は現在オンラインワークアウトの中で実践している
リコンディショニングの内容においてクールダウンとウォーミングアップをなぜ
土曜の夕方と日曜の朝に実施しているかという点について深掘りしながら
サイクルを見直すことや自らの身体によい循環をもたらす恩恵についてお伝えしたいと思います。
 

そもそも1週間の起源とは

1週間がどういった起源で発生したかは諸説ありますが、一般社団法人日本時計協会のHPでは以下の様に記されています。
以下転載

1週間7日制は古代バビロニアから始まったといわれていますが、各曜日は古代ローマによって作られました。
古代ローマでは1日を24等分して1時間毎に5つの惑星と太陽と月とを繰り返しあてはめて呼び、距離の遠い順に土星、木星、火星、太陽、金星、水星、月の順番と決めました。そして、1日の最初の1時間が1日全部を支配すると考えました。こうすると最初の日の最初の1時間は土星で、2日目の最初の1時間は太陽(日)、3日目の最初の1時間は月となり、以降火星、水星、木星、金星となって、土曜日から始まり7日間で繰り返される曜日が出来ました。
しかし、宗教上の理由で週の初めは日曜となり、更にローマがキリスト教を国教にしてから日曜にキリストが復活したことを記念するため日曜日を安息日の休日と決められました。今でも多くのカレンダーは週の初めが日曜からとなっています。

少し複雑ですが、週の始まりが日曜日であるということがこの起源からもわかると思います。
日曜日が休息の日と位置づけられているので感覚的には月曜日からが始まりと感じる方も多いと思います。
しかしスポーツパフォーマンスの観点においても、日曜日の休息が月曜日に向けての重要な準備のスタートである。
このようにもとらえられると思います。
 
今回はこの1週間の起源をきっかけに、我々の身近にあるサイクルについてお伝えしたいと思います。
 

十干の起源

次に考えていきたいのは、月の周期と十干について。
月の満ち欠けが29日か30日になっていることからこの月の周期を1ヶ月としてその半分を半月。
としていることをご存知の方は多いと思います。(漢字がそのままなので)
1日を何日単位で括れば覚えやすいのかとなった時にもっとも原始的で便利な方法が、「指を折る」という数え方です。
実際に中国では指を折って日数を数えていたと文献に記されているそうです。
この指のことを「浣」と表記されたいたものがいつしか「干」と称される様になったようです。
指10本の「10」と
両手の指を意味する「干」が合わさって
「十干」となりそれが古代中国人が私たちにも馴染みの深い
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類で構成される、数の数え方であり、理論の一つです。
数の数え方として扱うときには、
「こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き」
と読みます。

https://www.mikatablog.com/entry/2017/08/21/十干の起源と意味をわかりやすく解説します!より転載

 

十二支の起源

これまでに述べた十干は日を数えるために使用したものであり、十干と月の周期が関係することにも触れてきました。
実は十干と十二支も深い関わりがあり、十干は「十幹」とも書かれ、樹木にたとえるならば幹にあたる部分である。対して十二支の「支」とは「枝」のことであり、いわば樹木の枝葉の部分を指している。この点から通俗的な解釈では、十干から生まれたものが十二支となるわけである。
十二支も十干も星の運行と密な関係にあり、古代中国で木星が太陽の回りを公転する周期が12年であることがよく知られており殷王朝で主たる星と位置付けられていた木星の12年にちなんで十二支が誕生したと言われています。
※「現代に息づく陰陽五行」より引用。
 

自然を意識することによる循環の改善

上記などの暦やその影響を受ける陰陽五行論などはJARTAコンディショニングスキルコースでお伝えしている”OMSS”という経絡を応用したアプローチでも触れている概念になります。
我々の生活に根ざしている週間や月や年、十二支や十干。
これからの周期であるサイクルの起源を遡ると自然現象である太陽系の位置関係や月と地球との関係性が深いことに気づくことができます。
今の状況の様にサイクルを崩しやすい、心身ともに良い循環をもたらし難い状況において良いサイクルを再獲得する為にはこの自然現象の力も借りながら日々を暮らすことが非常に重要になります。
睡眠の質を高めるためのメラトニン分泌に朝日を浴びることが有効であることなど、現代医学でも一般化されてきた事象も多々あります。
より深く心身に向き合い、リコンディショニングする上で1週間のサイクルを意識すること。
月や太陽の影響を顕在化して自身の循環改善に応用することは非常に有益なアイデアとなります。
 
こういった意味合いもあり、今回のリコンディショニングの内容でお届けするオンラインワークアウトでは土曜日をクールダウン、日曜日をウォーミングアップと位置づけ開催を継続しております。
もちろん内容をお届けしたいので毎回少しづつ変化を加えて実施しているリコンディショニングの内容を一緒に実践してもらいたいのはもちろんですが。
1週間の終わりに月を意識しながら土曜日にクールダウンをすること。
1週間の始まりに、朝日を浴びてから日曜日にウォーミングアップすること。
一緒に意識しながら実践することで乱れかけたサイクルを再獲得して良い循環を自ら作り出すことができるはずです。
 
こんなことを言いながら次の日曜日が雨だったらどうしようかと思案している私ではありますが。
よければご一緒に自然を意識しながら、自身の身体にしっかりを意識を向けてリコンディショニングしてみませんか?
きっと選手への指導だけでなく自身のコンディショニングにとって何かヒントがあるはずです。
 
現在募集中のオンラインワークウアト、他のラインナップも含めて以下よりご参照ください。

JARTAオンラインセミナー


 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年04月26日

生活の変化は身体の変化へ


文:岡元祐樹
 
生活に変化が起きると、身体にも変化が起きる。
 
コロナウイルス感染拡大予防のための外出自粛要請で、日常生活が多少なりとも変化した方は多いのではないでしょうか?
 
筆者における生活の変化は、移動手段の変化です。電車での移動から車での移動に変化しました。
 
このような日常生活の変化は習慣が変化することに繋がります。そしてそれは身体にも多様な変化をもたらします。
 
ここで気を付けたいのは、変化に鈍感になってしまうことです。
 
自身の変化を感じたら、それが自身のパフォーマンスにとって良いことなのか悪いことなのかを判断しないといけません。
 
そして悪い変化であれば何かしらの対策を打つ必要があります。
 
日常生活が変化したことを認識し、身体に対する影響や対応策を考察するクセがつけば、今後もあらゆる状況下においても成果の出せる人間に成長できるかもしれません。
 

 

生活の変化と身体の変化の一例

 
筆者がここ最近で変化を感じたのは床に胡座(あぐら)で座った時でした。
 
右膝がなんとなく曲がりにくい感じがしたのです。
 
自身で膝を評価すると、脛骨の大腿骨に対する内旋の可動域が減少していました。そしてその可動域に影響を与える大腿二頭筋腱周囲や付着部周囲が硬くなっていました。圧痛も左側より強い状態でした。
 
何故ここが硬くなってしまったのか?
 
その答えは前述した車での移動時間の増加だと筆者は考えました。
 
車の運転というのは、基本的に座った状態で行います。股関節や膝関節は屈曲位です。
 

 
そこからブレーキとアクセルを右足で踏み変えながら運転をするのですが、筆者の運転のクセで、アクセル操作において右下腿の外旋が強く出てしまうのです。
 
今までよりも車に乗る時間が増えたことにより、大腿二頭筋の収縮による下腿外旋位をとる時間が増えた。その結果が膝の深屈曲位での違和感という症状に繋がってしまったのです。
 
極めて軽度な症状であったため、セルフケアにてすぐに改善は図れました。早期に身体の変化に気付けたので良かったですが、明らかに生活習慣の変化が起きているのであれば先回りして身体の不調を予防するのが理想です。
 
他にも何かないだろうか?車の運転で自分の身体に起きそうな変化を色々考えてみました。
 
真っ先に思い付いたのが股関節です。
 
運転時には、股関節は90度近く屈曲した状態が続きます。伸展できる局面は皆無です。ということは、股関節の伸展可動域の減少が予測でき、対応策として股関節伸展のストレッチを日々欠かさないことが重要になってきます。
 
 
加えて、シートと皮膚の接触面も気になりました。
 
車のシートは長時間の座位を想定し、座り心地が良いように作られています。車種にもよりますが、背中や臀部の形状に似せて曲線で作られており、皮膚との接触面積が広くなるようになっているものが多いです。
 
このことは、坐骨結節などの骨突出部への圧力を分散している一方、大腿の後面や臀部の皮膚がまんべんなく圧迫されることを意味します。
 
短時間の運転であればそれほど問題ないのかもしれませんが、筆者は1日2時間車移動が増えたため、皮膚の滑走性に何か問題が生じる可能性があります。
 
生活の変化をきっかけに身体に対する思考を深めるきっかけになりました。
 
 

今を良いきっかけにするために

 
今回の外出制限の要請といった事態は中々起きることではありません。生活環境が一気に変化した方もいると思います。
 
しかしこれからも望むにしろ望まないにしろ、生活の変化というものは訪れます。
 
例えば引っ越しをした、転職をした、細かいところでは新しい靴を履いて過ごしたなど何かしらの変化は今後も生じるはずです。
 
そうであるならば、認識できる変化の幅や種類を増やしていくことが大事になってきます。良い変化であれ、悪い変化であれ、その変化に対して行動を変えることができるからです。
 
そしてそれはアスリートに限らず、スポーツトレーナーやセラピストにも言えることだと思います。
 
人によって様々な形があるとは思いますが、今の状況はその能力を高めるトレーニングになるかもしれません。
 
「生活がどう変わったのか?」というところから認識し「その変化が身体にどのように影響するか?」ということを考えるきっかけになり得るからです。
 
そのように自分の思考を変化させることで、様々な状況でも安定した力を発揮できるようになるのではと筆者は考えます。
 
とりあえず筆者は再び仲間とスポーツができる時に、この時期を言い訳にしないよう鍛練を積むことにします。
 

 
 

できることをできるところから

 
筆者もそうですが、身体の変化に自分自身で気付けるようになるというのは、最初はかなりハードルが高いように感じます。
 
そのように感じる人は、目の前のはっきりと分かっている生活環境や習慣の変化をきっかけに、自身の身体について考えたり感覚を研ぎ澄ましてみたりしてはどうでしょうか?
 
高いハードルをいきなり跳ぶのではなく、できることをできるところからやっていくのです。それも中々難しいことではありますが、必ず新しい気付きがあり、自身の身体やパフォーマンスをより良い方向に導くことができるはずです。
 
この時期を乗り越えた先に、あらゆる事態に対処できるような精神と肉体を求めて。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2020年04月22日

コモドドラゴン スポーツ 開設のお知らせ

このたび、弊社代表・中野崇のYouTubeチャンネル
『コモドドラゴン スポーツ』
を開設いたしました。
定期的に新着動画をアップしていきますので、
是非チャンネル登録お願いいたします。
 
 

 
 
 

 
 
 

コモドドラゴン スポーツ

ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチを務め、Jリーガー、プロ野球選手など多くのトップアスリートを指導するスポーツトレーナー中野崇が、
身体のこと、トレーニングのことなど、様々な「みなさまの疑問」にお答えするチャンネルです。
小学生のうちから正しく理解し、それに取り組むことで、大人になってからのパフォーマンスは劇的に変わります。
大人にとっては、「小学生の時に知りたかった!」という知識を紹介します。
プロ選手への指導場面も公開します。
 

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2020年04月21日

体力づくりのトレーニング

文:宮﨑祐一

「体力づくりのトレーニング」としてみなさんは何を思い浮かべますか? スポーツをしてきた方なら誰でも一度は取り組んだことがあるのが、 ”走り込み” ではないでしょうか。 
走り込みは、体力づくりの基礎トレーニングと認識され
・自分を限界まで追い込む
・きついときに耐える精神力をつける
・試合の時これだけやってきたという自信をつける などが挙げられると思います。 
 
今日は体力づくりのトレーニングの考え方を見直し、走り込みを例に挙げて一緒に整理し たいと思います。 
まず走り込みの効果は簡単に思いつくと思います。
先ほども述べたように、体力向上、足腰の強化、精神力強化などがあります。
肉体的にも 精神的にも鍛える方法として、昔から重要とされてきた練習の一つです。 
どれも間違いではありません。 ただし、やり方を誤ってしまうと逆にパフォーマンスを下げる要因になることがありま す。 
どんな要因があるのかをしっかりと認識した上で、トレーニングへの取り入れ方を見直す必要があります。 

 
 
走り込み の効果と注意点を整理していきます。
 
効果は以下のようなものが挙げられます。
・心肺機能の向上 (最大酸素摂取量の向上、四肢の毛細血管が増える)
・ BDNF(脳由来神経栄養因子)が出る 
・上半身と下半身の連動
・身体バランス能力の向上
(足底への刺激、山道などの悪路を走るなど)
・身体と視界の変化を知覚し、身体と環境の距離感をより正確に捉える
・結果が見えやすく達成感がある(距離数など) 
もちろん良いこともたくさんあります。
 
これは周知の事実として、ここでは注意点について 
もう少し深くお話していきます。 
 
注意点として考えるべきことは大きく分けて2つです。
・身体への負担が増大する
・競技によって必要な体力の種類が異なる 
 
 

1. 身体への負担が増大する 

負担の増大というと、一見、それを繰り返して体力をつけるのだから当然だと思われるかもしれません。
でも見逃すと、大きなパフォーマンス低下や選手生命に 関わる事態につながる場合もあります。 
走り込みの際、硬い地面を蹴るように走ると、同じ部分に繰り返しストレスをかけること になり、膝や腰などの荷重関節への負担が大きくなります。
これはケガのリスクが高まります。 
走り込みの最中でなくても、負担が蓄積した状態で、 競技中に過度なストレスがかかることで致命的なケガにつながるリスクさえあります。 
また循環器系の問題として、心拍数が上昇しすぎると、内臓への血流量が低下します。
それにより消化不良や、排泄コントロールがうまくいかなくなるなどの腎機能低下を引き起こすこともあります。 
これは栄養状態の悪化や休息時の回復力低下にもつながるでしょう。
さらにアスファルトを走るなどの「足裏への反復衝撃」によるヘモグロビンの破壊(溶血)からスポーツ貧血という症状もあります。 
ヘモグロビンの役割は取り込んだ酸素を全身に運搬することです。
運動に必要なエネルギーを生み出すためには酸素が必要であるため、これが十分に供給されない状態になる と、パフォーマンス低下に直接的に繋がります。 
これらをふまえて、走り込みを行うには、必要なトレーニング方法を見極める必要があります。 
できれば関節負担を減らすために、アスファルトではなく土や芝生の上で行うことが望ましいです。 
より良いのは、山道などの路面が常に変化する環境で 走り込みを行うのも効果的です。環境変化に柔軟に適応でき、バランス能力を向上することにもつながります。 
走り込みの最中だけでなく、選手の疲労の回復の状態や集中力、競技中とそれ以外のパ フォーマンスの変化などにも細やかなチェックが必要になってきます。 
 

 

2. 競技によって必要な体力の種類が異なる 

走り込みで体力をつけると言っても、そもそも競技によって必要な体力は異なります。
特に対人スポーツでは、「一定のペースで長い時間繰り返す動き」というのはあまりありません。
スピードやパワーを要求される競技であれば、マイナスの学習となってしまうこともあり ます。 
では、競技によってどのような体力が必要となるか考えていきたいと思います。 
ここで今回のテーマである ”体力づくりのトレーニング” について捉えやすい方程式をご 紹介します。
「体力=容量×省エネ×回復力」 
 
選手に必要とされる体力とは、ただ心肺機能が高いだけではなく、効率良く省エネで動ける身体と、回復力が大切になります。
つまり試合当日、全力を出す瞬間とそれ以外の時間をどのように使い分けられる必要があります。
いかに短時間で回復し、再度全力が発揮できるパフォーマンスができるかが重要なのです。 
これを練習中から意識していく必要があります。
ただひたすら走り込むだけでは、心肺機能は向上できるかもしれませんが、全力発揮と回復の切り替えがうまくコントロールできません。 
クールダウンや練習中の合間時間をどう過ごすかも重要になってきます。 
 
 
例えば、プロ野球の投手で具体的に考えてみます。
NPBの先発投手は1イニング当たり15~17球を費やします。
一般的には、1回15球、6回90 球で替え時と計算されています。 
試合中に筋力を発揮しているのは、主に90~100球の投球時と守備機会の数回です。
攻撃時にはベンチで座っている時間もあり、次のイニングに備えてキャッチボールをするなど、過ごし方は様々です。 
野球選手に必要な体力は、マラソン選手のように数時間ずっと動き続ける体力ではありません。 
その代わりに「90~100回の投球を全力で、相手に合わせて変化させて投げ、打ち取るための体力」が必要ということになります。 
この場合の”走り込み”トレーニングのより良い方法が、何時間も走り続けることではないことはもう分かるでしょう。 
 
 
ではどうすれば良いのか。
例えば、インターバルを意識したトレーニングにより、パフォーマンスの持続能力の向上に繋がります。 
短距離のダッシュ+インターバル時間をコントロールします。
・30m ダッシュを20本 で休憩時間20秒
・200mダッシュを3本 で休憩時間 3分 など 
これらの組み合わせを変えた練習を取り入れることで、様々なタイミングで全力発揮と回復の切り替えができるようになります。
持続的にパフォーマンスの高い状態を保てる選 手を目指すことができるのです。 
 
このように、競技やポジションなどにより、選手に求められる体力や能力も異なります。 
 
ここまで述べたように、体力づくりのトレーニングにはいくつか注意点があります。それらを考慮した上で、選手にとって最も必要な「体力」は何か考えていく必要があります。 
トレーナーは、限られた時間を効率よく使えるトレーニングを提案し、試合で最高のパ フォーマンスを発揮させることが求められています。
選手の努力を無駄にしないためにも、努力すべき方向性をしっかりと見据えて、試合で最大限の力を発揮できるためのトレーニングを組み立てましょう。 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年04月15日

準備の重要性を再考する

文:赤山僚輔

 
全国的に休校、活動休止に伴い様々な手法で運動を継続、トレーニングを実施されている方も多くおられると思います。
JARTAでも先日オンラインセミナー告知に合わせて講師のインスタグラムなどをご紹介させていただきました。
 
https://jarta.jp/info/18542/
 
本日はオンラインセミナー の続報としてリコンディショニングセミナーの概要とその重要性についてお伝えしたいと思います。
アスリートはもちろん、指導者やスポーツトレーナーにとってウォーミングアップやクーリングダウンが重要であることは改めて言うまでもない事象であるはずです。
 
しかし、多くの選手や指導者と関わる中で疑問に感じる部分がありました。
 
それは時間の無駄のように感じていたり、障害予防の為という側面に重きをおいて考えている皆様が多いことです。
 
怪我をしない為にという側面を押し出しすぎると、どこにも痛みを抱えていない選手や怪我を経験したことがない選手。
また外傷・障害後の復帰してそれに囚われたくない選手にとってはマイナスな側面すらあります。
そんな時にどのようにウォーミングアップの位置付けについて説明していくと良いか。
 
これについては先日Podcastでも触れているのでよければ一度お聴き頂ければと思います。

 
そして外傷障害の予防の為にという側面だけでなく、もっというとその時間よりも競技の時間を少しでも優先したいと思う指導者の皆様には。
 
その時間を使う意義や可能性について”心と身体の準備”という観点でも今一度再考してもらいたいと考えております。

 
コンディショニングを再び整えるという意味での
”リコンディショニング”
本来は我々は寝て起きればある程度、リコンディショニングされています。
 
 
しかしこれまでの環境と違い、習慣が継続しにくい状況。
情報の多さにストレスがかかってしまいやすいこのタイミング。
 
だからこそ、ただ身体を動かすだけでなくより身体がリラックス、リカバリーしやすいように身体環境を整えるクールダウンが重要であり。
1日の始まり、トレーニングや練習の前にしっかりとスイッチが入れられるようにウォーミングアップについて再考し実践できる機会が設けらればと考えました。
 
これまでのJARTAのセミナーはどうしてもスポーツトレーナー向け、同業者向けのものが多く、またトレーナー派遣をするにしても地域やカテゴリーによって簡易的に利用しやすいとはお世辞にも言い難い状況でした。
 
しかし今回はJARTAコンセプトを元に、またトレーナー自身のこれまでの現場での事例も重ねながら選手や指導者の皆様にも一緒に体験していただける内容となっております。
 
4月開催のリコンディショニングワークアウトは競技を問わず実践しやすい内容を用意しております。
 
 
慢性障害をゼロにする為のセルフコンディショニングについては5月以降企画用意しておりますので、是非お楽しみにお待ちください。
 
週末のセミナー詳細は以下よりご参照ください。

JARTAオンラインセミナー


 
オンラインセミナーでは実技中、内容についてのご質問も承っております。
今回の内容は強度が高いものではないのでどなたでもご参加いただけます。
是非お気軽にご参加ください。
 

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2020年04月06日

家トレ材料をインスタでチェックせよ!!!


 
まだまだ休校と部活動の活動規制やプロチームにおいても満足な活動が行えない状況で家でのトレーニングを継続する選手も多いと思います。
そこで今回はJARTAの講師陣の中でも指折りの身体操作を誇るトレーナーのインスタでのトレーニング模様を共有したいと思います。
 
ぜひともインスタグラムをされている方はフォローして安全に最大限考慮しながらチャレンジしてもらえればと思います。
 
まずはJARTA随一の身体操作を誇る萩トレーナー
 
https://www.instagram.com/p/BvYj8iGnaoT/
https://www.instagram.com/p/B-Qfyn-BcAE/
 
 
 
いつも楽しそうなトレーニングを公開しております。
 
続いてはサッカー選手を中心にプロアマのサポートをしている和泉トレーナー
 
https://www.instagram.com/p/BsNMji2gxh5/
 
https://www.instagram.com/p/BvTkUNcAxK6/
そしてその和泉トレーナーがサポートしている岩崎悠人選手も頻繁に和泉トレーナーとのトレーニング動画を公開しております。
 
https://www.instagram.com/p/B9Tn6Wtp-XN/
 
https://www.instagram.com/p/B-g014kDGqJ/
 
 
多くのトレーニングをSNS等で情報収拾できる今だからこそ、JARTAトレーニングを実践するトレーナーや選手のSNSをフォローすることで今後セミナー内容に加わる可能性のあるトレーニングなども目にすることができるかもしれません。
 
 
そして最後に、東京で活動する真木トレーナーのインスタもご紹介します。
 
前述2人に負けず劣らずの身体操作ですが、それはこのようにも使えるそうです。
 
https://www.instagram.com/p/B-M1H_TBFoH/?igshid=1o10mcopjcs76
 
もしご興味のある方は実践してみてください。
 
もちろん真面目な動画ももちろんあります。
https://www.instagram.com/p/B4kT_y7hchg/
 
 
 
映像でも楽しみながら、身体操作の可能性を存分に楽しんで自宅でのトレーニングを続けて頂きたいと思います。
 
今回はJARTA講師陣のインスタ紹介でした。
 
現在オンラインでのワークアウトも募集を開始しておりますのでご興味のある方は下記よりご参照ください。

JARTAオンラインセミナー


 
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年04月01日

小さな事から習慣化 ~行動を分解して習慣にする~

 文:川原正好

 

 

皆さんは普段、習慣にしていることはありますか?

 

スポーツに取り組む選手であれば毎日取り組んでいるトレーニング自体が習慣化していると言えます。学生競技やプロ選手などは週56日でトレーニングに取り組んでいるかと思います。

 

ただ、社会人として競技に取り組む方、またはトレーナーの方などは仕事をする合間を縫って自身のトレーニングに取り組むために、まとまった時間がなかなか確保できないという方もいらっしゃるかと思います。

 

トレーニングに限らず、仕事に関する勉強であったり読書などといった自己研鑽にも時間を割いていこうとした場合、時間がないというのが実情ではないでしょうか。

 

 

例えば、読書を習慣化しようと決めて始めたは良いけど仕事が忙しくなってくると、

 

「今日は仕事で疲れたし、また明日から」

 

といった調子でなかなか習慣化しないという方もいらっしゃるかと思います。

 

 

良い習慣としてイメージしやすいのは、

・運動(散歩、体操、水泳、スポーツなど)

・読書

・勉強

・体調管理

などがあげられるかと思います。

 

一方、悪い習慣としてあがるのは、

・暴飲暴食

・多量飲酒

・寝不足

・喫煙

・テレビ、スマホの見過ぎ

などが考えられます。

 

同じ習慣といっても良いものも有れば悪いものもありますが、皆さんの毎日は良い習慣で満たされているでしょうか?

 

答えは「Yes」の人もいれば「No」の人もいると思います。

 

 

 

No」の方へ

 

なぜ、良い習慣が定着しないのでしょうか?

 

もしかしたらあなたが習慣にしたいと思っていることのハードルが高すぎるのかもしれません。

 

 

先ほどの読書を例にすると、

 

目標:毎日10ページ、読書をする。

 

としたとします。

 

これで続けば良いのですが、簡単には習慣化できません。

 

 

なぜか?

 

 

これでもハードルが高すぎるのです。

 

 

 

習慣化するのにポイントとなるのが、習慣化する行動を分解することです。

 

 

「本を10ページ読む」という行動を分解すると、

 

1.読みたい本のところへ行く

2.本を読む場所へ持っていく

3.本を開く

41行目を読む

52行目、3行目…1ページを読む

62ページ、3ページ…10ページを読む

 

となります。

 

この時に目標と設定したのが6の部分になります。

ここに目標設定をすると、ハードルが高くなって習慣化しにくいのです。

 

 

そこで試していただきたいのが、

 

『目標を出来るだけ低くする』

 

です。

 

上記の読書でいえば、14を目標としてそこが出来たら「よし、今日もよくできた!」と思うのです。

 

この達成感が非常に重要です。

 

 

どんなに小さなことで、達成感が満たされるとやる気が出てきます。

 

すると自然に物事に前向きに取り組みたくなります。ページ数を増やしたくなれば、増やして構いません。

 

 

もし、増やしたくなければそれで構いません。

 

なぜなら、既に目標を達成しているからです。

 

 

小さな目標を達成することで、達成感が生まれてやる気が生じます。

 

翌日も同じ目標設定をして、また達成します。

 

そうすることで目標達成のサイクルを定着させ、良い習慣を身につけていきます。

 

 

これはトレーニングや運動などでも同様に設定が可能です。

 

 

まずはスクワットを1回することから取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

 

より良い習慣が身につき、あなたの大きな目標達成の一助になれば幸いです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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2020年03月29日

今すぐできるパフォーマンスアップ 〜障害予防とパフォーマンスアップの関係〜

 

文:矢口雅人

みなさん障害予防と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。 そして、パフォーマンスアップと聞くと何を思い浮かべるでしょうか。

きっと、 障害予防と聞くとストレッチ。 パフォーマンスアップはトレーニング。

という人が多いのではないでしょうか。

 

障害予防

慢性障害の場合、受傷部位の筋力低下や柔軟性低下の問題もありますが、受傷部位周囲の関節などの機能低下による代償として(かばって)受傷する場合が多いといわれています。

怪我をしないためには、受傷部位の機能改善はもちろん、受傷部位以外の機能改善も同時におこなっていく必要がある。

つまり全身の機能改善が必要になります。

 

パフォーマンスアップ

どのスポーツにおいても、ある一部位だけの運動はほとんどなく、全身を使った動きがほとんどです。

そのため、一部分の機能向上ではパフォーマンスアップには限界があり、全体のバランスを考えた時に偏りがでてしまい、一部分への負荷がかかりすぎてしまう。

同じエネルギーを出すにも、一部分での出力よりもより多くの部位で出力した方が各部位の負担が軽減される。軽減されるということは、省エネにもつながり長持ちする。

つまり、パフォーマンスアップさせたい動きに対して、部分的なトレーニングだけではなく、全身をうまく使えるようなトレーニングが必要となり全身の機能向上へと繋がります。

いかがでしょうか。 障害予防とパフォーマンスアップの関係性が見えてきたでしょうか。
 
そうです。
障害予防 = パフォーマンスアップ
です。
もちろん、スポーツ選手と高齢者では求める障害予防のレベルもパフォーマンスアップのレベルも違いますが、根底にあるものは同じです。
そこでみなさん、ストレッチを十分にできていますか?
トレーニングをしっかり行なっている人はほとんどだと思いますが、ストレッチをないがしろにしていませんか?
ストレッチをウォーミングアップやクールダウン程度にしか考えていませんか?
しかし! ここにみなさんの伸び代があります!!
 

他の選手と差をつける

部活にしてもクラブチームにしても全体での練習時間はみんな同じであり、場所などにも制限があります。
単に時間という量ではみんな同じように成長します。
だとすると、みんなと同じ量をこなしているだけでは、他の選手と差をつけることはできません。
では、どうするか。
 
ストレッチです。
ウォーミングアップやクールダウンとしての目的はもちろん、今よりももっと使いやすい身体へ変えることです。
「もっと股関節を柔らかくしたい」とか「肩まわりが硬い」など、みなさんも少なからず自分の身体に対する改善点があると思います。
先述したとおり、
障害予防 = パフォーマンスアップです。
 
単純に関節の動く範囲が拡がるだけでも、今まで届かなかった範囲まで動かすことが可能になります。
身体が変われば、今までできなかったテクニック(スキル)ができる可能性があるかもしれません。
もちろん、怪我をしない選手にもなり、怪我をしない選手というだけでもチームからするととても貴重な選手になることができます。
そして、ストレッチに関しては家でもどこでも場所を選ばずできます。 自分の好きな時間に好きなだけ行うことができるのです。
ここに、他の選手と差をつけることができるところがあると思いませんか。
 
たかが、ストレッチ
されど、ストレッチ
 
みなさん、『今』がパフォーマンスアップするチャンスです。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2020年03月26日

練習再開その前に

文:赤山僚輔

 
新型コロナウイルス正式名称「COVID-19」による学校休校や部活動の活動休止とこれまで経験したことがない期間が1ヶ月になろうとしています。
 
新年度を迎えるにあたり多くの部活動においては再開の日が近づいていると思います。
 
今回はまだはっきりとはわからない全面的な部活動の再開を前に、いまだかつてない事態だからこそ練習再開時に想定しておくべき事態についてお伝えできればと思います。
 
 
 
 
「1日でもはやくいつも通りの練習がしたい」
 
 
 
これが選手だけでなく関わる指導者の総意であると思います。
 
 
はやる気持ちをおさえて、まずは、最低限想定しておきたい懸念事項について整理しましょう。
 
 
①最悪の想定をする
・全く運動をしておらず圧倒的に体力が落ちている
・抑揚のない生活をしており集中力が低下している
・規則正しい生活ができておらず自律神経のバランスが乱れている
・ウエイトコントロールが出来ておらず体重増加がみられる
・偏ったトレーニングによって身体のバランスが著しく崩れている
 
 
②初めての為わからないと自覚しておくべき事項
・休止期間後にどうやって運動強度を上げていくべきか不明瞭
・集中力が低下することにより練習中にどのようなリスクがあるか(ミスコミュニケーション含めて)
・自律神経バランスが崩れることによりリカバリー機能など疲労回復にいつも以上に期間を要する可能性がある
・やりたい気持ちと動きにく身体とのギャップによって生まれる弊害
 
 
簡単にではありますが、最低限選手側も指導側もおさえておく必要性があることを羅列しました。
 
 
要するに
 
「いつも通りじゃない、という大前提を全ての事象に置き換え考える」
 
 
これが今回においては重要であると考えています。
 
その上で解決可能な対応策について後述させていただきます。
 
 
 

ヒアリングをこれまでの基準を度外視して丁寧に実施する。

 
様々な状況でヒアリングやシェアリングをすることはどんな部活動やスポーツ活動でも行ってきたと思います。
 
今回のケースにおいてもおそらく大なり小なり実施されると思います。
 
ただ今回ばかりは選手の“大丈夫”が本当に大丈夫かどうかを慎重に判断する必要性があります。
 
荷重関節の骨であれば繰り返しの荷重や適切な水分量、栄養補給によって強度が保たれます。
 
もちろん筋肉がしっかり働くことによって骨への必要以上の負担が軽減されます。
 
それが出来ていない状況でどうなる可能性があるのか
これまで疲労骨折や慢性疲労が蓄積しやすかった選手やチームであれば、運動再開後にその部位へ急激なストレスが加わることで最悪の事態も考えなければなりません。
 
「いつもこれくらいの痛みであれば、だましだましいけば大丈夫だから。」
 
これを今回ばかりは見過ごさず慎重に様子をみてもらいたいと思っています。
 
現在はエコー技術の進歩もあり、高額な医療費を捻出しなくても簡易的に患部状態を知ることもできるようになりました。
 
身体に痛みや気になる部分がある際には部活動再開前に医療機関で精査する事をお勧めしますが、再開後に発生した症状に関しても軽視せずに慎重に向き合ってもらいたいと思います。
 
 
こういったヒアリングはもちろん指導者の役目かもしれません。
しかし定期的に部活動に関わるスポーツトレーナーもこれまでと同列に考えずに、「もしかしたら・・・。」という視点で今後の練習再開時の選手の状況については考えてもらいたいと思います。
 
 
 

シェアリングにしっかりと時間を使う

 
 
部活動休止期間中にそれぞれの選手がどのような過ごし方をしていたかは、指導者の想像を良くも悪くも超えるかもしれません。
 
「選手間でこれくらいはやっているだろう。」
 
という推測は合致しにくいと思います。
 
 
休止期間中にオンライン上でのやりとりや日誌をつけていれば共有がしやすいと思います。
 
最低でも、どのような日々を過ごしていて柔軟性や体力だけでなく、集中力や俗に言う“やる気”の具合なども共有しておくべきだと思います。
 
 
そしてチームメイト同士、指導者と選手間においては対話を好むタイプと立場的にも距離を置くことを好むタイプがいると思います。
 
今回ばかりはこれまでのタイプにこだわり過ぎない取り組みも大事な要素となります。
 
休止期間後にコンディションの問題やモチベーションの問題などで練習へ積極的に参加できないなどといったことが無いようシェアリングを行なっていきましょう。
 
「これまで行なって来なかったから・・・。」
 
ではなくこんな機会だからこそヒアリングとシェアリングを丁寧に、そして心身の状態を慎重に検討しながらの運動強度の調整をしていくことを強くお勧めいたします。
 
チームにそのような関わりのスポーツトレーナーや医療従事者がいれば、直接相談してし過ぎることはないと思います。(いつも以上に用心深く聞いてみてください)
 
 
もしいなければお答えできる範囲で返答いたしますので以下お問い合わせまで、懸念事項や相談したいことをご連絡ください。
 

お問い合わせ


 
競技やカテゴリーによってリスクの高い怪我を共有することや、状況によって効果的な強度設定やヒアリング、シェアリング手法について共有させていただきます。
 
 
そして最後に、まだまだ活動の場を与えられずに悶々とする選手たちへ
 
 
今こそ自分を見つめ、自分の伸び代について真剣に考え、環境に感謝して、この先の自分の人生や競技人生に対して具体的にそして建設的に考える絶好の機会です。
 
練習するだけが成長の機会ではありません。
 
自分を高めるためにできること
 
それは自分のことを誰よりも知ること
 
練習再開後に誰からヒアリングされてもどんなシェアリングの機会でも自信をもって具体的に答えられるこの1ヶ月間の振り返りを今から行っていきましょう。
 
 
長くなりましたが、ないものに嘆くことなく、あるものに感謝して今一度自分自身も最大限の準備をしたいと思います。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年03月21日

選手との信頼関係を深める3つのポイント

文:平山鷹也

 
何度言っても選手たちの行動が変わらない。
自分の想いが相手に伝わっている気がしない。
 
 
もしそれが1回だけではないとしたら、自分の行動や伝え方に意識を向けてみる必要があるかもしれません。
 
 
コミュニケーションとは本当に難しいもので、どれだけ伝わっていると思っても100%伝わることはほとんどありません。
 
 
会話はキャッチボールに比喩されることがありますが、距離や方向を考えずに投げっぱなしになっていませんか?
 
 
今回は言葉を届けるための3つの要素について考えてみたいと思います。
 
 

  • ①言葉の前提

相手と自分で同じ言葉を使っていても、その前提が異なっていたら誤解につながります。
 
 
簡単な例を挙げてみます。
「毎日たくさん水を飲もう」と言われた場合、あなたはどのくらいの、どんな水を想像しますか?
 
 
普段全く水を飲まない人からしたら1Lも水を飲めばかなりたくさんかもしれません。
 
私は毎日最低2Lは水を飲むようにしていますが、その上でたくさん飲もうと言われたら3~4L 程度を想像するかもしれません。
 
 
また、水に対しても色々なパターンがあります。
 
水道水でいいのか、ミネラルウォーターがいいのか、外国製の硬水などがいいのか。
 
 
上記のようにそもそもの文章の捉え方が違うのに同じ結果を求めたら、当然望んだ結果は得られません。
 
 
ここで必要なことは、
前提条件をしっかりと共有しておくこと、です。
 
今回の例で言えば、
「毎日水道水でもいいから最低2Lは飲もう。」
と言えば、最初よりは誤解が少なく伝えられるかもしれません。
 
 
 
 

  • ②優先表象システム

私たちは五感を用いて世界を認知・認識しています。
 
 
その五感を大きく3つに、
V(視覚:Visual)、A(聴覚:Auditory)、K(身体感覚:Kinesthetic)と分類します。
 
VとAはそのまま視覚情報と聴覚情報のことです。
 
Kは皮膚などの体性感覚や味覚、嗅覚などを含めてここでは考えます。
 
 
このV・A・Kという3つの感覚は全て同じ割合で活用している場合は少なく、個人によって優先的に使用している感覚があります。
 
それを優先表象システムと言います。
 
 
3つの表象システムにはそれぞれ特徴がありますので、いくつかご紹介します。
 
V(視覚優位タイプ)の特徴
・早口で声は高め
・手で視覚的な情報を再現しようとする
・「見える・見栄え・反映」などの表現が多い
 
A(聴覚優位タイプ)の特徴
・リズミカルで抑揚のある話し方
・会話を再現しようとする
・「聞こえる・言葉・声」などの表現が多い
 
K(身体感覚優位タイプ)の特徴
・ゆっくりとして間のある話し方
・目を閉じて身体感覚を感じながら話すことが多い
・「手ごたえ・~な感じ・冷たい性格」などの表現が多い
 
まずは自分に当てはめて考えてみてください。

 
注意点としてはあくまでも優位なタイプがあるだけで、誰しもすべての要素を持っています。
 
 
V・A・Kの説明はこの辺にして、実際のコミュニケーションの話に戻しましょう。
 
 
上手く話が伝わらない場合、このタイプが異なっている場合があります。
 
 
つまり、V(視覚)タイプの人の表現方法はK(身体感覚)タイプの人にとってはわかりにくい表現かもしれないということです。
 
 
1対1で会話をしている場合は、相手の言葉からどの表象システムを優位に使っているか判断して自分が使う言葉や表現を工夫した方が伝わりやすいかもしれません。
 
 
特に集団に対して指導するときはできるだけ色々なパターンで表現するように心がけてみてください。
 
 
私が気を付けている点を一部ご紹介すると、
見本を見せながら(視覚タイプ)、言葉で説明して(聴覚タイプ)、感覚的な表現で補足していく(身体感覚タイプ)ようにしています。
 
 
順番は反応見ながら変えますが、基本的にすべてのタイプに当てはまるように表現します。
 
 
この考えを使う場合、自分がどんなタイプか知らないと無意識に偏りのある表現になってしまうので注意してください。
 
 
 

  • ③手本力

こちらは心理学的な観点でのお話になります。
 
 
私たちはどうしても聞きたいように聞いて、見たいように見てしまいます。
(これを心理学では認知バイアスと言います)
 
 
例えば、体型もだらしなくて姿勢も悪いような人を見ると、その人の体型がだらしない理由や姿勢が悪い理由ばかり探そうとし、目についてしまいます。
 
そんな人から栄養や姿勢の重要性を説明されても素直に納得できる人は少ないのではないでしょうか。
 
 
もしそれが正しい情報だとしても、言う側の問題で伝わらないことは非常に多いです。
 
 
逆に体型も姿勢も良い人の言葉は信頼できると判断しやすくなります。
 
 
JARTAで手本力を重要視している理由の1つもここにあります。
 
 
しっかりとした手本を見せられるからこそ、相手の聞く準備が整うということです。
 
 
極端な話、野球を始めたばかりの少年とプロ野球選手から同じアドバイスを聞いたら、納得の程度が全然違うことは想像できると思います。
 
 
しかし、本当ならばそのアドバイスが自分に合っているかどうかが問題のはずです。
 
 
このように私たちは、何を聞くかよりも誰から聞くかの方が優先されてしまうことがあります。
 
 
だからこそ普段から信頼されるような行動、習慣、言葉使いが大切です。
 
 
 
 
 
いかがだったでしょうか。
 
 
言う側と言われる側のタイミングや、声の抑揚、トーンなど他にも伝えるための要素はたくさんありますが、今回は3つにしぼって紹介しました。
 
 
どれだけ多くのことを意識しても100%想いを伝えることは難しいかもしれません。
 
 
でもその50%を60%、70%にしていくことは可能だと思います。
 
 
なかなか自分が伝えたいことが伝わらないと感じている方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
 
 
全てはパフォーマンスアップのために。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2020年03月20日

音と動きの意外な関係

文:森 宜裕

 
みなさんは、運動を指導するときに「擬音語」は使いますか?
 
「もっと、グッと力を入れて!」
「サッと動いて!」
「そこでバーンや!」
 
などなどスポーツ現場や応援の席ではおなじみの声掛けかもしれません。
 
私たちは動きの中から耳には聞こえないその「音」を感じ取っているのかもしれません。さらには、動いておらずじっとしているときも音を感じています。「じっと」や「しーん」という擬音語が存在しますね。
 
子どもたちの遊びの中にも、動きに対する擬音語がたくさんあり、その表現は非常に豊かです。私たちも幼いころから自然にやってきています。
『謎の擬音語「デュクシ」の使い手』
なんてコマーシャルもありましたね。笑
 
 
日本語はもともと、擬態語や擬音が豊かです。
身体意識をいわゆる言語としてではなく、そのまま音として表すほうが伝わるからだと感じているから。
言葉は、身体の動きを脳で処理させてしまう抽象度の高い情報。一方、音は身体意識としてそのまま処理される可能性の高い、比較的具体度の高い情報です。
 
音を身体に訴えかけることで、言語以上の多くの情報をもたらすことができます。
 
 
 
運動指導をする際や、自分が動きを学習するときに意外とこの感覚が役に立つこともあります。
 
自分が動く際に動きというビジュアルの感覚だけでなく、音の感覚を取り入れます。すると、これまで上手くいかなかったものが、すっと解決出来たり、できているものもより完成度が上がったりします。
 
動きを形の連続としてだけとらえて、その切り取った場面を言葉で説明すると余計ややこしくなるのです。
 
世の中には、「こうなっていてほしい」「こうなっているべき」といった【結果の状態】を指示することが多いですね。
そうなると、そこに行きつく過程ではなく、そのときのフォームに焦点を置いた言葉を利用することになります。
 
けれども、多くの(特にジュニア期の)スポーツ選手に必要なのは、結果の状態を指示する言葉ではなく、【結果を引き起こす方法】です。この結果を引き起こす方法というのは、当たり前ですが、みんな等しく同じというわけではありません。同じ人でもその成長段階によって変わってきます。
また年齢が低ければ低いほど、指導がその語彙力に左右されることも多く一筋縄ではいかないものです。
 
ですが、「音」を使うことでこのあたりの問題を解決できる場面が存在します。
 
動きを音で表現し、その質感やリズム感を伝えることで、選手が動きに強弱をつけるようになったり、スピードを高めるきっかけになったりします。
心理状態に影響を与えることも少なくありません。
 
 
 
 
音と身体は密接につながりがあります。
動きのことを言葉でいろいろ言われると、固まってしまい逆に動けなくなるのは、脳ばかりが働いてしまうから。身体が個々の動きの組み合わせとなり全体のまとまりが失われます。
 
 
 
言葉は身体をときに分解してしまいますが、音は身体を全体のまとまりとして一つにする効果があるのです。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
現在募集中の森が講師を務める「JARTAトレーニングを“リズム”で読み解く」については以下より詳細をご参照ください。

JARTAトレーニングを“リズム”で読み解く


 

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2020年03月19日

基礎ってどこから?

文:岡元祐樹

 
 
「基礎的なトレーニングから始めていこう」
 
チームにおいて集団のトレーニング指導を開始していく際、そのように考えるスポーツトレーナー(以下トレーナー)は多いと思います。
 
いきなり複雑なトレーニングから始めると、難易度が高過ぎて選手の気持ちが乗ってこない、嫌になってしまうというリスクが容易に想像できるからです。
 
そういったリスクを考え、自分の考える基礎的なトレーニングを実施するのですが、それでも選手個人個人のレベルの違いを感じることがあります。
 
選手によって『できる』『できない』にばらつきがあるということです。
 
トレーニングの難易度をどれくらいに設定すればいいのか?レベルの高い選手に合わせるのか?低い選手に合わせるのか?悩むこともあると思います。
 
ここで注意したいのが冒頭に出てきた『基礎』という言葉です。
 
自分が考える基礎。選手が考える基礎。あなたが考える基礎。実は全て違うものになってしまうリスクがあるからです。
 
個々の捉え方が曖昧なままで「基礎的なトレーニングをやる」とアナウンスしてトレーニングを行った場合、選手によっては「基礎だから簡単すぎる。つまらない。」もしくは「基礎なのに難しすぎる。自信がなくなってしまう。」という心象を与えてしまうかもしれません。
 
このような事態はどちらもトレーニングへのモチベーションの低下を招いてしまうかもしれません。基礎という言葉の持つイメージを共有する必用があります。
 

 
今回の記事は、何気なく使う『基礎』という言葉を、しっかりと意図的に使うきっかけにしていただけるよう書き進めていきたいと思います。
 
 

基礎とは土台のこと?

 
基礎が大事。基礎を固める。基礎的な練習。
 
このように使われる基礎という言葉。辞書的には「ある物事を成り立たせる大もとの部分」という意味を持っています。
 
こう書くと、自分が頻繁に使う言葉であるにも関わらず、ものすごく抽象的であることに気付かされます。
 
繰り返しになりますが、抽象的ということは受け手によって解釈がばらつくというリスクがあります。
 
その結果、基礎的なトレーニングというのは競技や世代を問わずバラバラです。
 
例えば野球であれば素振りやシャドウピッチングを基礎と言うかもしれません。柔道であれば受け身、サッカーであればインサイドパスなどが基礎であるかもしれません。いやいや、その動きを可能にする筋力や柔軟性こそが基礎だと言う方もいるでしょう。
 
 
基礎という言葉をどう定義し、共有するか?
 
ここからは理学療法士でもある筆者個人の考えであり、定義付けでもあります。それを前提に読み進めて下さい。
 
基礎という言葉には建築用語として「建造物の荷重を支持し、地盤に伝える最下部の構造物」という意味もあります。
 
そのような観点から考えると、基礎というのは「身体の構造そのもの」と言えます。身体の構造という基礎ができていて、そこからその構造が機能を発揮し、動きに繋がっていきます。
 
例えば各関節の構造です。体重を支持する際の支持機構はしっかり働いているのか?動かす際はその動きを阻害する因子はないのか?
 
プロとして活躍するアスリートであっても、それら全てが完璧に備わっている選手というのは少ないです。子供だから柔軟性は問題ないということもありません。
 
そのことを前提に『基礎的なトレーニング』という言葉を使うのであれば、それは身体の構造を可能な限り正常化していくための取り組みということになります。
 
このように選手に説明できれば、前述した「基礎だから簡単、もしくは基礎なのに難しい」などのネガティブな心象をポジティブなものに変えられるかもしれません。できて当たり前のレベルにしないと次のトレーニングに進めないから、もしくは進んでも効果が出にくいということがイメージできるからです。
 
 
少し話は変わりますが、基礎と似たような言葉で『基本』というものがあります。これは「物事が成り立つためのよりどころとなる大もと」という意味で使われます。言い換えると判断や行動の指針という意味です。
 
基礎の持つ建築用語としての意味を振り返ると、基礎という言葉の方が基本という言葉より根底にある印象を受けます。
 
先日お亡くなりになった野村克也氏も著書の中で「何事もスキルを身につけるには基礎・基本・応用というステップを順に踏んでいくことが必要だ」と述べられており、基礎が基本の土台という認識でよいと筆者は考えています。
 
 
ここで一旦話をまとめます。
 
基礎的なトレーニングと一言で言うが、個々で受け取り方が異なる。
 
そこで基礎という言葉の定義付けが必要。
 
筆者としては、人が本来備えている身体の構造と定義したい。
 
となります。
 

様々な動画は『基本』かもしれない

 
基礎という言葉を定義したところで考えたいのが、目の前にある、もしくは頭の中で考えているトレーニングです。
 
最近は様々なトレーニング動画を目にすることができますが、それらは基礎のレベルをクリアしている選手による『基本や応用のトレーニング』である印象を筆者は抱きます。
 
もしそのトレーニングを取り入れるのであれば、見習うのはその根底にある基礎のレベルの高さです。
 
例えば立位で行うトレーニングであれば足関節の構造は気になります。足関節の前面にある前脛骨筋腱の周辺組織は硬くなっていないでしょうか?腱の内側の組織が硬くなることが多いのですが、それを放置しておくと足関節の底背屈の動きが正常から逸脱していきます。
 
足関節はただの一例に過ぎませんが、トレーナーはそのような観点からもアプローチを図り、選手のパフォーマンスアップに貢献できる必要があります。大きな建物の基礎は、外からでは見るのが難しいからです。
 
 

言葉を定義するとやるべきことが見える

 
「基礎ってよく使う言葉だけど、イメージが曖昧じゃないか?」
 
そんな筆者の未熟さから出発した今回の記事でしたが、言葉の意味を定義したことで学ぶべきことやトレーニングの選択方法について整理することができたと感じています。
 
また1つのトレーニングに対しても、基礎をどのレベルにおくかでそのトレーニングが枝分かれしていき、多種多様なトレーニングが思い付くようになります。
 
トレーニングの引き出しが少ないと感じているトレーナーは、たくさんの枝を出せるように要素の抽出を試みるといいかもしれません。
 
今回の定義付けにおいての『基礎』を構築していくためには人体の構造、特に関節の構造や動きを理解していく必用が生じてきます。その部分のケアやトレーニングが基本・応用そして競技の動きに繋がっていくからです。
 
関節の構造、機能、動きそして改善方法はJARTAのセミナーではコンディショニングスキルセミナーで学ぶことができます。
 
セミナー情報はこちらから

コンディショニングスキルコース



大きくて立派な建造物ができるように。地味で辛い基礎的なトレーニングを、少しでも楽しく継続していけますように。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2020年03月11日

広い視野と生活習慣

文:岡元祐樹

 
 
あるマンションのエントランスで、ゲームに夢中になっている少年たちを見かけました。
 
最近ではあまり珍しい光景ではありませんが、筆者は子供たちの服装に違和感を覚えました。
 
サッカーのユニフォームとソックス。
 
おそらくこれからサッカーの練習があるのか、それとももう終わったのか。
 
その光景を見て「視野の習慣について認識している人はどのくらいいるのだろうか?」と感じ、今回の記事を書きました。
 
 
視野には『中心視野』と『周辺視野』と呼ばれる視野があり、そこから得られる視覚情報はスポーツのパフォーマンスに大きな影響を与えます。
 
しかし現在の日本では『中心視野』に偏った生活スタイルが定着しつつあります。
 
そのことを理解しつつ日常生活を送るのと、知らずにただ気が向くままに過ごすのとでは見えてくる世界が変わってきます。
 

 
 

協調的に働く中心視野と周辺視野

 
今回の記事のメインとなる中心視野と周辺視野について説明していきます。
 
『中心視野』は物の姿形を正確に認識するための視野のことです。しかしその範囲は焦点を当てた注視点からほんの1~2度程度の範囲にすぎません。
 
例えば読書をする際、目は文字を中心視野で追いながらその文字を認識します。
 
 
一方、『周辺視野』は中心視野の外側の視野を指します。この周辺視野は動く物を察知する能力に長けています。その変わり、動かない物や細かい形などを認識することが苦手です。
 
例えば道を歩いている際、視野の右端の方から車(のような動く物)が近づいてきたので立ち止まったというようなシチュエーションがイメージしやすいかと思います。中心視野で正確に認識はしていませんが、周辺視野に入ってきたのでぼんやりとではあるが認識できた、という具合です。
 
 
この中心視野と周辺視野は独立して働くというよりは、協調的、つまりお互いの機能を発揮しながら視覚情報として機能します。
 
車を運転する際、中心視野で信号や看板を認識しながらも、周辺視野で他の車や歩行者の動きを認識できるので、ある程度の危険を察知しながら運転ができます。
 
逆に「やめよう、歩きスマホ」などのキャッチフレーズに代表されるように、中心視野でスマートフォンの画面を見ることに集中しながら歩いていると、人や物にぶつかってしまうリスクが高まります。
 
このように人間の生活において中心視野と周辺視野の協調性は重要です。そしてその人間が行うスポーツのパフォーマンスにも当然影響してきます。
 
筆者がそれを強く感じるのが、テニスの試合を観た時です。
 
例えばラリーから得点が入るようなシーン。トップ選手たちは相手選手の動きの逆をつくショットを打ち返します。相手選手は逆をつかれることになるので対応が遅れ、得点を許してしまいます。
 
このような得点シーンの場合、考えられるのは次の3つのケースです。
 
①たまたま打ったら相手の逆をとれた
②戦略的に相手の逆をとれるようにラリーを繰り返していた
③ボールを見ながら相手選手の動きも見えており、その動きの逆を突いた
 
①はただのラッキーです。
 
②は戦略を練り、決まったパターンの反復練習が必用になります。しかし相手が想定外の動きをするとボールを拾われる可能性が高まります。
 
③はその時のボールと相手選手の動きによってショットの方向を選択することができます。これは中心視野と周辺視野が協調的に働くことで認識できる対象が増え、スポーツにおいて有利になる能力と言えます。
※選択した通りのボールが打てるかどうかは別問題となります。
 

 
この能力はテニスのみならず、あらゆる競技で応用できます。サッカーであれば自分に向かってくるボールを認識しながら自分をマークしにくるディフェンスの動きが認識できます。そうすると、トラップをするかパスをするか?トラップならどの位置にボールを納めるのがいいか?の判断材料が増えます。
 
 

視野が狭い原因は生活習慣も影響する?

 
中心視野に頼りすぎ周辺視野を協調的に使えない選手、つまり球技などでよく見られる「ボールしか見えていない選手」は必ずいます。
 
そのような選手が視野を広げていくにはどうすればいいのか?残念ながら確立されたトレーニングは筆者の調べた範囲ではありませんでした。
 
しかし筆者が周辺視野を認識できるようになっていった経験談ならお伝えすることができます。
 
筆者はサッカーとフットサルを今も定期的にプレーしています。
 
筆者は高校~大学時代は典型的な『ボールしか見えていない選手』でした。自分のところにボールがくると、他の選手がどこにいるかわからなくなってしまうのです。
 
当時はそれが『普通』だったので、単純に「ボールを足で扱うスキルが足りないんだろう」とか「ボールが来る前の周囲の状況確認が足りないんだろう」という程度の認識でした。
 
これらの理由も中心視野優位になる理由にはなるのですが、外的認識力という能力を知ってから考え方が変わりました。
 
JARTAでよく使われる外的認識力という言葉は、言い換えると自分以外のものに対する認識力という意味になります。
詳しくはこちら→https://jarta.jp/about/concept/
 
この外的認識力を学んでいく中で、筆者は中心視野と周辺視野の協調性について考えさせられました。自分にはそれが足りないのではないだろうか?そしてそれをプレーに結びつけるための努力を始めることにしました。
 
まずは単純にプレー中にボールが来たら「ボールを見ながら周りの選手も見よう」と意識してみました。
 
これはかなり大変な挑戦でした。ボールの扱いも選手の動きを把握することも中途半端になるからです。かなりミスを重ねましたが、選手として『結果』が求められる立場ではない、つまりミスしても怒られるわけでもない環境でプレーしていたので、周りには迷惑をかけたかもしれませんがこの挑戦を継続しました。
 
このようにプレー中に中心視野と周辺視野を協調させようと努力していると、プレー以外の時間にふと気付いたことがありました。カフェでスマートフォンを見ていると「あれ?スマートフォンの画面を見ているけど周りの人が何しているか分かるな」という感覚に気付いたのです。始めてから2~3ヶ月のことです。
 
もちろん簡単な動きしか認識できませんが、それでも筆者には大きな気付きでした。多様な場面で中心視野と周辺視野が協調し始めたと感じることができたのです。
 
その後プレー中も少しずつ精度が上がっていくのを感じました。それが筆者にとっては『プレーの準備や予測』に活かされ『プレー中の余裕』に繋がったと感じています。大したレベルではありませんが。
 
さらにこの経験を深堀りすると、プレー中ではなくカフェ、つまり日常生活の中で能力の向上を感じたという点が重要です。なぜなら競技と一見関係なさそうな日常生活においても、競技力の向上に必要な能力の要素を使っているからです。本気で競技力の向上を目指すのであれば、日常生活から変化をもたらす必要があることを示唆しています。
 
少し話は変わりますが、球技では「しっかりボールを見て」という指導がなされることが多々あります。
 
ここまでの内容だとこの指導は良くないという印象を与える可能性がありますが、筆者はそうとも限らないと思います。基礎的な技術を身につける段階であれば、ボールの動きをしっかりと確認することは有効だと考えるからです。
 
その段階を経て、さらなる応用として周辺視野の能力も協調させることができてきたら理想だと言えます。
 
 

その競技はさらに面白くなる

 
中心視野と周辺視野の協調的な働きは、トップアスリートなどの特殊な人間だけが持っている能力ではありません。車の運転でも使われていると前述したように、多くの人間が持ち合わせている能力です。
 
ただ、冒頭でも触れたように現代では中心視野を使い過ぎる環境が増えています。スマートフォンやテレビゲームをするといった非常に狭い視野しか使わない時間が多くなっているのです。
 
スポーツにおけるパフォーマンスアップを考える上で、そのような生活習慣ももしかしたら見直す必用があるかもしれません。そして指導者はそのような生活スタイルの変化も前提条件として頭に入れておく必用があります。
 
その選手に広い世界を見せたいのであれば、視野が狭いことの原因を考える際に今回の記事の内容も考慮に入れてもらえればと思います。
 
ボールも見ながら周りも見ることができるとその競技はさらに面白くなる。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2020年03月05日

今こそ立ち止まり振り返ってみよう


 

文:赤山僚輔

 
現在多くの学校において、コロナウイルスの影響で休校およびスポーツ活動が休止を余儀なくされています。
スポーツに関わらず、医療機関や公共機関はじめ関係各所での皆様のご負担はきっと私の想像を超えるところにあると思います。
今回は特に休校の対象となった選手達に日々関わっている1人のスポーツトレーナーとして、またJARTAというスポーツトレーナー団体に所属している身としてお伝えできる範囲でこの機会をプラスに転じる方策について述べさせていただきます。
 
 
例外なく私自身もサポートチームでの部活指導の休止や全国大会の中止、チーム合宿の休止とこれまで経験した事がない事態が目の前に出現しています。
多くの指導者や発信者は自宅で実施できる学習やトレーニング・ストレッチなどを動画配信やオンラインで指導するなど様々な趣向を凝らしてこの境遇でも選手たちの為に行動を起こしています。
そのような指導を必要としている選手や指導者の皆様が本ブログをお読みの場合、JARTAにもオンライントレーニングプログラムの配信もあるので是非ご覧になっていただきたいです。

Online JARTA Training Program


 
ただ本日お伝えしたいことは上記ではなく、これまで多くの選手や部活動に関わり課題であると思っていた以下の点が今回の機会によって十分に解決可能であると考え記事にすることにしました。
 

課題1:やらされる事が多く自分の意思や自分の事を考える隙間がない

現在のジュニア世代のスポーツ業界において練習量や休暇の量や頻度について常に議論が行われ、怪我との相関についても様々場面で多くの研究や検証がなされてきました。
強化に関わる指導者にとっては時に休むことは脅威であり、ライバル選手やライバル校と差をつける為に少しでも多く、長くという思考は致し方ない側面はあると思います。
(もちろん効率重視で実施している多くのクラブや指導者もいるという大前提でお伝えしています)
 
そんな中で練習を繰り返す選手たちをみていると、日々練習をこなすことで精一杯で余裕がない選手が多い事が印象的でした。
余裕がないと目の前にあるタスクをこなすだけで1日が終わってしまうので、自分のことを考えるスキがなくなってしまうのです。
それは身体の事であり、心の事であり、またチームメイトとの関係性やこれまでの試合の振り返りなどが含まれます。
自分の事を考える時間がないということは自分の状態に耳を傾けられていないとも捉えられ、そういった選手ほどコンディションを維持する事が困難であったり、試合時に調子を上げる事ができなかったりしてしまいます。
これは選手が悪いわけでも指導者が悪いわけでもなく、ある程度の時間的な制約があり慣習もあり環境を抜本的に改革しにくい文化的な背景も問題の背後に内在していると考えています。
 
“主体的になれ”
そのように指導していても
自分の事を考えるスキがないと
自分にとっての意見や意思、何をどう行動するかという主体性の根源となる”思い”すら湧き出てきにくくなるのです。
 
 
 

課題2:何をどう振り返ればよいかが分からない。

これは特にジュニアアスリートにおいて該当するかと思いますが、チームスポーツであればチームのミーティングや試合の振り返りなどで現在の課題や今後の目標などを振り返り共有することは行われていると思います。
しかしこれを個人レベルに置き換えて、心身の問題や調子の波の問題、モチベーションなどいわゆるやる気の問題など自分のこれまでについて深く振り返る機会はあまり行われていないと思います。
どうすれば良いか分からなければやることもやる意義も見いだせません。
課題1と重なりますが、何をどうすれば良いか分からない場合、目の前の事象にただ取り組むだけで精一杯になる選手も少なくないと私は考えています。
 
 

解決の為の振り返り方法

いま、休校中で部活動もなく、これまでと比較して”時間がない”と嘆く選手はほとんどいないと思います。
 
これまで環境や時間や制約があったのである意味いいわけができていましたが、いまはそのような言い訳がしようもない状況です。
 
ただひたすらにトレーニングをすることも勉強することも、ストレッチすることも悪くはありません。
 
しかし、今だからこそできること。
 
今しかできない事を再考していくと、自分のこれまでを振り返ること。
自分の心身に対してゆっくりとじっくりと立ち止まって考えてみる事。
 
 
これがこの期間にできればそれは今後の為の本当に大きな財産になります。
 
トップアスリートやオリンピックを目指すような選手は、自分を見失わないように頻繁に”振り返り”という作業を繰り返します。
 
振り返る事で今自分が立っている位置を認識でき、不足を知り、足るを知ります。
自分に迷いがでてくると何にどういう理由で向き合っていくかが分からなくなります。
多くのプレッシャーや厳しい練習に耐え、更に前に進むには振り返りを繰り返し今の自分を俯瞰しつつ詳細に分析できていることがトップアスリートの条件にもなってきます。
 
程度の差はあれジュニアアスリートだからそれが出来ない理由はありません。
 
今回は最後に具体的に実施できる振り返りの方法を提示します。
是非時間がある皆様は実施してみてください。
実施して全く何も得られなければ、その内容を送付してお問い合わせ頂いても構いません。
是非チャレンジしてみてください。
 
振り返りその1
これまでの競技生活ですごく調子がよかった試合を3つ選び、その試合で調子がよかった要因(理由)をそれぞれ3つあげてみましょう。
振り返りその2
これまで練習中にイライラしてしまって練習に身が入らなかった時のことを思い出し、その時の共通点がないか3つ程度書き出してみましょう。
振り返りその3
これまで怪我をしてしまった時にその直前や少し前に怪我の原因になりそうな心身の問題がなかったか思い出して書き出してみましょう。
多く書き出せれば書き出せるほどに次に怪我をしそうな異変に気づけるようになります。
 
 
以上になります。
 
 
振り返る事で今の自分の傾向と対策が自ずと見えてくるはずです。
これからの過ごし方にも変化があるかもしれません。
 
本来はゆっくりと時間がなくてもこのような振り返りができると良いのですが、なかなかできない、できていない人ほどこの機会に取り組んでみましょう。
きっとその気づきや顕在化した事象がこれからの練習や試合時により良い状態へと導く一助となるはずです。
 
今回の想定外の事態をきっかけに普段の当たり前に感謝すると共に、当たり前を疑う良き機会になる事を願っております。
 
長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。
 

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2020年03月01日

スポーツにリズムが必要と感じているあなたへ

文:森 宜裕

 
「もっとリズムよく!」
「テンポを上げて!!」
 
 
スポーツの指導現場において、リズムやテンポに関するこのような指導の声を聞いたことがある人は多いでしょう。
 
私たちはどのようにして、動きの中のリズム感を流れている時間の中から感じ取っているのでしょうか?
リズミカルな動きとそうでない動きを脳がすぐに読み解くことができる仕組みは何なのでしょうか?
またどうしてリズム感のある動きを魅力的な動きと感じるのでしょうか?
 
このブログでは、このような疑問への考え方を、人類の進化の過程から考えていきたいと思います。
 
 
 
 
我々の遺伝子のほとんどは狩猟採集民族時代に形成されています。
 
600万年前から人類はチンパンジーとは別の道を歩み始めました。
250万年前には私たちと大体同じホモ属が出現し、20万年前に私たち自身であるサピエンスが出現しました。
 
この気の長くなるような期間のほとんどは狩猟採集生活であり、最後の1万年でようやく農耕・牧畜が始まりました。
 
農耕・牧畜は人類の歴史上600分の1しかないというわけです。
 
ですから、我々の遺伝子はほぼ狩猟採集民族時代に培われたと考えられます。
 
その非常に長い狩猟採集生活、私たちの祖先が暮らしてきた環境は、とても不確実性に満ちた世界でした。
 
つねに食料が保存されており、雨風をしのげる家があり、四季折々の行事が予定通りに進行される現代とは雲泥の差です。
 
狩りに出ても獲物が見つかるとは限りません。
天候の急な変化にはなす術もなく、現代の知識も当たり前のようにない時代の突然流行る疫病は脅威でした。
 
そんな先行きの見えない状況を生き抜くために、原始の人間は、あるシンプルな指標に目をつけました。
 
 
それが「反復」(=周期的なリズム)です。
 
 
天体の動きによる1年、太陽の動きによる1日。
時計が発明される以前、古代の人は、このような“周期性”を自然現象の中から見出しました。
 
季節による気候の変化を見抜き、日の出と日の入りから1日の生活のリズムを作ったのです。
 
 
そして、原始の時代に、確実に生き抜くためのカロリーを手に入れ、猛獣や伝染病から身を守る確率を高める方法は、自然界が作り出す特定のリズムに注目することでした。
 
特定のエリアを一定周期で動く獲物、同じ時期に同じ場所で実をつける植物、特定の季節に流行る伝染病ーーー。
 
不確実性の高い環境において、同じタイミングで何度も目の前に現れる事柄において、そこに着目し少しでも正確な予測を立てられた種族のみが、生き残る確率を高めてきた歴史が想像できます。
 
その結果、我々人類の脳の奥底には「反復」「周期的な変動や周期性」に強く反応するセンサーが備わったと考えられます。
 
何度も何度も一定間隔で繰り返されるものに魅力を覚え、「反復」にノルことに対してモチベーションを高めるプログラムが設置されたのです。
 
 
「リズム」が非常に重要な構成要素である、『音楽』という分化が世界中どこでも流行り続けているのは納得ができます。
 
 
そして、このプログラムは現代におけるスポーツ現場でももちろん発揮されています。
 
 
スポーツにおけるリズムとは・・・
緩急のある動きは、リズミカルに見えます。これは筋肉の収縮と弛緩がスムーズに行えている証拠。一流選手の動きがリズミカルなのはこのためです。
どんな動きも必ずリズムを持っています。それは頭の中にある「リズム」に「関節運動」を当てはめることで、「動き」が作られるからです。例えば「1・2・1・2」というリズムに足踏みが加わり、歩行という動きが生まれます。問題は頭の中にあるリズム。残念ながら日本人の多くは「1・2・3・4」という4拍子のリズムしかありません。しかし、音楽環境の豊富な諸外国人は8拍子、16拍子といった、日本人の2倍、4倍の細かいリズムを持っています。そのため、ブラジル人サッカー選手のパスのタイミングを日本人は読めません。
(一般社団法人スポーツリズムトレーニング協会 ホームページよりhttp://srt.or.jp/rhythmtraning/
 
 
動きの「形」のみにとらわれるのではなく、その周期性、リズムやテンポといった時間軸における動作に目を向けることは、スポーツ現場において非常に大切なことであることが感じ取っていただければ幸いです。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
現在募集中の森が講師を務める「JARTAトレーニングを“リズム”で読み解く」については以下より詳細をご参照ください。

JARTAトレーニングを“リズム”で読み解く


 

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2020年02月27日

新型コロナウイルス|今後のセミナーの開催について

 
セミナーへご参加いただく皆様ならびにご参加を検討中の皆様
平素よりJARTAをお引き立て頂きありがとうございます。
 
3月以降の弊社主催のセミナーに関しましては、少人数での実施など後述の感染症対策を実施した上で、原則予定通り開催いたします。
*ただし、状況変化に応じてやむを得ず開催を中止する可能性がございます。その際お申込者の皆様には早急にメールにてお知らせいたします。
新型コロナウイルスの影響を考慮し、参加をキャンセルされる方に関しましては、
キャンセルポリシーに関わらず、受講料の全額返金の措置を取らせていただきます。
キャンセルご希望の方は、下記お問い合わせまでご連絡ください。
また、感染拡大予防のため少人数でのセミナーを実施いたしますので、早めに受付終了としているセミナーもございます。
申し込みを検討されていた方は、後日開催されるセミナーにお申し込みください。
 

セミナー中の対応について

ご参加の方は下記感染症対策へのご協力をお願いいたします。
発熱咳くしゃみ全身倦怠感などの症状がある場合は、ご連絡の上参加を見合わせていただくなど、ご自身の体調管理にご留意くださいませ。
・体調不良であることが見受けられた方にはご退席をお願いする場合があります。また、体調がすぐれない方は遠慮なくお近くのスタッフまでお声がけください。
・必ずマスクの持参・着用をお願いいたします。
感染予防のための消毒液およびマスクを会場に設置する予定にしておりますが、現在2点とも入手困難につき不足/ご用意が難しい場合がございます。
大変恐縮ではございますが、出来るだけ予めご用意頂けますようご協力をお願い申し上げます。
・セミナー中は換気のため窓などの開口部を開けますので暖かい服装と、こまめな水分補給をお願いいたします。
なお、講師・スタッフはマスク着用にて対応させて頂きますことを予めご了承ください。
受講者様ならびにスタッフの健康と安全のため、ご理解、ご協力を賜りますようお願いいたします。
 

キャンセルについて

・弊社の都合によるセミナー開催中止
・新型コロナウイルス を考慮してのキャンセル
につきましては、全額返金いたします。
キャンセルされる場合は必ず受講者ご本人様よりご連絡ください。
 

お問い合わせ

キャンセルも含め、セミナーに関するお問い合わせは下記メールアドレスに
「氏名」「申し込みセミナー名・開催地域」を明記の上、ご連絡ください。

*お問い合わせをいただいてからご返信までお時間をいただく場合がございます。
順次ご返信致しますので、回答までしばらくお待ちいただきますことをご理解くださいませ。
セミナー担当事務局:seminar@jarta.jp



2020年02月26日

自分を知ることは、他者を知ること


 
文:平山鷹也
 

目次

 

    1. 1. 自分と他者
    2. 2. 逃げてきた過去に徹底的に向き合う
    3. 3. 自分探しとは、潜在意識の海に潜っていくこと
    4. 4. 自分を形成する、先天的要素と後天的要素
    5. 5. 自分と他者に境界線はない

 
 
 

1.自分と他者

自分が習得するのに苦労した技術やトレーニングほど、他者が苦労していく過程を理解できる。

 
逆に自分が苦労せずにできたことができない人を見ると、なぜできないのか理解できない。
 
これはスポーツトレーナーをしていなくても、多くの人が実感できることだと思う。
 
人は、いつでも自分と他者を比較して理解しようとするからだ。
自分という比較対象がない事象については理解できないと判断してしまうことが多い。
 
 
 
ここに、自分を知ることの意義がある。
 
 
 
自分という人間をより深く知れば知るほど、多くの人との共通点を見いだせるようになる。
それはすなわち自分の理解がそのまま他者を理解するための材料として使えるということだ。
 
例えば、私は小学生のころに始めた野球をカテゴリやレベルは違えどずっと今でも続けている。
その一方で飽きやすくミーハーな一面もあり、野球以外の習い事は3年以上続いた記憶がない。
水泳、そろばん、ピアノ、塾、居酒屋バイトなど。
 
たったこれだけのことを知るだけで、1つのことに熱中して周りが見えなくなる人も、
集中力がなくてなかなか1つのことを続けられずに悩む人のことも理解する材料を持っていることになる。
 
人は誰しも様々な要素をもっている。自分を知るという過程において、本当に何人もの自分に出会ってきた。
 
それを言語化し、顕在化することができれば、多くのクライアントに対して最適な自分を見つけやすくなる。
もしくはそれらが原因で悩むクライアントを救うヒントになるかもしれない。
 
しかし多くの人は自分という人間は1人だと思っている。だからこそ理解できなかったり、争いが生まれたり、拒絶が生まれたりする。
 
私は、幼いころからあることがきっかけで、自分という人間が2人いることを強く強く意識していた。
 
ここからは、その理由も含めて少しだけ私の自分探しについて書いてみたいと思う。
 
 
 

2.逃げてきた過去に徹底的に向き合う

私がまだ保育園の頃、家族からの告知に激しく動揺した。
(詳細は割愛させてもらいますが、今でも両親とは仲が良いです)
 
それからの約20年間、私の中にはいつも、
「自分のことは誰にも共感してもらえない(けどしてもらいたい)と思う自分」と、
「誰にも頼らずに1人で生きていけることをひたすら周りにアピールする自分」がいた。
 
もちろん無意識で。
 
 
あえて名前を付けるなら、寂しがりな鷹也と、強がりな鷹也である。
 
この2人の鷹也は裏表の関係でありながら、どちらも人とのコミュニケーションを拒否する性質を持っていて、どれだけ仲良くなった友達でさえ、100%心を許すことはできなかった。
 
 
そんな自分がいることもなんとなく感じながら、でも向き合えずにいたところ、ある試験に落ちた。
 
そこでのフィードバックで言われたことが、私の人生を大きく変えるきっかけとなった。
 
 
「自分自身がクライアントに対してもっとオープンマインドになる必要がある」
 
 
全てを見透かされているような気がした。
本当の自分を隠して、相手にも自分にも嘘をついてる人間が、相手のことを理解できるはずがないと気付いた。
 
 
そこから、私の自分探しという終わりのない旅が始まった。
 
 
当時の試験官だった方のサポートも受けながら、まずは自分自身の心に正面から向き合ってみた。
 
 

(幼少期の写真)

 
様々な手段を用いて自分の過去と向き合っている中で気付いたことは、あまり感情の起伏がなくいつも冷静でいられると思っていた自分の中に、実はとてもたくさんの感情があったということだった。
 
しかも感情の起伏がないのではなく、自ら感情を抑え込んでいたことまで理解できた。
 
1人で生きていくためには感情に流されちゃいけない、自分の感情が相手にばれることも弱点を見せることだからうまく隠して生きていかなければならない。
 
そんなマインドセットを小さい頃から積み上げてきていたことに気付いてしまった。
 
 
ここまでを理解した段階で、他者に対してオープンマインドになれない人に対する感度は非常に高くなった。
 
「あ、この人は何か心に抱えているものがあるな、でもそれを誰にも(もしくは数人にしか)伝えられなくて苦しんでいるんだな。」
 
 
そしてそれがアスリートであれば、胸椎や胸骨の硬さに直結するかもしれないし、消化できない出来事を抱え込んでいるせいで、消化器の不調をもたらしているかもしれない。
 
 
もしその問題を自分が解決すべきと感じ、クライアントもそれを望んでいることがわかれば、もしも自分だったらどんな場所で、どんな雰囲気で、どんな時間ならそれを伝えやすいかイメージしやすくもなった。
 
 
まさに他人事が自分事になった瞬間である。
 
自分のために始めた自分探しだったが、気付いたら他者を理解する能力も成長していた。
 
 

3.自分探しとは、潜在意識の海に潜っていくこと

人の意識には、「潜在意識」と「顕在意識」がある。
 
普段意識していることは顕在意識、そしてすべての行動や考え方に影響を与えていると言われているのが、普段は自覚することすらできない、潜在意識だ。
 
 
文献にもよるが、顕在意識は意識全体の1%未満で、私たちの思考のほとんどが潜在意識によるものであるらしい。
 
 
そして潜在意識は、過去の経験によって形成されていくこともわかっている。
 
私の例でいえば、幼少期に誰も自分のことは理解してくれないという認識をしたせいで、
「人生は自分だけの力で生きていかなければならない」と潜在意識に刷り込まれてしまった。
(これを心理学ではイラショナル・ビリーフ(非道理的な思い込み)と呼ぶ)
 
だからその後いくら同じ境遇や自分よりも大変な過去を持つ人に出会ったり、本当の意味で信頼できると思える人に出会っても、「自分1人で生きていかなければいけない」という考え自体を変えるのは難しい。
 
なぜなら顕在意識では幼少期のトラウマと今の考え方が結びついていないからだ。
 
自分が今考えているような顕在意識は、その100倍以上もある潜在意識から形成されている。
そしてその潜在意識は自分の過去にすべてがある。
 
だからこそ、潜在意識という深い深い海に潜っていくことは、「今の自分」を知るために非常に大きな要素であると考える。
 
JARTAにおいては、自分自身を内観することを「内的認識力」として言語化しているが、
それは身体感覚や意識状態だけでなく、潜在意識の要素も大きく関わっている。
 
ある場面で緊張したり身体が硬くなったり、逆にある状況下ではリラックスできたり、
これらの意識Ⅰに対して新しい意識Ⅱを作って克服したり利用したりするのも1つの手段だが、
潜在意識と向き合い、その理由が明確になれば設定を積み重ねることなく解決できることもある。
 
 
人前で発表するのがものすごく苦手で、緊張しすぎてしまう場合でも、過去に人前で大きな失敗をしてそれを親や友達に責められた(と本人が思っている)ことが潜在意識にあるのかもしれない。
 
それに対して、新たな意識Ⅰを設定してそれを作るルーティンを決めてしまうことも1つの作戦である。
 
しかし上記の潜在意識が原因だとわかれば、他の対策ができるかもしれない。
 
例えばそのときの出来事を両親(や友達)と思い出として話してみる。
そこですごく恥ずかしかったと伝えてみると、実は周りの人はそれほど気にしていなかったり、むしろすごく良かったと感じていることさえある。
 
 
こんなちょっとしたことで、潜在意識は書き換わる。
でも潜在意識に気付けなければ、ずっと対症療法が続いてしまうかもしれない。
 
 
もし自分のクライアントで、いつもピンチの場面で緊張して思うようなプレーができないと悩む選手がいて。
 
緊張したときに現れる身体症状(呼吸、胸郭、アウターマッスルの過剰収縮など)に対する対処法や日頃のケアを指導することはできても、本当の意味で克服する手段を構築するのは難しいかもしれない。
 
 
でもそこに潜在意識という観点を持っているトレーナーがいれば、もう1つ別の観点から解決策を探すことができる。
 
 
他者に潜在意識という海に潜ってもらうためには、自分はそれ以上に深く潜っている必要がある。
 
スキューバダイビングのインストラクターも自分より深いところへクライアントを潜らせることはできないように、潜在意識への潜り方もまた、自分探しの中で模索していく要素である。
 
 
 
 

4.自分を形成する、先天的要素と後天的要素

これまで述べてきた、「潜在的要素」とは、どちらかというと後天的要素が強い。
つまり、人生の中で起きた出来事によってその後の選択が変わってくる、ということだ。
 
 
では次に、先天的要素における「自分」というものにも向き合ってみたい。
 
先天的要素とはなんだろうか。
わかりやすいのは一卵性双生児の例だと思う。
 
 
一卵性双生児を生まれた瞬間に異なる環境で育てさせるという研究があるが、そこでは指しゃぶりなどの癖は全く同じだったが、性格は異なっていたと報告されている。
 
ここでの性格という表現が曖昧ではあるが、指しゃぶりという癖は先天的要素が強く、性格は後天的要素が強いと、この研究においては言えるだろう。
 
 
指しゃぶりや性格が先天的か後天的かを述べたいわけではなく、人は誰しも持って生まれたものと徐々に形成されていくものがあるということである。
 
 
私は先天的なものとして、家系(遺伝)、生年月日に関連した九星気学や星座などを考えてきた。
 
家系は理解しやすいかもしれないが、実はそれ以外の要素も取り入れていくと面白い発見がきっと見つかる。
 
 
そのようにして調べていくと、どの要素でも共通することが2つあることに気付いた。
 
 
1つは、個人的で独立的であること。
もう1つは、繊細で感性豊かであること。
 
 
前者はすごく当てはまるが、後者は全く心当たりがなかった。
 
 
そこでこう考えた。
前者は先天的にも後天的にも強調されやすい人生で、
後者は後天的要素によって隠されているのではないか。
 
 
もともと繊細で感性豊かであるはずだったが、それを押し殺すことが幼少期に必要だった。
 
でもそれが今はもう必要ないのであれば、先天的に持っている感性はこれからの大きな伸びしろとなる。
 
このように考えていくと、後天的要素と先天的要素をうまく活用すればもっともっと伸ばせる要素や、場面に応じて意識的に補完していく必要がある要素などをある程度は分類できるようになる。
 
 
この考え方は、スポーツトレーナーとして選手やチームをサポートする際にも非常に役立つ。
 
対象選手の先天的要素を事前に把握する、という意味でもそうだが、
硬いから、身体操作ができないから伸びしろ、だけではなく人種や体格など先天的な要素から考えられる(考えるべき)ことが爆発的に増えるからだ。
 
それがチームであれば地域の特徴や学校やチームの歴史などがそれに当てはまる。
 
世界で戦う上では当然のレベルで考慮することかもしれないが、生まれながらの特徴、地域差や学校の特徴、背景・歴史的要素に対する考え方が大きく変わることで、国内でのサポートにおいてもとても意味があると感じている。
 
 
 

5.自分と他者に境界線はない

自分を知るほど、他者を知ることができるようになる。
 
 
冒頭で述べたように、自分が経験したことであれば想像しやすく理解も共感もしやすいことが多い。
 
しかしそれだけではない。
自分という人間の歴史やそれが形成した潜在意識、様々な関係性の中で生まれる先天的要素を知れば知るほど、自分とは全ての関係性の一部でしかないと実感する。
 
全ての関係性の一部でしかない自分と、同じく一部でしかない他者との境界線はなんだろうか。
 
 
もともと1つだった地球に人が生まれ、縄張り争いをした結果、国境という境界線が生まれた。
 
それと同じように、我々も自分と他者との境界線を無理やり作っているのではないだろうか。
 
 
 
最新の科学や、昔からある宗教、各時代の天才たちも、自分と他者との境界線は曖昧であると指摘している。
 
 
分子レベルのミクロな視点で見ると、人と外界の境界線はかなり曖昧となり、
どこからが自分で、どこからが自分以外なのかよりわからなくなる。
 
そんなことを知ってか知らずか、「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチは自然界に線などないと言って、
人の輪郭線をぼかす手法、スフマートを発明している。
 
いくつかの宗教においても他人と自分を区別することなく1つになろうとすることを説いている。
(ワンネスの概念など)
 
 
これらの話が正しいかどうかということではなく、昔から現代まで、いつの時代も自分と他者との関係性は人々の興味の対象であり続けていることが面白い。
 
さらにAIが進化してどんどん機械化していく現代において、人の感情や神社仏閣に関連するような、
いわゆる目に見えない事象に対する書籍やテレビが増えてきている。
 
 
私自身もまた、自分探しが進めば進むほど境界線というものは自分が作っているだけで、実際には存在していないのではないかと思う出来事に数多く出会い、体験してきた。
 
 
 
知識として知るだけでなく、自身の体験として実感できればそれを体現する方法も意味も理解が深まる。
 
それを体験するための1つの手段が自分探しである。
 
 
スポーツトレーナーとは、他者である選手に徹底的に向き合い、その選手の人生にも大きな影響を与えうる職業だと思う。
 
そんな大きな責任を伴う仕事を全うするために、
日々自分に向き合い続ける姿勢を忘れずに鍛錬を続けていきたい。
 
 
自分を知ることは、他者を知ることだから。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年02月23日

サッカーのドリブルで予備動作を少なくするためのコツ


 

文:福原良太

 
サッカーのドリブルでディフェンスを抜くためのコツとして、色々なことが言われています。
 
・ボールコントロール
・上半身の操作
・相手との間合いや角度の取り方
・スピードの緩急
 
ネットや雑誌などでドリブルのコツを調べてみると、効果的なコツがたくさん書いてあると思います。
 
そんななか今回お話しするのは、少しディープなお話。
 
すり足ドリブルです。
(すり足ドリブルは話を分かりやすくするための、この記事のなかだけの造語として使います。)
 
すり足ドリブルができるようになると、予備動作を極限まで少なくできるので、ディフェンスに動きを悟られずに抜きされるようになります。
 
 

すり足ドリブルとは?

すり足ドリブルとは、簡単に言うとドリブルのときに「足を上げない」身体操作になります。
 
相手を抜き去る瞬間から2、3歩程度は足底と地面との距離を最小限にしていくドリブルの方法です。
 
選手に初めて伝えるときは、「地面と摩擦が起きるくらいにすり足で」と口頭で説明するときもあります。
 
“すり足”と聞くと、「忍者みたいに小刻みにコソコソコソと動くのかな?」と感じる人もいるかもしれませんが、歩幅は大きくても問題ありません。
(歩幅が小さくても大きくても地面と足底の距離を最小限にできるのが理想的です。)
 
そんなすり足ドリブルにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
 
 

すり足ドリブルのメリット

最も大きなメリットは、ディフェンスに予備動作を察知させない点です。
 
予備動作が察知できないディフェンスは、反応がコンマゼロ秒遅れます。
 
その遅れたタイミングで、ディフェンスを抜きされるのです。
 
体の動きがダイナミックに見えるクリスティアーノ・ロナウド選手も、じつは地面と足裏との距離が近いです。
 
クリスティアーノ・ロナウド選手は、フェイントはダイナミックですが、相手を抜き去る瞬間はかなり地面と足裏との距離が近いのがわかります。
 
よくあるのは、ディフェンスをより速くスピードで抜き去ろうとするあまり、身体の動きが雑になってしまい、抜き去る瞬間に足を高く上げてしまうモーション。
 
このモーションがあると、ディフェンスは対応しやすくなってしまいます。
 
また、よりハイレベルになってくると、ドリブルで抜き去るのも難しくなるでしょう。
 
抜き去ろうとしたけど、ディフェンスの対応も早かった場合、足を高く上げてしまうと、ボールタッチの方法が限られてしまいますが、地面から極力足を浮かさないようにしておけば、その後のボールタッチもしやすくなるメリットもあります。
 
 
そんなメリットのあるすり足ドリブルですが、習得するためのポイントがあります。
 
 

すり足ドリブル習得のためのチェックポイント3

習得のためには、以下の3つがチェックポイントになります。
 
・地面を蹴って移動している
・地面を見過ぎている
・前モモの筋肉の緊張が高くなっている
 
それぞれ解説します。
 
<地面を蹴って重心の移動をしている>
地面を蹴って重心の移動をしていると、どうしても足が地面から離れてしまい、すり足ドリブルが難しくなります。
 
地面を蹴らずに重心の移動をするためのポイントとしては、上半身の動きを意識する点です。
 
サッカーは力の伝導が上半身から下半身へ伝わっていきます。
 
上半身の動きが不十分だと、それを補うために下半身、特に地面を足元で蹴って移動することになってしまうのです。
 
選手によっては「みぞおちをスライドさせてステップするイメージ」と伝えるとうまく身体操作のできる場合もあります。
 
これは、みぞおちをスライドされることで、重心の上下動を抑制するとともに上半身の動きを利用してステップをできるようにする言葉掛けです。
 
ほかにも、「足で蹴って体を進めるのではなく、体全体が一つの塊のようにスーッと進むように移動する」という伝え方をする場合もあります。
 
また、JARTAトレーニングでいえば、大腰筋ストレッチや胸セパレートなどが効果的なワークになります。
 
 
<地面を見過ぎている>
地面を見過ぎると、足が引っ掛からないように足を上げたくなってしまいます。
 
地面を見過ぎてしまう理由には、プレーの余裕が関わっている可能性もあります。
 
たとえば、以下のようなことです。
 
・ボールコントロールスキル
・次のプレーのイメージができていなくてボールキープするために下を見てしまう
→結果、地面が意識下に入り過ぎてしまう
 
それ以外にも、身体操作の側面からいうと、「地面と自分の足との距離感覚」が不十分な可能性があります。
 
これは、体の各部位がどこにあるか、という内的認識力が問われるところです。
 
 
<前モモの筋肉の緊張が高くなっている>
前モモの筋肉、具体的には大腿四頭筋になります。
 
大腿四頭筋は通常、膝関節を伸ばすときに大きく作用する筋肉です。
 
ですが補助的に、モモを上げる動き(股関節を曲げる動き)の作用もあるのです。
 
モモが上がってしまうと、当然、地面から足が離れやすくなります。
 
では、大腿四頭筋が過度に緊張しないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?
 
裏モモの筋肉、ハムストリングスを競技場面で使えるように身体環境を整えれば、大腿四頭筋の過度な緊張を抑えた身体移動が可能です。
 
とはいえ、そもそも競技場面で活かせるハムストリングスなのかを判断するのも難しいと思います。
 
ハムストリングスの重要性や評価については過去に書かれた以下の記事を参考にしてみてください。
 
>>ハムストリングスが硬いと大腰筋が機能しない!
 
 

まとめ

今回はサッカーのドリブルで予備動作を少なくするすり足ドリブルについて解説させていただきました。
 
ディフェンスをドリブルで交わす際には、予備動作を少なくする身体操作は必須です。
 
ドリブルを得意としている選手はぜひ、参考にしてみてください。
 
また今回の「すり足」という部分で言えば、ドリブルをするオフェンスだけでなく、ディフェンス側の身体操作にも関わる部分もあります。
 
ディフェンスも相手の動きを察知したあとに、「素早く動く」ためには予備動作は少ないに越したことはありません。
 
今回の記事が少しでも選手の参考になれば、幸いです。
 
 

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2020年02月19日

浅く広くそして深く


 

文:赤山僚輔

皆様は目の前の選手のコンディショニングの際に、どのような器官に対してアプローチを選択していますか?
筋肉・骨・筋膜・皮膚・経絡・内臓など
少なからず筋肉が得意、関節調整が得意、筋膜のねじれや皮膚の評価が得意など一長一短があるのではないでしょうか?
しかしこのような一長一短は一時的には仕方がないとしても学びや成長の方向性として得意は伸ばしても苦手が残らない方がよいという観点について本日はお伝えしたいと思います。
 
 

一つの階層だけで評価治療を帰結するのは危険

私は理学療法士として勤務し始めて最初の頃は、実習で魅力的な治療を展開していた先輩療法士の影響で関節系の治療にのめり込んでいました。
関節の調整で一瞬で筋肉の緊張状態や痛みが変化する手技に圧倒され、関節系の治療流派をたくさん学びました。
その延長でカイロプラクティックの技術を学びにいき、器具も使ったりしながら治療に応用していました
そんな中、目の前のクライアントの症状や悩みに向き合う上で、軟部組織の短縮や滑走不全などを抜きにして機能の改善が果たしにくいことを実感し筋肉調整や、筋膜調整、皮膚運動学などを学ぶことになりました。
 
得意なアプローチや定型的な評価があることは再現性を高める上で重要であることには間違いありません。
 
しかしうまくいかない、症状が改善しにくい事例を前にして”いつも通り”だけでは解決への遠回りをしている可能性がある事は想定できる事態だと思います。
 
いつも関節の歪みを評価しているといつもと違う筋肉の張りや皮膚の硬さを見逃してしまうかもしれません。
 
人は自分の都合の良い解釈で目の前の景色を見る傾向があります。
みたいと思ったように目の前の現象がみえてしまうという側面もあります。
そのように自分自身の得意な側面のバイアスがありながら目の前のクライアントをみているという自覚の有無が重篤な問題点を見逃すか否かの大きな分かれ道でもあります。
 
 

視点を増やす事は浅く広くだけではない

観点を増やす前に、徹底的に同じ観点や分野に対して掘り下げていく事は上達の過程において非常に重要なステップの踏み方です。
治療者としてセラピスト・スポーツトレーナーとして自分の強みを生かすために徹底的に得意なコンディショニングスキルを深めていく事は有意義な手法としてある前提で。
現場で求められる事は目の前のクライアントの症状を解決する事であり、パフォーマンスを上げる事であります。
そこにスポーツトレーナー側の”いま学んでいる治療手技”という要素はほとんど関係ないと私は考えています。
選手は治療手技を選べません。
どんな手法があるかを知らない選手も多いでしょう。
そんな対象に対してスポーツトレーナー側の裁量で詳しく評価されている側面と見過ごされている側面。
あるいは詳細にコンディショニングされる側面とスルーされてしまう側面があったのでは、局所的には解決しているように感じられても選手全体のパフォーマンスを振り返った時にマイナスの学習となっている可能性もあるのではないかと考えています。
視点を増やす事は広く浅くでどっちつかずになるように感じる瞬間があるかもしれません。
しかし観点として知らなければ掘り下げて学ぼうとする行動へと移すこともできません。
私は東洋医学の観点に出会って、なんでもっと早くに素直に受け入れて自身のコンディショニング含めて選手へ還元する為の材料として準備をしてこなかったのだと思いました。
 
角度を変えると簡単なケアで解決する手段も多くあります。
慢性化する痛みは難しい手技でなければ治らないというのは治療者側の大きな思い過ごしです。
きっかけとして多くの観点に触れてもらうことをJARTAのコンディショニングスキルコースでは重要視しています。
きっと自分の得意不得意に気づけると思います。
その先に深める領域を選択できれば、現在は多くの治療セミナーがあり学ぶ事はできます。
JARTAは一つの治療手技を伝えることよりも、現場で求めらえる
“手段に囚われない”
という概念が体現できるようにセミナー内容を構成し、お伝えしています。
 
もし目の前の選手に対して解決できない事例があるのであれば、一度JARTAのコンディショニングスキルコースで多くの観点からのアプローチに触れてみることをオススメします。
 
きっと目の前の選手の悩みを解決する一助が眠っていると思います。
 
そしてそれを体現しようと現場で活動する講師陣との出会いによって
その先の学びに対して知的探究心がくすぐられるはずです。
 
自分自身も多くの方との出会いで新たな視点が増え、知的探究心がくすぐられることを楽しみにしております。
 
JARTAコンディショニングスキルコースの受講はベーシックセミナーの受講が必須となっております。

ご興味がある方はぜひ下記より詳細をご覧ください。

BASICセミナー


 
コンディショニングスキルコースの詳細、日程は以下よりご参照ください。

コンディショニングスキルコース


 
多くの方との出会いによりJARTA理論も進化していくことを心より祈念しております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年02月17日

「テンポライズ トレーニングセミナー」リニューアルのお知らせ

 
平素よりJARTAオフィシャルサイトをご覧いただき、誠にありがとうございます。
 
 

先日募集開始いたしました「テンポライズ トレーニングセミナー」ですが、ただいまページをリニューアルしております。

 

お申し込みされた方、申し込みを希望される方には大変ご迷惑をおかけしておりますが、
以下日程で開催予定としておりますので、今しばらくお待ちください。

 
大阪会場
2020年3月28日、29日
10:00~16:00(受付開始9:30~)
靭公園テニスセンター会議室3
大阪市西区靭本町2-1-14
 
東京会場
2020年4月18日、19日
10:00~16:00(受付開始9:30~)
会場現在調整中
 
ご迷惑をおかけしておりますが、何卒よろしくお願いいたします。
 
JARTAセミナー事務局



2020年02月17日

意識再考2 -意識強化とは-

文:岩渕翔一

前回
・スポーツにおける「意識する」ことは脳内身体表現を強化することを「意識した」プログラムが必要であるということ。
・意識を顕在化することが身体パフォーマンスに直結する脳内身体表現をアップデートしていくにも非常に重要であるということが示唆される。
 
大まかにはこのような結論に至ったところまでを解説した。
 
前回の記事はこちら
意識再考 –序章–
 
今回はこの2つをさらに深掘りしていこうと思う。
スポーツにおける「意識する」ことは脳内身体表現を強化することを「意識した」プログラムであるとは具体的にどういうことだろうか。
 

脳内身体表現を強化することを「意識した」プログラムとは

人が運動を行うには、正しく自身の身体を認識している必要がある。運動を行う際は、あらかじめ実行する運動の計画を立てて適切なタイミングでその運動を実行する。この運動の計画は主に筋収縮の制御や調整、タイミングを決定している。一方でこの計画を立てる際、空間の中にある身体を適切に認識しつつ、空間の中にある自身と物体との位置関係、空間の中を移動する際に時間軸を主としたスピード調整などを適切に行う必要がある。
つまり、
・筋収縮を適切に制御できること
・時間と空間の中での身体および運動を正しく認識し運動計画を立てていること
 
この2つが脳内身体表現の強化に必要であるということである。
 
過去の研究でこれらが実際、脳内のどの部位で処理されているかは一定の知見が得られている。適切なタイミングでその運動を実行するには、多数の筋骨格系を動員し運動プログラムを立て実行する必要があるが、これには「運動領野ネットワーク」が強く関与している。
また、多数の感覚情報の統合で構成した空間情報と、時間軸も考慮した運動計画、実行した運動のモニタリングを行うには「前頭−頭頂ネットワーク」が強く関与している。
 
この「運動領野ネットワーク」と「前頭−頭頂ネットワーク」2つの強化がどうやら意識強化に重要らしいことが伺える。
 
少しわかりやすくするために例を出しておこう。例えばスクワットをする時。
一般的には、膝をつま先より前に出さないことや、足圧中心の垂直線上にバーベルが常にあることを意識しながら行う。膝をつま先より前に出さないことは股関節を軸にした運動を行いハムストリングスや大殿筋に刺激を入れるためである。もう一つの足圧中心の垂直線上にバーベルが常にあることは空間の中で身体とバーベルの位置関係がどうあるかに注意を向けている。それが結果的にハムストリングスや大殿筋、股関節内転筋群に刺激を入れるに適したアライメントになる。
一方で、「ケツで踏ん張る」ことを意識させたり、ハムストリングスや内転筋群をさすってから行うこともある。これらは筋肉そのものに注意や意識を向け、結果的に上記に提示したような運動様式や運動アライメントになっていることを理想とする。
ここで重要なのは目指す運動がどういったものなのかを明確に持っているということだ。トレーニングを行う上でのキューイングは異なるが、最終的に理想としている運動様式は同じである必要があるということ。
 
(運動領野ネットワーク優位)
筋肉意識→空間の中で理想的な運動アライメント→理想とする運動
 
(前頭−頭頂ネットワーク優位)
空間の中での理想的な運動アライメント→理想的な筋収縮→理想とする運動
 
大まかに分けるとこのどちらかのパターンで理想とする運動を行えるようにしていく。この際、どちらのパターンが得意でどちらが苦手か。ここにその選手の特徴や強化すべきポイントのヒントが隠されている。

 
前述したように、脳内身体表現の強化には、運動領野ネットワークと前頭−頭頂ネットワークの両方が必要だ(図参照)。これはつまり、得意な方ばかりをすると意識の強化に繋がりにくいということを示唆しており指導の際は特に注意が必要だ。アライメントや構造に注意を向けるのが良いのか、筋そのものに注意を向けるのが良いのか。ここは評価と強化のポイントの一つだ。
 

意識とイメージの違い

 
前回の記事で書いたように、意識には顕在意識と潜在意識がある。潜在意識には本人も認識していない意識が隠されていることも少なくなく、それは例えばトラウマや人格形成、思考に及ぶ。
しかし、イメージは違う。イメージは具体化できてこそイメージだ。「イメージが湧かない」と表現することがあるが、湧かないイメージはイメージではない。そういった場合はまずイメージを作るための作業が必要で、手本を見せたり、運動の一部を呈示し手掛かりを掴めるよう補助する。その際、どのように動くかだけでなく、「どの関節をどのように動かすか」や、「どの筋を優位に働かせるべきか」など具体的なものも呈示する。
また、イメージの生成はこのようなオンラインなものだけではない。例えば、「その動きを可能にするためのトレーニングをイメージしてください」や、「160kmのボールをホームランするイメージをしてください」などオフラインのイメージ生成にも着手する。
 
ここまで読めばもうわかるだろう。イメージとは身体脳内表現を強化する一手段なのだ。イメージすることは、運動領野ネットワークや前頭−頭頂ネットワークを活性化する手段になる。
 
意識したりイメージすると逆にパフォーマンスが落ちることがあることは、ここまでですでに解説できている。要は、理想とする運動を作る最短距離のプロセスは人によって異なる。イメージも同じでイメージの生成にもあらゆる面で人差がある。
仮に、運動そのものが既に理想的なものであっても、違うことを意識させた際にできなくなってしまうのは、この記事で解説した脳内ネットワークを踏まえれば往々にしてあり得るということだ。
ただこれに関してはネガティブに捉える必要は全くない。目的と原因さえ明確にしておけばタイミングを見誤ることはないし、最終的にはさらなるパフォーマンスアップに繋がるトレーニングになるはずだ。
 
 
今回2回に渡って「意識」というものを取り上げた。
実際「意識」や「イメージ」というものはスポーツ界では頻繁に用いられる言語であるにも関わらず、その中身はあまり深く追求されていなかったように思う。
そういった現状から、脳科学をベースに可能な限り具体的に「意識」を捉え、すでに既知のものをベースに私見を交えて考察した。
今回のコラムがなんらかの形で選手やチームのトレーニングに活かされ、トレーニングの在り方を考える一助になればと思う。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 
<参考資料>
1)太田順,内藤栄一,芳賀信彦:身体性システムとリハビリテーションの科学 1 運動制御 東京大学出版会,2018
2)近藤敏之,今水寛,盛岡周:身体性システムとリハビリテーションの科学 2 身体認知 東京大学出版会,2018
3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門改訂第2版,協同医書出版,2016
4)Mark Rippetoe著,八百健吾監訳:スターティングストレングス 第3版 医学映像教育センター,2019
 

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その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 

 



2020年02月15日

投球動作に必須ー2種類の体幹回旋機能

文:山内大士

 
今回は体幹回旋機能と投球動作の関係性を解説し、投球に必要な体幹機能を実際に高める方法をご紹介します。
 
 
 

身体を閉じるような回旋と身体を開くような回旋

 
まずは基本事項を簡単に確認します。
体幹回旋は脊柱の中でも胸椎がその大部分を占めます。
 
参考:身体を捻るには胸椎の動きが必要
https://jarta.jp/training/17755/
 
しかし実際のスポーツ動作では単なる胸椎の回旋ではなく、屈曲や伸展を伴いながらの回旋が多く生じます。
簡単に表現すると、”身体を閉じるような回旋”と”身体を開くような回旋”とでも言えるでしょうか。どちらの回旋も重要であり、偏りなく双方の能力を高める必要があります。
 
投球動作においては、胸が張り肩の外旋が最大となるMER(Maximum External Rotation)までは”身体を開くような回旋”、リリースポイント〜フォロースルーにおいては”身体を閉じるような回旋”が重要となってきます。
 
※投球動作における重要事項についてはこちらの記事をご参照ください。
投球障害から選手を守れ!―投球フォーム編―
https://jarta.jp/training/17451/
 
MERまでに何らかの不調を訴えるケース、例えば「腕がしなる時に違和感がある」「胸が張れずに腕の振りが小さい」という場合には、開く回旋の機能を高めていきます。
 
リリースポイントやそれ以降のタイミングで不調を訴えるケース、例えば「腕が身体から離れすぎる」「ボールに指がかからない」「フォロースルーで肩や肘に負担がかかる」、このような場合には閉じる回旋の機能を高めていきます。
 
余談ですが、これらどちらの回旋が得意か不得意かは投球動作以外にも関連してきます。
普段から猫背でしなやかな動きが苦手な選手は開く回旋を、反り腰で腹に力を入れることが苦手な選手は閉じる回旋を、それぞれ確認してみてください。
 
 
 

2種類の体幹回旋機能の改善方法ー可動域編

 
これからご紹介する方法は、不慣れな方には負荷が大きすぎる可能性もあります。ゆっくりと慣らしながら行い、特に腰や背中に不安のある方は決して無理をしないようにしてください。
 
まずは開く回旋の可動域。身体の前方にある腹斜筋や胸筋の柔軟性を獲得することと、肩甲骨の内側からやや下側にある背中の筋肉が使われる感覚が重要となります。胸から開くという意識づけのために、空いた手は胸に当ててリズム良く押し広げるような感じで行います。


 
次に閉じる回旋の可動域。投球動作においてこの動作が必要となるのは、前の腰や肩が開かないように並進していくフェーズと、リリースからフォロースルーにかけてのフェーズです。これはどちらも臀筋群が力を発揮した状態であるため、臀筋〜腰背部を全体的に伸長させていくようにします。

 
どちらのトレーニングも動画では反動をつけて行っていますが、これらの姿勢をとるだけできつい方や、身体を捻る感覚がわかりにくく腕だけの動きになってしまう方は、まず静的なストレッチとして行うと良いでしょう。その際には深呼吸をすることでさらに効果を高めることができます。
 
 
 

2種類の体幹回旋機能の改善方法ー筋出力編

 
先程のような方法で可動域を広げることはもちろん大切なのですが、獲得した可動域を自分の力で制御することができなくては、逆にパフォーマンスが落ちることもあります。
 
そのため、筋出力という観点も欠かせません。
投球動作における体幹機能を考えるうえで大切となるのが前鋸筋と腹斜筋の出力です。


 
腹斜筋は体幹回旋の主動作筋です。前鋸筋は腕を前に振る際に肩甲骨を安定させる筋肉で、腹斜筋と協調して働きます。
 
開く回旋が生じる際、すなわち体幹の割れが生じ胸は張られ肩が外旋するまでのフェーズでは、腹斜筋〜前鋸筋は伸ばされた状態で力を発揮する形になります。
この機能を高めるためのトレーニングがこちらになります。


 
このトレーニングは、足を着いている側の前鋸筋~腹斜筋が伸ばされた状態での機能を高めることができます。ポイントは腰を反らさずに骨盤の位置をできるだけ高く保つことで、それにより腹斜筋が働き腰椎が安定し、胸椎〜肋骨エリアでの動きを強調することができます。
また回旋した状態から戻す部分を素早く行うことで、伸ばされた筋肉を素早く収縮させる練習にもなります。
 
閉じる回旋が生じるリリースポイント以降においては、腹斜筋〜前鋸筋を十分に縮めながら働かせる必要があります。
そのためのトレーニングはこちらです。

 
このトレーニングでは、腕を着いている側の前鋸筋~腹斜筋をしっかりと収縮させる機能を高めることができます。腰が反ったり支える側の肩が首に近づいてしまったりすると効果が薄れてしまいます。バランスを崩さないようにゆっくりと大きな範囲を動かすことで、より質の高いトレーニングとなります。
 
 
 

どんな野球選手にも大切な体幹トレーニング

 
体幹回旋の可動域を広げ、広げた範囲を動作の中で使いこなせるようにトレーニングすること。
これがパフォーマンスアップに役立つことは言うまでもありませんが、痛みのある選手がリハビリをする際にも非常に大切です。
 
私は整形外科に勤めているため投球障害の選手を見ることが多いですが、体幹機能に伸び代のない選手というのはまだ見たことがありません。
肩や肘の軽い症状であれば、体幹機能の改善だけで問題が解決してしまうケースもあります。
 
もちろん、今回ご紹介した方法が全てではありません。もっと難易度の高い応用的なトレーニングが必要な場合もあれば、より基礎的なところから見直す必要があるケースもあります。
 
近日中に全国各地で投手用トレーニングセミナーと投球障害workoutが開催されます。
投球に必要な体幹機能の高め方をより詳細に知りたい方、また体幹以外の部位に関する機能改善方法を知りたい方はぜひご参加ください。
 
投手用トレーニングセミナーは、
「球速アップ」と「コントロール向上」に焦点をあてた理論とトレーニング(およそ80種)を紹介します。
 
詳細は以下より

投手用トレーニングセミナー


 
 
投球障害workoutでは、
肩、肘、腰が大半を占める投球障害において、そのリスクの評価と予防改善法を包括的にお伝えします。
 
詳細はこちら→https://business.form-mailer.jp/fms/33221bad116280
 
 
以下各地での開催予定です。
 
大阪  2月23日(日)
東京  3月28日(土)
福岡  4月11日(土)
 
*JARTAセミナーへの参加歴がなくてもご参加いただけます
*どちらか一方のみの受講も可能です(両方受講された方は割引あり)
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp



2020年02月12日

努力を結果につなげるためのトレーニング

文:伊東尚孝

 
トレーナーが選手と関わる上で重要な事とは何か。
その一つに、選手の努力の方向性を正しく導くことが挙げられます。
どんなに優れたトレーニングであっても、目の前の選手に適していなければその努力はパフォーマンスアップに繋がらない可能性があります。
そのため、選手が本当に必要とするトレーニングを我々は追求し続けなければなりません。
 
努力する方向性をパフォーマンスアップへ導くことができれば、選手は結果を出すチャンスを増やすことができます。
 
そして、そのチャンスをさらに広げるためにはもう一つ重要視すべきことがあると考えます。
それが「時間」の制限です。
 
大会に向けて練習する1年という時間の制限。
中学や高校の3年という時間の制限。
選手生命という時間の制限。
 
時間軸は様々ですが、その時間に人生をかけてトレーニングに取り組んでいる選手にとっては、毎日の練習時間はもちろん中期・長期の時間すべてをパフォーマンスアップのために費やす必要があります。
 
いくら良い方向性へ向かっていても、選手に与えられた時間内にパフォーマンスアップができなければ目標達成されないかもしれません。
 
つまり、「努力の方向性を導く」と同時に、「選手に与えられた時間を最大限に活かすトレーニング」を選択しなければなりません。
 
では、それらを考慮したトレーニングとは一体何なのか。
それを紐解くためには、ジュニア世代の運動能力について触れる必要があります。
 
 
 

過去10年で運動能力が低下している理由

 
文部科学省は子どもの運動能力が低下してきていることを表明しており、平成20年度の調査開始以降の推移をみると、令和元年度は小・中学生の男女ともに低下していると報告しています。
その背景には環境の変化などが大きく影響しており、「身体を動かす遊び」が減少していることが示唆されていますが、それに加えてもう一つ大きな理由があると考えます。
 
それは、一つの競技ばかりに特化した運動しか行っていないということです。
 
これがどういう影響を与えるかというと、
「サッカーでボールを蹴ることが得意でも、マット運動の前回りや後ろ回りはできない」
という現象が起こる可能性があります。
前回りという運動構造には、脊柱のしなやかさ、股関節・足首の柔軟性、平衡感覚の修正(バランス能力)、重心コントロールなどの要素で構成されています。
これらの要素は、サッカー選手にとって重要であることは言うまでもありません。
サッカーとマット運動は似ても似つかないように思えますが、運動構造を紐解けば共通点が現れます。
 
つまり、サッカーの上達のためにボールを蹴る時間を増やすよりも、
その時間をマット運動などの全身を使ったトレーニングに当てることにより、様々なパフォーマンスを上げるきっかけになると考えます。
 
特定のスポーツにしかない特殊な動きだけでは、身体操作に偏りが生じます。
マット運動だけでなく、公園での遊びや馬跳び、かけっこのような、いわゆる「全身を使う遊び」によって、運動能力が向上するといわれています。
 

 
これはJARTAトレーニング4原則のうちの一つである、「全身操作性の原則」に当てはまります。
 
全身を自分の思い通りに操作するためのきっかけとして、子どもの「遊び」は存在すると考えます。
 
 
 

全身操作とは何なのか

 
ではプロ選手やそれを目指す選手も、同様に全身を使ったトレーニングをすればいいのでしょうか。
 
ここで重要なのは、単なる全身運動ではなく、
「方向性」と「時間を最大限に活かす」要素を含んだトレーニングを選択することです。
 
「方向性」に関しては、以前”選手が本当に必要とするトレーニング”の記事でも示したように、
その競技の特性を分析し必要な運動構造を抽出し、さらに選手の動きを分析し足りない要素を抽出することでトレーニングの方向性を導き出すことができます。
 
では「時間を最大限に活かす」とは、どういうことなのかをもう少し掘り下げます。
選手にとって時間を活かすとは、
1.怪我をしない
2.運動効率が良い(疲労しにくい)
3.一つのトレーニングで多くの可能性を引き出す
このようにまとめられると思います。
この3つを達成するために、「全身操作性の原則」が重要になります。
 
〈1.2について〉
ほとんどのスポーツでは、全身が協調的に運動しなければ成り立ちません。
しかし、同じ動作を繰り返すことで偏りのある「クセ」として身体に蓄積されていきます。
その結果、局所への負担も蓄積され疲労感も感じやすくなります。
一方、全身操作が可能になれば、ある運動を達成するための「協力者」を増やすことができます。
どういうことかをサッカーで例えると、
サッカーは急激な方向転換が頻発するスポーツであり、脚だけの力に頼ることで下肢の筋肉への負担が増大します。最悪の場合、肉離れや腱断裂を引き起こします。
そこで上半身の動きも方向転換に「協力」することによって、下肢の筋肉への負担を軽減することができる上、動きのキレも向上することが可能になります。
つまり、全身を細部まで操作することができれば、偏りなく運動することができるため局所への負担を軽減することができます。
 
〈3について〉
同じ競技の中でも様々な運動様式があります。
サッカーでは、ステップ・シュート・ジャンプ・ドリブル・・・といった具合です。
それぞれが別の運動としてトレーニングを行うと、非常に効率が悪いです。
サッカーとマット運動のように、各運動様式の構造を分解すれば必ず共通点が存在します。
その共通点をトレーニングすることができれば、一つのトレーニングで多くのパフォーマンスを上げることが可能となります。
その共通点を「方向性」で抽出されたトレーニングと合わせると、やるべきトレーニングがさらに明確になってきます。
 

 
さらに全身操作には、単なる動きだけではなく
「空間・速度・力・タイミングの操作」も必要になります。
先ほどの急激な方向転換で説明すると、
・ブレーキするために踏み出す脚を一瞬硬めると同時に、体幹部の脱力と腕の急激な振りによってターンする方向へ向かう。
・さらに脚は硬めたままではなく膝を抜いて素早くステップをする。(再び硬めて着地する)
・方向が変わることにより姿勢が傾き、腕の振りによってバランスを保ちながら加速する。
同じ身体の中でも「剛」と「柔」の切り替わりが連続して行われ、次の動き出しのために、めまぐるしく姿勢が変化するための全身操作が行われています。
 
JARTAトレーニングには、これらの要素が組み込まれたトレーニングが多くあります。
 
 
 

まとめ

 
アマチュア選手でもトップ選手でも、与えられた時間には限りがあります。
しかしパフォーマンスアップのためには、選手自身が努力し続けるしかありません。
その努力を結果へつなげるための武器として、全身操作のトレーニングがその一つだと考えます。
 
また全身操作と同時に、全身の連動を反射で引き起こすことも相互して活用できると、パフォーマンスアップにつながります。
 
JARTAトレーニングは映像で多く排出されていますが、実際に指導を受けることでより深みのあるトレーニングになります。
さらにパフォーマンスを向上したい選手は、ぜひJARTAトレーニングを利用してみてはいかがでしょうか。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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2020年02月10日

意識再考 −序章−

文:岩渕翔一

「意識する」
スポーツでよく耳にする言葉だ。
しかもその言葉の汎用性は高い。
ある時には、「下腹部に力を入れるよう意識しろ!」と身体の部位を意識させることがあったかと思えば、「滑らかに動けるよう意識しろ!」と動きそのものを意識させることもある。
さらに意識が向けられる矛先は身体や動きに留まらない。
「ボールの弾道を意識しろ!」と道具に向けたり、「応援してくれる人がいることを意識しろ」と他者に向けられることもあるし、「勝ちを意識し過ぎた」と未来へ向けられることもある。
意識とはそもそも何か?そんなテーマで今回の記事を書こうとここまで書き進め出して湧いてきた疑問がもう一つある。
上記に挙げた例を見て欲しい。全ての例において意識をイメージに置き換えることができる。
「下腹部に力を入れるようイメージしろ!」
「滑らかに動けるようイメージしろ!」
「ボールの弾道をイメージしろ!」
「応援してくれる人がいることをイメージしろ」
「勝ちをイメージし過ぎた」
意識とイメージはどう違うのだろうか。
さて。現段階で終着点を設定していない今回の記事。意識とはなんなのか?意識とイメージの違いは?意識やイメージがパフォーマンスに与える影響は?どんな結論が待っているのか。お付き合いください。
 

意識とは

JARTA認定トレーナーコースのベーシックでは、「軸」や「ハラ」などスポーツでよく聞くこういった形のない言語は意識であると解説している。意識には濃い薄いがあり、例えば一般的には足より手の方が意識は濃い。その意識が濃い部分をみてみると、濃ければ濃いほどより具体的にその部位をイメージできたり、意図した通りに動かすことができる。つまり、意識の強化とはその意識を具体化し、具体的な部位(筋肉や関節)や動きを、様々な刺激を入れながら繰り返すことがフィジカル強化であり身体操作であり意識強化であるというロジックだ。
このような背景から推測されるのは、意識とは「脳内身体表現」ではないかということ。脳内身体表現とは、脳内における身体の表現、脳の中の体を表象する脳内神経活動の実体を意味しており、古くから提唱されている身体図式や身体像の概念をも包括する。脳内身体表現は、運動生成時に感覚器からの情報に基づき筋骨格系への指令値を決定するために用いられる。また、これは、刻一刻の感覚器からの感覚情報や筋骨格系からの運動情報により更新される。1)
 
つまり、運動を行ったり上達する過程における、脳内の複雑で緻密な神経活動全般を、「意識」という言葉で一般化し、広く使われているのではないかということ。特定の部位や動きを意識することで身体の疲労はあまりあまり感じていなくても、脳疲労を感じるとよく聞かれることもそう考えると合点がいく。
 
また、脳内身体表現は自己身体に対する意識である身体意識を生成する。身体意識は「身体所有感」と、「運動主体感」から構成される。ざっくり解説すると身体所有感とは自分自身の身体(或いは特定の身体部位)は自分自身のものであるという意識である。運動主体感とは運動をしているのは自分自身であるという意識である。
 
こちらは文面をそのまま捉えると当たり前すぎる気がして少しスポーツ場面ではイメージし難いかもしれない。少しスポーツから離れた例を出して考えてみる。まずなんらかの脳障害により運動麻痺が起こったとする。そうすると思い通りに身体を動かせなかったり、種々の感覚が麻痺して動く感覚や触られた感覚が分からなかったりする。そうなると上記のような2つの身体意識を感じない(感じにくくなる)ようになることは想像できるだろう。
 
ではこれをスポーツに置き換えてみよう。前述したように意識には濃い薄いがある。これは言い方を変えれば濃いところは脳内身体表現が洗練されており、薄いところはスポーツレベルにおける脳内身体表現機能不全であるといえる。もう少し具体的な例を1つ挙げると、視覚情報がなくても自信をもってコントロールできる動きと視覚情報がないとどう動いているのか不安になる動きがあるだろう。これは感覚統合や身体像、身体意識などによる脳内身体表現をより良く更新できる可能性を示唆していると考えられる。
 
ここまでを少しまとめてみる
・意識には濃い薄いがある
・意識とは脳内身体表現でありそのネットワーク全般を指すのではないかということ
・脳内身体表現は2つの身体意識「身体所有感」と、「運動主体感」を構成する
・脳内身体表現である身体所有感と運動主体感の強化が意識の強化である
ということである。
つまりスポーツにおける「意識する」ことは脳内身体表現を強化することを「意識した」プログラムが必要であるということである。

身体や動きに対する意識は方向性が明確になった一方で、それ以外のものに対する意識はどう解釈すべきか。
例えば何も考えずサラサラと書いた上記である。
 
【脳内身体表現を強化することを「意識した」プログラムが必要であるということである。】
 
このような身体以外に向けられる「意識」。
「ボールの弾道を意識しろ!」と道具に向けたり、「応援してくれる人がいることを意識しろ」と他者に向けられることもあるし、「勝ちを意識し過ぎた」と未来へ向けられることもある。
 
これらは脳内身体表現とは全く異なる解釈が必要になるが、比較的馴染みのあるもので解説可能だ。
 

潜在意識と顕在意識

潜在意識と顕在意識というのは多くの人が聞いたことがあるだろう。端的にいうと潜在意識とは無意識であり、顕在意識とは認識できる(している)意識である。答えを先に述べるが、身体以外のものに向けられる「◯◯を意識する」は潜在意識や或いは潜在的にも有さない意識を顕在化しましょうということだ。
 
一般的には顕在意識は意識の総量の3%程度で、残り97%は潜在意識であるとされている。ここで考えなければならないのは大きく分けて2つだ。
・潜在意識の総量を引き上げる
・顕在意識の使い方
である。
潜在意識の総量を上げるの意味だが、大多数の意識が潜在的であるのならば、人の思考やパフォーマンス・感情は潜在意識が鍵を握っているといっても過言ではない。だとするのならば、その総量を底上げする必要がある。そういう意味で顕在意識の使い方は重要だ。経験すること、学ぶこと、何に重きを置いて課題に取り組むかなど。より多くの事象やモノ、過去未来など多くのものを、顕在化することを積み重ねることで潜在意識の総量も上がりおそらくパフォーマンスは上がる。
しかし、顕在化することのネガティブな側面も考慮しなければならない。たった3%の顕在意識を場面場面に応じて使いこなせなければ逆にパフォーマンスを下げるリスクも孕む。勝利を意識しすぎてパフォーマンスを落としてしまったり、失敗を恐れて消極的になってしまうのがその典型例だろう。
また、ステップアップを目指して、ある特定の意識を重点的に顕在化した場合にパフォーマンスを一時的に下げることもあるだろう。
これらは起きる現象の原因を把握しておかなければならないし、ステップアップが目的なのであれば行き着く先の仮説とその過程の中で起こりうることを明確にしておかなければ検証が困難になる。
であるのならば、意識を顕在化することが身体パフォーマンスに直結する脳内身体表現をアップデートしていくにも非常に重要であるということが示唆される。
 
 
今回はここまでです。
 
次回続編第一弾として、
【脳内身体表現を強化することを「意識した」トレーニングプログラムとは(仮)】
を配信いたします。
次回2020年2月17日(月)に配信予定です。
 
<引用文献>
1)太田順,内藤栄一,芳賀信彦:新体性システムとリハビリテーションの科学 1 運動制御 東京大学出版会,2018
<参考資料>
1)高岡英夫:意識のかたち 株式会社講談社,1995
2)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門改訂第2版,協同医書出版,2016
3)宮口幸治:ケーキの切れない非行少年たち 新潮社,2019
 

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投手用トレーニングセミナー
2月23日(日)大阪 10:00〜16:00
3月1日(日)名古屋 10:00〜16:00
3月28日(土)東京 10:00〜16:00
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3月14日(土)沖縄 15:00〜18:00
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2月23日(日)大阪 16:30〜18:00
3月1日(日)名古屋 16:30〜18:00
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JARTAベーシックセミナー
3月14日(土)沖縄 9:00〜14:45
3月22日(日)大阪 10:00〜16:00
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その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 

 



2020年02月09日

その壁を1人で乗り越えられますか?

 

文:赤山僚輔

 
 
 
“刀を研ぐ”
 
自己研鑽をする上でよく言われる表現であり
 
よく例えられる比喩で
 
“錆びたノコギリで一生懸命に大木を倒そうとしていても時間も労力もかかる”
 
そのノコギリを丁寧に研ぐ作業によって一時的にそのノコギリを研ぐ時間は取られ
 
寄り道をしているような感覚に囚われますが
 
結果的に大木を倒す為の時間や労力は少なく済みます。
 

 
 
この比喩を体現するには2つの課題があると私は考えています。
 
 

大木を見極める目

 
ひとつは、大木の大きさや倒そうとしている幹の太さをしっかりと見極める事。
 
 
自分が抱えている課題や業務、そして壁やハードルがどれくらいで終えれて、乗り越えられるのか
 
これは対象物をしっかりと見極められないと判断できません。
 
多くの事象においてこれを過小評価して自分1人で乗り越えようとしている選手やスポーツトレーナーをこれまでにたくさん見てきました。
 
私自身はこのようにJARTAで講師として活動しているのは、向かうべき課題が自分1人では成し遂げることができないと顕在化しているからです。
 
JARTAの講師をする目的は、何かを伝えることが目的ではなく自分の失敗を共有し同じ失敗を繰り返して欲しくないからであり、これから向かうべき課題に向かって一緒に成長していける仲間探しをしているからなのです。
 
 
その仲間が活動を始めて5年以上が経過し、想定していたよりも多いか少ないかというと、数の問題ではないなと最近考えています。
 
 
でも確実に言えることは曖昧であった自分の考えやなぜ失敗したかという課題に対して共有できる仲間が増えることで同じ失敗を繰り返しにくい環境へと自分を置くことができるようになりました。
 
 
 

自分を見極める目

 
そして大木の比喩の2つの目の課題なのですが
 
それは自分持っているノコギリの性能をしっかりと見極めることです。
 
最初はどんな武器も道具も最大限の性能を持ち合わせているでしょう。
 
しかしメンテナンスを怠るとどんどんとその性能は低下します。
 
車のオイル交換もそうですし
 
靴の手入れもそうでしょうか。
 
 
それをスポーツトレーナーに例えると
 
どんなに素晴らしいと言われる治療手技やトレーニング理論を習得してもそれを使いこなす自分自身の身体が自由自在に使えなければ宝の持ち腐れになります。
 
手で手技を実施する限り、上肢の身体操作やその土台となる脊柱や自身の軸の安定性など。
 
自分自身の身体操作の精度を上げ続けることなくして、武器を使いこなすことができないのです。
 

 
刀を研ぐと聞くと
 
実際に持っている武器を手入れするような表現ですが、スポーツトレーナーにとってその刀とは自分自身の身体であると私は考えています。
 
 
ここにも私自身がJARTAで学びを継続する意義になりますが、私は身体が非常に硬く、身体のあちこちに痛みや不調を抱えるセラピストでありスポーツトレーナーでした。
 
 
でもJARTAに出会って徐々に身体が変化し、身体操作を武器にしてアスリートに関わることが今はできています。
 
その武器を研ぎ澄ますには自分の身体に向き合い続けるしかありません。
 
まだまだ自由に使えない身体に課題はいっぱいですが、JARTAには底なしに成長続ける身体操作のツワモノが大勢います。
 

 
彼らの背中を追いながら真似をしているだけで、年々自分の身体が自由に動くようになってきました。
 
 
目の前の大木の大きさを見誤らないように、一緒に目標を共有し、もし可能であれば一緒にその大木を倒せる仲間をJARTAは求めています。
 
そして一緒にノコギリを研ぎ続けられる仲間を求めています。
 

ぜひご興味がある方は以下のページより詳細をご確認いただき、赤山に会いに、JARTAに会いに来てください。
 

BASICセミナー


 
きっと気づけなかった自分の可能性を感じる時間になると思います。
 
 
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp
 
 

2020年02月05日

コントロール向上の鍵

文:岩渕翔一

 
全ての投手にとって球速とコントロールは投球の生命線になるといっていいでしょう。
その2つがあってこそその先にある変化球や配球が生きてきます。トレーナーにとっても球速とコントロールは最も基礎的で重要な投手の土台になるスキルのため、この2つを軸にトレーニングメニュー作成に当たることが多いのではないでしょうか。
 
球速アップのトレーニングは比較的イメージしやすいはずです。単純にボールに加わる物理的な力が大きくなればなるほどスピードは上がります。そのため、基礎トレーニングである筋力強化や可動域改善、バランス強化が球速向上に直結しやすいからです。ただし、扱う力が大きくなればなるほど身体にかかる負荷も強くなるため、これらのトレーニングは投球障害予防と同時進行で行われる必要があります。
 
もう一つのキーワードである「コントロール」。コントロールは球速アップのように単純にはいきません。筋力強化や可動域改善といった基礎トレーニングがコントロール向上に直結するイメージはあまり湧いてこないのではないかと思います。実際、コントロール向上を目的に最も取り組まれているのはフォーム固めです。投球パフォーマンスは能動的パフォーマンスにあたる為、反復練習によるフォーム固めがコントロール向上に最も有効です。しかし近年、投球制限に関する多くの問題提起があるように、フォーム固めを目的とした過度な反復練習は投球障害発生のリスクは孕んでいることも事実です。
 
その為、障害リスクを最小限に抑え効率的にパフォーマンスアップを図るためには、やはりここでも基礎的なトレーニングが重要になります。今回はそのうち、
 
・自身のイメージ通り身体を動かすためのトレーニング
・どんな状況でもフォームを安定させるためのトレーニング
 
この2つを紹介します。
 

自身のイメージ通り身体を動かすためのトレーニングとは

 
まずは自身のイメージ通り身体を動かすためのトレーニング。自分自身のパフォーマンスを映像で確認した際、「自分のイメージとかけ離れた動きをしている自分」を見たことがないでしょうか?イメージと実際の動きにズレがある状態ではパフォーマンスの安定も向上も期待できません。
そのための基礎トレーニングとしては運動やコントロールする部位を限定的にし、丁寧に一回一回確認しながら動かすトレーニングです。例えば肩関節屈曲は上肢下垂位の状態(屈曲0度)から最大挙上位(屈曲180度)まで可動します。それを90度、60度、120度、45度など色々な角度できちんと止めれるようにトレーニングします。この時、色々なスピードで取り組むとより効果的です。
自身のイメージ通り身体を動かすためのトレーニングをもう一つ。これはいわゆる身体操作のトレーニングですが、現状できない動きやぎこちない動きをトレーニングとして取り組むことです。いろいろな動きを滑らかに行えるようになることで身体コントロールの性能や精度全般の質が上がることが期待でき、これはコントロール向上にも繋がってきます。
 
どちらのトレーニングにも
・イメージ通り身体を動かす(操作する)こと
・行った運動を修正し次に活かすこと
 
この2つが鍵になります。専門的には「フィードフォワード」と「フィードバック」と言い、運動学習効率を高めるために非常に重要な脳機能の一部です。
 

どんな状況でもフォームを安定させるためのトレーニングとは

 
次は、どんな状況でもフォームを安定させるためのトレーニングです。投球パフォーマンスというのは試合状況にかなり左右されます。相手打者、ピンチなのかそうでないのか、先発なのか中継ぎなのかクローザーなのか、カウント数。例えば2ボール1ストライクのカウントから、際どいボールを投げそれがストライクとコールされ2ボール2ストライクになるのか、ボールとコールされ3ボール1ストライクになるのか。これは次の一球に与える影響が心理的にも配球からも大きく異なります。これはプロの投手も例外ではなく、投手はそんな1球1球変わる状況の中、安定したパフォーマンスを発揮しなければなりません。そういった変化の中安定したパフォーマンスを発揮する鍵になるのが「呼吸」です。
こちらに関しては、
投手に指導するメンタルコントロール術の基礎トレーニング
この記事に詳しく解説してありますので是非読んでみてください。
 
いずれにしても投球パフォーマンス向上の鍵になるのは球速アップとコントロール向上です。この2つを、投球障害予防を行いながら、しっかり積み重ね、身にしていくことが投手のトレーニングには必要です。
 
 
投手用トレーニングセミナー
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ワークアウトのお申し込みかこちら→https://business.form-mailer.jp/fms/33221bad116280
 

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2020年02月03日

世代別―投球障害要因まとめ

文:山内大士

 
これまでにも投球障害の原因となる要素として、「投球数」「肩関節」「肩甲骨機能」「投球フォーム」についてお話してきました。
 
参照;https://jarta.jp/category/training/baseball/
『投球障害から選手を守れ!シリーズ』
 
今回は年代別に投球障害の主原因を考察してみます。
 
 
 

ジュニア世代の投球障害

 
この世代の投球障害において真っ先に考えたいことが投球フォームです。理由は単純で、一般的にジュニア世代の投球フォームは上の世代に比べて未熟だからです。年代ごとに投球フォームを比較した研究においても、下の世代のフォームには以下のような特徴があるとされています。
 
・骨盤回旋の開始が早い=腰の開きが早い(Aguinald 2007)
・骨盤と体幹が同時に回旋してしまいやすい=体幹の割れが少ない(Fleisig 1998)
・前脚の股関節の屈曲が少なく膝の屈曲が大きい=下半身が安定しておらず骨盤がしっかり動かせていない(伊藤2011)
・リリースポイントでの肩外転が少なく過剰な水平外転が見られる=リリースポイント時に肘が下がり腕が遅れすぎている(中溝2004)
・大学生は股関節、中学生は体幹と肩の角速度が高まることで球速向上=大学生は下半身、中学生は上半身でパワーを生んでいる(宮下2012)
 
肩の可動域や肩甲骨機能が低下している場合にはそちらに対する介入ももちろん必要ですが、それらを引き起こす要因として不良なフォームが大きなウエートを占めます。
 
では、こうした未熟な投球フォームを効率的に改善させていくにはどうすれば良いのでしょうか。ここからは私見となりますが、投球フォームを決定する要因を大別し、影響力の大きい順に並べるとこのようになると考えています。
 
1.投球動作に対するイメージ
自らのボールを投げるという経験・他人の投球動作を観察した経験や、投球動作に関する知識を元に作り上げられたイメージ。投げる練習、良い選手の観察、コーチによる動作指導、ビデオによるフォームチェックなどで高められます。
 
2.身体の操作性
動かしたい部位を必要な量だけ力を入れて動かし、そのタイミングや程度を自在に操ることで連動させ目的の動作を達成する能力、要するにイメージ通りに身体を操作する能力。JARTAのトレーニングはこうした能力を高めることを目的としたものが多いです。
 
3.身体のコンディション
筋の伸張性・力の入り具合、関節の可動域、心身の疲労感などのコンディション。ストレッチやマッサージの他、休息やリラクセーションも重要な要素です。
 

 
コーチや監督以外のトレーナー・医療従事者は、直接フォームを指導することを良しとされないケースも多いでしょう。しかし、身体操作やコンディションの改善を通じて間接的にフォームを修正することは可能ですし、それにより選手本人のイメージが変化することも多々あります。
 
指導する側が投球動作とその指導方法に関する知識と、身体操作やコンディショニングに関する知識の双方を持ち合わせていれば、かなり効率的にフォーム修正することが可能です。上述した要素のうちあまり詳しくない分野があれば、ぜひともそこを学ぶ取り組みをしてみてください。
 
 
 

大人世代の投球障害

 
一方、世代が上がりレベルも高くなった選手に生じる投球障害にはどのような原因があるのでしょうか。上述した投球フォームの影響ももちろんありますが、優先して考えたいのは身体コンディションです。それには以下のような理由が挙げられます。
 
1.年齢が上がるにつれ身体は硬くなっていく
習慣的なストレッチをしていればある程度防ぐことはできますが、特に脊柱の柔軟性は失われやすいように感じます。身体が硬いとやりたい身体操作もうまく行えませんし、そうするとフォーム修正もままなりません。身体が硬くなったのに投球イメージが柔らかかった頃のままでギャップがあることも障害の一因と考えます。
 
2.断裂・損傷など構造的な破綻を呈していることもある
この場合、通常のトレーニングやコンディショニングでは反応しにくいことがあります。こうしたことが疑われるケースには、投球障害に精通し診断設備の整った整形外科医の診察を仰ぎ、適切な医学的処置を受けるようにしましょう。
 
3.安易なフォーム修正にはリスクがある
特にレベルの高い選手の場合、試行錯誤の上にたどりついたフォームであることも多々あります。コンディション・身体操作を土台とし、自分なりに研究を重ね、バッターとの駆け引きや変化球との兼ね合いも考えたうえで完成したフォームです。肩肘への負担を軽減させるためにフォームを修正した結果、肝心のパフォーマンスが下がってしまっては本末転倒と言えるでしょう。
 
もちろんこれらのことをしっかりと把握したうえで、選手と相談しながら進めるフォーム修正は問題ないと思います。ただし、ジュニア世代を相手にするとき以上に、より深い知識と引き出しの多さが求められることにはなるでしょう。
 

 
実際に選手を指導する際の考え方と具体的なトレーニング方法を学ぶことができる投手用トレーニングセミナーが、2月末〜4月にかけて、全国各地で開催されます。
 

投手用トレーニングセミナー


 
 
座学に始まり、可動性を改善させるためのケアやストレッチ、そして複雑な身体操作や筋機能を習得するプログラム。これらを1日で学ぶことができるかなり充実した内容です。
 
トレーニングセミナー終了後には、投球障害に対するコンディショニングをテーマとしたワークアウトを行います。
 

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痛みに対する評価や介入方法などトレーニングセミナーではカバーしきれない部分を中心に行います。肩肘への負担を軽減させるために必要な身体機能についても、その基準と介入方法をお伝えしていきます。
 
同日・同会場で開催いたしますが、片方のみの受講も受け付けております。
ご都合のつく方はぜひ参加をご検討ください。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2020年01月25日

投手のパフォーマンスアップに必要な練習とは

文:山内大士

関西で活動する山内です。
今回は投手がパフォーマンスを高めていくために必要な練習についてお伝えしていきます。
 
一昔前の野球界における投手の練習といえば、「投げ込み」「走り込み」が主流でした。しかし近年はスポーツ科学が発達し、様々な趣向を凝らしたトレーニングが行われており、SNSの発展により一般の方々がそれらを目にする機会も多くなりました。
 
そうすると今度は
「選択肢が多くなりすぎて、何を基準にどのトレーニングをすれば良いのかわからない」
という問題が生じます。
中には特殊な器具が必要なものや、動きが難しくて簡単には真似できないものも多く含まれ、場合によっては見よう見まねで行ったトレーニングにより逆に悪化してしまうケースもあります。
 
こうした問題点を解決し、パフォーマンスアップに向けたトレーニングを適切に実施するためには以下のようなプロセスを踏むことが望まれます。
 
1.投手がハイパフォーマンスを発揮するために必要な身体操作を学ぶ
2.身体操作の土台となる身体機能とその整え方を学ぶ
3.対象となる選手の現状を把握し、トレーニングの優先順位をつけるための考え方を学ぶ
 
少し具体的にお話します。
 
効率的な投球動作を身につけるためには、特に肩甲骨・体幹・股関節における高度な身体操作と、その前提となる筋出力・可動性・協調性が求められます。
 
例えば最大に腕がしなるフェーズである肩関節最大外旋位では、肩関節を最大外旋させ土台となる肩甲骨を後傾させる筋機能が求められます。
 
参考:投球障害から選手を守れ!肩甲骨機能編

投球障害から選手を守れ!―肩甲骨機能編―


 
 
だからと言って、肩と肩甲骨の動きだけをトレーニングすれば良いわけではありません。
 
肩甲骨を後傾させるにはさらにその土台となる胸郭が十分に広がり、しっかりと胸を張ることが求められます。胸郭の可動域には表面にある腹筋・背筋の伸長性の他、呼吸や内臓の状態も大きく関連します。胸郭自体の可動性が改善したとしても、下半身の身体操作が未熟であるために上半身が力んでしまい十分に胸を張れないケースもあります。これよりも前のフェーズ、つまり体重移動やテイクバックに問題があるケースもあるでしょう。
 
このように、投球動作中の一つのフェーズだけでも要求される身体機能は数多くあり、他のフェーズにおける身体操作との関連性も踏まえながら考察する必要があります。
 
そして実際にトレーニングを行う際にも、土台となる機能やベースとなる身体操作を考慮しながら進めるべきなのです。
 
 
 
こうした考え方と具体的なトレーニング方法を学ぶことができる投手用トレーニングセミナーが、2月末〜4月にかけて、全国各地で開催されます。
 

投手用トレーニングセミナー


 
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トレーニングセミナー終了後には、投球障害に対するコンディショニングをテーマとしたワークアウトを行います。
 

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最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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2020年01月22日

トップ選手のトレーニングとは

文:岩渕翔一

近年、SNS の普及によりプロで有名な選手がどのようなトレーニングや練習に取り組んでいるのかが見えてくるようになってきました。また、選手それぞれが、その考え方やトレーニング法などの書籍を出版し、公になることも多くなりました。
プロを目指していたり、伸び悩んでいる選手にとってはこれ以上ない情報でしょう。また、スポーツをしている子どもたちにとっても憧れの選手が取り組んでいることを知れることは夢を現実に感じることのできる第一歩にもなるでしょう。
 
プロ選手が取り組んでいる練習やトレーニングを自分自身に取り入れることは目標に最短距離で近づくためには非常に有効です。一方で注意しなければ逆にパフォーマンスを落としてしまうリスク(JARTAではマイナスの学習という)を孕んでいます。
 

アマチュアからトップ選手までのパフォーマンスの階層

どのような競技であっても、アマチュアからトップ選手に行き着くまでの階層があります。要は、ピラミッド構造の中での生き残り合戦を最後まで生き残った選手がトップ選手であり、さらにその中でも唯一無二の力を持った選手が超一流として歴史に名を残します。このピラミッド構造は全ての競技で共通しており、ジュニアやアマチュア選手の指導に当たるトレーナーは、この生き残り合戦で生き残って行くことを考え指導に当たらなければなりません。
 
では、目の前の選手がどれくらいのレベルなのか。そこからステップアップするためにはどのようなトレーニングが必要なのか。現場で分析し判断する力が重要なのは間違いないですが、それ以上に準備段階として知っておかなければならない前提があります。
 

情報に対する社会の変化

以前であれば、厳しい世界で戦っているプロの選手というのは自分が行っている練習やトレーニングは誰にも知られたくないと多くの選手が考えていました。もちろん今でもその守秘性というのは守られるべきです。実際、競技カテゴリーがチームから選抜、地域代表、日本代表と上がるにつれて情報は公になりづらく、強い守秘義務が強いられます。それだけシビアにしておかないと情報漏洩そのものが勝敗以上に大きなものを奪ってしまうリスクがあるため当然です。
つまり、選手個人にとっても、チームにとっても、その競技における歴史と未来にとっても、情報漏洩は可能な限り避けたいというのが本当のところです。
しかし、秘密は秘密で守りつつ冒頭で話したように今は多くの情報が誰でも簡単に得られるようになっています。なぜでしょうか?社会の背景と流れ、プロ選手を取り巻く環境の変化、スポンサーの影響など。理由は様々ですが、この流れはスポーツ界だけでなく、あらゆる業界で言える事しょう。情報を守ろうとするものと得ようとするもの。例えば中途半端な情報や間違った情報が他者から発信されるのであれば、正し情報を自ら出してしまうということもあるでしょう。今はそれが容易にできる時代です。
情報を探している側、得て活かそうとする側にとってはこんなありがたい事はありません。最大限活かしきれた選手が、また生き残っていくことになるでしょう。
プロの選手が取り組んでいる練習やトレーニングを公開する理由はこのような社会的背景が要因の1つです。
 

選手がトレーニングを公開する理由

ここからは選手個人に関することです。選手が練習やトレーニングを公開する理由は個人レベルでは2つあります。
1つは真似されても構わないという自信です。考えてみれば当たり前で、例えば一流の料理人がそのレシピと工程全てを公開しても同じ味は絶対に出せません。また、芸術家がその過程や使っている道具全てを公開しても同じ絵など描けるはずがありません。一流がこなす仕事の真似などできるはずがないのです。これはトレーニングに置き換えるとプロ選手が行っているトレーニングをしたからといって、同じ効果が出るとは限らないということと同意です。
 
2つ目の理由。その競技の底上げをしたいと考えているということです。多くの選手がもっとうまくなって競技そのものがもっと発展して欲しい。それがそのトップ選手にとってもさらなる成長と進化につながると考えている。みている世界が個人やチームの結果だけでなくさらにその先であるということ。
 
いずれにしても選手としては活かさないという手はありません。
 
 

スタンダードと個別性

本題です。トップ選手のトレーニングとはどういうものでしょうか?まずはそれを知らなければなりません。
トップ選手のトレーニングというのは一言でいうと、「個別性」に対するトレーニングです。まずはこの図を見てみましょう。

 
アマチュアからトップ選手になるには生き残り合戦に勝たなければならないと話しました。トップ選手というのはこの生き残りの戦いの中で当たり前にできなければならないことを全てクリアしてきた選手です。その競技で高いパフォーマンスを発揮する上でできておかなければならないことをクリアしてきた集団がトップ選手でありプロの世界です。
すでに誰もが知っているようなトレーニングや科学的根拠を持ったトレーニングというのは裏を返せばスタンダード(一般化されている)になっているため、プロの世界で差別化を図るには足りません。
そのため、特にスポーツ現場でのトレーニングにおいては、科学的根拠や裏付けよりも現場での実践が先行することが多々あります。個別性を磨くため、差別化を図るためには一般化されてからでは遅いのです。
もちろんプロの選手でもスタンダードなトレーニングは重要ですし、行っていますが、それだけではやはり生き残って行くには足りないということです。トップ選手が目新しいトレーニングに取り組んでいる理由の一つはこういった背景があります。
 
これらを踏まえた上で、スタンダードを満足にクリアできていない選手が、トップ選手が取り組んでいる個別性のトレーニングを行ったらどうなるでしょうか?
もちろんパフォーマンスは上がるかもしれません。しかし逆にパフォーマンスを下げてしまうかもしれません。ポジティブな結果が得られるように評価が鍵になる事はいうまでもありませんが、やはり物事には順序というものがあります。
 
私が講師をしている投手トレーニングセミナーでは、トップ選手が持つ共通項を徹底的に分析し、スタンダードを鍛え、トップ選手に近づくためのプログラムをお伝えしています。それに加えて毎年行うプロ野球選手のキャンプ前自主トレーニングで行っている個別性に対するトレーニングも紹介しています。

情報は効果的に使わなければ諸刃の剣になってしまいます。正しい努力をするために知っておいて欲しい事です。

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革新的なトレーニング理論とは
下半身を使うの正体
150/kmのボールを投げるにはかためる力が必要
【トレーナー向け】アスリートの歩行及び立位分析のコツ
 
 
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その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 



2020年01月19日

答え探しをやめたきっかけ


 
 

文責:赤山僚輔

 
獲物が欲しいのか獲物獲得の方法が知りたいのか
 
JARTAのセミナーに来られる方は
目の前のクライアントに対してもっと良い手法を知りたい
困っている症状を解決するヒントを得たい
このように感じて行動をして
時間をかけて
お金をかけて
会場に来られる方が多いと思います。
 
かく言う私も初めて中野崇というスポーツトレーナーに会った時に
 
正確に言うと会おうとした時
 
目の前の課題に対して今の自分では対処不可能なことがわかっており
自分の解決できていない事象を解決しているように見えた中野崇に会うことで
答えを求めていったような気がしています。
 
会った時、まだJARTAができる前ですが
答えを教えてもらったような感覚はなかった。
 
でもこれだと感じました。
 
その時の自分にとって
選手の不調を改善しパフォーマンスをあげることは
そんなに簡単なことではないと思っていました。
 
教科書に載っていることをそのまま実践しても
解決しない事象も無限にあるし
既存のトレーニングで前十字靭帯の損傷予防ができるとは
到底思えなかったのです。
 
でもJARTAのベーシックセミナーでもお伝えし
我々の臨床推論の基盤の一つとなっている
関係主義的な思考を知り
この考え方を追求、模索していくことが
ある意味答えであり
自分の答え探しの旅が一旦の終わりを告げ
“最良の方策を一生追求していくこと”
に出会えた瞬間でもありました。
 
 
JARTAのベーシックセミナーでは
こういう時にはこの評価を使って
この症状がでていればこの手技を使うというような
ある意味 How to の要素はほとんどありません。
(状況的にそう示唆することがあってもそれが伝えたい本意ではないということです)
 
もしかすると How toを求めてきた方にとっては
答えを探し求めてきた方にとっては
拍子抜けするかもしれません。
 
でも冒頭にも述べた通り
獲物を獲得してシェアしても
その獲物の鮮度が落ちれば価値は下がりますし
いつも同じ獲物で満足できるとは限りません。
 
そして常に獲物をシェアし続けなければならない状態になります。
 
それよりもその獲物の獲得の仕方をシェアし
その獲得の仕方をもっと良いものがないかと模索し続ける
それがJARTAの最大限の特徴であり
ベーシックセミナーや認定コースの本質であると考えています。
 
その為内容がアップデートする事はもちろんのこと
講師が変わると同じ内容であっても
感じ方や伝わってくる情報が良い意味で違って感じるはずです。
 
それもそのはず各講師が活動しているフィールドも違えば
経歴も異なります。
同じ概念でも違うスポーツトレーナーが体現している手法や
現場でのその思考の実践具合については2つとして同じものが存在しないのです。
 
それはある意味、効率が悪いことかもしれません。
 
でもその一件効率が悪いことが
現場で効果を出す為に、最善の策であることもあるのです。
 
少なくても私自身はそのように考え
他の講師が伝える部分から学ぶことも多々あり
再受講することも何度もあります。
 
 

ルービックキューブ

 
私がベーシックの講師をする際に必ず話をする話題に
見えている視点をルービックキューブに例えてお話をします。
 
ルービックキューブは1面を一色に揃えるのは簡単です。
一側面からみると揃っている。
治療で言えば治っている。
パフォーマンスで言えば向上している。
 
そのように解釈することも達成することもある意味簡単です。
 
でも少しその立方体を角度を変えてみると
色が揃っていたのは一側面だけであったことに気づくことができます。
 
そこから全ての面を揃えるには一つの面を一旦バラバラにしないといけません。
 
今の視点や思考を一旦バラバラにすることは勇気がいります。
自分を否定しているように捉える瞬間があるかもしれません。
 
でも違う側面からみて揃っていない事象を知った以上
揃えようとすることが選手に向き合う上では重要であると考えています。
 
一旦バラバラになった一つの面の9つのピースが
6面揃った時にはまた一つの面として輝き出すのです。
そのひとつひとつのピースはすでに持っている解剖運動生理の知識や
これまでの経験、身体との向き合い方かもしれません。
 
一旦バラバラになってもそれが無駄になるということはありません。
6面揃えれば確実にそれは活用できる材料となるのです。
 
そんな話をしつつ
 
ただその6面揃ったと思っていたら
それがまた実はまた違うルービックキューブであれば
一つの面だったかもしれない。
 
この繰り返しが一生続く
と私はお伝えしています。
 
この歩みの旅に出るか
一面だけをみている其処に居続けるか
それはあなたが決めることですが
 
その前に
選手はどちらを求めているかを考えてもらえればと思います。

 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
JARTAベーシックセミナーの詳細は以下よりご参照ください

BASICセミナー




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2020年01月15日

全身の連動を反射で引き起こす

文責:伊東尚孝

 
「全身を連動させる」
 
様々な競技において、このように指導されることがあるかと思います。
 
全身を連動させることは、あらゆるスポーツにおいて必要とされパフォーマンスアップには欠かせない要素の一つであり、
◯再現性を高める(コントロールが良くなる)
◯強いパワーを生み出せる
◯スピードを上げられる
◯怪我を予防できる
など様々なメリットがあります。
 
「連動」とは、「動き」が「連なる」ということからも、全身のあらゆる部位の運動を連ならせたトレーニングが必要です。
野球のピッチング、テニスのストローク、バレーのサーブ、ゴルフのティーショットなどは、どのプレーも腕力だけで解決されないことは言うまでもありません。
 
ここでは全身を連動させるための運動様式を解説し、そのトレーニングに必要となる要素の一つを紹介していきます。
 
 
 

反射を活用する

 
全身を連動させるためには何が必要とされているのか。
 
結論から言えば「反射を活用する」ことがその一つです。
 
筋肉には伸縮を感知するセンサーが存在しており、受動的に伸ばされることで筋肉が収縮する「反射」を引き起こします。
これを専門的に「伸張反射」と言い、自分の意思とは無関係に起こるメカニズムです。
さらに下肢・骨盤・脊柱・上肢など全身にある運動軸の「回旋運動」を連動させることで引き起こされる反射を「回旋系伸張反射(以下、RSSC)」と言います。
 
RSSCは伸張反射と同様に、脳によるコンロトールはなく「反射」を活用しているため、自動的に運動を引き起こし再現性を高めたプレーを可能とします。
 
JARTAで紹介している「スパイラルパンチ」というトレーニングは、このRSSCを活用したものです。
 
 

 
(※動画を真似するだけでは怪我をする可能性もあるため、実際に指導を受けることを勧めます。)
 
 
動画では、急激な体幹の回旋力が上肢へと波及されている運動になっています。
腕を伸ばそうと(パンチしようと)するのではなく、体幹の回旋力が腕へ波及された結果、腕が伸びている運動様式となっています。
 
つまり、全身の連動により反射的に上肢を運動させることを目的としたトレーニングとなります。
 
例えばこれをテニスのストローク(右打ち)に当てはめると

  • テイクバックで骨盤を右側に引きラケットを構える(背骨も右へ回旋している)
  • 骨盤の急激な回旋力が背骨に波及され体幹筋が伸張され力が生じる
  • 生じた力が上肢へ波及されスイングする

 
このような運動構造によりRSSCを活用します。
 
RSSCをうまく活用できない(すなわち連動した動きができない)選手は、いわゆる「手打ち」になりパワーを出し切れずコントロールも定まらないプレーとなってしまいます。
様々な競技でも「腰を入れて、腰から」という指導は、まさにこのRSSCを活用させるために必要な要素の一つだと考えます。
 
 
 
***
 
しかし、スパイラルパンチはあくまでRSSCを習得するための「手段」に過ぎません。
どんなに優れたトレーニングでも、万人に共通して効果があるとは言い難いです。
各競技の運動特性や、その選手の動きや体格などには個別性があるため、選択されるべきトレーニングも様々あります。
 
選手が本当に必要とするトレーニング
 
今回はスパイラルパンチの「方法」を伝えることが目的ではなく、
パフォーマンスアップに必要な運動様式をスパイラルパンチという「手段」を用いて解説していることを、改めてご理解いただけると幸いです。
 
 
 

背骨の認識を高める

 
話が少し逸れましたが、ここからはRSSCを獲得するためには何が必要なのかを解説していきます。
 
上記で述べたように、RSSCは筋肉にあるセンサーが受動的に伸張されることによって筋肉を収縮させる反射を引き起こします。
 
もちろんRSSCは全身を連動させた運動様式であるため、各部位の反射を活用することが必要とされますが、その中でも特に注目したいのが「背骨」周りの筋肉です。
 
その理由として、
◯ 背骨には細かい筋肉が密集しており、筋肉にあるセンサーも背骨周りにより多く存在しているといわれている。
◯ 力の出力は身体の中枢部から生じるといわれており、ヒトの中枢部には背骨がある。
◯ 背骨は力を全身に波及させることや衝撃を吸収・分散する役割があり、ほぼ全ての運動に関与している。
 
つまり、RSSCに必要な「反射の活用」「力の波及」「全身の連動」という要素を多く担っているのが「背骨」になると考えます。
 
背骨のモビリティやスタビリティを上げることは当然ですが、背骨を「一本の支柱」のように捉えながらトレーニングをしていないでしょうか。
背骨は頚椎から腰椎まで24個あり、一つ一つはごくわずかでありますが関節運動を起こします。
極論を言うと、一つ一つをバラバラに動かすくらいの認識力が必要です。
背骨がどのように動いているか、どの方向が動きやすいか/にくいか、またはどの部位が動きにくいかなどを認識することで、効率良くRSSCを活用するための準備ができます。
 

 
 
 
また、背骨は自律神経系と深い関わりがあり、背骨の硬さによって自律神経が乱れメンタル面にも悪影響を及ぼす可能性があります。
トップクラスの選手のプレーが「安定している」ように見えるもの、メンタルが左右されにくい状態でプレーできているからだと推察されます。
 
 
 

背骨の柔軟性が関節への負荷を軽減させる

 
RSSCによって引き起こされた力は、身体の末梢になるほど力強く影響されます。
そのため、ハイパワー・ハイスピードを発揮できるメリットがある反面、末梢である肩や肘にはそれだけの負荷がかかっていることになります。
これはRSSCに限らずですが、どんなに優れた選手でも関節への負荷を避けて通ることは不可能です。
しかし背骨の柔軟性があれば、負荷を「軽減」することはできます。
 
関節障害を引き起こすメカニズムとして、中枢部の関節(背骨)に障害があれば、末梢の関節(肩・肘・手首・股関節・膝など)に影響を及ぼすといわれれいます。
 
仮に、胸周り(胸椎)の柔軟性が乏しい選手が投球し続けたとします。
RSSCによって背骨→肩→肘→手→指→ボールへと力が波及されていきますが、胸あたりの柔軟性が乏しいことで背骨(胸椎)から肩までの力がうまく波及されません。
その結果、胸の硬さを「かばう」ように肩を「使いすぎる」現象へと変化していきます。
肩周りの筋肉が必要以上に力み、靭帯や関節包が必要以上にストレッチされ続けることで、肩に何らかの障害を引き起こすリスクを生み出します。
 
これが、オーバーユースを発症する選手の特徴です。
 
つまり、末梢の肩や肘の器質的な問題だけではなく、中枢部である背骨の柔軟性が関与している可能性が示唆されます。
(波及された力に耐えるだけの各関節の柔性と剛性が担保されていることが前提となります。)
 
そのため関節への負荷を軽減させるためにも、背骨の柔軟性は重要なファクターとなります。
 
 
 
 

まとめ

 
「全身を連動させる」と言っても、目的が違えばトレーニングも変わります。
連動させて何を獲得したいかが明確でないと、そのトレーニングの効果は期待できないかもしれません。
 
今回はRSSCをスパイラルパンチで解説しましたが、RSSCを活用するフェーズはあらゆる競技に存在し、対人競技であるサッカーやバスケ、格闘技などにも活用できます。
 
さらなるパフォーマンスアップを望んでいる選手は、JARTAスポーツトレーナーを利用してみてはいかがでしょうか。
我々は、選手のパフォーマンスアップのために全力で力になります。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年01月13日

【トレーナー向け】アスリートの歩行および立位分析のコツ

 

文:岩渕翔一

競技パフォーマンスの動作分析はスポーツトレーナーにとって最も重要なタスクの1つです。
動作分析が担う、あるいは鍵になる仕事は、
・現状のパフォーマンス分析を行い、そこから出た課題に対するトレーニングメニュー構築
・トレーニング内容の取捨選択を行う上でのトレーニングそのものの分析や構造の理解
・障害予防や故障からの復帰におけるリスクの管理
 
などは動作分析が必須の仕事になります。それ以外にも多くの仕事で非常に重要な役割を担っています。
 
「あの選手は立ち方が素晴らしい」
「歩き方を見ただけで良い選手だということが分かる」
 
このような話を大なり小なり多くの方が聞いたことがあると思います。サッカー元日本代表の小野伸二選手がまだ高校生の頃、フィールドに立っている姿を見ただけで「あの選手は素晴らしいだろう」と海外のあるコーチは言ったといいます。
基本動作である立位や歩行はその選手の分析を行う上で非常に重要なヒントが隠されている一方で、分析が難しいと言った側面も少なからずあります。なぜ難しいのでしょうか?また、ほとんど誰もが当たり前にできるはずの立位や歩行で、なぜその選手の質が透けて見えるのでしょうか?
 

立位・歩行分析が難しい訳

なぜアスリートの立位や歩行分析が難しいのか。
ここで少しリハビリテーションの話をします。
例えば理学療法士は基本動作の改善を主目的として障害者のリハビリテーションを行います。その際、筋骨格系、中枢系、呼吸循環器系、内分泌系などどのような対象であっても基本動作ができているできていないの判断の基準となるのはADL(日常生活動作)です。
・家の中を自由に歩行するためにはこれくらいは歩けないといけない。
・近くのスーパーに歩いて買い物に行くためにはこれくらいの距離は安定して歩けなければいけない
・自分でトイレ動作を遂行するためには下衣の着脱を立位で安全にできなければいけない
・その歩容で生活を続けた場合二次障害のリスクは高くないか
 
など。その基本動作を分析するための基準が歩行そのものだけではなく、歩行することの目的にもあるため、分析を明確な基準を持って行うことができます。
 
ここでアスリートの基本動作分析に話を戻しましょう。当たり前に歩ける、立てるからこそ基本動作だけみていては、何をどう見て良いのかがわからなくなってしまいます。
「歩行分析と言っても歩けるし何をどうみれば良いのだろう」
これがアスリートの基本動作分析が難しい原因です。「できる動作をみる」というのは「その質をみる」ということです。であるならば、アスリートがなぜ歩くのか立つのか。何を目的に立つのか歩くのか。これらを明確に定義づけなければなりません。
 

アスリートの立位と歩行を定義する

さて。ではアスリートの立位と歩行を定義してみましょう。どのように定義するのか。百聞は一見に如かずです。
以下の動画をまずはみてみましょう。
https://youtu.be/zIoR9VzSBBk

 
1つ目はタイガーウッズ選手。2つ目はFCバルセロナの試合前アップの動画です。それぞれその競技において言わずと知れたトップ選手です。では、そのトップ選手の立位姿勢と歩行動作はどうでしょうか?同じでしょうか?
いうまでもありません。全く違いますね。
つまり、立位や歩行を分析する上での定義は競技によって異なるということです。この動画を認定コースのトレーニング実践1で見せたところ、ある受講者の方はバルセロナの選手は跳ねるように歩いて、タイガーウッズ選手は芯がある感じだと形容しました。それぞれもう少し具体的にみていきます。
 
[サッカー選手の立位と歩行]
サッカーは前後半45分ずつをフィールド内あらゆる方向、あらゆる動き、あらゆるスピードで動き続けなければなりません。走行距離も平均で10kmほどになります。それを踏まえて考えてみると
・いつどんなタイミングでもどんな方向にも動き出せる立位と歩行
・視野を広く保つことができる立位と歩行
・夏場は省エネ、冬場は身体を冷やさないような立位や歩行
このような立位であり歩行でなければなりません。

 
[ゴルフ選手の立位と歩行]
ゴルフは長い時間長い距離を移動しながら行う競技です。例えば全米オープンでは予選ラウンド2日間、決勝ラウンド2日間の計4日間で72ホール(1日18ホール)を回らなければなりません。またゴルフは広大なコースの中で、小さなボールを小さなカップに入れる競技です。手元の0.1mmの誤差が致命的なミスショットに繋がる競技です。それらを踏まえて、
・長い移動や立位で疲れや体の硬さを出さない省エネで力学的効率性のある立位と歩行
・安定したスイングを行うための軸が形成された立位や歩行
・各ショットで集中力が出しやすい立位
このような立位や歩行でなければなりません。

 
 

定義づけを行いみるべきポイントを明確に

このように各競技それぞれを見てみると、求められる基本動作像は全く異なることが分かります。そこを具体的にせず、単に歩行や立位を見ていては当然みるべきポイントを絞れないため「何をみていいのか分からない」といった状態になってしまいます。
まずは自分がなんの競技をしている選手なのかを踏まえ、その競技に必要な歩行と立位を定義づけましょう。その際、今回のサッカーとゴルフで行ったように、全く運動構造が異なる競技を見比べてみることで、より違いが可視化されやすくなります。
これらを行うことでみるべきポイントが増え、今しているトレーニングの課題や分析がより信憑性のあるものになります。パフォーマンスから基本動作。基本動作からパフォーマンス。トップダウンとボトムアップの評価両方を行うことでトレーニングを日常に落とし込むアイデアも生まれやすくなります。
 
動作の分析が苦手だという方は一度このようなワークをやってみることをお勧めします。
 
 
 
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その他トレーニング実践コースレベル1・2で講師していますので、ご興味ある方はHPでご確認ください。
 

 

2020年01月11日

闘いは日常の中にある

文責:真木伸一

 
スポーツの試合は、勝負なので必ず勝者と敗者が存在します。
一つの試合に勝つために、選手は一年、二年、あるいはそれ以上の時間を競技に捧げ、準備する。
そうやって準備してきたことは、当日の会場で全て対戦相手にぶつけるわけですが、それでもあえなく敗退することがあります。
そんな時、選手は必ず「自分の何がいけなかったんだろう」という思考を持つと思います。
自分のやってきたことを振り返り、取り組みに甘かったところはなかったか、できることは全てやってきたか。
そうして振り返ってみて、競技人生全てにおいて嘘偽りなし、と思えたら、「全部ぶつけてダメだったのだから、潔く負けを受け入れよう」という心境になれるかもしれません。
心境の話ですから、これはあくまで推測の域を出ません。
 
 
 
スポーツ現場で活動していると、どうしても破れない壁にぶつかることがあります。
何度挑戦しても勝てない相手、連覇を続ける強豪、なぜ彼らが勝ち続けられるのか、そして、どうして我々はそこに敵わないのか。原因を探り、対策をしてまた挑戦をする。
やれることは全部やったと思って臨んでも、かなわないこと、そんなことがあるわけです。
複数の競技や選手にトレーナーとして関わっていると、その双方の立場に携わることになります。
 
全身全霊をぶつけて来る相手を跳ね返す側、全てをぶつけても跳ね返される側。
この双方のどちらにも携わっていると、その違いがみえることがあります。
それはなんなのか。単純に考えれば、普段の取り組みです。
 
試合当日、もしくはそこに至る今シーズンの準備、などが大きくフォーカスされます。
実際に、競技レベルが「頂点を競うもの」でなければ、それらの準備で大勢がひっくり返ることもあるでしょう。
しかし、頂点を争うトップレベルにおいては、実は勝ち負けはもうそんなところにはないのかもしれません。
その試合に向けた準備や当日のコンディションは、大変重要なことでありますが、見方を変えれば小さなことです。
 
目の前の選手は、どれくらいの年月をかけて今の自分を作り上げてきたのでしょうか。
競技のために割いた時間は、思考は、労力はどれくらいのものだったのでしょうか。
つまり、「どう生きてきたか」が問われるところまで、高いレベルで凌ぎを削るわけです。
 
私は、実際に何十年もその競技のために全てを捧げてきた選手が、その日に全てをかけて闘う姿を目にしました。
言葉にすれば簡単ですが、これはもう、壮絶なものです。
人生全てをかけて、臨む。
今年の夏が勝負だから、体重コントロールをしっかりやろう、来週試合だから、夜更かししないようにしよう、明日試合だから験担ぎにお参りに行こう、もう、そんなレベルの話ではありません。
 
今まで競技に費やしてきた時間、労力、思考、全てをその一瞬に凝縮する作業。
 
試合前、目の前に鬼神が立っている。
私にはそう見えました。
 
でも、及ばなかった。
トップの世界は、そういう世界です。
ただ、その選手は、その試合に臨むにあたり、何か自分の内面に大きな変化を作り出したようにもみえました。
その過程が、観ている人達に伝わったようにも思います。
彼は試合後、「胸を張りたいと思います」そう言ってくれました。
 
 
さて、この話を通して、トレーナーである我々は、どうあるべきだと考えますか。この場を借りて個人的なお話をしてしまうかもしれませんが、私の場合は自分のこれまでの人生はどうだったのか、ということを振り返らざるを得ませんでした。
 
「自分の何がいけなかったんだろう」という思考は、選手だけのものではないでしょう。
「今日はこのくらいでいいや」とか、「評価の対象にならないのならやらなくてもいいや」とか、「誰も見てないからサボってしまおう」とか。
そんな瞬間がどれだけあったか。
ベストは尽くしてきた。
 
ただ、目の前にいる選手を世界の頂点に引き上げたいのなら、生活の全てをもう一度見直す必要がある。
 
そう反省しました。
 
そして、この思いを持ち続けて、嘘偽りなく努力し続けていかなければならない。
今一瞬だけではダメなんだと、改めて自分を戒めています。
目の前の選手を助けているだけでは、世界は変わらない。
けど、目の前の選手を引き上げられなければ、足下すら定まらない。
トレーナーとしての道を歩み始めて、選手の人生を預かる立場にいる。
 
全ての責任を負うわけでなくても、自分の覚悟と取り組みは選手にそのまま跳ね返る。
自分にはまだ、できることがあるはずです。
 
それを探す旅は、トレーナーとして仕事をする限り終わりはありません。
今この瞬間も闘いは続いているのだと、心に留めて前に進みたいと思います。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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2020年01月08日

身体を捻るには胸椎の動きが必要

文責:高島公平

 
野球・テニス・バレーなどのスポーツで身体の捻りを必要とする動作は多いと思います。
身体の捻りを出すためには背骨がしっかり動かないといけないということは皆さんもわかっていることと思います。
では、身体を捻る動きは背骨のどこで一番大きく動くか知っていますか?
 
 
背骨の中で捻る動きが大きく出るのは、頚椎・胸椎・腰椎の順番です。
つまり身体を捻る動きで一番動く部位は胸椎となります。
関節の構造上腰椎は屈曲・伸展(前屈・後屈)が大きくなり回旋の動きはわずかになります。
胸椎は腰椎とは異なり屈曲・伸展の動きだけでなく回旋の動きも大きくなります。
そのため体幹の回旋は胸椎主体となるのです。

 
スポーツ動作を指導される中で、「腰をもっと捻って」「腰をもっと使って」「腕をもっと引いて」などといった言い方が使われることがあります。
どの場合も身体の捻りをしっかり出したい時に使われることが多い言葉です。
これらの声掛けで上手く動きを誘導できる選手と誘導できない選手が出てくる場合があります。
誘導できない選手に対しては胸を意識した声掛けに変えてみることで変化を与えることができるかもしれません。
 
 
また、本来動いてほしい部位の動きがない中で無理に動かそうとする可能性に加えて、本来動かしたい部位ではない部位で動こうとすることで身体にかかる負担が増えてしまい痛める原因にもなる可能性もあるため、選手にあった声掛けが必要となります。
 
 
捻りを必要とする動作の中で「腰が痛い人」や「肩が痛い人」「背中が痛い人」などは一度胸椎の動きを確認してみることも、痛みを改善し動作の質を上げるためには必要なことかもしれません。一度確認してみましょう。
 
 
では、痛めることなく捻りの動きを改善し動作の質を向上させていくための胸椎の動かし方を紹介したいと思います。
 
 
 
1、脊柱伸展回旋①

胸椎の動きを出すためのJARTAでお伝えしているトレーニングです。
手で支える時に余計な力みを出さないようにし、上部胸椎と肩を前後に動かします。
 
 
 
2、脊柱伸展回旋②


胸椎伸展位にしてから捻りを加えます。この時股関節が抜けないように注意して行ないます。
上手く回旋が出ない時は胸の前で合掌する形で行ないます。
 
 
 
3、胸セパレート

手を重ねて胸の前にします。その状態から顔とへそは正面を保ったまま手と胸の位置関係が変わらないように手と胸を左右に動かします。
ゆっくりした動きから始め、慣れてきたら早く動かすようにしていきます。
 
 
 
胸椎が硬くなってしまっている場合なかなか難しい動きになります。しかしながら、1の脊柱伸展回旋は毎日繰り返して行なうことで動きの改善が実感しやすいかと思います。
自分自身のできる範囲から徐々に動きを作っていきましょう。
 
 
捻る動きで痛みが出る人だけでなく、スポーツ動作で身体を捻る動きを必要とする人にはぜひ取り組んでもらいたい内容になっています。
ここで上げた内容のトレーニング以外にも胸椎を動かすトレーニングはたくさんあります。今まであまり目を向けていなかった人はぜひ胸椎を動かすようにしてみてください。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2020年01月06日

真似をするということ


 

文責:赤山僚輔

 
スポーツに関わらず、何かの上達や成長を目指す上で”真似をする”ということが重要であるのは改めていうまでもないと思います。
 
でも色々な指導者や選手と会話をしていると、その”真似をする”ということができていないだけでなく、やろうとしていない方が多いように感じるので今回はその重要性について改めてお伝えしたいと思います。
 

目次
・真似をせずに先輩を超えることができるだろうか
・守破離とは
・師を見るのではなく師の見ている景色を見る
・徹底的に真似した先にオリジナルが生まれる

 
 

真似をせずに先輩を超えることができるだろうか

武道の世界ではまずは先人の教えを元に師匠の真似をしたり、先輩の真似をすることから上達の一歩は始まります。
きっとスポーツにおいても上手くなりたい最初のきっかけはテレビに映る選手のプレイを真似したり、仕草や時にファッションなどを真似してその選手になりきることから競技の楽しさや上手くなりたいという欲求が湧いてくることが多い。
 
でもその先輩の存在が中途半端に近いと真似をすることが恥ずかしかったり、自分を持っていないと思われるのが嫌で競技を行なっていく上で心身ともにまだまだ未成熟であるにも関わらず真似をすることよりも”自分なりのやり方”を模索している選手が多いように感じる瞬間があります。
 
きっとそれはスポーツ以外でも同じことが言えます。
まずは自分なりを模索するよりも、成功者の模倣を徹底的にすること。
これはどんな業界でも成長する上での鉄則です。
 
自分自身も色々な書籍や多くの素晴らしい方とスポーツ業界に関わらずお会いすることがこれまであり、自分から見て眩い人生の輝きを放つ方々にはある一定の共通項があり自分自身はその時々でその方々の真似をしてきました。
 
それは時に持ち物であったり、行動パターンや口癖など。
 
スポーツに話を戻すが、例えば高校生を例に考えてみると高校入学時に先輩を超えようと思って自分なりで練習しても限界はみえています。
1学年でも先輩であれば同じような時期に同じような苦しみも成長も経験し、どうすれば最短距離で上達するかを知っていることが多く
思い返してみても、先輩の言うことを素直に聞き入れ、とりあえず真似をひたすらしている選手の方が先輩に可愛がられ次々とチャンスがもらえることも多いと思います。
 
これは先輩に媚びを売ると言う意味ではなく、時に余計なプライドは自分の最短距離での成長を阻害することにも繋がっているのです
 
という認識を元に先輩の真似をするという選択肢をもっと柔軟に、素直に持つことは大事な視点であると考えています。
もちろん競技特性によっては多少先輩の言うことを聞かない生意気な性分の選手が大成することもありますのであくまで一例として聞いてもらいたい。

 

守破離とは

守破離という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
Wikipediaでは以下のような説明がなされています。
日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の一つであり、それらの修業における過程を示したもの。
日本において芸事の文化が発展、進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想で、そのプロセスを「守」「破」「離」の3段階で表している。
これをスポーツに置き換えると
「守」はスポーツの基本やチームの型、指導者の教えや先輩の教えを守ること。
その守ることが真似することでありそれが言われながらではなく自分自分でできるようになってやっと一人前である。
そのように解釈できます。
「破」はその型や教えを自分と照らし合わせて、より自分にあった型や手法を試行錯誤をしながら自分流のスタイルに挑戦する段階でこれができる選手は型破りな選手となります。
型破りな選手に成ろうと思ったら、まずは型を徹底的に守る、真似する必要性があるのです。
そして「離」の段階になると自己の探求や研究の集大成となりその競技の技術や修練方法についても熟知している為、師から離れることも基礎を変革し進化させることもできます。
ここまでくるとオリジナルと呼べるのではないでしょうか?
 
きっと守破離の「守」と「破」をとばして最初から「離」をしようとするから自己のあり方や戻るべき型がなく迷子になって成長が止まったり、プラトーになるのだと思います。

 

師を見るのではなく師の見ている景色を見る

 
私はこれまで守破離させてもらってきて、現在進行形で守破離している師と呼べる存在が4名います。
その時々で多くの刺激も叱咤激励もしてもらい本当に感謝していますが、ある時、ただ師をみているだけでは一生師の背中しか見えない。
そのように感じることがあり上記の言葉の存在を知りました。
ただ師を見ているだけでは本質的にはうわべだけの真似事に過ぎないのです。
師が何をみて、どう考えているか。
そこをみて考えてこそ本当の真似が始まる。
 
それを知り、体現してくれてきた師の存在のおかげで時に、何も師から言われなくても先に言おうとしていることがわかったりするようにもなってきました。
 
同じ景色をみているので、感じることも考えることも似てくるのです。
もしあなたが尊敬する選手や師匠のような存在がいるのであれば、その方々がどんな景色をみているのか徹底的に真似することをお勧めします。
 
それは読んでいる本であったり、旅する場所や一緒に行動をすることができたらどんな景色に目を奪われているのか。
 
スポーツにおける成長についても全く同じことが言えます。
 
ただプレイを真似するのではなく、どういった目的でどんな視点でどんなイメージをしながらそのプレイを練習しているのか。
 
それが共有できていないといつまでも先輩に追いつくことはできません。
私は幸い4人の師は私より全員年上なので、今の師の年齢に自分がなったときにはまずは同じ景色がみれているようにと思い守破離しています。
 
同じ景色が見えた時に自分自身のあり方が確立できていたら、その時、守破離の第二段階が始まるかな。
 
そのように考えています。
 

 

徹底的に真似した先にオリジナルが生まれる

 
真似できることを真似せずに”自分なり”でオリジナルを目指していると困ったことが起きる可能性があります。
いくつかの業界で自分自身もそういった状況をみたことや聞いたことがあるのですが
師の真似をしておらず真似をしようとしていないので、これがオリジナルだと言っても実はその事象はすでに師が数年前に行っていたことと瓜二つになってしまうということです。
 
もちろん全くのオリジナルなんてこの情報社会でなかなか難しいとは思います。
でも前述したように守って破るからこそ元の型に対してどの部分が自分なりのエッセンスが加わって、独自の手法になっているかがわかるのだ。
 
世の中にあるスターバックスコーヒーが同じようなコーヒーを提供しているものの、店舗デザインやPOPの書き方などその店舗のオリジナル要素がみえるように。
ゼロから100までをオリジナルでトレーニング方法やコンディショニング方法を考える必要性はないと思っています。
ましてやコーチング手法などはスポーツ以外の業界でも数多く素晴らしい手法があり、自分自身もたくさん流用させてもらっています。
 
どこか真似することを”パクった”ような感覚でネガティブイメージを持つアスリートもいるかもしれないが、武道の世界だけでなくスポーツでは新しい技術を習得する過程は全て”真似”から入る。
 
もっと積極的に真似して良いと思う。
そして徹底的に守破離して成長へのスピードを加速化していってもらいたい。
 
 
 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

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