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2019年07月01日
革新的なトレーニング理論とは
文:岩渕翔一
どんな世界でも、革新的なだとか、新しいとか、これまでにないとか、そういった類の理論やコンテンツを目にすることがある。
トレーニング理論もそうで、色々な手段や方法が溢れているのが現状で、それは現在進行形で増えている。果たしてこれまでの常識や方法を超越、あるいは覆すような、真の意味で革新的なトレーニング理論などあるのだろうか。
決して抗えない法則の上に成り立つのが人の動き
人間が地球上に存在する以上、重力という抗えない物理法則の中で生きることになり、人間という生物の構成もまた決まった構成になっている。我々は決まった条件の中で決まった条件の身体を使い、パフォーマンスやトレーニングをする。
私が小学生の時の話である。宇宙人がいるかいないのかの話を友達や先生としている時に誰かが、
「宇宙や他の惑星には酸素がないし食料がないから生き物は存在できない」
と言った。私はそれに対し、
「いや地球上の生物は酸素がないと生きることができないけど、宇宙には窒素や二酸化炭素をエネルギー源にして生きることができる生物がいるかもしれないよ」
と考えたのを今でも鮮明に覚えている。確かに可能性としては0ではないのかもしれないが、化学や生物を中学高校で学び、理学療法士養成校で生理学や解剖学を学んだ今、非現実的な考えであったなと感じることはいうまでもない。
話が逸れたが、我々が存在する空間や我々自身は、抗えない法則や成り立ちの上で存在できる。人は血液があるから生きることができるし、重力があるから力という概念がある。
そういった中で重要なのは、この無数にあるといっていい法則や成り立ち、条件を知るということ。つまり、私が度々口にする基礎が大切だということだ。
色々な概念やトレーニング理論や方法があるが、中身を見てみると、
・脊柱の柔軟性や動きが重要であること
・仙腸関節の機能が重要であること
・大腰筋やハムストリングスが重要な筋であること
・肩甲骨や鎖骨の機能が重要であること
・インナーユニットが重要であること
これらはどのトレーニング理論をみても共通することで、はっきりいって大した差はない。以前、
筋力トレーニングVS身体操作系トレーニング。優秀なのはどっちだ!??
という記事を書いたが、このような一見相反する理論であっても中身をみれば実は主張していることや狙っている効果は似たり寄ったりだ。そしてそれは前述した、基礎がしっかりあるトレーナーやトレーニング理論であればあるほど似通っている。根本や根底にあるものは揺るぎないのだ。
では、どのトレーニング理論や方法を選択しても変わりないのかといえばそういうことでもない。ここが選択をする上で非常に重要なポイントだ。
異なるのは理論ではなくフィルターである
ある選手はAというトレーニングを行い効果が出ている。一方で別の選手はBというトレーニングをして効果が出ている。AというトレーニングとBというトレーニングは一見相反する理論なのだが、中身をみればあまり変わらない。であるならば、この2人の選手がしているトレーニングを入れ替えても同じような効果が出るのか。
答えは否。
というより分からないというのが正直なところだ。なぜ分からないのか。それはそのトレーニングをやると選択するまでの過程に意味があるからだ。
人にはそれぞれのフィルターがある。ある人のフィルターには引っ掛かる理論やメッセージであっても別の人には全く引っ掛らずに素通りする。
誰が見ても美しくて性格も良い女性に出会った男、皆がその女性に恋をするかと言われればそんなことはないだろう。そんなことは当たり前のことだ。それはその人の歴史や背景、気分や感情などあらゆるもので構成されたフィルターを通るからだ。どのような理論やメッセージが引っ掛かるのかは正直、当の本人も分からないだろう。人は自分のフィルターに引っ掛かったものにしか真の意味で向き合えない。人を愛そうと思っても愛せないし、愛してはいけないと思っても止めることができないことと同じ。良いか悪いかではないのだ。
2人の選手がしているトレーニングを入れ替えて、同じような効果が出るのか分からないのはこういった理由だ。
前提として専門家としての質を担保できるのであれば(できることが当たり前なのではあるが)やるべきことはメッセージを出し続けることに尽きる。
必要なものは真新しい理論でも奇抜な方法でもない。自己主張の強い自称オリジナル理論でもない。確かな基礎と論理に裏付けられた正しい理論と手段だ。
自分を磨き、常に学び続け、人らしく人としての愛情や欲を持ち、その土台の上で発信し続ける。その時々の全力で発信し続けるのだ。それがある時、誰かのフィルターに掛かり、またある時に別の誰かのフィルターに掛かる。そこから繋がるそれは、誰かという唯一にとって革新的であるはずだ。
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