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2020年02月03日

世代別―投球障害要因まとめ

文:山内大士

 
これまでにも投球障害の原因となる要素として、「投球数」「肩関節」「肩甲骨機能」「投球フォーム」についてお話してきました。
 
参照;https://jarta.jp/category/training/baseball/
『投球障害から選手を守れ!シリーズ』
 
今回は年代別に投球障害の主原因を考察してみます。
 
 
 

ジュニア世代の投球障害

 
この世代の投球障害において真っ先に考えたいことが投球フォームです。理由は単純で、一般的にジュニア世代の投球フォームは上の世代に比べて未熟だからです。年代ごとに投球フォームを比較した研究においても、下の世代のフォームには以下のような特徴があるとされています。
 
・骨盤回旋の開始が早い=腰の開きが早い(Aguinald 2007)
・骨盤と体幹が同時に回旋してしまいやすい=体幹の割れが少ない(Fleisig 1998)
・前脚の股関節の屈曲が少なく膝の屈曲が大きい=下半身が安定しておらず骨盤がしっかり動かせていない(伊藤2011)
・リリースポイントでの肩外転が少なく過剰な水平外転が見られる=リリースポイント時に肘が下がり腕が遅れすぎている(中溝2004)
・大学生は股関節、中学生は体幹と肩の角速度が高まることで球速向上=大学生は下半身、中学生は上半身でパワーを生んでいる(宮下2012)
 
肩の可動域や肩甲骨機能が低下している場合にはそちらに対する介入ももちろん必要ですが、それらを引き起こす要因として不良なフォームが大きなウエートを占めます。
 
では、こうした未熟な投球フォームを効率的に改善させていくにはどうすれば良いのでしょうか。ここからは私見となりますが、投球フォームを決定する要因を大別し、影響力の大きい順に並べるとこのようになると考えています。
 
1.投球動作に対するイメージ
自らのボールを投げるという経験・他人の投球動作を観察した経験や、投球動作に関する知識を元に作り上げられたイメージ。投げる練習、良い選手の観察、コーチによる動作指導、ビデオによるフォームチェックなどで高められます。
 
2.身体の操作性
動かしたい部位を必要な量だけ力を入れて動かし、そのタイミングや程度を自在に操ることで連動させ目的の動作を達成する能力、要するにイメージ通りに身体を操作する能力。JARTAのトレーニングはこうした能力を高めることを目的としたものが多いです。
 
3.身体のコンディション
筋の伸張性・力の入り具合、関節の可動域、心身の疲労感などのコンディション。ストレッチやマッサージの他、休息やリラクセーションも重要な要素です。
 

 
コーチや監督以外のトレーナー・医療従事者は、直接フォームを指導することを良しとされないケースも多いでしょう。しかし、身体操作やコンディションの改善を通じて間接的にフォームを修正することは可能ですし、それにより選手本人のイメージが変化することも多々あります。
 
指導する側が投球動作とその指導方法に関する知識と、身体操作やコンディショニングに関する知識の双方を持ち合わせていれば、かなり効率的にフォーム修正することが可能です。上述した要素のうちあまり詳しくない分野があれば、ぜひともそこを学ぶ取り組みをしてみてください。
 
 
 

大人世代の投球障害

 
一方、世代が上がりレベルも高くなった選手に生じる投球障害にはどのような原因があるのでしょうか。上述した投球フォームの影響ももちろんありますが、優先して考えたいのは身体コンディションです。それには以下のような理由が挙げられます。
 
1.年齢が上がるにつれ身体は硬くなっていく
習慣的なストレッチをしていればある程度防ぐことはできますが、特に脊柱の柔軟性は失われやすいように感じます。身体が硬いとやりたい身体操作もうまく行えませんし、そうするとフォーム修正もままなりません。身体が硬くなったのに投球イメージが柔らかかった頃のままでギャップがあることも障害の一因と考えます。
 
2.断裂・損傷など構造的な破綻を呈していることもある
この場合、通常のトレーニングやコンディショニングでは反応しにくいことがあります。こうしたことが疑われるケースには、投球障害に精通し診断設備の整った整形外科医の診察を仰ぎ、適切な医学的処置を受けるようにしましょう。
 
3.安易なフォーム修正にはリスクがある
特にレベルの高い選手の場合、試行錯誤の上にたどりついたフォームであることも多々あります。コンディション・身体操作を土台とし、自分なりに研究を重ね、バッターとの駆け引きや変化球との兼ね合いも考えたうえで完成したフォームです。肩肘への負担を軽減させるためにフォームを修正した結果、肝心のパフォーマンスが下がってしまっては本末転倒と言えるでしょう。
 
もちろんこれらのことをしっかりと把握したうえで、選手と相談しながら進めるフォーム修正は問題ないと思います。ただし、ジュニア世代を相手にするとき以上に、より深い知識と引き出しの多さが求められることにはなるでしょう。
 

 
実際に選手を指導する際の考え方と具体的なトレーニング方法を学ぶことができる投手用トレーニングセミナーが、2月末〜4月にかけて、全国各地で開催されます。
 

投手用トレーニングセミナー


 
 
座学に始まり、可動性を改善させるためのケアやストレッチ、そして複雑な身体操作や筋機能を習得するプログラム。これらを1日で学ぶことができるかなり充実した内容です。
 
トレーニングセミナー終了後には、投球障害に対するコンディショニングをテーマとしたワークアウトを行います。
 

Workout


 
痛みに対する評価や介入方法などトレーニングセミナーではカバーしきれない部分を中心に行います。肩肘への負担を軽減させるために必要な身体機能についても、その基準と介入方法をお伝えしていきます。
 
同日・同会場で開催いたしますが、片方のみの受講も受け付けております。
ご都合のつく方はぜひ参加をご検討ください。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp