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2020年01月22日

トップ選手のトレーニングとは

文:岩渕翔一

近年、SNS の普及によりプロで有名な選手がどのようなトレーニングや練習に取り組んでいるのかが見えてくるようになってきました。また、選手それぞれが、その考え方やトレーニング法などの書籍を出版し、公になることも多くなりました。
プロを目指していたり、伸び悩んでいる選手にとってはこれ以上ない情報でしょう。また、スポーツをしている子どもたちにとっても憧れの選手が取り組んでいることを知れることは夢を現実に感じることのできる第一歩にもなるでしょう。
 
プロ選手が取り組んでいる練習やトレーニングを自分自身に取り入れることは目標に最短距離で近づくためには非常に有効です。一方で注意しなければ逆にパフォーマンスを落としてしまうリスク(JARTAではマイナスの学習という)を孕んでいます。
 

アマチュアからトップ選手までのパフォーマンスの階層

どのような競技であっても、アマチュアからトップ選手に行き着くまでの階層があります。要は、ピラミッド構造の中での生き残り合戦を最後まで生き残った選手がトップ選手であり、さらにその中でも唯一無二の力を持った選手が超一流として歴史に名を残します。このピラミッド構造は全ての競技で共通しており、ジュニアやアマチュア選手の指導に当たるトレーナーは、この生き残り合戦で生き残って行くことを考え指導に当たらなければなりません。
 
では、目の前の選手がどれくらいのレベルなのか。そこからステップアップするためにはどのようなトレーニングが必要なのか。現場で分析し判断する力が重要なのは間違いないですが、それ以上に準備段階として知っておかなければならない前提があります。
 

情報に対する社会の変化

以前であれば、厳しい世界で戦っているプロの選手というのは自分が行っている練習やトレーニングは誰にも知られたくないと多くの選手が考えていました。もちろん今でもその守秘性というのは守られるべきです。実際、競技カテゴリーがチームから選抜、地域代表、日本代表と上がるにつれて情報は公になりづらく、強い守秘義務が強いられます。それだけシビアにしておかないと情報漏洩そのものが勝敗以上に大きなものを奪ってしまうリスクがあるため当然です。
つまり、選手個人にとっても、チームにとっても、その競技における歴史と未来にとっても、情報漏洩は可能な限り避けたいというのが本当のところです。
しかし、秘密は秘密で守りつつ冒頭で話したように今は多くの情報が誰でも簡単に得られるようになっています。なぜでしょうか?社会の背景と流れ、プロ選手を取り巻く環境の変化、スポンサーの影響など。理由は様々ですが、この流れはスポーツ界だけでなく、あらゆる業界で言える事しょう。情報を守ろうとするものと得ようとするもの。例えば中途半端な情報や間違った情報が他者から発信されるのであれば、正し情報を自ら出してしまうということもあるでしょう。今はそれが容易にできる時代です。
情報を探している側、得て活かそうとする側にとってはこんなありがたい事はありません。最大限活かしきれた選手が、また生き残っていくことになるでしょう。
プロの選手が取り組んでいる練習やトレーニングを公開する理由はこのような社会的背景が要因の1つです。
 

選手がトレーニングを公開する理由

ここからは選手個人に関することです。選手が練習やトレーニングを公開する理由は個人レベルでは2つあります。
1つは真似されても構わないという自信です。考えてみれば当たり前で、例えば一流の料理人がそのレシピと工程全てを公開しても同じ味は絶対に出せません。また、芸術家がその過程や使っている道具全てを公開しても同じ絵など描けるはずがありません。一流がこなす仕事の真似などできるはずがないのです。これはトレーニングに置き換えるとプロ選手が行っているトレーニングをしたからといって、同じ効果が出るとは限らないということと同意です。
 
2つ目の理由。その競技の底上げをしたいと考えているということです。多くの選手がもっとうまくなって競技そのものがもっと発展して欲しい。それがそのトップ選手にとってもさらなる成長と進化につながると考えている。みている世界が個人やチームの結果だけでなくさらにその先であるということ。
 
いずれにしても選手としては活かさないという手はありません。
 
 

スタンダードと個別性

本題です。トップ選手のトレーニングとはどういうものでしょうか?まずはそれを知らなければなりません。
トップ選手のトレーニングというのは一言でいうと、「個別性」に対するトレーニングです。まずはこの図を見てみましょう。

 
アマチュアからトップ選手になるには生き残り合戦に勝たなければならないと話しました。トップ選手というのはこの生き残りの戦いの中で当たり前にできなければならないことを全てクリアしてきた選手です。その競技で高いパフォーマンスを発揮する上でできておかなければならないことをクリアしてきた集団がトップ選手でありプロの世界です。
すでに誰もが知っているようなトレーニングや科学的根拠を持ったトレーニングというのは裏を返せばスタンダード(一般化されている)になっているため、プロの世界で差別化を図るには足りません。
そのため、特にスポーツ現場でのトレーニングにおいては、科学的根拠や裏付けよりも現場での実践が先行することが多々あります。個別性を磨くため、差別化を図るためには一般化されてからでは遅いのです。
もちろんプロの選手でもスタンダードなトレーニングは重要ですし、行っていますが、それだけではやはり生き残って行くには足りないということです。トップ選手が目新しいトレーニングに取り組んでいる理由の一つはこういった背景があります。
 
これらを踏まえた上で、スタンダードを満足にクリアできていない選手が、トップ選手が取り組んでいる個別性のトレーニングを行ったらどうなるでしょうか?
もちろんパフォーマンスは上がるかもしれません。しかし逆にパフォーマンスを下げてしまうかもしれません。ポジティブな結果が得られるように評価が鍵になる事はいうまでもありませんが、やはり物事には順序というものがあります。
 
私が講師をしている投手トレーニングセミナーでは、トップ選手が持つ共通項を徹底的に分析し、スタンダードを鍛え、トップ選手に近づくためのプログラムをお伝えしています。それに加えて毎年行うプロ野球選手のキャンプ前自主トレーニングで行っている個別性に対するトレーニングも紹介しています。

情報は効果的に使わなければ諸刃の剣になってしまいます。正しい努力をするために知っておいて欲しい事です。

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