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2019年05月05日
「メンタルが弱い」の正体〜身体アプローチでメンタル強化〜
文:伊東尚孝
「お前はメンタルが弱い。」
スポーツ現場でよく耳にするスレーズです。
大事な試合や大事な場面で、いつも通りの力を発揮することができずに苦い思いをしたことのある選手は大勢いると思います。
「いつも失敗するパターンがある。」
「あの対戦相手にはどうしても実力を発揮できない。」
「また失敗したらどうしよう。」
そんな思考が頭をよぎると思います。
結果、その先にあるのは
「勝てない」
勝てない理由は、本当に技術や戦略の問題だけでしょうか。
その原因の一つに、メンタルの要素が隠されているかもしれません。
自分のメンタルを理解し自分のものにできれば、勝てるチャンスが増える可能性があります。
関西で活動しています認定スポーツトレーナーの伊東尚孝です。
そもそもメンタルとは
一般的には「メンタル」と一言で済ましてしまうことが多いですが、メンタルとは「本能」と「理性」の二つで成り立っています。
「本能」とは、いわゆる感情であり、楽しい、悔しい、怒りなどを表出するものです。欲求や気分、機嫌なども含まれます。
その「本能」をコントロールするのが「理性」です。具体的には思考や判断、選択、分析などを担っています。我々は「理性」があるから、道徳的な行動をとることができ、考えて行動し物事を選ぶことができます。
「本能」は言い換えれば赤ちゃんのような存在であり、感情のまま行動してしまうものです。「理性」はそれをコントロールする大人のような存在と言えます。
その「本能」と「理性」をいかに共存させられるかで、メンタルはコントロールできるか否かに分かれます。
簡単な例を挙げると、すぐ試合中にカッとなって集中できない選手は、「本能」が感じる怒りが表面上に現れ、それを「理性」がコントロール不能になっている状況といえます。
つまりメンタルの強化には「本能」と「理性」のバランスが不可欠でありますが、それだけでは不十分です。
なぜならメンタルが弱い原因は、様々な要素が絡み合っており、個人差があるからです。
考え方のクセや生活環境、メンタルブロックなど原因は一つとは限りません。
そこで今回は、メンタルが弱い原因の一つである「失敗イメージ」について解説していきます。
失敗イメージは蓄積される
過去の失敗や苦手な相手、プレー中の失敗パターンなど、各選手それぞれ失敗イメージがあると思います。
どのような失敗イメージがあるか、具体的に例をあげて解説していきます。
例)サッカー
*いつも決定的な場面でシュートを外す。
*一度トラップミスをしたら、立て続けにトラップミスをする。
*同じ相手・チームに同じ負け方をする。
この失敗イメージには、
「またミスをしてしまったら、負けてしまったらどうしよう」という不安がよぎると思います。
そのような不安なイメージを、無意識に頭の中で繰り返していませんか?
脳は、現実に失敗したことと、失敗をイメージしたことの区別をつけることができません。したがって、失敗イメージをすればするほど脳は失敗体験を蓄積していきます。
例えば、実際に決定的な場面でシュートを外したことがあるのは1回だとします。
その後、試合中や練習中で、「あの場面」を10回イメージしたら、脳はその失敗を11回体験したと思い込みます。
つまり、「失敗イメージの蓄積」がメンタルの弱さを生み出している原因の一つになっていると考えられます。
成功イメージを鍛える
「過去の失敗」というネガティブなイメージを取り払うためには、そのプレーに成功イメージを上書きする必要があります。
イメージトレーニングなどの思考的なアプローチはいくつか方法がありますが、今回は身体的要素へのアプローチについて述べていきます。
上記で述べたように、脳は実際に体験したこととイメージしたことの区別をつけることができません。
それを逆手に取り、成功体験を脳にインプットしていきます。
ただ闇雲に成功イメージを持って反復練習を行っても、そこに「どのような動き・姿勢が組み合わさっているか」という自分の身体を感知することが欠かせません。
身体が整っていない状況での反復練習はマイナスの学習を引き起こすリスクもあり、成功イメージを鍛えることは難しくなります。
変化に気づくことができる身体に
では、どのように成功イメージを獲得していくかを具体的に解説していきます。
上記で述べたように、失敗パターンが「どのような動き・姿勢が組み合わさっているか」を自分の身体で感知する必要があります。
そのためには、まず「失敗パターンの分析」を行います。
失敗パターンがどのように発生しているか、その時の自分の動きや姿勢はどのような状態にあるのかを分析します。
分析する時のコツは、プレーを時系列に区切ることです。
例えば、サッカーのシュート場面を大まかなフェーズに区切ると
〈ゴールの認識→ボールの認識→助走→上半身の回旋運動→軸足の踏み込み→蹴り足の振り抜き〉といった具合になります。
フェーズごとに区切られたら、どのフェーズでエラーが生じているかを分析します。
その際の身体の動きや姿勢などを把握し、成功するためにはどうなれば良いかを考えます。
おそらくエラーが生じているフェーズでは、主観的なイメージと客観的な動きに誤差が生じているかと思われます。
最初は客観的な指摘や、自分の動きを録画したものを客観的に分析することから始める方がいいでしょう。
(最終的には自分の身体の感覚を変えるため、客観的なアプローチに依存し過ぎないように気を付けます。)
では自分の身体を“感覚的”に把握するためには、どうすべきか。
それは、日々の身体状況の変化に気づくこと。
厳密に言うと、変化に気づく意識を持ち続けること。
プレー中だけでなく、日常生活からも。
歩き方、立ち方、座り方など、日頃から身体の変化に気づく習慣をつけることで、プレー中の自分の動きの変化を感知しやすくなります。
我々は普段から姿勢や動作を、筋や関節などにある固有感覚をもとに感知しています。
固有感覚受容器の働きを高めることで、細かな姿勢や動作を再現することができます。
すなわち、固有感覚というセンサーの感度を上げることが重要です。
ここで活用したいのが、Tレフストレッチ。
Tレフストレッチとは、体を効率良く機能させるために必要な部位に固有感覚(体性感覚)を入力しながら行うストレッチのことです。
Tレフストレッチのメリットは短時間で複数の筋に刺激を入れることができることです。練習前後はもちろん、起床後などにも取り入れることで固有感覚の感度を高めることができます。
身体状況を感知することができれば、失敗パターンと成功イメージとの誤差に気づきやすくなります。
あとは、その誤差を埋め合わせるトレーニングを繰り返す。
成功パターンの蓄積によって今までの失敗パターンは薄れていき、成功イメージを構築しやすくなっていきます。
成功イメージが構築できると、やるべきことは一つだけ。
その成功イメージを脳内で繰り返す。
脳は、実際の体験とイメージしたことの区別がつきません。
その特性を利用し、今までの失敗イメージから成功イメージへと変換します。
「過去の失敗」というネガティブな思考が、「このプレーは成功する」というポジティブな情報に上書き保存された瞬間です。
今回の内容をまとめると、
①イメージは実体験として脳に蓄積される。(メンタルが弱いと言われる正体の一つ)
②成功イメージに変換するためには、まずは失敗パターンを分析する。
③身体状況を整え、自身の体の変化に気づく習慣をつける。(Tレフストレッチを活用)
④成功パターンが構築されれば、そのイメージを繰り返す。
いかがでしょうか。
メンタルの弱さは生まれつきではなく、知らず知らず積み上げてきたマイナスのイメージであることもあります。
そして身体環境の調整によってもメンタルを整えることができ、身体的なトレーニングと同じでメンタルもトレーニングによって強化することができます。
今回は、メンタルの弱さの原因が「過去の失敗」であると解説しました。
しかしメンタルはそれほど単純なものではありません。
様々な要素が絡み合っており、個人差があります。
つまり、メンタルの弱さは「過去の失敗」だけが原因とは限りません。
この記事を通して、メンタルが弱いと悩む選手が少しでも解決できる方向へ変われれば幸いです。
勝利を目指して、メンタルの強化も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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