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2019年10月23日

投球障害から選手を守れ!投球数制限以外に大切な要素は??

文責;山内 大士

 
 
 
毎年夏の甲子園の時期になると必ず議論される投手の球数問題。
 
今夏には、JARTA公式ブログにおいてもこの話題を扱った記事が掲載されました。
 
参考)投手を故障から守るのはエビデンスではなくルールだ
https://jarta.jp/training/16703/
 
選手を怪我から守るためになんらかのルール規制が必要ではないかという意見も多い中、これまでの野球界の歴史もありなかなか話が進んでいないのが現状です。
 
関西で活動している山内です。
 
今回の記事では投球数やその他の投球障害と関連深い要素について、科学的知見を中心にご紹介いたします。
 
目次;
・投球数と投球障害の関係性
・投球数以外に大切なポイント
①肩関節後方の柔軟性
②肩甲骨周囲の筋機能
③投球フォーム
 
 
 

投球数と投球障害の関係性

 
国内外を問わず、投球数や投球イニング数と投球障害及び身体機能との関係性を調べた報告は数多く存在するため、いくつかご紹介いたします。
 
・1試合あたりの投球数と肘痛について。5研究中関連あり3研究、関連なし2研究(Ryan 2019)
・1試合あたりの投球イニングと肘痛について関連あり1研究(Olsen 2006)、関連なし1研究(Lyman 2001)
・中学生では70球、高校生では100球以上の投球により、直後~数日間の肩関節筋力や可動域の減少がみられる(Iwasa 2011, Chou 2015)
・年間の試合数が多いと肘痛発生が増加する(Matsuura 2013)
・投球イニング制限に関する知識や順守率は肘痛発生と関連しないが、試合数に関するコーチの考え方が肘痛と関連する(Yukutake 2015)
 
これらの結果を見ると、断定はできませんが投球数が増加することで障害発生は増加する傾向にあるようには思えます。また、一試合・一つの大会のことだけを考えるのではなく、年間トータルの負荷量を考えていく必要もありそうです。
 
 
 

投球数以外に大切なポイント

 
投球数以外にも、投球障害との関連が報告されている要素はたくさん存在します。
中でも、我々スポーツトレーナーがメインとなり介入できるのが身体機能です。
また投球フォームに関しても、直接的に指導せずともトレーニングを通じて改善を試みることも多いでしょう。
 
身体機能や投球フォーム(バイオメカニクス)と投球障害及びパフォーマンスとの関連性については、数多くの論文が出されています。今回はこれまでに報告されている研究をいくつかご紹介いたします。
 
 
 
①肩関節後方の柔軟性
 
投球動作において大きな負荷が加わる部位の一つとして、肩関節が挙げられます。特に腕がしなるフェーズである“MER=肩関節最大外旋位”や、ボールをリリースする局面において最大の負荷がかかります(Glenn 1995)。

 
 
投球動作の反復により棘下筋などの後方組織が硬くなり内旋可動域制限が生じます(Mifune 2017)が、これが肩や肘の障害の一因であるという報告は多数存在しています(Wilk 2011など)。
 
投球障害を考える上で肩関節後方の柔軟性は欠かせない視点であると言えるでしょう。
 
 
 
②肩甲骨周囲の筋機能
 
投球動作において肩関節や肘関節への負担を軽減するために特に重要となる肩甲骨の動きは、“内転”“上方回旋”“後傾”になります。

特に、投球動作中に十分なMERを確保するためには、肩甲骨後傾の動きが大切であると示されています(Miyashita 2008)。そのために重要となるのは、「僧帽筋下部・前鋸筋がしっかり働くこと」と「小胸筋に十分な伸張性があること」です。

 
症状のない選手であっても投球側の肩甲骨が前傾していたり小胸筋が短縮していたりすることが報告されているため(Hodgins 2017, Otoshi 2018)、予防の観点からしても重要な要素と言えます。
 
また、肩関節外旋筋力の低下も投球障害リスクとして挙げられます(Byram 2010など)。特に、投球動作のように挙上位での外旋筋力を発揮する際には前鋸筋の働きが重要であると報告されています(Uga 2016)。
 
単に肩関節を外旋する筋肉を鍛えるだけでなく、土台である肩甲骨を安定させる機能にも着目する必要があります。
 
 
 
③投球フォーム
 
一流の投手であっても投げ方は千差万別であり、個性が表れる部分でもあります。だからと言ってどんな投げ方でもいいというわけではもちろんありません。どんな投げ方をしていれば負担が大きいのか、球速の速い選手はどんな投げ方をしているのか、たくさんの投手の平均値を取った際にどのような特徴があるのか把握しておくことは重要です。
 
肩や肘への負担が少ない投げ方の特徴は、MER~ボールリリースにかけて肩関節が適切な角度にあること(Matsuo 2002, 二宮2007など)です。具体的に述べると、外転角度が90度前後で真横よりわずかに水平内転位(前方)であることが理想的とされています(二宮2007, 駒井2008など)。
 
球速の速い選手の特徴は、骨盤や体幹の回旋速度が大きいこと(Stodden 2006など)や、軸足及び踏み込み脚で地面を押す力(床反力)が大きいこと(Williams 1998など)が挙げられます。また、肩外転角度が90度前後であることは球速の速い選手の特徴でもあります(Matsuo 2002)。
 
詳しくはまた別の機会に述べますが、こうした投球フォームを実現するためには、股関節や体幹を含む全身の身体機能と投球動作に対する運動イメージが重要です。
 
 
 

まとめ

 
今回は私の知る範囲で、投球障害を考える上で重要な要素についてその科学的知見を大まかにご紹介いたしました。
 
次回以降、それぞれの要素についてさらに詳しく考察し、その実際の改善方法までご紹介していきたいと思います。
 
また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。
 
野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。
学生・学生トレーナー・投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。
 
お申し込みはこちら
12/8(日)in大阪
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12/14(土)in東京
https://business.form-mailer.jp/fms/22655ff1112081
 
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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https://jarta.jp