ピッチャーゴロを捕ってしっかり送球できません。手首が固まる感覚があります。どうすればいいですか?

文:岩渕翔一

今回はタイトルの通りです。代表中野のブログで取り上げられていた質問ですが、この悩みについて私の見解と分析をご紹介します。

中野の記事はこちら

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12464968788.html

 

うまくフィールディングを行うには、あるギャップを共存させる必要があります。裏を返せばこのギャップをクリアできなければいくつかのパフォーマンス低下を起こすことになります。

また、このテーマは私が認定コースのベーシックセミナー講師をする際に、「アブレスト能力」、「ハイパフォーマンスゾーン」の解説での実例として提示するシーンです。

チームで投手をやっているような選手です。単純に考えて投げることは上手いはずです。にも関わらず身体操作上のエラーを起こす。それには単に投げることが上手い下手ということとは違う次元の問題がいくつか提示できます。

・出力コントロールの選択ミス(ハイパフォーマンスゾーン)
・身体操作と意識のギャップ(アブレスト能力)
・運動構成と構造間の認知→判断→実行イレギュラー

 

などです。

 

手首が固まるという現象から推察されること

 

「手首が固まる感覚」という具体的な訴えがありますのでそこから考えてみます。

これは選手の意識が手首に向いていることを示唆しますが、なぜ手首に向くのでしょうか?投球時に手首に意識が向くことは特別な場合を除き(変化球の修正など)ほとんどないと思います。それは基本的に投球は「強く投げる」ことがベースであるため、全身で投げるとか下半身を使うとかそういった意識下の方が圧倒的に多いです。

一方、フィールディングで要求されるのは大まかに2つです。

・素早く投げること
・コントロールすること

 

 

この2つです。送球においてこの2つを実行するために選択されるスローイングは「スナップスロー」です。これが手首に意識が向きやすい原因ですが、素早く投げることとコントロールすることは運動構造としては逆行する(矛盾する)要素を共存させる必要(アブレスト能力)があります。

どういうことかと言いますと通常、「コントロールすること」を容易に遂行するにはゆっくり行うことが原則になります。運動や動作は速くなればなるほどコントロールが難しくなるためです。しかし実際の動作はというと、「素早いこと」が大前提になります。ランナーがいる状態でのフィールディングは封殺が第一選択になるため出来るだけ速く遂行する必要があるからです。

投手のフィールディングにおける実行過程は、
認知→判断→実行
この過程を出来るだけ素早く正確に行うことで、具体的には、

①投球完了後、打者がヒッティング

②打球を見て(認知)その場、或いはダッシュして(判断)捕球(実行)。それとほぼ同時に捕球後のスローイング方向を決定(判断)。それに応じて捕球体勢の選択(判断)。

③捕球後からのスムーズなスローイング(実行)

 

この過程においてスローイングを行うまで一貫して素早いことが要求されますが、スローイングそのものはコントロールしようとするわけです。そうすると実際の動きの速さと、コントロールしようとすることのギャップができてしまいます。他は素早く動いているのに、スナップスローでコントロールしようとする意図が、「手首が固まる」という現象を生んでいる可能性が高いです。

 

 

これに対する対策は明確で、フットワークを素早く安定して行うトレーニングを行うことです。実際、素早く動く必要があるのはほとんどの相で下半身です。

 

・前後左右方向へのフットワーク(捕球ポイントまでの移動)
・上下の重心移動(素早い捕球)
・回転フットワーク(捕球から送球方向への方向転換)

 

これらを素早く安定して行わなければならず、特に3つ目の回転フットワークは他の野手にもあまりない動きです。当然投球練習で補えるものでもないため、特化したトレーニングを行う必要があります。フットワークが安定し自信を持つことができれば、素早い動きだが安定したフットワークになるため、コントロールすることとのギャップが解消されていきます。

 

その他の可能性

 

もう1つフィールディングがうまくできないときに多いパターンについて。オーバーハンドで強く投げるという投球直後に、スナップスローで素早くコントロールして投げるという動作は同じ「投げる」でも運動構造が大きく異なります。それぞれ単体で練習を行ってうまくできていたとしても、実際の試合ではこの切り替えがうまくできずに暴投してしまうということがあります。これはその場面に応じてうまく動きや身体を切り替える(ハイパフォーマンスゾーン)必要があり、そのためのトレーニングが必要になります。

 

フィールディングに必要なトレーニング

 

以上のことからフィールディングには、

・投球後パワーポジション獲得トレーニング
・時間・空間認知を高めるビジョントレーニング
・フットワーク改善トレーニング

 

が必要になります。フィールディング時に手首が固まるという感覚がある選手や、うまく行かないと感じている選手は参考にしてみてください。

 

全てはパフォーマンスのために。

 

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