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2019年04月17日
慢性疼痛の正体
文:伊東尚孝
皆さんは「慢性疼痛」と聞いて、思いつくことは何でしょうか?
多くの方は「腰痛」「肩こり」などを連想するのではないでしょうか。
または、足首の捻挫をしてからずっと違和感がある。
膝の手術をしてから力が入りにくい。
それほどの痛みではなくても、何かしら常に違和感を抱えている人は少なくはないと思います。
症状の程度は人それぞれでしょうが、誰しも経験があると思います。
そんな慢性疼痛は、厄介なことにスッキリ痛みが取れるのに時間がかかることが多いです。
もしくは何をしても痛みが取れない・・・
なぜなら慢性疼痛は、疼痛部位の問題だけでは解決しにくいからです。
今回は、そんな慢性疼痛を引き起こす「根本の原因」について迫っていきます。
JARTA 認定スポーツトレーナーの伊東尚孝です。
原因は背骨にあり
慢性疼痛の厄介なところは、一時的に良くなっても、また再発するところにあります。
なかなか良い状態を維持できず、結局また治療するサイクルに陥ってしまいます。
その理由は、痛みの原因は様々な要素から成り立っており、局所だけの問題解決では限界があるからです。
そこで注目してほしいのが
「背骨」
背骨は体の中心に位置し、上から頚椎 7 個、胸椎 12 個、腰椎 5 個、仙骨 1 個と骨が並ん でいます。
骨は、文字通り体の骨組みを形成し支える、臓器を守る、カルシウムを貯蔵する、血液を作るなどの役割がありますが、「力を伝達する」という役割もあります。
この「力を伝達する」仕組みが慢性疼痛を解決させるヒントになります。
二足歩行の始まり
話は少し変わり…
ヒトは進化していく過程で、四足歩行から二足歩行になりました。
この進化によって、背骨のアライメント(姿勢)が大きく変わりました。
四足歩行をする動物の背骨は、頚椎から下部は弓なりに弧を描くアライメントになっています。
しかし二足歩行となったヒトの背骨は、S 字に弯曲しています。
なぜ S 字に進化したのか・・・
「力を伝達する」ために、背骨は S 字のほうが効率が良いからです。
重力(体重)を支えるための力や、歩く時の足からの衝撃(床反力)などの力を、S 字の背骨は全身に伝達・分散することで、無駄な力を使わずに姿勢・動作を成立させます。
足部やひざ、股関節なども力を伝達するために重要な部位ですが、体の中心部に位置しており、多くの骨が連なり多くの筋肉が付着する背骨が、最も効率が良いと考えます。
裏を返せば、二足歩行を行うためには背骨を S 字に弯曲させるのは必然だったのでしょう。
背骨の S 字弯曲の崩壊
そんな背骨の S 字弯曲ですが
「座る・立つ姿勢のクセ」「パソコン、スマホの使い過ぎ」「運動不足」などの生活習慣の影響を受け、背骨の S 字弯曲は崩壊し硬まってしまいます。
その結果、背骨の柔軟性が低下し、背骨で力を伝達しにくくなり他の骨(関節)が背骨をかばってしまいます。
これを専門的に「代償」と言います。
実は、背骨の固さを代償することで他の骨(関節)に必要以上な力が加わります。
この必要以上な力が骨(関節)に少しずつストレスをかけて 慢性疼痛を引き起こしてしまいます。
つまり
「背骨」の柔軟性低下が
慢性疼痛の「根本の原因」となり得ます。
同じ「背骨」でも、部位によって柔軟性は変わってきます。)
背骨の柔軟性を高めるワーク
本来であれば背骨は一つ一つがばらばらに動くものです。
ほんのすこしずつ動いた結果、カラダを曲げ伸ばしでき、捻ることができます。
これから紹介するワークには、その「一つ一つをばらばらに」という意識が重要になります。
〈方法〉
②骨盤から腰椎にかけてゆっくり下ろしていき、背骨一つ一つを順番に床へつけていきます。
③背骨が首の下(第7頸椎あたりまで付いたら、両足を持ち上げて床から離していきます。
④背骨一つ一つをゆっくり離して行き、つま先が床につくまで動かします。
再び、④から①まで姿勢を戻していきます。
コツとしては、あらかじめ背骨がどこにあるかを手で触ってから行うと、触った感覚が残っているうちにワークに取り組めます。
また、カラダが硬くてこの姿勢が厳しい場合は、①と②の繰り返し、③と④の繰り返しで分節的にワークをしても効果的です。
他にも背骨を捻るようなストレッチや前屈などでも、背骨をばらばらに動かす意識があれば、そのストレッチの効果は増大します。
疼痛部位だけの治療で良くならないと思っている方は、背骨の柔軟性を見直しワークに挑戦してみてください。
また背骨の柔軟性を高め、背骨を介して力を全身に巡らせることができれば、強いパワーと速いスピードで動くことができると同時に、怪我の予防にもつながります。
カラダの中心にある非常に重要な部位なので、パフォーマンスアップに大きく貢献することができると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
疼痛部位には間違いなく何らかのストレスがかかっており、全く問題がないと言うつもりはありません。
あくまで、局所の慢性疼痛を「二次的なもの」として捉えていることを、ご理解いただけると幸いです。
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