投球障害から選手を守れ!―肩関節後方タイトネス編―

 

文責;山内 大士

 

関西で活動する山内です。

 

前回の記事にて、投球数と投球障害の関係性と、投球数以外に大切なポイントをお伝えしました。

 

https://jarta.jp/seminar/17257/

 

今回はその中の一つ“肩関節後方タイトネス”について、より深く掘り下げながらお伝えいたします。

肩関節後方タイトネスとは、投球動作の反復により肩関節後方組織が硬くなり、肩関節内旋・水平内転可動域制限が生じた状態を指します。

 

〈目次〉

・肩関節後方タイトネスと投球障害の関係性

・肩関節後方タイトネスの原因となる組織

・肩関節後方タイトネスを改善させる方法

・実際の介入における注意点

 

 

 

肩関節後方タイトネスと投球障害の関係性

 

前回ご紹介したとおり、肩関節後方タイトネスと投球障害の関連は数多く調査されており、非投球側と比較し18度以上の内旋制限を有する選手は肩障害発生リスクが1.9倍になることが報告されています(Wilk 2011)。

 

一方、上腕骨後捻角度が増大する影響もあり(Chant 2007など)、症状のない選手においても内旋制限と外旋拡大が見られます。そのため、内外旋総可動域の左右差を問題視する考え方もあり、実際に5度以上の内外旋総可動域制限は障害リスクとなることが報告されています(Wilk 2011, 2014)。

内旋制限単独で考える場合には、多少のばらつきはありますが20度程度の左右差を基準とし介入することが多いようです(Mansuke 2013, Michael 2018など)。

 

一定以上の内旋制限を有する選手は現在症状がない場合でも、肩外転筋力低下(Nirav 2015)や肩峰下スペースの減少(Launder 2016)といった機能的な問題が見られるという報告もあります。

 

 

 

肩関節後方タイトネスの原因となる組織

 

肩関節後方には、大きく分けて関節包と筋肉が存在します。上述した可動域制限にはどちらの組織が関連しているのでしょうか?

 

深部にある軟部組織の硬さを直接測定できるエラストグラフィという機械を用いた研究の結果、投球側の後方関節包は硬化・肥厚していること(Takenaga 2015)や、内旋制限の大きい選手は棘下筋や小円筋の筋硬度が高いこと(Mifune 2017, Yamauchi 2016)がわかりました。

 

以上のことから、後方タイトネスには関節包・筋の双方が関与していることが考えられます。しかし、外科的処置なしに関節包の柔軟性を改善させるのは困難であるため、我々が介入対象とする組織は主に棘下筋などの肩関節後方に存在する筋肉であると考えて良いでしょう。

 

 

 

肩関節後方タイトネスを改善させる方法

 

こちらも、数多くの研究が行われており、可動域改善効果が報告されています。

 

選手が一人で行えるセルフストレッチとしては、横向きに寝て肩を内旋方向に動かすスリーパーストレッチが多く用いられます(Maenhout 2012など)。

 

その他にも、少年野球などで一度は指導されたであろうクロスボディストレッチ(McClure 2007)や、それを横向きに寝ながら行うことで肩の後ろをより効果的に伸張させるmodified クロスボディストレッチ(Yamauchi 2016)なども、可動域改善効果が示されています。

 

 

 

これらのストレッチは30秒×3〜5セット実施することで即時効果があると認められており、数週間の介入による効果も認められています。また、こうしたセルフストレッチ単独でも効果的ではあるのですが、ストレッチとマッサージ的介入を併用することによりさらに効果が高まることも報告されています(Bailey 2017)。

 

 

 

実際の介入における注意点

 

これまでに述べてきた科学的知見を踏まえると、投球障害の予防もしくは改善に向けて、棘下筋などの後方筋群の柔軟性を改善させる取り組みは非常に重要であり、そのためには直接的なマッサージやストレッチが有効な一手段であると言えます。しかし、それだけでは効果が出ない、もしくは逆効果になる場合も存在します。

 

「内旋制限があるから肩関節後方のストレッチ」と短絡的に取り組んでしまわずに、少なくとも以下の2つの視点は持っておくことをオススメします。

 

①痛みや違和感の出にくい方法で肩関節後方に介入する

  1. ②他の部分にも目を向けながら肩関節後方の硬さを改善させる

 

まず①について。上述したストレッチ効果の検証は多くの場合現在症状がない選手に対して行われており、既に肩を痛めている選手の場合、内旋や水平内転方向へのストレッチは痛みを伴う場合も多くあります。症状を有する選手の場合はそうしたストレッチよりも、四つ這い位で肩の後ろに体重をかけるようなストレッチ方法の方が、痛みも少なく可動域改善効果も出やすいことが報告されています(川井2016)。

その他に私がよく用いる方法としては、テニスボールを使ったセルフマッサージや、ベーシックセミナーでお伝えしている肩のTレフストレッチなどがあります。

 

 

 

次に②について。これまでにもJARTAでは患部から離れたところに問題解決のヒントがあることを度々お伝えしてきました。

 

参考;

https://jarta.jp/training/3382/

https://jarta.jp/training/17234/

 

肩関節後方の硬さを解決させる際にも同様で、例えば棘下筋・小円筋の近くに位置する広背筋の硬さを腰部や臀部のストレッチを介して軽減させることにより、肩関節後方の硬さも和らぐことがあります。上腕三頭筋・三角筋後部を含めて肩〜上腕後方が全体的に硬いようなケースでは、前面に位置する小胸筋や上腕二頭筋の緊張を緩めるような介入をすることで、結果的に肩の内旋可動域が拡大することもあります。

 

このような視点は、通常のストレッチで痛みが出現するケースにおいても非常に重要となります。

 

 

 

まとめ

 

今回は投球障害に関する重要な要素である、肩関節後方タイトネスについてお伝えいたしました。次回の記事では肩甲骨の動きや筋機能に関する科学的知見と、私が実際に行う介入の方法をお伝えいたします。

 

また、12月には大阪と東京でそれぞれ投手用セミナーが開催されます。

https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/

 

その直後に今回の記事でお伝えした内容も踏まえながら、投球障害に対する実際の評価・介入方法についてお伝えする「JARTAワークアウト 投球障害から選手を守れ!実技編」を開催いたします。

 

野球に携わることのある医療従事者・トレーナーの方はぜひ参加をご検討ください。

学生・学生トレーナー・投球障害について詳しく学びたい選手のご参加もお待ちしております。

 

お申し込みはこちら

12/8(日)in大阪

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12/14(土)in東京

https://business.form-mailer.jp/fms/22655ff1112081

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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https://jarta.jp