強いマッサージを求めるアスリートへの対応を再考する

 

文:赤山僚輔

 

『もっと強くマッサージしてもらえますか?』

 

あなたはこんな台詞を選手から言われたことはありますか?

 

私は実はないのですが。

 

このような選手からの声に対して、答えるように強く強くマッサージしていて施術者側が困惑している、どうすればよいか。

 

このようなスポーツトレーナーの方々の声を聞くことが少なくないので、今回は自律神経の観点からどのように対応していくか、ひとつの考え方をお伝えしたいと思います。

 

なぜ強いマッサージを求めてしまうのだろうか?

 

一般的にはという前提で話を進めさせてください。

これは多くのスポーツトレーナーと接することで、よく耳にすると言う意味での一般的には、です。

 

マッサージ=強くほぐす必要性がある、強くほぐさないと効果がない

マッサージによる症状改善などの効果よりも、マッサージ効果、つまりマッサージそのもののやられた感覚、気持ち良さを求めている。

 

上記2つともに共通する問題として、どんどんとより強く、よりやられた感覚を求める。

という傾向にあります。

 

これはセルフケアやストレッチなどでも同様のことが言えるのですが、痛みや強い伸長感がなければやっている感じがしないということで強くマッサージツールを使ってほぐす選手もおられます。

やっている時には気持ちの良い感覚(この感覚自体にも問題あり)や”やった感”はありますが、その後の疲労改善具合や実際の症状の推移を聴取していると効果的な変化を実感できていない事例が多く散見されます。

 

これは手段が目的化してしまっているという問題も内包しています。

 

本来は症状の改善やパフォーマンスの向上が目的になるはずですが、マッサージをしてもらうこと。

マッサージで気持ち良くなること、これらが目的になっていると辛口の食事が好きな人がどんどん辛さの度合いが進行していくように、中毒のように本来は手段であるはずのマッサージをしてもらうことや気持ちよさに対して”もっと強く”となってしまうのではないかと考えています。

 

前者のマッサージをしてもらうことが目的になってしまう選手に対しては、本来マッサージは手段であり目指すべきベクトルが別にあることを共有し、その目的に対して最善の手法を提案する必要性があります。

そして問題はマッサージで気持ち良くしてもらいたい。

このように考えているアスリートに対して

気持ち良い刺激=強い刺激

この相関関係を単純に想起している場合が要注意なのです。

 

自律神経の観点から紐解く

強い刺激であればあるほどに気持ちが良い

もしこれがアスリートの基準になってしまうとどうなるでしょうか?

 

身体の少しの違和感や、軽度の痛みを感じにくくなります。

また、痛みを我慢しやすくなり、痛みの域値が上昇する可能性があります。(強い刺激じゃないと痛みを感じにくくなるということ)

このように常に強い刺激を求めてしまう傾向があるアスリートの中で、常に交感神経優位になっているケースが見受けられます。

疲れやストレスが溜まっている時に、ストレス発散にカラオケで大声を歌ったり、ハードに筋力トレーニングを実施したり。

その時にはすっきりした感じがしても、その後余計に疲れた感覚がある。そんな経験がある方はいるのではないでしょうか?

身体にとって侵害刺激となると交感神経優位になります、これは筋肉でいうと収縮方向へのスイッチがはいる刺激になります。

強いマッサージが目的になってしまうと、結果的にアスリートを交感神経優位にさせ、リカバリー時に重要な副交感神経のスイッチが入りにくい状態になってしまうのです。

 

JARTAで繰り返しお伝えしている、アブレスト能力の考え方とも繋がりますが、収縮と弛緩の幅が狭い筋肉ほど、痛みの域値が高い傾向にあるので、強い刺激を感受しにくく、より強い刺激を求め、交感神経優位になるのでまた収縮傾向に筋肉が変化していく。

 

このような悪循環を呈してしまう可能性があるのです。

 

常に濃い味の食事を取り続けていると、薄味じゃ物足りない。

繊細な味の変化を感じ取れない。

 

これをアスリートの身体に置き換えた時に、リスクを感じないアスリートやスポーツトレーナーはいないと信じたいです。

 

繊細な身体の変化を感じ取れるからこそ、痛みが発生する前の兆候にきづけます。

そして自由自在に身体が操作できる土台が準備できるようになります。

 

アスリートが持っている価値観を否定することなく、強いマッサージを求める際に、一時的には対応してもそのリスクと共にスポーツトレーナーとしては”強くなくても気持ち良い”マッサージやセッションを実施することが求められると考えています。

 

自律神経の観点で説明すると、副交感神経優位になる状態は多くの方が”気持ち良い”と感じている状態とも重なります。

 

ポイントはリラックスできる、刺激がないと感じる程度、リズム刺激。

などになります。

 

施術者の身体がリラックスしていると触れているだけで対象者もリラックスすることができます。

認定コースでは”調和”として触れるだけで硬さが改善していく手法のひとつをご紹介しております。

また”ゆする”という刺激も効果的です。

小さな子供を寝かしつける時にゆったりとしたリズム運動で動かすことがあるのではないでしょうか?

このような副交感神経優位になる刺激は対象者にとって”気持ちよい”と感じる状態になります。

そしてなにより、その後の症状改善やリカバリー機能を向上させる為にも効果的なのです。

 

睡眠時は交感神経優位では深い呼吸が難しくなり睡眠の質が低下し、起床時に疲れがとれていない状態になります。

本来夜間は副交感神経優位になるべきなので、そのスイッチがマッサージやセルフケアで実施できればその後の身体環境を振り返っても、同じような状態を求める為に、その後”強く強く”とは訴えにくくなるのです。

 

長くなりましたが、その場しのぎのマッサージではその時一時的に満足してもらえたとしても中長期的に考えた時にネガティブに働くことも多いです。

常にアスリートに関わるスポーツトレーナー自身が中長期的に捉え、目的を見誤らず、そして強くなくても”気持ち良い”手法を用意することでアスリートの感度を変え、悪循環から脱することができます。

 

もし強くないと気持ち良くない、そのように感じているスポーツトレーナーの皆様がおられたらまずは自身で色々と試してもらうことをお勧めします。

 

きっと新たな自身の身体の可能性に気づけるきっかけになるはずです。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

JARTA公式HP

https://jarta.jp