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2020年12月06日

障害の発生要因をあなたはいくつピックアップ出来ますか?

文:赤山僚輔

 
痛みや不調の要因が何なのだろう?
常に我々スポーツトレーナーを悩ませる命題に対して、皆様はどのような用意を、自分なりの答えや解釈を用意していますか?
特に慢性障害に関していうと、症状発生の要因が一つであることはほとんどなく、複合的に要因が重なり合い症状が出現したり長期化することが考えられます。
これは単に、オーバーユースという側面で負荷量の増加に伴う症状の悪化や炎症の慢性化を要因に帰結して、安静期間を設けるだけでは根本的な解決にならない多くの事例からも気づかされる事だと思います。
 
今回はシンプルでありながらも、障害発生の要因を探求する思考プロセスをご紹介します。
 

ハインリッヒの法則をご存知でしょうか?

 
ハインリッヒの法則とは、労働災害における経験則の一つであり、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。

傷害を伴った災害を調べると,傷害は伴わないが類似した災害が多数発見されることがよくある。潜在的有傷災害の頻度に関するデータから,同じ人間の起こした同じ種類の330件の災害のうち,300件は無傷で,29件は軽い傷害を伴い,1件は報告を要する重い傷害を伴っていることが判明した。このことは5000件以上について調べた研究により追認されている。
(–H. W. ハインリッヒ、D. ピーターセン、N. ルース(著)井上威恭(監修)、(財)総合安全工学研究所(訳) 『ハインリッヒ産業災害防止論 海文堂出版(株) 1987年(昭和62年)9月 2版 ISBN 430358052X p59-60』)※Wikipediaより引用

これをスポーツ障害に拡大解釈して当てはめると、目の前に発生している痛みや不調の背後にある軽微な症状や要因をまずは29個ピックアップすることを試みます。
おそらくこの程度であれば普段の臨床で実施している方も多くいるのではないでしょうか?
数十個の要因を整理していなければ、単に膝や腰が痛いという状況に対して根本的な解決は難しいと思います。
しかし痛みや不調を前にして、一時的に症状が軽減しても再燃する場合や、再発を繰り返す事例を経験する場合にはこの先の探求が非常に大事になってきます。
 
その先には本人にとっては無症状であるが、29個の軽微な症状の要因となる要素が300個ある可能性があります。

 
 

一気に300個ではなくツリー構造を利用してピックアップしていく

症状のない障害発生の元要素を300個ピックアップすることは最初は難しいかもしれません。
しかしまずは29個の軽微な症状のひとつについて10個の要素をピックアップすることはさほど難しいことではないのではないでしょうか?
 

イメージとしては上記図のような流れです。
仮に前鋸筋に痛みが発生していた場合、痛みの要因である要素をまずはピックアップします。
その要素が発生した要因をさらに10個程度ピックアップするという流れです。
ここで重要なことは、痛みや自覚がなくてもその要素の要因になる問題が日常生活やその方のこれまでの過ごし方などから無限にありえるということです。
本人に心当たりがあればすでに気をつけて解決できている可能性が高いので、関わっているスポーツトレーナーが本人が気付いていない些細な無症状の要因をピックアップすることが重要となります。
それは関節のアライメント異常かもしれませんし、食事の影響や用具の問題かもしれません。
この探究する過程は正直面倒に感じると思います。
しかし目の前の症状が解決仕切らないときにはこのような思考プロセスが非常に重要になります。
 
じっくりと要素を捻出するだけで、またそのような視点でクライアントから注意深く問診や評価をするだけで繋がってくる事例も多々あります。
自分がすでに用意している要因で帰結することを目指すだけでなく、このような要素のピックアップにはクライアントにも協力してもらいながら、探究していくことも重要です。
そして本人のちょっとした気づきや違和感からヒントが得られることもあり、その繰り返しで300個のピックアップも容易になってくるのです。
 
現在開講しているトレーナーカレッジではこのような思考や具体策について共有しながら、一緒に学び進めるプロセスを行っております。
ご興味がある方は以下よりご参照ください。

JARTAトレーナーカレッジ


 
少しでも根本的な要因をピックアップして、痛みや不調で困ることなく多くのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮できることを祈念しております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp