投球障害から選手を守れ!―肩甲骨機能編―

 

 

 

文責;山内 大士

 

関西で活動する山内です。

 

前回・前々回に引き続き投球障害に関する内容をお伝えします。今回は肩甲骨について掘り下げていきます。

 

肩甲骨は肋骨の後ろに浮島のように存在しており、自由度も動きの幅も大きいことが特徴です。JARTAで肩甲骨と言えば”立甲”がピックアップされがちですが、これはあくまでも肩甲骨の動きの中の一つのバリエーションに過ぎません。

 

~参考~

・立甲ができることによるメリット

https://jarta.jp/training/4382/

・立甲についての考察

https://jarta.jp/training/15358/

 

投球障害を考える上では、立甲以外の肩甲骨の動きについてもしっかりと把握し、改善に向けての引き出しを増やしていく必要があります。

 

https://jarta.jp/seminar/17257/

<投球数以外に大切なポイント②肩甲骨周囲の筋機能>参照

 

〈目次〉

・投球動作における肩甲骨の動き

・投球障害と肩甲骨機能との関係性

・肩甲骨の動きと筋機能を改善させる方法

 

 

 

投球動作における肩甲骨の動き

 

投球動作の中にはキーポイントとなるフェーズがいくつかありますが、中でも特に最大外旋位(MER)は肩・肘にかかる負担が大きく、MERでどのような動きをしているかは重要なポイントの一つです。MERで綺麗な動きができている選手の投げ方は、しなやかで腕がムチのように使われているような印象を受けます。

 

MERの大きさは球速に貢献するという報告(Matsuo 2001など)もある一方、MERが大きいことは肩への負担が大きいこと(Werner 2001)も示されています。単にしなりの大きい投げ方をすることはある意味諸刃の剣とも言えるでしょう。

 

ここで重要となってくるのが肩甲骨の動きです。MERにおける肩甲骨の動きは「内転」「上方回旋」「後傾」です(Oliver 2015)。中でも肩甲骨の後傾の重要度は高く、肩甲骨後傾が大きいほどMERは大きくなり、また肩関節自体での外旋は小さくなることが示されています(宮下2009)。

 

つまり、MERで肩甲骨が後傾する角度を大きくすることができれば、十分なしなりと障害リスクの軽減を両立できる可能性があるということです。

 

 

 

投球障害と肩甲骨機能との関係性

 

次に、投球障害と肩甲骨機能との関係性を見ていきます。まずは肩甲骨自体の動きに着目しましょう。肩痛を有する小学生野球選手は、反対側と比較し肩甲骨が前傾している選手が多いことが報告されています(Otoshi 2018)。また、徒手的に肩甲骨を内転・後傾方向に誘導することでインピンジメントテストによる疼痛の軽減が見られるという報告(Tate 2008)もあります。これらの報告は投球動作における肩甲骨後傾の重要性を裏付けるような結果とも言えます。

 

次に肩甲骨周囲の筋機能に着目してみると、肩外旋筋力に関する報告が多く見られます。具体的には、肩外旋筋力が低下していることが肩障害発生のリスクとなることや、肘通を有する選手は肩外旋筋力が低下していることなどが報告されています(Byram 2010, Morifuji 2017)。

肩を外旋させる主な筋肉は棘下筋ですが、投球動作のように挙上位で肩外旋筋力を発揮するためには前鋸筋の働きが重要となります(Uga 2016)。実際に肩甲骨を安定させる機能が低下している選手は、挙上位での外旋筋力のみが低下することも示されています(Uga 2016)。

 

また症状のない大学野球選手においては、肩外転運動時の僧帽筋下部・前鋸筋活動の増加が観察されており、これは肩関節への負担を軽減させるための代償的なものではないかと考察されています。(Tsuruike 2016)。

 

以上を踏まえ筆者自身が投球障害を見る際には、

”肩甲骨の内転・後傾方向への可動性を高めること”と、

”僧帽筋下部・前鋸筋が十分に働く状態にすること”

を最優先にしています。

 

 

 

肩甲骨の動きと筋機能を改善させる方法

 

ここまで述べたポイントを改善させるために有効な方法をいくつか紹介いたします。

 

まずは前鋸筋のトレーニング。体幹トレーニングの姿勢(プランク)をとり、肩甲骨を背骨に寄せる(内転)→肘で地面を押して肩甲骨を背骨から離す(外転)、を繰り返します(Paula 2004)。

 

次に、僧帽筋下部のトレーニング。うつ伏せで腕を斜め上方に位置させたところから、体幹を回旋させながら腕を持ち上げます。

 

この時、指先を見ながら背中の筋肉を使うことを意識して行います。

体幹の回旋を加えることにより、ただ単に腕を持ち上げるよりも僧帽筋上部を抑制しながら僧帽筋下部を使えることが示されています(Yamauchi 2015)。

 

しかし、このトレーニングでもうまく背中の筋肉を使う感覚がわからない人も多いです。そんな時はこのトレーニングを試してみてください。

 

このトレーニングでは、広背筋のストレッチと前鋸筋・僧帽筋下部の収縮を促し、肩甲骨の後傾可動域を広げることができます。

細かい部分では、

・息を吐きながら行うことで腹斜筋〜前鋸筋を働きやすくする

・最大努力で肩関節外旋を行うことで肩甲骨の後傾と広背筋の伸長を強調する

といったポイントがあります。

 

最後に紹介したトレーニングは特に即時的な効果を実感しやすいものとなっています。試しに10回程度行ってみて、直後の肩の力の入りやすさやシャドウピッチングの感覚を確かめてみてください。多くの場合は、肩が安定してしっくりくるような感覚が得られることと思います。

 

 

 

まとめ

 

今回の記事では投球障害との関連が深い肩甲骨の機能を扱いました。

 

次回は投球障害シリーズのラスト。投球フォームと投球障害の関係性についてお伝えいたします。

 

また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。

https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/

 

その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。

 

野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。

学生や学生トレーナーの方や、投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。

 

 

 

お申し込みはこちら

12/8(日)in大阪

https://business.form-mailer.jp/fms/f9765758112026

 

12/14(土)in東京

https://business.form-mailer.jp/fms/22655ff1112081

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

JARTA公式HP

https://jarta.jp