筋力トレーニングと同時に”認識力”を

文:仲田享平

スポーツのトレーニングにおいて、筋力トレーニングは以前から重要視されており、実際にプロスポーツ選手がトレーニングを行っている映像を私自身、何度もメディアを通して目にしたことがあります。

 

私自身も高校時代は硬式野球部に所属し筋力トレーニングを行っていた経験がありますし、現在サポートしている高校生の男子バレーボール部、ボート部の選手たちも筋力トレーニングに取り組んでいるという話を耳にします。

 

現在のトレーニングのひとつとして浸透している筋力トレーニングですが、筋力トレーニングをすべきか否かという議論を指導者の方とすることもありますので、私の考えを述べていきます。

 

まず、「筋力トレーニング」という言葉の定義づけを行ってから話を進めていきます。

 

今回の話で論ずる筋力トレーニングですが、主に重量に対する負荷を身体に与えて、それに抗する動きを反復し筋の出力や持久力の向上、筋肥大を目的とするものとします。

 

結論から述べると、筋力トレーニングは必要であると私は考えます。

 

しかし、起こりうる有害事象を想定しながら行うことが前提条件となります。

 

具体的な事例を用いて説明していきます。

 

高校生男子バレーボール部の練習の中に腕立て伏せを行っている場面がありました。

 

指導者の方に話を聞くと、「ブロックを強化したい」という目的で行っているとのことでした。

 

実際に選手たちが腕立て伏せを行っている姿をみると、脇は開き、肩甲骨は挙上し、腰椎が前弯状態で行っている姿が目立ちました。

 

このケースで想定される有害事象ですが、まず「ブロックの強化」という目的から「腕立て伏せの回数をこなす」ことが選手たちの目的となってしまっているように感じました。

 

目的が「腕立て伏せの回数をこなすこと」に変化してしまうと、フォームが崩れ代償動作を伴ってでも動作を遂行しようとするため、負担が一部分へ偏りオーバーユースを招く可能性があります。

 

また、脳の運動学習機能により代償動作での運動を脳が学習してしまうことで癖や力みを生み出し、結果的にパフォーマンスを低下させる恐れがあります。

 

 

実際このケースにおいても肩甲骨の挙上や、腰椎の前弯が代償動作としてみられていましたが、肩甲骨が挙上してしまうと肩の可動域の低下や筋発揮を低下させます。

また、腰椎の前弯が強まると上肢運動の土台となる体幹の安定性が低下し、結果的に上肢機能の低下に繋がります。

 

以上のことから、ブロックを強化するという目的で行っていたトレーニングが結果としてパフォーマンスを低下させ、障害を引き起こす可能性が想定されます。

 

これらの有害事象に対して対策を講じながら筋力トレーニングを進めていく必要がありますが、その中で重要となってくるものが「認識力」であると考えます。

 

パフォーマンスはフィジカル、認識力、スキルの3つの構成要素から成り立っており、3つの要素の関係性を強めていくことがパフォーマンスアップに繋がります。

JARTA公式HPより

※内的認識力とは、自分の状態がどうなっているかということを認識する能力のことです。
例えば今どこに重心位置があるのか、どこに力が入っているのかということが認識できる能力のことです。
※外的認識力とは、相手と自分の位置関係であったり、ゴールまでの距離や方向、ボールの重さや道具の重心位置を認識する能力のことです。

 

今回のケースのように闇雲に腕立て伏せを行うことはフィジカルの要素のみをトレーニングすることとなり、関係性を強めることに繋がりません。

 

そこで、認識力を同時に用いることで、どこの筋肉に収縮が入っているのか、脇が開きすぎて肩甲骨が挙上していないかという部分を認識しながら行うことで、オーバーユースや代償動作の学習を防ぐことにもなり、効率よくパフォーマンスアップに取り組むことができます。

 

 

筋力トレーニングはフィジカルの要素を高めるためには有効なトレーニングであると考えられますが、実際のスポーツ場面において、筋力だけを求められる場面は少なく、筋力を発揮しながら同時に自分の重心やボール、相手選手など同時に様々な要素に意識を向けることが必要となります。

 

筋力を発揮することと同時に認識力やスキルも発揮できなければ良いパフォーマンスは生まれません。

 

この関係性を理解していれば、筋力トレーニングの負荷において重量だけではなく意識の数を増やすこともトレーニング強度を上げる方法となります。

 

よって、筋力トレーニングはパフォーマンスアップに必要な要素であり、取り組むべきではありますが、有害事象を想定し、それを予防する認識力の要素を同時に取り入れながら行うことでトレーニングの効果を高めることが可能であると考えます。

 

筋力トレーニングのネガティブな部分だけを切り取ってやるやらないの議論をするのではなく、パフォーマンスアップに必要な筋力トレーニングを”認識力”というキーワードを元に”やり方”をこういった機会に再考してもらえればと思いお伝えさせていただきました。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

JARTA公式HP

https://jarta.jp