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2019年11月24日

人は完全には数値化できない。なのにデータを取る必要があるのか?

文:鳴海裕平

データを取る意味は果たしてあるのか?

 
学生のうち、体力測定を学校の授業の一環で受けない方はいないと思います。
しかしながら、例えば部活動の時間などで
筋力や柔軟性などを測定するということはあまり聞きません。
(野球部などで新入生のポジションの適正を見るために遠投したり、
短距離ダッシュしたり、柔軟性を確認したりといった位でしょうか。)
多くの場合、その時間があれば練習に使いたいと考える指導者が多いからです。
 
また、人間の能力を数値で表現し尽くす事は不可能です。
例えば遠投をする際には、ボールを投げた距離を測ることは出来ますが、
投げた人がどのようなフォームで、どれほどしなやかな動きをしたのかはわかりません。
 
 
筋力を測定できても、それを実際に必要な動きの中で生かせているかも別問題です。
筋力があれば全て解決するわけではないからです。
例えばですが、腕の筋力が強くても、倒立を出来ない人は意外にたくさんいます。
 
 
パフォーマンスを上げるのにデータを取る必要はないのではないか?
選手、指導者のみならず、実はそう思うトレーナーもいたりします。
 
しかしながらデータを取るのは大変重要です。
仮に測定を完了するのに時間がかかるにしても
練習1回分の時間を割くに当たるほどのメリットがあります。
 

データが選手、指導者、トレーナーへ与えるメリット


1.選手へのメリット
『選手をデータで全て表すこと』は不可能。しかし『選手≒データ』は可能である。
数値が必ずしもパフォーマンスに直結するとは限りません。
そして選手の全てをデータで表すことはできません。
 
しかし、数値が優れている選手ほど、優れている成績を残している選手が多いのも事実です。
データで選手の全てを表すことはできませんが、
データをみて優れた選手なのだと判断することは可能なのです。
 
選手側の立場からは自分の能力の現在地がわかりますし、
目標としている選手の数値がわかれば、それに向けて練習をする目安になります。
これは目標を立てて練習するに当たって、ものすごくわかりやすい指標です。
 
選手に自身の成長を実感してもらう機会は多い方が良いです。
試合の結果、その善し悪しでしか成長がわからないようでは
選手のモチベーションが保ちづらく、スランプに陥りやすいからです。
 
また、数値が目標値に達しているのに試合で結果がでない場合、
数値外の部分を改善すればよいと考えればよく、
問題点を洗い出すのがより簡潔になりやすいというメリットもあります。
(このときデータがなければ問題を洗い出すのに更に手間がかかり、
練習内容を改善するに当たって、見当違いの内容を採用してしまう場合があります。)
 
 
2、指導者へのメリット
信頼関係の構築や客観的な意見を伝える仲介役として有能な『データ』
 

指導者は選手に対して、指導者からみた客観的な視点で意見する事が必須です。
しかし、選手に意見するときに直接話すと、
言葉の取りようによっては誤解を生む場合もあります。
 
また気難しい選手に対して『〇〇だから〇〇した方が良い』と意見しても
選手は『私の事を何も知らないくせに』と素直に聞き入れないこともあります。
 
指導者には選手との間に信頼関係が必要ですが、
信頼関係を築くまでの間に選手に指導しなければならないことは多々あります。
 
しかしデータ上で出ていることを踏まえて話すのは、
事実として出ている情報ですので聞き入れて貰いやすいです。
よく指導者がプレイ中の動画を見せて指導するのも同様の意味合いです。
 
また、指導者が選手自身のデータを知っている事を
『選手に知ってもらうこと』は信頼関係の構築の一助になります。
 
信頼関係を築くには『指導者が選手の事を知ること。』
そして選手に『指導者は自分の事を知ろうとしている』と思ってもらうこと。
これが信頼関係の始まりです。
 
そして指導者は選手の事を正しく知る必要があります。
データを知れば『選手全て』の事を知ることは出来なくとも、
『≒』で選手の事を知ることできます。
たとえ『≒』でも指導者にとっては大変ありがたい情報です。
 
3.トレーナーへのメリット
選手、指導者と選手自身の問題点を共有しやすく、自身の成果を評価してもらいやすい。
 
選手の何が優れて、何が苦手なのか、数値で表されると
選手や指導者は理解しやすく、トレーナーの話を聞いてもらいやすくなります。
これもデータのメリットなのですが、それ以上に
トレーナーの実績として残しやすいというのが大きいかもしれません。
 
トレーナーの実績というのはとても評価されづらいものです。
仮に1年、選手やチームに帯同したときに、『〇〇さんは良くやってくれているけど、
どのくらい自分たちに影響をしてくれたのか正直わからない。』と思われれば、
来年からは必要ないと思われてしまいます。
 
選手や指導者に
実際に目に見えてパフォーマンスが変化している実感を得てもらったり、
選手の痛みをその場で取り除いたり、
緊急時に適切な応急処置をしたりするのも実績として素晴らしいですが
数字として残せればこれ以上にわかりやすい事はありません。
 
トレーナーが目に見える実績として、
例えば、
・チームで蔓延している怪我の発生率を下げた。
・実際に向上しているパフォーマンスを数値化してデータに残す。
(試合で結果が出れば尚良し)
などを残せれば選手や指導者にもわかりやすいでしょう。
 
トレーナーが一番してはならないことが、選手と関われなくなることです。
関われなくなれば、どんなに素晴らしい知識・技術を持っていても無意味ですし、
そこに悩みに悩んでいる選手・指導者がいても助けになることはできません。
 
そのためトレーナーは、
どんな手段を用いても選手・指導者に必要だと思ってもらわなければなりません。
データはそのための手段の一つとしても有用でしょう。
 
 
 

データは一つの手段、『≒』でも情報としてはとても有用

これ以外にもデータをとるメリットはありますが、あくまでデータは一つの手段です。
もちろん取らなくても選手のパフォーマンスを向上させていく事はできると思いますが、
『取らないよりは取った方が遙かに良い』と私は考えています。
 
データで選手自身、選手全てを知ることは不可能でしょう。
しかし『≒』でも情報としてはとても有用なのです。
 
選手のパフォーマンスを向上させるためにはあらゆる手段を使いますが、
その手段を増やしておくことも必要なのです。
 
すべてはパフォーマンスアップのために
最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 

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