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2020年01月15日

全身の連動を反射で引き起こす

文責:伊東尚孝

 
「全身を連動させる」
 
様々な競技において、このように指導されることがあるかと思います。
 
全身を連動させることは、あらゆるスポーツにおいて必要とされパフォーマンスアップには欠かせない要素の一つであり、
◯再現性を高める(コントロールが良くなる)
◯強いパワーを生み出せる
◯スピードを上げられる
◯怪我を予防できる
など様々なメリットがあります。
 
「連動」とは、「動き」が「連なる」ということからも、全身のあらゆる部位の運動を連ならせたトレーニングが必要です。
野球のピッチング、テニスのストローク、バレーのサーブ、ゴルフのティーショットなどは、どのプレーも腕力だけで解決されないことは言うまでもありません。
 
ここでは全身を連動させるための運動様式を解説し、そのトレーニングに必要となる要素の一つを紹介していきます。
 
 
 

反射を活用する

 
全身を連動させるためには何が必要とされているのか。
 
結論から言えば「反射を活用する」ことがその一つです。
 
筋肉には伸縮を感知するセンサーが存在しており、受動的に伸ばされることで筋肉が収縮する「反射」を引き起こします。
これを専門的に「伸張反射」と言い、自分の意思とは無関係に起こるメカニズムです。
さらに下肢・骨盤・脊柱・上肢など全身にある運動軸の「回旋運動」を連動させることで引き起こされる反射を「回旋系伸張反射(以下、RSSC)」と言います。
 
RSSCは伸張反射と同様に、脳によるコンロトールはなく「反射」を活用しているため、自動的に運動を引き起こし再現性を高めたプレーを可能とします。
 
JARTAで紹介している「スパイラルパンチ」というトレーニングは、このRSSCを活用したものです。
 
 

 
(※動画を真似するだけでは怪我をする可能性もあるため、実際に指導を受けることを勧めます。)
 
 
動画では、急激な体幹の回旋力が上肢へと波及されている運動になっています。
腕を伸ばそうと(パンチしようと)するのではなく、体幹の回旋力が腕へ波及された結果、腕が伸びている運動様式となっています。
 
つまり、全身の連動により反射的に上肢を運動させることを目的としたトレーニングとなります。
 
例えばこれをテニスのストローク(右打ち)に当てはめると

  • テイクバックで骨盤を右側に引きラケットを構える(背骨も右へ回旋している)
  • 骨盤の急激な回旋力が背骨に波及され体幹筋が伸張され力が生じる
  • 生じた力が上肢へ波及されスイングする

 
このような運動構造によりRSSCを活用します。
 
RSSCをうまく活用できない(すなわち連動した動きができない)選手は、いわゆる「手打ち」になりパワーを出し切れずコントロールも定まらないプレーとなってしまいます。
様々な競技でも「腰を入れて、腰から」という指導は、まさにこのRSSCを活用させるために必要な要素の一つだと考えます。
 
 
 
***
 
しかし、スパイラルパンチはあくまでRSSCを習得するための「手段」に過ぎません。
どんなに優れたトレーニングでも、万人に共通して効果があるとは言い難いです。
各競技の運動特性や、その選手の動きや体格などには個別性があるため、選択されるべきトレーニングも様々あります。
 
選手が本当に必要とするトレーニング
 
今回はスパイラルパンチの「方法」を伝えることが目的ではなく、
パフォーマンスアップに必要な運動様式をスパイラルパンチという「手段」を用いて解説していることを、改めてご理解いただけると幸いです。
 
 
 

背骨の認識を高める

 
話が少し逸れましたが、ここからはRSSCを獲得するためには何が必要なのかを解説していきます。
 
上記で述べたように、RSSCは筋肉にあるセンサーが受動的に伸張されることによって筋肉を収縮させる反射を引き起こします。
 
もちろんRSSCは全身を連動させた運動様式であるため、各部位の反射を活用することが必要とされますが、その中でも特に注目したいのが「背骨」周りの筋肉です。
 
その理由として、
◯ 背骨には細かい筋肉が密集しており、筋肉にあるセンサーも背骨周りにより多く存在しているといわれている。
◯ 力の出力は身体の中枢部から生じるといわれており、ヒトの中枢部には背骨がある。
◯ 背骨は力を全身に波及させることや衝撃を吸収・分散する役割があり、ほぼ全ての運動に関与している。
 
つまり、RSSCに必要な「反射の活用」「力の波及」「全身の連動」という要素を多く担っているのが「背骨」になると考えます。
 
背骨のモビリティやスタビリティを上げることは当然ですが、背骨を「一本の支柱」のように捉えながらトレーニングをしていないでしょうか。
背骨は頚椎から腰椎まで24個あり、一つ一つはごくわずかでありますが関節運動を起こします。
極論を言うと、一つ一つをバラバラに動かすくらいの認識力が必要です。
背骨がどのように動いているか、どの方向が動きやすいか/にくいか、またはどの部位が動きにくいかなどを認識することで、効率良くRSSCを活用するための準備ができます。
 

 
 
 
また、背骨は自律神経系と深い関わりがあり、背骨の硬さによって自律神経が乱れメンタル面にも悪影響を及ぼす可能性があります。
トップクラスの選手のプレーが「安定している」ように見えるもの、メンタルが左右されにくい状態でプレーできているからだと推察されます。
 
 
 

背骨の柔軟性が関節への負荷を軽減させる

 
RSSCによって引き起こされた力は、身体の末梢になるほど力強く影響されます。
そのため、ハイパワー・ハイスピードを発揮できるメリットがある反面、末梢である肩や肘にはそれだけの負荷がかかっていることになります。
これはRSSCに限らずですが、どんなに優れた選手でも関節への負荷を避けて通ることは不可能です。
しかし背骨の柔軟性があれば、負荷を「軽減」することはできます。
 
関節障害を引き起こすメカニズムとして、中枢部の関節(背骨)に障害があれば、末梢の関節(肩・肘・手首・股関節・膝など)に影響を及ぼすといわれれいます。
 
仮に、胸周り(胸椎)の柔軟性が乏しい選手が投球し続けたとします。
RSSCによって背骨→肩→肘→手→指→ボールへと力が波及されていきますが、胸あたりの柔軟性が乏しいことで背骨(胸椎)から肩までの力がうまく波及されません。
その結果、胸の硬さを「かばう」ように肩を「使いすぎる」現象へと変化していきます。
肩周りの筋肉が必要以上に力み、靭帯や関節包が必要以上にストレッチされ続けることで、肩に何らかの障害を引き起こすリスクを生み出します。
 
これが、オーバーユースを発症する選手の特徴です。
 
つまり、末梢の肩や肘の器質的な問題だけではなく、中枢部である背骨の柔軟性が関与している可能性が示唆されます。
(波及された力に耐えるだけの各関節の柔性と剛性が担保されていることが前提となります。)
 
そのため関節への負荷を軽減させるためにも、背骨の柔軟性は重要なファクターとなります。
 
 
 
 

まとめ

 
「全身を連動させる」と言っても、目的が違えばトレーニングも変わります。
連動させて何を獲得したいかが明確でないと、そのトレーニングの効果は期待できないかもしれません。
 
今回はRSSCをスパイラルパンチで解説しましたが、RSSCを活用するフェーズはあらゆる競技に存在し、対人競技であるサッカーやバスケ、格闘技などにも活用できます。
 
さらなるパフォーマンスアップを望んでいる選手は、JARTAスポーツトレーナーを利用してみてはいかがでしょうか。
我々は、選手のパフォーマンスアップのために全力で力になります。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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