投手に指導するメンタルコントロール術の基礎トレーニング

文:岩渕翔一

前回の記事でパフォーマンスは能動的パフォーマンスと受動的パフォーマンスに大別できること。そして、それぞれにおいて考慮すべき要素が異なることを解説しました。

 

パフォーマンスの2分類を知りトレーニングに密度を

 

今回は、その中でも特に能動的パフォーマンスに活かしてほしいトレーニングを紹介します。

 

前回、能動的パフォーマンスは、

 

・能動的パフォーマンスには型が重要である
・型の安定には反復練習が必要である
・能動的パフォーマンスは状況とメンタルに左右されやすいためタスクを増やしたりプレッシャーを与える工夫が必要
・反復練習はオーバートレーニングのリスクがあるためパフォーマンスを細分化する分析力と安全
・機能強化を行うトレーニングを提案できる必要がある

 

といったことを考慮しトレーニングを構成する必要があるといいましたが、この中でもメンタルの影響を受けやすいということが最も特徴的な部分でしょう。例えばテニスのサーブを例にとっても、

・相手選手が誰なのか
・試合展開
・どこのポイントなのか
・ファーストサーブなのかセカンドサーブなのか

 

といったように多くの要素に世界ランクトップ100に入るような選手でも大きな影響を受けていることは試合を見ていれば明らかです。理論上は能動的なパフォーマンスなのだから安定した反復運動さえできればパフォーマンスは安定するはずですが、そうはいかないところがまさにスポーツの難しくも面白くもあるところです。

野球の投手であっても身体パフォーマンスだけを取り上げれば、プロの1軍で活躍するような投手がフォアボールを出すことなど信じ難いですが、ご存知の通りフォアボールは当たり前に出ます。

 

このように、競技カテゴリーやレベルの高さに関係なく、能動的パフォーマンスが安定して発揮できる強靭なメンタルは非常に重要な要素です。そして、緊張や落ち着かない時、興奮した時など周りの状況や環境に自身のメンタルを揺さぶられた際、最も多く用いられる対策はおそらく呼吸でしょう。

・ゆっくり呼吸する
・深呼吸をする
・吸った倍の時間をかけて息を吐く

など。

 

そうやって気持ちを落ち着かせ、身体をコントロールしようとし、パフォーマンスに入る。

では、この手法が効果的であったことがある選手はどれくらいいるでしょうか?もちろん大なり小なり効果が実感できることもあるでしょうが、そんなことで解決するようなことであれば、すでにプロの選手が困るようなことにはなっていないはずです。

呼吸はある程度コントロールできますが、それだけでは呼吸からメンタルにアプローチすることはできません。呼吸というのはそれだけ難しく奥深いものです。

 

呼吸からメンタルコントロールのメカニズム

 

そもそもなぜ呼吸からメンタルがコントロールできると考えられているのでしょうか?まずはそのメカニズムを簡単に解説します。

例えば緊張した際。心拍は早くなり、汗をかき、呼吸は早く浅くなります。メンタルの変化は必ずこのように身体に顕在化して現れます。だからパフォーマンスにも影響するのですが、この中で意図してコントロールが可能なのは呼吸のみです。早くなった心拍をゆっくりしようとしても無理ですし、汗をかいてるのを強制的に止めようとしても無理ですよね。しかし呼吸だけは別です。呼吸はゆっくりしようと思えばできるはずです。そうして、コントロールできるものからして、メンタルや他の身体機能を掌握しようというのが呼吸からメンタルコントロールしようとすることのメカニズムです。

 

横隔膜感じれますか?

 

ここで質問です。

 

あなたは横隔膜を感じることができますか?

 

どうでしょうか。実際、自分の動きや姿勢をコントロールしようと思えばその部位や筋肉を感じ、動かし、操作できなければそれは不可能です。そしてそれは呼吸も例外ではありません。例えば力こぶの筋肉である上腕二頭筋。この筋肉に力を入れたり、抜いたり、力こぶを作ったりするように、横隔膜を意識して動かし、コントロールすることができるでしょうか?

 

実際やってみましょう。手順はこうです。

1.あぐらをかいて。安静呼吸を行います。
2.呼吸をしている際、自分の胸やお腹がどう動いているのかをしっかり感じてください
3.しっかり感じることができれば、息を止めます
4.息を止めたままさっき感じた動きをそのまま再現してみてください
5.息苦しくなったら呼吸を再開してください

 

どうでしょうか?呼吸をしている際と息を止めた際。同じように動かすことができたでしょうか?なかなか難しい方が多いはずです。息を吸う際、主に活動する筋肉は横隔膜です。しかし、通常呼吸に関わる横隔膜の動きは色々な反射活動や受容体、脳の延髄網様体や橋といわれる呼吸中枢に無意識にコントロールされています。普段勝手に動いている部分を、必要な時だけ意識してうまく動かすなどそれは無理だし都合が良すぎます。なので、呼吸をコントロールすることの質をあげようと思えば、呼吸に関わる筋肉や部位を意識してうまく動かしたりコントロールしたりするトレーニングが必要になります。

1〜5を繰り返しおこない質を高めていくことがトレーニングになります。

 

こういった基礎的なトレーニングを行い、呼吸を通してメンタルコントロールを行うということが現実的になってきます。

 

今回紹介した横隔膜を意識して動かす方法は投手トレーニングセミナーで紹介している最も基礎的な方法です。ここからさらに発展させたトレーニングを行い、呼吸コントロールによるパフォーマンスの安定を実際は図って行きます。

 

緊張しやすい選手や感情的になりやすい選手、疲れやすい選手は一度やってみてください。

 

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