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2019年08月03日

股関節は柔らかければいいのか

 
 

文:伊東尚孝

 
ハイパフォーマンスには股関節が重要であるという内容が、SNSなどでよく取り上げられています。
 
確かに運動構造を紐解くと、あらゆる競技で股関節が重要なのは明確であり、ハイパフォーマンスを発揮するためには必要な要素となっています。
 
 
では仮に、股関節が硬い選手のパフォーマンスを上げるために、
股関節の柔軟性を高めるトレーニングを行うとします。
 
「股関節が硬いから」
 
という理由で。
 
 
 
もし、その選手が、メッシやイニエスタのようなトップ選手だとしたら?
 
 
 
それでも、あなたは彼らに股関節を柔らかくするように指導できますか。
それがかえってパフォーマンスを下げるリスクにならないと確信できますか。
 
 
 
つまり、
「股関節を使うこと=柔軟性を高めること」になっていないかということです。
 
 
パフォーマンスアップのための「股関節を使う」とは、どのように評価していくべきかを述べていきます。
 
 
 

イタリア人選手の股関節は硬い?

 
 
昨年JARTAのイタリア研修に参加し、私はイタリア人サッカー選手とバスケットボール選手にトレーニング指導をする機会をいただきました。
他にもラグビーやフットサルの試合や練習も見学しました
 
 
その時に感じたことは、
 
「イタリア人は股関節が硬い」
 
どの競技の選手も、股関節の柔軟性を必要とするトレーニングでは苦痛の表情を見せていました。
しかも、プロで活躍する選手ばかりです。
 

 
本当に股関節の柔軟性は、ハイパフォーマンスに必要なのか?
 
 
「ハイパフォーマンス=股関節の柔軟性」という思考だと、そう思ってしまうかもしれません。
 
 
 

動作の過程に股関節があるだけ

 
 
少し話はそれますが、
 
あらゆる競技の運動構造を紐解くと、床反力を力源としているフェーズが非常に多いです。
地面から受けた反力を全身に波及させることで、無駄な力みのない強いパワーを生み出すことができます。
ピッチャーの投球は、まさにこの力を利用しています。
 
また股関節は下半身と体幹を繋ぐ関節の一つで、球関節という形状によって様々な姿勢(股関節の角度)でも体を支えることができる特徴があります。
 
動きの自由度が高い股関節を“使う”ことができれば、
複雑な動きや姿勢でも全身に効率良く力を伝達することを可能にし、結果的にハイパフォーマンスを発揮することができます。
 
 
 
では、ここからが本題です。
 
“股関節しか”使えない身体はハイパフォーマンスを発揮できるでしょうか。
 
 
答えはもちろん否です。
 
 
ピッチャーの投球を例に挙げると、
強い床反力を受けるフェーズは、軸足でプレートを押し込む時、前足でスタンスをとる時の二つに分けられます。
例えば、前足でスタンスをとる時に足部アーチが極端に潰れてしまうと、運動連鎖により膝は内側に倒れ、股関節は内旋運動を強要されてしまいます。
 
床反力を真っ先に受けるのは足部であり、そこからズレが生じていれば全身に効率良く力を伝達することが難しくなるのは当然のことです。
(伝達できていても、無駄な力みが生じ疲労が蓄積しやすい可能性があります。)
 
股関節だけにとらわれ「股関節の外旋角度が足りない」と股関節にアプローチしても、
その投球の質は変わらない、もしくは低下するリスクがあります。
 
 
つまり、その動作がどのような構造なのかを理解し、その動作の過程で股関節がどのように機能しているかを分析する必要があります。
 
 
投球という動作を分析した時にどのフェーズで股関節は機能するのかを考え、
それを踏まえて目の前の選手はどのフェーズでエラーが起きているかを明確にします。
 
上記の例ならば足部の問題を解決したのち、もしくは同時並行で股関節にもアプローチすることが望ましいと考えます。
 
 
 

股関節は柔軟であるべきだ

 
 
結論からいえば、股関節は柔軟であるべきだと考えます。
 
しかしなぜ柔らかい方がいいのかを、各競技の特徴や運動構造を理解した上で解説できる知識が必要です。
 
 
また単純に関節が硬ければ、その部位のボディイメージは薄くなっているはずです。
股間節がどこにあるのか、ぼんやりしている状態ということです。
そのため、生活習慣の中でも股関節を認識する場面を増やすことも有効になります。
ルーティンがもたらす3つの効果
 
 
ただ闇雲に股関節の柔軟性を高めればいいのではなく、その選手に必要な要素を抽出した結果、股関節にアプローチするプロセスが重要です。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
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