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2019年06月03日

脚が攣る(筋痙攣)ことがある投手へ

文:岩渕翔一

6月に入りいよいよ暑くなってきました。それと同時に、学生アスリートにとって最もアツい夏が今年もまた始まります。
すでにインターハイ予選は各競技で始まっています。
 
誰もが自分のベストのパフォーマンスを出し、全力を出しきりたいと考えているはずです。そのためにいよいよ調整の時期に入ってきています。
この時期特有の課題として、試合に向けたピーキングと同時に暑さ対策。いわゆる、熱中症や脱水症対策が必要になってきます。
この対策で最も言われているのは、マメな水分摂取です。当然重要なことですが、この水分摂取において、多くの学生に関わってきてほとんどの選手がなかなか意識できていない点があります。これはプロの選手でも意識できていないことが少なくありません。また、暑さ対策において学生特有の課題が一点あります。
特に、脚が攣る(筋痙攣)ことがある選手は要チェックです。
今回お伝えするのは、
・脱水予防だけでなくパフィオーマンス向上を目的とした水分摂取について
・暑さ対策に必要な暑熱順化について
 

一般的な脱水症予防

体水分量(体液)は成人で体重のおよそ60%程度であると言われています。このうち、2%が失われると喉が渇き、運動能力が低下すると言われています。さらにそこから3%で強い喉の渇きになり。食欲不振や意識の低下、4〜5%で疲労感や体温上昇、頭痛などの脱水症状があらわれます。
 

このため、喉が渇く前に水分を取れと言われるわけです。また、練習や試合前後に体重測定することで簡易的に排出された水分を管理することができます。例えば、体重60kgの選手であれば、練習前後での体重減は1.2kg以内に留めなければ2%以上の水分が排出されてしまっていることになります。
このように、練習や試合など競技に関わる部分での管理はどんどん発展しています。しかしこれだけでは対策は不十分です。試合中や練習中の水分摂取は体液不足を起こさないための「予防」でしかありません。それだけでなく、身体そのものを鍛え、余力を作るということを時期に関係なくしなければなりません。
 

体液の役割

 
どうやって余力を作るのか??それを解説するためにまずは体液の役割をおさらいします。体液の主な役割は3つ。
・酸素や栄養素・ミネラルなどを体内に運搬する
・尿や汗として老廃物を体外に排出する
・発汗によって体温を調節する
 
という役割を担っています。
 
それが脱水によって、
・必要な栄養素を体内に運搬できない
・老廃物が蓄積する
・体温調節が行いにくくなる
 
といったことに伴う各々の症状があらわれます。そうなるとスポーツパフォーマンスにおいては、
疲れやすくなり、回復も遅くなる。判断力の低下なども招く。
というパフォーマンスの低下に直結することになります。
そのために排出された分、あるいはそれ以上の水分を摂取し補うというのが基本的な対策なのですが、それともう1つ。
元々体内にある水分量を増やすということをしなければなりません。
 

体液量には人による幅がある

 
先に成人の体液量はおよそ60%程度であると述べました。当然、これには人によって幅があり、およそ50〜70%程度の幅があるとされています。これが、何を指すかというと、人によって体内に保持しておける水分量が違うということです。当然、多くの水分を保持できるほうが脱水症や体液量低下によるパフォーマンス低下を起こしづらくなります。
これを鍛えるためにしなければいけないことは、競技中や練習中の水分摂取だけでなく、日常的に水分摂取を意識することです。
 

1日の水分摂取

 
成人に必要な1日の水分は2Lと言われています。食事に含まれる500mlを省き、一日およそ1.5Lの水分を摂取しなさいと言われますが、スポーツ選手は当然これだけでは足りません。まずは練習以外の時間で3〜4Lの水を飲むように心がけます。まとめて飲んでしまうと、ほとんどが尿として排出されてしまうのでマメに少しずつ摂取することがコツです。それでも最初はトイレに行く頻度が多くなりますが、これも習慣化していけば少しずつ体内に保持されるようになってきます。
 
そうすることで体液量という側面で余力を作ることができる。つまり身体の強化になるということです。脱水症でなくても、試合終盤や途中で筋痙攣を起こす選手はやってみる価値は大いにあります。筋痙攣は多様な原因から起こりますが、試合途中に起こるものの多くは疲労と体液量低下によるものです。つまり、先にあげた体液量低下に伴う症状が大いに関係しているということです。
 
当然、ストレッチやマッサージなど対策はしていると思いますが、それだけでなく、水分摂取量を増やすことによる体質改善という強化を意識してみてください。
 

学生に必要な暑熱順化

 
もう1つ脱水症や熱中症を予防するために必要なのが、「暑熱順化」です。暑さに慣れるということを目的とし、
・あえて暑い中で高強度の運動を短時間行う
・睡眠の管理
・水分摂取も含めた栄養管理
 
などを行なっていくことが対策になりますが、学生特有の課題として日中は授業があるということです。必然的に練習を行うのは放課後の気温が下がり始める夕方から行うことになります。しかし試合は日中に行われることが多く、ここでギャップが生まれ、身体がうまく対応できないことがあります。そのために昼休みに意識して屋外に出ることや(できれば走るなど少しでも負荷をかけることができると良い)、朝練を行うなどの対策が必要になります。また、暑い中で長時間練習を行うと疲労が蓄積されてしまうため、試合へのピーキングという意味では好ましくありません。暑熱順化するには高強度の運動を短時間行うことで十分です。
 

夏に最高のパフォーマンスを

 
今回は、
・脱水予防だけでなくパフィオーマンス向上を目的とした水分摂取について
・暑さ対策に必要な暑熱順化について
 
解説しました。いずれも夏にベストのパフォーマンスを発揮するために必要なことです。そのためには、「暑さ対策を行い脱水症を予防する」というだけでなく「暑さに対する余力を作るための身体強化をする」という視点が必要なこと。また、競技や練習中だけでなく、日々の生活そのものの習慣や意識を変えていかなければならないということです。
全ての選手がこの夏に全力でベストのパフォーマンスを発揮できるように。
 
全てはパフォーマンスのために。
 

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