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2020年06月03日

ストレッチをパフォーマンスアップにつなげるコツ

文:平山鷹也

 
ストレッチは怪我予防のためにするものだ。
身体の柔らかさとパフォーマンスは関係ない。
柔らかくなってきたけど、プレーが変わっているかわからない。
 
 
ストレッチが重要なのはわかっているが、ストレッチの効果をプレーの中で実感できていない選手も多い。
 
 
そこで今回は、ストレッチをパフォーマンスアップにつなげていくためのポイントについて解説する。
 
 
キーワードは、「全身のつながりを感じる」こと。
 
 
つながり、と言うと少し曖昧なので具体例をあげてみる。
 
 
わかりやすいのは、筋膜によるつながりだ。
 
 
Thomas W. Myersの著書として有名な「アナトミー・トレイン」によると、
“筋は、それぞれがどのように機能しているとしても、筋膜網内で機能的に統合された全身の連続体に影響を及ぼす”と記載されており、1つ1つの筋肉はそのつながりによって全身に影響を及ぼすことを示唆している。
 
 
だとすれば、1つの筋肉を単独で伸ばしていく一般的なストレッチだけでは、パフォーマンスアップのためにはまだ足りない。
 
 
全身のつながりを考えて行うストレッチの1つに複合ストレッチがあり、一度に複数の筋肉を対象にストレッチする。
 
例えば、JARTAトレーニングの1つでもある「コモド胸セパレート」をストレッチとして行った場合。

 
 
今回はあえて筋膜という観点のみに注目してみると、このストレッチはスパイラルラインの複合ストレッチとも言える。
 
 
スパイラルラインは、スポーツ動作で言えばサッカーのゴールキックやアメフトのパントキックのように大きなモーションで蹴る動作、投球やテニスのスマッシュのように一度身体を開いてから腕を振りぬくような動作で使われている。
 
 
この筋膜ラインは、
(中略)~腸脛靭帯~大腿筋膜張筋~内腹斜筋~反対側外腹斜筋~反対側前鋸筋~(中略)というつながりがある。
 
 
これを上記の画像と見比べてみると、
右股関節伸展・外旋、脊柱左回旋、左肩甲骨内転となり、上記の筋をすべて伸張している肢位となる。
 
 
このストレッチがうまくできない、もしくは一か所に負荷が集中している場合にはスパイラルラインのどこかに問題があると考えられる。
 
 
その原因は柔軟性だけでなくその運動をコントロールするような筋肉や神経系の機能など多岐にわたる。
 
 
このように全身のつながりを考慮した方法でストレッチを行うことで、実際のプレーとのつながりが見えやすくなる。
 
 
そしてそこから苦手なプレーを想像することもできる。
 
 
例えば、上で紹介したストレッチで肋骨周囲の硬さを強く感じる場合。
 
これは前鋸筋や腹斜筋の硬さを示唆しており、ストレッチ方向への回旋が必要な動作や強い収縮を求められる動作が苦手な可能性がある。
 
ゴールキックの予備動作(蹴る直前の胸の開き)が小さくなることもあれば、野球肩やテニス肘などにも関係する。
 
 
筋肉が硬いときは、伸ばせないだけでなく上手く力を入れられないことが多い。
 
 
このように考えていくと、ストレッチがどのようにパフォーマンスにつながっていくか具体的に整理できる。
 
 
そこから個別のストレッチを行ったり、トレーニングの構成を考えていくことでパフォーマンスアップへの近道となる。
 
 
今回は筋膜という観点にしぼってストレッチを考えてみたが、実際は各関節の関係性、運動連鎖、認識力などもっと多くの観点から全身のつながりを考える必要がある。
 
 
ストレッチを指導する立場にある方は、ぜひより多くの「全身のつながり」を意識して指導してみてほしい。
 
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp