筋力もある、柔軟性もある、でも試合で活かされない

文:伊東尚孝

 

 

私が実際に現場で聞いたことがある言葉です。

 

ベンチプレスの重量が増加し、開脚の幅が広がり、明らかにトレーニングでのパフォーマンスは上がっているのにもかかわらず、試合ではうまくいかないという悩みを抱えていました。

筋トレやストレッチなどによって筋力や柔軟性の水準を高めることができ、パフォーマンスアップが期待されるのは確かです。

しかしこの場合、その選手の課題が「筋力・柔軟性」であることに限ります。

 

上記の選手のように、筋力や柔軟性をトレーニングしているにもかかわらず試合でうまくいかないのであれば、その原因は「スキル(技術)」が足りないからだ、と感じる選手や指導者は多いと思います。

ではその選手が習得すべき「スキル」とは何なのか。

トレーナーとして提供すべきトレーニングとは何なのか。

 

 

『試合で活かされない』

 

この訴えにパフォーマンスアップのヒントが隠されていると考えます。

 

「試合で」ということは、普段の練習ではある程度のパフォーマンスを発揮できているのにもかかわらず、試合になると調子が出ないことが推測されます。

 

 

少し話は逸れますが、スキルの下部構造には身体操作があります。

例えば、バッティングのスキル(技術)を簡潔に言うと、バットを効率よくスイングし的確にボールに当てるための身体操作が必要となるということです。

しかし、対戦する投手や投球によってスイングの軌道や体勢を瞬時に対応させなければ打てないことは言うまでもありません。

そこにはバッティングという「動き」だけではない視覚やバランスなど様々な要素が総合された結果、試合で打つことができるバッティングが成立する構造となっています。

つまりスキルには、「動き」だけではない様々な要素が総合しているといえます。

 

 

先ほどの選手に話を戻すと、

その選手に必要なのは、試合中の「動き」を阻害している「その他の要素」である可能性があり、それらを考慮してトレーニングを構成しなければなりません。

 

 

 

あらゆるトレーニングに加えるべき認識力

 

では、スキルの一要素である「動き」ではない「その他の要素」とは、具体的にどのようなものがあるでしょうか。

 

例えば、対人競技では相手との接触によってバランスを崩すこともあるが、次のプレーへ素早く移るためにも姿勢を修正(リロード)する必要があります。その姿勢の変化を認識するためには、筋肉や腱にあるセンサー(筋紡錘・ゴルジ腱器官)などの固有感覚が働く必要があります。

また、相手や味方などの位置を把握する周辺視野も必要となり、視覚から得られる情報処理の速度もパフォーマンスに影響されます。

さらに、対戦相手や大会の規模などはメンタルにも影響します。緊張によって呼吸が浅くなり動きが固くなることでパフォーマンスが下がる可能性があります。

 

まとめると

・バランスを保つ、もしくは素早く修正する(固有感覚の活性化)

・相手や味方の位置を把握する(周辺視野)

・緊張による身体の変化(呼吸、精神状態)

(ほんの一例ですので、他にも様々な要素が存在します。)

 

これらの要素が、試合中の「動き」を阻害する可能性があるものとなります。

すなわち、これらの要素を加えたトレーニングの構成が必要となります。

 

そのトレーニングの一例としては、

・片足立ち、タンデム立ちなどの不安定な状況で、脊柱の分離運動を促す要素を加えたトレーニングを行う。

・頭部が傾くと平衡感覚を司る前庭系に影響することから、目線を水平に保ちながら(対象物から目線をそらさないように)バランスまたは筋力トレーニングを行う。

・筋トレやストレッチの場面でも周辺視野を意識する。(中心視野になる傾向がある。)

・特定の色を識別しつつ、周りの選手の動きも把握しながらのスキルトレーニング。

・眼球の動きにくい(動かすと呼吸が浅くなる)方向を認識する。

 

挙げるとキリがありませんが、重要なのは多くの要素を一度に実現させることができるかということです。

 

このことを、アブレスト能力と呼称しています。

 

上記で挙げた例のように、自身の変化に対する認識力を内的認識力といい、それ以外の天候や気温、グラウンドコンディション、道具、相手や味方などを認識することを外的認識力といいます。

冒頭の選手は、要求される「動き」と試合中の様々な「認識力」を両立することができず、パフォーマンスを発揮することができなかった可能性があります。

 

スキルという「動き」だけに捉われず、このような「認識力」を同時に実現させる、すなわちアブレスト能力を高めたトレーニングをすることで、パフォーマンスアップにつながります。

(今回はフィジカルについて触れませんが、パワーやスピードも同時並列的に実現させることも重要です。)

 

 

 

アブレスト能力の落とし穴

 

以上のことから、

◯ スキルとは「動き」だけではなく、「認識力」や「フィジカル」と相互関係にある。

◯ パフォーマンスアップの手段の一つに、アブレスト能力の向上があり、一度に多くの要素を実現させることを指す。

◯ プレー中には様々な「内・外認識力」が必要となり、アブレスト能力の向上には欠かせない要素となる。

 

このようにまとめることができます。

アブレスト能力を向上さるためには、「多くの要素を認識させたトレーニングをすればいいのか」と解釈される方もいるかもしれません。

 

しかし、ここで明確にしておきたいのが、

多くの要素を一度に「実現」させることと、

多くの要素を一度に「認識」することには大きな違いがあるということです。

 

 

 

これまで多くの研究で、自分の身体に注意を向けながら行うパフォーマンスは、外部に注意を向けたパフォーマンスに比べて低下する傾向があることが報告されています。

つまり、アブレスト能力を向上させようと身体の傾き(バランス)や筋出力などの「内的認識力」に注意を向けながらプレーしてしまうと、逆にパフォーマスを下げる可能性があるということになります。

 

では、多くの要素を一度に「実現」するためにはどうすべきか。

それは、身体操作を「自動化」させるためのトレーニングが必要となります。

 

スキルの下部構造には身体操作が存在することを冒頭で解説しましたが、身体操作すなわち「動き」を自動化することができれば、バランスや筋出力などの内的認識力に注意を向ける頻度を抑えながらも、要求される動きを「実現」することが可能となります。

 

身体操作を自動化させるためには、全身の連動した運動や反射を利用した動きの習得、日々の生活レベルから繰り返して行うルーティンなどをトレーニングに取り入れることが必要です。

 

つまり、JARTAトレーニング4原則が相互関係にあることを示し、パフォーマンスアップのための重要なプロセスとなります。

今回紹介したアブレスト能力は、「同時実行の原則」に当てはまり、決してこれだけを習得することが全てではないことを改めて認知していただけると幸いです。

 

 

 

まとめ

 

パフォーマンスを構成している要素は多岐にわたり、それぞれが相互関係にあります。

その選手に必要な要素を導き出し、より良い方向性でトレーニングを選択することがパフォーマンスアップのためには必要です。

 

詳しいトレーニグ内容や理論を取りれたい方は、JARTAトレーナーを利用してみてはいかがでしょうか。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

JARTA公式HP

https://jarta.jp