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2019年06月24日
150km/hのボールを投げるには「かためる」力が不可欠
文:岩渕翔一
速球を投げるには当然様々な身体機能、身体操作が必要です。
・柔軟性
・バランス
・筋力
・スピード
・動きのキレや再現性
etc
当然この他にも多くの要素が必要で、速球を投げるにはこれらの要素を同時に発揮する必要があります。ただ、これらの要素は投球という実際のパフォーマンスの中では同時に発揮する必要がありますが、トレーニングの優先順位では階層性があり段階的に取り組んでいく必要があります。
例えば、
「ゆるむ」と「かためる」は対極にあるものとして捉えられやすく、どちらが良いとか悪いとかいった議論を度々目にします。しかし実際は、「ゆるむ」こともできるし「かためる」こともできるといった身体操作が必要で、優位性のある関係にはありません。投球動作においては「ゆるんだ」身体を、最終的は思いっきり「かためる」ことでボールに大きな力を加えることができ、速球を投げることができます。
「ゆるむ」からこそ「かためる」ことができ、「かためる」ことができるから「ゆるむ」ことができる。その幅が大きければ大きいほど生み出せる力は強くなりますので、この幅を作ることがなにより大切です。
身体操作の階層
「スポーツパフォーマンスは全て身体操作である」
この点に関してはこちらの記事を読んでいただければその階層が分かると思います。
→身体操作系トレーニングV S 筋力トレーニング 優秀なのはどっちだ!??
ただし、あるパフォーマンスを実現するために必要な要素をピックアップした際、その機能獲得には効率的に目標とするパフォーマンスを獲得するための優先順位があります。
まず獲得したいのは目標とするパフォーマンスを可能にするだけの可動性と柔軟性。これがない状態で他のことに取り組んでも必要な幅の中での身体操作にならないため非効率的です。まずは必要な幅(可動域)を作った上で、その幅を使いこなすためのバランスやスピードの強化を行う。
スピードは速くなればなるほどバランスを担保することが難しくなります。裏を返せばバランスを担保すればするほどスピードは発揮しづらくなるということです。この両立を強化し、必要な幅の中でバランスを保ったまま、最大限のスピードを有した動きを最終的に「かためる」ことで大きな出力(力)が生まれ、結果的に速球という形になります。
投球動作におけるかためる力
投球動作はシンプルにいうと並進運動からファーストスピン、セカンドスピンで生み出した力を、リリースの瞬間にボールに伝える身体操作パフォーマンスです。
並進運動に関してはこちらの記事をご覧ください。
→投手の「タメ」の作り方には2つのパターンがある
ここではファーストスピンとセカンドスピン。つまりコッキング期における下半身のスピンと加速期における肩関節最大外旋位からの胸郭から指先までの肩関節を中心としたスピンについて考えていきます。
この回転動作で重要視しているのは「スライド」という身体操作です。回転動作ではなく、中枢が割れるような動きを指していますが、当然実際に身体が割れるわけではありません。身体の中枢部分から動き出すことでハイスピードとハイパワーを実現できるため必ず獲得したい動きです。
→スライドとフック
ここからが本題なのですが、このスライドの動きは下半身から起こり、その動きが、
股関節→仙腸関節→脊柱下位から上位へ順に→胸郭→肩甲骨→肩関節→肘→手首〜指先
へと波及していきます。ここは実際の動きとしては一瞬ですが、少し細かくみてみると下半身から順にスライド動作が完了した部位は、かためることで土台として安定する必要があります。さらにそれだけでなく、スライド動作を行い急加速した身体をかためる力で急停止することで、その上にある部位が進行方向に向かって動く力を、末端に向けて段階的に蓄積させていくことができます。
ここで重要なのは「しなり」です。ムチを思い出してみて欲しいのですが、持ち手の部分は硬く太いと思います。それが末端になるにつれ、細く柔らかくなると思いますが、この構造がしなりを生み、末端での急加速に繋がります。投手に必要な運動構造はこれに近い構造が必要で、末端での急加速を得るには体幹部の「かためる力」が必要になります。
つまり、下半身から順に、
スライド(mobility)→かためる(stability)
というのを連動させることで筋の粘弾性を有効に発揮させることも相なり、強い力を生み出せるということです。
投球動作においては、可動性と柔軟性を有した身体をバランスとスピード(スライドの動き)を両立した身体操作を行い、最終的に一気に連動した、「かためる」身体操作を行うことで強い力をボールに加えることができ、球速が上がるということです。
「ゆるむ」ことと、「かたまる」こと。これらを両立することが球速アップの鍵になります。
全てはパフォーマンスのために。
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