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2021年04月21日

“マイナスの学習”という視点

文:赤山僚輔

 
『マイナスの学習』
JARTAのベーシックセミナーの内容でお届けする重要な捉え方について今回の記事では今一度整理してお伝えしたいと思います。
 
 
何かを学び習得していくプロセスは、アスリートに関わらず重要であり、様々な角度から学習することをこれまでに皆様は経験していると思います。
 
アスリートであれば、それは柔軟性の向上や筋力アップだけでなく、身体操作や自分の心身を深く理解していく過程などがそういった学習に該当するのではないでしょうか。
 
その学習は本来、目的に対しての手段であり、表現を変えると最上位目標に到達するまでの中間目標に位置するものだと思います。
 
それを目的と手段を混同して、気づかぬうちにその手段の一つである学習が目的化してしまうと一部分を切り取った学習としては確実に前に進んでいるのに、目的に対してはネガティブに働いてしまうことがある。
これがいわゆる”マイナスの学習”という状態です。
 
大前提としてパフォーマンスを敢えて下げようと思い指導に関わる人はいないと思います。
 
しかし、そのパフォーマンスの構造を整理して、関係的な繋がりを考慮しなければ、フィジカルの一部分である要素の強化や変化が全体であるパフォーマンスの向上とイコールであると誤認してしまう自体に陥ってしまうのです。
 

柔らかければ良いというわけではない

これは私自身の過去の苦い経験でもあります。
股関節の柔軟性を改善することに対して、解決策が充分に整理でき始めた頃。
コンディショニングにおいてもセルフケアやワークにおいても、股関節の硬さで困るような選手がほんどいなくなってきていました。
そんな時に一時的に股関節の詰まり感や動きにくさを訴える選手に対して、本人の主観ではこれまでで一番動きやすいと感じるほどに股関節の可動域を拡大できた機会がありました。
20代後半の選手でしたが、いくつからでも可動域は根本的な原因を解決すれば、拡大できる。
そのように鷹を括っていました。
そうするとその数日後、彼女からぎっくり腰になったとの報告を受けました。
 

 
その報告を受けた瞬間に、『しまった。。。』そのように感じました。
ひとつの関節が著しく動きやすくなるということは、当たり前にこれまでよりも動きが容易になり隣接する関節への負担は増えます。
今までよりも練習において負荷をかけやすくなった状態でもあったと推察できます。
幸いすぐにコンディショニングする機会があり、すぐ練習には戻れましたが、私自身の苦い教訓として、一側面だけをみて、よくなったと過信していると全体のパフォーマンスや身体全体の統合性においてマイナスに働くこともある。
まさにマイナスの学習を体現する貴重な機会となりました。
 
木を見て森を見ずという表現もありますが、常に一側面の学習だけに捉われず、パフォーマンス全体の状態や方向性、あるいは目的に対しての軌跡について慎重に検討し、適時振り返ることでこのような意図しない状況での”マイナスの学習”を防ぐことができます。
 
我々スポーツトレーナーが介入する際には全てが無条件にプラスに働くとは限りません。
パフォーマンス全体を常に俯瞰し、選手や指導者と共有し、極力マイナスの学習が発生しないようにひとつひとつの課題に向き合っていければと思います。
 
長くなりましたが、少しでもマイナスの学習が減り、パフォーマンスアップに寄与できるスポーツトレーナーが増え、思う存分競技に打ち込めるアスリートが増えることを祈念しております。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

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