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2020年02月12日

努力を結果につなげるためのトレーニング

文:伊東尚孝

 
トレーナーが選手と関わる上で重要な事とは何か。
その一つに、選手の努力の方向性を正しく導くことが挙げられます。
どんなに優れたトレーニングであっても、目の前の選手に適していなければその努力はパフォーマンスアップに繋がらない可能性があります。
そのため、選手が本当に必要とするトレーニングを我々は追求し続けなければなりません。
 
努力する方向性をパフォーマンスアップへ導くことができれば、選手は結果を出すチャンスを増やすことができます。
 
そして、そのチャンスをさらに広げるためにはもう一つ重要視すべきことがあると考えます。
それが「時間」の制限です。
 
大会に向けて練習する1年という時間の制限。
中学や高校の3年という時間の制限。
選手生命という時間の制限。
 
時間軸は様々ですが、その時間に人生をかけてトレーニングに取り組んでいる選手にとっては、毎日の練習時間はもちろん中期・長期の時間すべてをパフォーマンスアップのために費やす必要があります。
 
いくら良い方向性へ向かっていても、選手に与えられた時間内にパフォーマンスアップができなければ目標達成されないかもしれません。
 
つまり、「努力の方向性を導く」と同時に、「選手に与えられた時間を最大限に活かすトレーニング」を選択しなければなりません。
 
では、それらを考慮したトレーニングとは一体何なのか。
それを紐解くためには、ジュニア世代の運動能力について触れる必要があります。
 
 
 

過去10年で運動能力が低下している理由

 
文部科学省は子どもの運動能力が低下してきていることを表明しており、平成20年度の調査開始以降の推移をみると、令和元年度は小・中学生の男女ともに低下していると報告しています。
その背景には環境の変化などが大きく影響しており、「身体を動かす遊び」が減少していることが示唆されていますが、それに加えてもう一つ大きな理由があると考えます。
 
それは、一つの競技ばかりに特化した運動しか行っていないということです。
 
これがどういう影響を与えるかというと、
「サッカーでボールを蹴ることが得意でも、マット運動の前回りや後ろ回りはできない」
という現象が起こる可能性があります。
前回りという運動構造には、脊柱のしなやかさ、股関節・足首の柔軟性、平衡感覚の修正(バランス能力)、重心コントロールなどの要素で構成されています。
これらの要素は、サッカー選手にとって重要であることは言うまでもありません。
サッカーとマット運動は似ても似つかないように思えますが、運動構造を紐解けば共通点が現れます。
 
つまり、サッカーの上達のためにボールを蹴る時間を増やすよりも、
その時間をマット運動などの全身を使ったトレーニングに当てることにより、様々なパフォーマンスを上げるきっかけになると考えます。
 
特定のスポーツにしかない特殊な動きだけでは、身体操作に偏りが生じます。
マット運動だけでなく、公園での遊びや馬跳び、かけっこのような、いわゆる「全身を使う遊び」によって、運動能力が向上するといわれています。
 

 
これはJARTAトレーニング4原則のうちの一つである、「全身操作性の原則」に当てはまります。
 
全身を自分の思い通りに操作するためのきっかけとして、子どもの「遊び」は存在すると考えます。
 
 
 

全身操作とは何なのか

 
ではプロ選手やそれを目指す選手も、同様に全身を使ったトレーニングをすればいいのでしょうか。
 
ここで重要なのは、単なる全身運動ではなく、
「方向性」と「時間を最大限に活かす」要素を含んだトレーニングを選択することです。
 
「方向性」に関しては、以前”選手が本当に必要とするトレーニング”の記事でも示したように、
その競技の特性を分析し必要な運動構造を抽出し、さらに選手の動きを分析し足りない要素を抽出することでトレーニングの方向性を導き出すことができます。
 
では「時間を最大限に活かす」とは、どういうことなのかをもう少し掘り下げます。
選手にとって時間を活かすとは、
1.怪我をしない
2.運動効率が良い(疲労しにくい)
3.一つのトレーニングで多くの可能性を引き出す
このようにまとめられると思います。
この3つを達成するために、「全身操作性の原則」が重要になります。
 
〈1.2について〉
ほとんどのスポーツでは、全身が協調的に運動しなければ成り立ちません。
しかし、同じ動作を繰り返すことで偏りのある「クセ」として身体に蓄積されていきます。
その結果、局所への負担も蓄積され疲労感も感じやすくなります。
一方、全身操作が可能になれば、ある運動を達成するための「協力者」を増やすことができます。
どういうことかをサッカーで例えると、
サッカーは急激な方向転換が頻発するスポーツであり、脚だけの力に頼ることで下肢の筋肉への負担が増大します。最悪の場合、肉離れや腱断裂を引き起こします。
そこで上半身の動きも方向転換に「協力」することによって、下肢の筋肉への負担を軽減することができる上、動きのキレも向上することが可能になります。
つまり、全身を細部まで操作することができれば、偏りなく運動することができるため局所への負担を軽減することができます。
 
〈3について〉
同じ競技の中でも様々な運動様式があります。
サッカーでは、ステップ・シュート・ジャンプ・ドリブル・・・といった具合です。
それぞれが別の運動としてトレーニングを行うと、非常に効率が悪いです。
サッカーとマット運動のように、各運動様式の構造を分解すれば必ず共通点が存在します。
その共通点をトレーニングすることができれば、一つのトレーニングで多くのパフォーマンスを上げることが可能となります。
その共通点を「方向性」で抽出されたトレーニングと合わせると、やるべきトレーニングがさらに明確になってきます。
 

 
さらに全身操作には、単なる動きだけではなく
「空間・速度・力・タイミングの操作」も必要になります。
先ほどの急激な方向転換で説明すると、
・ブレーキするために踏み出す脚を一瞬硬めると同時に、体幹部の脱力と腕の急激な振りによってターンする方向へ向かう。
・さらに脚は硬めたままではなく膝を抜いて素早くステップをする。(再び硬めて着地する)
・方向が変わることにより姿勢が傾き、腕の振りによってバランスを保ちながら加速する。
同じ身体の中でも「剛」と「柔」の切り替わりが連続して行われ、次の動き出しのために、めまぐるしく姿勢が変化するための全身操作が行われています。
 
JARTAトレーニングには、これらの要素が組み込まれたトレーニングが多くあります。
 
 
 

まとめ

 
アマチュア選手でもトップ選手でも、与えられた時間には限りがあります。
しかしパフォーマンスアップのためには、選手自身が努力し続けるしかありません。
その努力を結果へつなげるための武器として、全身操作のトレーニングがその一つだと考えます。
 
また全身操作と同時に、全身の連動を反射で引き起こすことも相互して活用できると、パフォーマンスアップにつながります。
 
JARTAトレーニングは映像で多く排出されていますが、実際に指導を受けることでより深みのあるトレーニングになります。
さらにパフォーマンスを向上したい選手は、ぜひJARTAトレーニングを利用してみてはいかがでしょうか。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp