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2019年09月28日
選手が本当に必要とするトレーニング
文:伊東尚孝
東京オリンピックまで1年となり、世界トップクラスの選手を間近で見るチャンスが近づいてきました。
世界一を目指して繰り広げられるパフォーマンスは、感動すら覚えます。
特に自分と関係のある競技であれば、なおさら引き込まれることでしょう。
「自分も世界で戦える選手になりたい」
「トップ選手のようなプレーがしたい」
「〇〇選手みたいになりたい」
世界のトッププレーヤーを目の当たりにし、その選手を目標として練習に励む方もいるでしょう。
しかし、トップ選手のようなプレーを身につけるためには、どのようなトレーニングを選択すべきでしょうか。
世界レベルの練習を、ただ同じように取り入れることが本当に正しいのでしょうか。
そのトレーニングは、本当に選手が求めているものでしょうか。
今回の記事では、目の前にいる選手の伸びしろを明確にし、どのようにトレーニングを選択すべきかのポイントを述べていきます。
トレーニングを選択する2つのポイント
先日、ヴィッセル神戸VSバルセロナFCの試合を観戦しに行きました。
昨年のFIFAワールドカップで優勝したフランス代表のグリーズマン選手も来日しており、
試合にも先発出場していました。
グリーズマン選手の凄さは、決して大柄ではないにも関わらず強烈なシュートを放ち、相手を一瞬で置き去りにし、味方に決定的なパスを出すなど、多様なプレーができることです。
その中でも特に目を奪われたのが、「素早い動き出し」でした。
裏への飛び出しはもちろん、ほとんどプレッシャーがない状態でボールを受ける場面が多く、相手の一歩先でプレーをしていたような印象でした。
この「素早い動き出し」によってチャンスを作り出しています。
では仮に、「素早い動き出し」を習得したいとする場合には、どのようなトレーニングを選択すべきでしょうか。
一般的に「素早い動き出し」すなわち「瞬発力」を高めるトレーニングの代表は
・ラダーを使ったステップワーク
・ジャンプ系の下半身強化
・ショートダッシュ系
などが挙げられます。
これらのトレーニングに多様性を加えると、トレーニングの種類にはキリがありません。
では、グリーズマン選手のような「素早い動き出し」を獲得するためには、
数にキリがないトレーニングを全て網羅することが、果たして正解なのか。
その答えは、以下の2つのポイントを抑える必要があります。
1つ目が、「競技の特性を知る」
2つ目が、「個人の動きを知る」
このポイントをどのように押さえていくのかを、具体的に解説していきます。
① 競技の特性を知る
「素早い動き出し」といっても、競技によってその特性は様々です。
例えば、野球の盗塁。
盗塁するために走り出す方向は必ず次の塁、すなわち右側になります。
牽制球に対しては左側に動き出します。
リードしてる時の姿勢は一番動きやすい姿勢をとり、動きだす方向も左右どちらかに限られています。
一方、サッカーで素早い動き出しが要求される場面の一つが、相手を振り切る時です。
サッカーは基本的にオフザボール(ボールを保持していない時)の時間が圧倒的に長いです。
そのため相手との駆け引きをしながら、相手より早く動きだすことが必要とされます。
つまり、相手の動きによって動き出す方向が多様に変化します。
さらに周囲のスペースや相手との密接具合によっては、動き出す時の姿勢が不安定な場合もあります。
まとめると、
野球の盗塁
① 動く方向が左右で決まっている。
② 構えの姿勢は一定であることが多い。
サッカーの相手を振り切る動作
① 動き出す方向は様々。
② 状況によって不安定な姿勢から動くこともある。
このように、競技によって「素早い動き出し」の特性が変わります。
すなわち、上記で示した「素早い動き出し」を全て網羅するのではなく、
各競技を構成する要素を抽出することが必要となります。
特性に沿ったトレーニングを選択することで、より競技に活きるトレーニングを行うことができます。
その競技を構成する要素を抽出するために参考とするのが、
トッププレーヤーの動きです。
トッププレーヤーはその競技において最高クラスの動きをしているため、その選手の動きを分析することで構成要素を抽出できます。
最近は、SNSなどで容易にトップクラスの選手の動きを分析することができます。
トッププレーヤーといっても一人ではないはずですので、様々な選手を観ることで引き出しを多く持つことが重要です。
② 個人の動きを知る
競技の特性を分析した上でトレーニングを選択しますが、
そのトレーニングが万人に共通して有効なトレーニングかどうかを考える必要があります。
つまり、同じトレーニングをしても効果が出る選手と出にくい選手がいるということです。
なぜかというと、一言でいえば「個性」があるからです。
同じスポーツをしていても、国籍が違えば体格、文化、経歴、など様々な違いがあります。
日本人同士でも、生活習慣や競技歴などによって違いが出るのは当たり前のことです。
つまり、目の前にいる選手の動きも分析しなければなりません。
硬さがあるのであれば柔軟系トレーニングを選択し、
筋力が足りなければウエイトトレーニングを選択する。
その選手が苦手とするポイントを改善できるようなトレーニングを選択できれば、パフォーマンスアップする可能性が広がってきます。
まとめ
トレーニングの種類は数えればキリがありません。
その全てのトレーニングをすることは、時間的にも体力的にも限界があります。
どんなに素晴らしいトレーニングであろうと、
あの有名選手がしているトレーニングであろうと、
目の前の選手に必要なトレーニングかどうかを分析することが重要です。
その基準となるのが世界トップクラスの選手。
SNSなどで観ることもできますが、やはり生で観戦することを僕は大事にしています。
そして、目の前にいる選手の伸びしろを見つけることになり、
結果的に、パフォーマンスアップに繋がるヒントが見つかるでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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