投球障害から選手を守れ!―投球フォーム編―

 

文責;山内 大士

 

関西で活動する山内です。

 

投球障害シリーズの最後の記事となる今回は、投球フォームについてお伝えしていきます。

フォームは個人差の大きい部分ではありますが、たくさんの選手の動きのデータを集めることで、どのような動きが球速UPや負担軽減に繋がるのかを知ることができます。

 

これまでの研究で明らかになっていることをお話したうえで、投球フォームを改善させるためのトレーニングの一例をご紹介します。

 

※投球フォームの研究で用いられる用語は難しいものも多いため、現場で用いられるような平易な言葉に言い換えて表現しています。

 

〈目次〉

・投球フォームと球速

・投球フォームと肩肘への負担

・投球フォームを改善させるためのトレーニング

 

 

投球フォームと球速

投球フォームを分析する上で用いられる方法に、フェーズごとに分けるやり方があります。

分け方には色々あるのですが、本記事では私がわかりやすいと思う方法で分類していきます。キーとなるフェーズは以下の3つです。

 

・前足が地面に着地した瞬間

・投球側の肩が最大外旋した瞬間(MER)

・ボールが指先から離れるリリースの瞬間

 

まずは体重移動が開始してから前足着地までのフェーズを見ていきます。

このフェーズにおける球速向上のポイントとしては、軸足でしっかりと地面を押すことと十分なステップ幅をとること(MacWilliams 1998, Montgomery 2009)が挙げられます。

逆に、前足が着地した時点での骨盤の開きが大きい選手は球速が低くなる傾向にあります(Wight 2004)。

 

次に、前足着地~MERまでのフェーズを見ていきます。

このフェーズにおいては、前足股関節を支点とした骨盤回旋、及びそれに引き続く上半身の回旋速度を高めることが重要です(伊藤2000, Stodden 2006など)。この骨盤の回旋に大きく貢献する筋肉が内転筋であり、内転筋の疲労は球速の低下につながることが報告されています(Yanagisawa 2018)。

また、骨盤回旋と上半身の回旋がそれぞれ最高速度に到達するまでの差が大きいこと、いわゆる体幹部での割れができていることもポイントです(Matsuo 2001など)。このことは海外でも”hip and shoulder separation” と呼ばれており、投球フォーム指導において重要視されているようです。

 

最後に、MER~リリースまでのフェーズを見ていきます。球速が高い選手はこのフェーズにおいて、前足に体重を乗せられている・前脚の膝が固定できている・体幹を前に倒せているなどの特徴が挙げられます(Matsuo 2001, Stodden 2005など)。

上半身においては肩の外転角度を90度前後に保つことが重要です(Matsuo 2002)。

※肩の外転角度=体幹に対する上腕の角度

 

 

 

投球フォームと肩肘への負担

肩肘への負担が大きいフェーズはMER~リリースです。このフェーズにおける肩の角度は非常に重要です。報告により軽度のばらつきはありますが、肩外転角度は90度前後で、水平内転角度はMERで2度前後、リリースで5度前後が肩肘への負担が最も少ないとされています(二宮2007、駒井2008など)。

※肩の水平内外転角度=体幹の面と上腕が平行の状態を0度とし、上腕が前方にある状態が水平内転位で後方にある状態が水平外転位

 

現場で良く用いられる言語で表すと、

外転が少ない=肘下がり

水平内転が大きい=肘の突き出し

水平外転が大きい=腕が遅れる

このような感じで言い換えることができ、そのどれもが特定の部分に対する負担を増大させるリスクを抱えていると言えます。

 

しかし、こうした肩の角度は意識して作り上げるものではなく、それよりも前のフェーズにおける動作や下半身・体幹の動きの結果として決定される場合が多いです。

 

前足着地よりも前に骨盤・体幹が回旋し始める、いわゆる開きが速い選手はMER~リリースにおける肩の水平外転が大きくなり、負担が増大する傾向にあります(Aguinald 2009など)。骨盤の回旋が最高速度に到達するよりも前に上半身の回旋速度が最大になる選手、すなわち”hip and shoulder separation” ができていない選手はMERでの外旋角度が増大し肩へのストレスも大きいと報告されています(Oyama 2014など)。

また、リリースにおける体幹回旋の減速ができていない選手、すなわち踏み込み脚や体幹の固定がうまくできていない選手も肩の水平外転が増大します(Oliver 2009)。

 

水平外転角度やMERでの外旋角度が大きくなることは、一見ダイナミックでしなやかな動きに映り球速に貢献する要素もあります(Wang 1995など)。しかし、過度になりすぎると負担が増大することは間違いないので注意が必要です。

 

基本的には球速が高まると肩肘への負担も増大してしまいます。しかし、プロの投手はアマチュアの投手と比較し体幹回旋開始タイミングが遅く肩への負担が少ないという報告もあります(Aguinald 2007)。下半身・体幹を上手に使い動作を洗練していくことで、ある程度は球速と負担軽減を両立させることが可能となるでしょう。

 

 

 

投球フォームを改善させるためのトレーニング

どのようなトレーニングをすればフォーム改善できるのか、そこにはもちろん個人差があります。前回までの記事でお伝えしたような肩のストレッチや肩甲骨周囲のトレーニングも、場合によってはフォーム改善に直結します。肩甲骨周囲だけでなく、みぞおちの動きやもちろん股関節周囲のトレーニングでフォームが変わることも多々あります。

(参考;肩甲骨とみぞおちの関係が重要|プロ野球自主トレ

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12343391053.html

 

そんな前提条件を踏まえたうえで、指導経験上及び自分自身でも効果を感じている2種類のトレーニングをご紹介します。

 

①前足着地時の姿勢作り

このトレーニングのポイントは、

・前脚も後脚も股関節外旋位を保ち(膝が内側に入らない)、内転筋を使うこと

・投げる方向への重心移動とグラブ側の肩を入れる動き並立させること

・投球側の肩を力むことなく胸の張りを作ること

です。

骨盤の開きを抑え、体幹の割れ“hip to shoulder separation”を獲得するための感覚作りと、このフェーズで求められる下半身・体幹の柔軟性の改善が期待できます。

 

②ランジリーチ

このトレーニングのポイントは、

・前脚の膝は踵の真上~やや後ろに保ち、股関節から身体を折り曲げる

・息を吐き腹部に力を入れ、腕を力ませることなく遠くまでリーチする感覚を覚える

です。

直接的にはリリース~フォロースルーの動作改善に役立ちますが、内転筋・大腰筋・腹斜筋・前鋸筋に刺激を入れられるトレーニングでもあります。このトレーニングは反対側も行うことをお勧めします。

 

 

 

まとめ

今回の記事では投球フォームについてお伝えしてきました。感覚的な言語で表現するだけでなく運動学に基づいた分析ができるようになれば、改善に必要なトレーニングも考案しやすくなると思います。

 

 

 

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その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。

 

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最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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