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2018年12月17日
ウォーミングアップは進化する
文:岩渕翔一
日本スポーツはこれまでの通りのウォーミングアップをやっていては間違いなく勝てなくなる時代がやってきます。
これから、ウォーミングアップは急速に進化する。
その理由と進化に必要なのは2つのポイントです。
スポーツは練習前も試合前もウォーミングアップを必ず行います。様々な考え方がありますが、現状全くウォーミングアップをしないというのはほとんどないと言っていいと思います。
ウォーミングアップの内容やかける時間は当然競技によってもカテゴリーによっても変わりますが、
ランニング→体操→ストレッチ→アジリティなど→その競技の道具を使っていく
多くの競技でだいたいこのような流れで行われるのが一般的だと思います。時間にするとおよそ20〜30分程度でしょうか。
なぜウォーミングアップに進化が必要なのか
理由は様々にありますが、決定的な進化させざるを得ないことが今年スポーツ庁から発信されました。
「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」
(参考資料:スポーツ庁HPより)
関わりのある方はガイドラインをしっかり読んでいただきたいのですが、書いてあることを一部抜粋すると、
・休養日は週2日以上で、平日は1日以上、土日で1日以上
・夏休みなど長期休業中は部活動も長期の休養日を設ける
・1日の活動時間は平日2時間、休日3時間程度
・科学的トレーニングを導入し、短期間で効果が得られる活動にする
・スポーツクラブなどと連携し、地域のスポーツ環境整備を進める
・大会の統廃合を進め、学校が参加する大会数の上限を定める
ということです。つまり、「教師の過度な負担を軽減しつつ、短い時間且つ効率的で根拠のある練習を行える楽しい部活動」でないといけないということです。
ウォーミングアップに求められる2つの考え
以上のことから、指導者やトレーナーに今後より強く求められる能力として「タイムマネージメント能力」があげられるでしょう。
与えられた時間をいかに効率的且つ効果的な練習にするのか。平日2時間しかない活動時間に、「ただのウォーミングアップ」に30分も費やすのは勿体ないという感覚はほとんどの方が持てるのではと思います。
ではどうしていけばいいのか。必要な考えは2つです。
1.ウォーミングアップを無くす
2.ウォーミングアップそのものがトレーニングもしくは練習になる
1.ウォーミングアップを無くす
ウォーミングアップを無くすというのは、時間がないから行わないということでなく、いつでも競技を行えるような心身の準備を行うよう指導していくということです。
JARTAでは、ミッドストレッチという競技レベルの負荷を日常レベルに落とし込む方法(ブログ記事|投手の野球肩と野球肘を予防する方法)や、ウォーミングアップの前に、プレウォーミングアップをしなさいという教育を選手やチームにしていきます。
プレウォーミングアップとは全体のウォーミングアップに入る前に各個人の個人的な課題やケアするべきポイントをしっかりやっておきなさいということですが、それが浸透していけばウォーミングアップは限りなく0に近づけていけます。
また、ウォーミングアップを無くすということに関してはJARTA代表中野のブログでもその意図が記事になっています。
ウォーミングアップ不要論
2.ウォーミングアップそのものがトレーニング若しくは練習になる
サッカーのモウリーニョ監督はボールを使わないトレーニングや練習を行わないことで有名です。
「戦術的ピリオダイゼーション」というポルトガル発祥のトレーニング概念がありますが、根底には「サッカーはサッカーの練習でしか上手くならない」という考え方があります。ですので、モウリーニョはウォーミングアップをフォーメーションの形を取って行うそうです。
各々が自分のポジションにつき、戦術の中ですることの多いスプリント方向やボール出しを行いながらウォーミングアップをするので戦術のトレーニングにもなっているということです。
この考えをウォーミングアップに導入するのです。
どうやって?と思われるかもしれませんが、それこそがこれから指導者やトレーナーの能力や工夫が問われる根本的なところです。ですので、考えることでしか解決しません。
コツは、
・トレーニングやウォーミングアップを行う環境を一から考え直すこと
・常にダブルタスクにできないかを考えること
この2点です。
今年発信された、
「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」
はこれだけでなく、学生を取り巻くスポーツ環境の変化も大きくすることが予測されます。
私が子供の頃は野球やサッカーでも学校の部活動でやることのほうが一般的もしくは、クラブチームと同程度に扱われていました。しかし、今は部活動とクラブチームの役割分担が明確になりつつあり、今回の件はそれを加速させる可能性があります。
いずれにしても、今後指導者やトレーナーのタイムマネージメント能力が問われることは間違いありません。一度、今行なっているウォーミングアップを見直してみるのもいいかもしれません。
そこには選手だけでなく、トレーナーや指導者の成長もあるはずです。
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