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2019年06月27日

ケアを入念にするから慢性化する痛みもある

文:赤山僚輔

 
スポーツを継続的に行なっている人にとって、日頃の身体のケアの重要性は言うまでもないだろう。
 
私自身も選手たちにセルフケアを丁寧に実施するように指導することは、まだまだある。
 
しかしこれが慢性的な症状となっている場合や、ある一部分の疲労の発生しやすさ、筋痙攣等が発生しやすい場合の対応には注意が必要だ。
 
 
 

痛みはサインであり症状の原因とは限らない

 
これはかつて女子の実業団バスケチームのトレーナーをしていた時の出来事だ。
 
試合の終盤でほぼ毎試合ふくらはぎの筋痙攣をおこしてしまい、プレイ続行が困難となり、その後痛みが発生する選手を経験した。
 
最初は次の試合に向けて同じような症状が発生しないように、水分補給の仕方やふくらはぎの硬さがしっかりと、とれた状態でのぞめるようにコンディショニングや指導をしていた。
 
真面目な選手でふくらはぎの硬さはチームでも一番緩んでいると言っても過言ではないくらいの状態にすぐ変化した。
 
 
“しかし筋痙攣は改善しなかった”
 
 
それどころか若干攣りやすくなったような印象すらある。
 
患部から痛みが発生したり、筋痙攣が起こるということは間違いなく何かのサインだ。
 
 
しかしそれを原因を探求せずに、あたかもその現象自体が症状の原因と断定し患部を徹底的にケアすることは選手のパフォーマンスを考えるとかなりリスクがある。
 
 

痛めたところを使いやすくしてどうする

なぜ患部を徹底的にケアすると症状が悪化したり、慢性化するかは慢性障害に関わりスポーツ現場に立つ人であれば少し考えればわかることだと思う。
 
そもそもふくらはぎが攣るということは、そこをよく使っているということ。
 
そしてその部位をしっかり緩めたり、ケアを徹底的に実施すると同部位はもっと使いやすくなる。

 
ましてや患部を意識することが多くなることから、意識しやすくなることが想定される。
 
例えばジャンプという動作ひとつとってみても、ふくらはぎを使うような足首の動きだけでなく、以下の関節や筋肉への協同的な作用が必要となる。
 
・股関節の屈伸運動
・大臀筋、ハムストリングの筋力
・体幹の伸展運動
・脊柱起立筋の筋力
・腕振り(上肢の機能)
・足部の機能
他にも細かくわけるとまだまだあるが、要するに一つの動作を反復する際に、一箇所へ負担がかかる事が患部の疲労や筋痙攣のひとつの原因なのだ。
 
その為、負担がかかっている部分をより使いやすくすることは、一時的に痛みを緩和する効果はあってもスポーツ動作やスポーツパフォーマンスにとって問題解決とはならないことが多い。
 
 

患部のサインを通して、現象の原因を探る

ではどうすれば、よいか。
 
これは思考としてはシンプルだが、実際に体現するには多くの工夫が必要となる。
 
結論としては、痛みというサインと通してそこが余計に使わされてしまった要因を徹底的に探る事。
 
これにつきる。
 
その探り方は
 
・運動連鎖や動作パターンからの推察
・柔らかい筋肉は使いやすい、よく似た働きをする他の筋の中から硬さを探る
・屈伸や回旋など同じ方向へ動くはずの他関節の硬さを探る
・ケアの重点具合やそれに対して動作で必要な部位のケアが不足する部分
・過度に意識をしてしまう要因の列挙と取捨選択(必要以上の意識が働かないように)
 
読んでみればすごく当たり前なことばかりですが、多くの選手のこれまでの痛みの慢性化やケアに対する考え方を聞いている限り、まだまだサインを結果としてとらえてその場しのぎの指導になっているセラピスト・トレーナーが多いように感じる。
 
特に現場では一時的に痛みを軽減させても、翌日の試合でベストパフォーマンスが発揮できなければ意味をなさない。
 
その為に我々のようなスポーツトレーナーが、選手たちにどのようなことを啓蒙し伝えていくべきかはこのような機会に再考していければと思う。
 
 
これはこのように伝えつつ、自分に対する戒めでもある。
 
もう一度言う、“多くのスポーツにおける慢性障害による痛みはサインであり原因ではない。”
 
 
慢性障害がなくなり、怪我で引退する選手がゼロになる未来へ。
 
まだまだ我々ができることは山のようにある。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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