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2019年02月25日

【アスリート向け】アスリートにトレーニングが必要な理由


 

文:岩渕翔一

 
昨今では、あまりにも当たり前すぎてあまり考える機会がないのかもしれない。
なぜアスリートはトレーニングをするのか?
・競技がうまく強くなりたいのだから競技の練習ばかりしたほうが効率が良いのではないか?
・キツいトレーニングが嫌い
・地味なことは嫌い。勝ち負けより技術を身につけて美しいプレーをすることの方が好きだ
こう言った声は今も度々耳にします。
競技の練習さえしておけば強くなり、勝てて、美しいプレーができ、怪我をしないのであれば当然トレーニングは必要ないでしょう。
しかし競技の練習だけでは不足しているからアスリートはトレーニングをします。
練習だけでは足りない部分をトレーニングすることで、強くなり、勝利に近づけ、怪我を予防することができるからトレーニングは行われていますし、そういったロジックのもとトレーニングメニューは構成されているべきです。
 
 
 

競技の練習とトレーニング。目的は一緒だか対象は別物

競技の練習は基本的に技術の習得や、戦術や作戦の理解・浸透、チームの連携プレーの向上を目的に行います。
一方、トレーニングは競技パフォーマンスに必要な構成要素(筋力、持久力、柔軟性、身体操作など)を強化することを目的に行います。
 

 
 
どちらも目的は勝つことや強くなることですが、強化の対象が全く別物であることがわかります。
競技の練習で「結果的に」パフォーマンスの構成要素が向上することは当然ありますが、それ自体を対象にしていることはほとんどないでしょう。
このように競技の練習とトレーニングは強化する対象が全く違うということを理解しなければなりません。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その1:故障のリスクが極めて低い中で強化を行える

例えばサッカーやラグビーといった競技で体力向上を含んだ競技の練習をしようと思えばどうなるでしょう?
当然練習時間は今より長くなります。
また、競技の練習を並行して行なっている以上、その分選手同士が接触する機会が増えることが予測されます。
選手が故障するのは競技に関わらず圧倒的に試合中や実戦形式の練習中が多いです。
練習時間や試合頻度が多くなれば当然、故障のリスクは高まります。
 
一方、トレーニング中に故障を起こすというのは試合に比べれば障害発生数は如実に低下します。
私自身、選手がトレーニング中に故障を起こしたというのは未だに経験していません(練習中はあります)。
 
つまり、トレーニングで強化できることはトレーニングで補うことで故障リスクを回避した中で安全に構成要素の強化ができるということです。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その2:オーバーユースを予防できる

例えば、野球のピッチャーが球速アップを目的に投げ込みの量や頻度を増やすとどうなるでしょう?当然オーバーユースによる肩や肘の負担が懸念され、故障のリスクが高まります。
そうならないためにも、オーバーユースを回避し球速アップに必要な構成要素の強化を安全に行うことができます。
 
それぞれの競技において障害発生の部位別頻度は異なり、競技における傾向があります。
単純にいうと、その競技をやっているから起こしやすい障害であるため、強化も予防もトレーニングで補えるのであればそのほうが安全に行えるはずです。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その3:過度なアンバランスを防ぐことができる

ほとんどの競技は左右対称に身体を使うことはありません。
テニス選手とサッカー選手と野球選手では体型が全く違うのと一緒で身体はその競技やその選手のパフォーマンスに合わせて変化します。
それ自体はいいのですが、それが過度になりすぎるとバランスを崩しパフォーマンスが低下することが度々あります。
そしてそれを競技レベルで気づいたときにはかなり深刻な問題になっていることが多いです。
 
トレーニングはこの競技パフォーマンスに悪影響を及ぼすようなアンバランスを発生させないためにも必要になります。
ある程度どのようなアンバランスが生まれてくるかは予測できるので、予防的にトレーニングを行うことができますしそれはパフォーマンスアップに直結します。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その4:人間の構造上、動きにくい部位と動きやすい部位があるため

例えば脊柱。
腰椎は可動性があり動きやすいですが、胸椎は稼働性が乏しい部位です。
それは構造上そうなのですが、多くの競技で「身体を使って」とか「全身で」とかいうように脊柱の動きは凄く重要です。
中でも胸椎の可動性や操作性というのは競技に関係なく重要で、構造上動きにくい部位であるが故に、この部位が動く、使える選手は非常に優位に立てることがあります。
 
しかし、構造上は腰椎が動きやすく胸椎は動きにくい。
そうなると、全身を使うといっても競技レベルではやはり腰椎が動きやすくなり、それがパフォーマンスの低下を招くだけでなく、腰部のオーバーユースとミスユースにより故障を起こしていることが少なくありません。
 
そうならないためにも、構造的に動かしづらい、動きづらい、意識しづらい部位をトレーニングによって選択的に強化することができます。
 
 
 

トレーニングが必要な理由その5:要素の最大値を上げることができる

競技の練習だけをやっていても構成要素の強化はある程度見込めますが、ある程度です。
なぜかというと、競技パフォーマンスというのは基本的に色々な要素の統合で発揮されるため、コントロールできなければ意味がないからです。
速いけどコントロールがめちゃくちゃとか、強いけど遅いとかでは安定したパフォーマンスを発揮できないため、基本的にはコントロールできる範囲でしか要素は発揮されません。また、想像していただければわかると思いますが、競技練習をしながら柔軟性の最大値を改善できるほどストレッチをかけることができるでしょうか?想像しただけで故障を起こしそうで怖い乗っではないかと思います。
 
そこをトレーニングによって、安全に柔軟性や筋力、持久力を要素別に強化し絶対値を上げることで、各要素の余力を作り、競技パフォーマンスで発揮できる(コントロールできる)要素の最大値を上げることができます。
 
 
 

トレーニングを有効に行うために重要なこと

ここまでアスリートにとってトレーニングが必要な理由を述べてきましたが、勘違いしてはいけないのは、単純に要素を高めればパフォーマンスが上がるかと言われればそんなことはないということです。
例えば柔軟性が向上すればするほど、筋肥大が起きれば起きるほどパフォーマンスがそれに比例して向上するわけではありません。
そこには各要素との相互関係があり関係性があります。
 
短絡的に要素を伸ばすことは他の要素の低下を招き、パフォーマンスを低下させ故障を起こしやすい身体にしてしまうリスクすらあります(JARTAではこのような現象をマイナスの学習と呼んでいます)。
 
そのようなマイナスの学習を起こさないためには、なぜそのトレーニングをするのかという評価と分析が根底に必要です。

  • ・競技パフォーマンスの評価と分析
  • ・選手の動きや姿勢、身体の評価と分析

その上でトレーニングの選択と量と質の決定を行います。
 
障害予防、効率性、安全性、身体の強化などを目的にアスリートがトレーニングを行う意義を解説しました。
適切な評価と分析のもと効果的なトレーニングを行えば必ず競技パフォーマンスの向上に繋がるはずです。
身体という土台そのものの強化であるトレーニングはその選手が持つ潜在能力を高めることと同義です。
その高めた潜在能力をうまく引き出すために行うのが練習の目的の一つです(トレーニング効果の転移と言います)。
 
アスリートであれば誰もが勝ちたいはずです。
勝つためには、競技練習とトレーニングを並行して行っていくことがやはり大切です。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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