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2018年11月25日

投手の野球肩と野球肘を予防する方法

投手の肩や肘を守るのは、選手にとってはもちろん、指導者にとってもトレーナーにとっても野球に関わる人であれば誰にでもあてはまるであろう、いわば使命のようなものです。
 
日々のケア
投球後のアイシング
球数への配慮
連投への配慮
 
など現場では数々の対応と対策がなされ、それは今も試行錯誤を繰り返し、より予防という結果が伴う手段と方法が検討されています。

認定講師の岩渕翔一です。

 
昨今の高校野球は、夏の選手権が終わるたび、猛暑への対処、投手の連投や投球数に関する賛否両論が騒がれます。
それは海外からも「日本の高校野球はクレイジーだ」などと言われ、世界を巻き込んだ議論になるほどです。
 
MLBでは、「投手の肩と肘は消耗品だ」という価値観のもと、ジュニア期では当然投げることを厳しく管理され、それはプロになっても続きます。
先発投手の投球数は日本に比べると厳格に管理され、練習時の投げ込みも日本で行うような数は投げることができないと聞きます。
 
大前提として、ジュニア期の選手(ここでは小学生〜高校生を指します)が肩肘を壊す原因と、プロもしくはそれに近いレベルにある選手が肩肘を壊す原因は根本的に違います(これについてはまた別の機会にお伝えいたします)。
いずれにしても、肩や肘に負荷がかかり、炎症を起こしそれが蓄積して靭帯や筋肉、関節包などの軟部組織、または骨や関節などを痛めるということに変わりはありません。
 
前述したように投手の肩肘を守るために現場では数々の対応と対策がなされ、それは試行錯誤が繰り返されながら今もアップデートされています。
それでも、肩肘を故障する選手は多く、今年でいえば、大谷翔平選手がMLBで素晴らしい活躍を見せた一方、シーズン終了後すぐに肘の靭帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けています。
 
事実として、どんな投手であれ投手である以上、肩肘に負荷がかかることは避けることができません。
つまり、絶対的に物理的負荷がかかる以上、リスクは大なり小なり伴います。
それはどんなに素晴らしい選手であっても、逆に野球を始めたてのような選手であってでもです。
 
そういった前提でどうすれば予防できるのかを考えた時に、対応としては大きく分けて3つのことに取り組む必要があります。
 

  • 投球で掛かる身体への負荷を軽減すること

→効率的な投球フォームの習得や、それを実現するための身体機能向上のトレーニング。スタミナ強化や投げ込みも含む。
 

  • 投球前後に行う身体へのケア

→アイシングやノースロー調整、マッサージや物理療法、ストレッチなどのウォーミングアップ、クールダウンなどのセルフケア。週間スケジュールの作成など。
 

  • 日々のリスクマネージメント

→定期的なフィジカルチェック、身体のケア、異常の早期発見など。
 
 
今回提案するのは、上記の1と3の要素を大きく含むトレーニング理論です。
 

<競技レベルの負荷を日常に落とし込む>

 
そもそもなぜ投球が身体に負荷が掛かるかというと、その動きそのものが普段日常生活で行う動作に比べて、可動域もスピードもパワーも全てにおいて比較にならないほど強いからです。
つまり、スポーツとは日常とはかけ離れた動きを求められるため、身体に強い物理的ストレスを与え負荷が掛かる。
 

 
普通に日常生活を過ごしていく上で、筋肉痛になるほどの行為がなければ、可動域を最大限に発揮しないような場面もほとんどないはずです。
日常の動きは身体に物理的ストレスを与えることはほとんどありません(長年蓄積された負荷による変形性関節症などはまた別の話として)。
だとすれば、競技レベルの負荷を少しずつ日常に落とし込んでいければ、その負荷そのものが身体への強い負荷にはなり得ない。
 
そういった考えで我々が提唱するのは、「ミッドストレッチ」という概念・手段です。
 
 

<ストレッチはトレーニングだ>

 
ミッドストレッチとは1日の中で、短時間のストレッチ(おおよそ3分程度)を複数回(最低でも12回以上)こなすという方法です。
日常生活での行為行動が身体的負荷になり得ないのは、当たり前に多くする動きであり、それはその人が生きていく上で必要な最低限の身体機能だからです。
例えると、洗濯物を干すのに肩関節のストレスを感じることもなければ筋疲労を起こすこともありません。
 

 
つまり、競技レベルの負荷を日常的に与えることで、
「この機能はこの人が生きていく上で最低限に必要な機能なのだ」
と脳に学習させる。そうすることで、競技レベルの負荷が日常に落とし込まれごく自然で当たり前な動きに変容していきます。
このことによる効果は大きく分けて2つです。
・オーバーユースの予防
・スタミナアップ
 
当然、日常生活レベルに落とし込まれたその動きは身体的ストレスになり得ないのでオーバーユースになることはありません。
オーバーユースの閾値が上がるということです。また、身体的ストレスにならないということは、その動きがスタミナを削るような身体活動にはならないので、必然的にスタミナは向上します。
 
このように、このミッドストレッチは根本的に身体的ストレスを変容させることができるため、投手の肩や肘の故障予防に非常に重要な手段であり概念であるということです。
 
現在各地で開催している投手トレーニングセミナーで伝えているミッドストレッチの具体的方法は、
・開脚(上下、前後、左右)
・仙骨割
・胸椎伸展捻転
・コモドストレッチ
 
の4種を最低限の必須ポイントとして、メジャーポイントであることを理由に抜粋してお伝えしています。
ですが、この記事を読んでいただければ、これだけでなく当然もっと色々な部位に必要なことは理解いただけたかと思います。
 
投手セミナーに関してはこちら
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
 
これは投手に限ったことではありませんが、一般的なストレッチはどのような場面で行われることが多いのかをもう一度考えてみてください。
 
おそらく、練習前や練習後が一般的。少し意識が高い選手になると就寝前や寝起きといったところではないでしょうか?
そもそも、ストレッチは身体のケアや準備という位置付けであることが一般的で、トレーニングとして取り組まれることが少ないのは現場での現状です。
 
しかし、
トレーニング  =  パフォーマンスアップのための手段
 
 
だとすれば、ストレッチは間違いなくトレーニングという位置付けになるはずです。
 
 
故障で競技を諦める選手を無くしたい。投手の肩肘の故障を予防することは、選手自身が自分自身のプレーやパフォーマンス、そこに至るまでの過程に納得し、より前に進むためでもあります。
 
選手や指導者も参加可能な投手セミナーの詳細は以下よりご参照ください。
https://jarta.jp/j-seminar/pitcher/
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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https://jarta.jp