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2018年03月21日
ハムストリングスの肉離れから選手を守れ
『ピキッ』
走っていた選手がモモ裏を押さえて急に動けなくなる。
それはハムストリングスの肉離れが起きたのかもしれません。
今回はスポーツ現場で頻発するハムストリングスの肉離れについて書いていきます。
関東で活動するJARTA認定スポーツトレーナーの岡元祐樹です。
肉離れとは一般的な呼ばれ方であり、「筋断裂」や「筋挫傷」という外傷が起きている場合に使われる言葉です。
ハムストリングスの肉離れはウォーミングアップやストレッチの不足が主な原因と言われ、受傷すると「ウォーミングアップやストレッチが足りない」の一言で片付けられることが多いです。
しかしハムストリングスの肉離れの原因はもう少し複雑で、予防や再発防止策は個々の状態を見て行われる必要があります。
今回はその受傷原因を『パフォーマンスが低いことによる受傷』と『パフォーマンスが高まってきたことによる受傷』に分けて書いていこうと思います。
【ハムストリングス肉離れのイメージ】
ハムストリングスの肉離れはスポーツ現場でよく見られる怪我の一つです。
よく言われている特徴としては
・ダッシュ等でハムストリングスに急激な負荷がかかる場面に多い
・単独(非接触プレー)で受傷することが多い
・脚の速い選手がなりやすい
・身体が硬い選手がなりやすい
・寒い時期に受傷することが多い
・再発しやすい
などが挙げられます。
受傷すると短くても1~2週はスポーツのプレーは難しく、重症だと手術を要することもあります。
心理面にも悪い影響を与えます。
再発を繰り返している選手には、全力疾走したい時でも「また怪我をするんじゃないか?」という恐怖心が芽生え、パフォーマンスが低下します。
また、完全に治ったと過信することで真の問題点を解決せずにプレーを再開した結果、再発するという選手も多いと思われます。
選手のパフォーマンスアップを図るにあたり、ハムストリングスの肉離れは予防することが絶対であり、仮に受傷したら原因をつきつめて再発予防策をほどこす必要があります。
【パフォーマンスが低いことによる受傷】
ここで言うパフォーマンスが低いというのは、ハムストリングスが本来持っている能力を発揮できていない状態を指します。
ウォーミングアップ不足で本来ハムストリングスが持っている柔軟性や筋力発揮の準備を怠った状態でプレーしたとします。
その状態で急加速などの動きを要求された際、ハムストリングスの収縮力が耐えられず受傷するという構図です。
この構図は一般的な受傷機転として選手や指導者の間で認知されています。
対策としては
・ウォーミングアップの見直し
・ハムストリングスの柔軟性と筋力の向上
などが挙げられます。
ウォーミングアップの見直しは受傷後すぐに考えられそうですが、ハムストリングスの柔軟性と筋力の向上はハムストリングスが治ってからでないと実施できません。
何か他にできることはないのでしょうか?
【パフォーマンスが高まってきたことによる受傷】
この受傷機転はあまり語られることがない話なので、今回紹介しようと思います。
選手が日々のトレーニングやケアによりパフォーマンスが高まってきている過程にあるとします。
こういった選手の場合、ウォーミングアップはしっかり行っており、ハムストリングスの柔軟性も低くないことが多いです。
スポーツにおけるパフォーマンス向上の重要な要素の一つに、スピードの向上(初速や最高速度)があると言えます。
身体操作のレベルを高めたことによりスピードが向上するが、そのことがハムストリングスへの負荷を増大させてしまい受傷に至るという構図です。
ハムストリングスの肉離れとひとくくりにして、このような選手に先ほどと同じ対応をすると、原因の解決にはなっていないため再発のリスクは高いままと言えるでしょう。
せっかく高めたスピードなのですから、ハムストリングスに負荷が集中しないような身体環境を整える必要があります。
【受傷してしまった選手を受傷前の120%の状態で復帰させるために】
ハムストリングスの柔軟性と筋力が大事なのはその通りです。
しかしプレースピードが速くなるに連れて重要になってくるのが
「トップスピードでプレーしてもハムストリングスの負荷が極力増えないようにするにはどうすればいいのか?」
という視点です。
様々な要素がありますが、今回は『仙腸関節』と『腰椎椎間関節』の柔軟性を高めることをオススメしたいと思います。
(青:仙腸関節 赤:腰椎椎間関節)
この関節はちょうど身体の中心部分に位置し、上半身の動きを下半身に伝えるのに重要な役割を果たします。
この関節が硬いと上半身の腕振り等で得られた推進力を下半身に伝えることが難しくなります。
すると下半身は下半身だけで推進力を作り出す必要が生じ、その役割を担うハムストリングスの負荷が増えてしまいます。
また、この関節が硬いことで『股関節』が単独で動かなくてはならない範囲が増えてしまいます。
頑固で動かない関節があると、比較的動きやすい近くの関節が無理に動かされるということです。
ハムストリングスの上部線維は股関節の伸展(脚を後ろに蹴りだす方向)の動きを行う筋肉なので、股関節の可動範囲が無理に拡大すると当然筋肉に負担はかかります。
以上の理由からハイスピードを実現しつつハムストリングスへの負荷の集中を防ぐために、仙腸関節と腰椎椎間関節の柔軟性は重要になってきます。
やっかいなことにこの部分は『拘束腰芯』と呼ばれ、人体でも硬くなりやすい部位であると言われています。
柔軟性を向上させるためのストレッチには様々な種類のものがありますが、今回はJARTAでもベーシックセミナーの段階からお伝えしているストレッチを紹介します。
大腰筋T-レフストレッチ
写真のように座ってみぞおちを指で軽く圧迫しつつ背中を丸めます。
手をついている方向に身体を捻ります。
捻りきったところで深呼吸を2回ほど入れると効果的です。
本来この大腰筋のT-レフストレッチは体幹~股関節を繋ぐ大腰筋に刺激を入れるための物です。
しかし大腰筋は胸腰椎から仙腸関節をまたいで股関節に付着する筋であるため、仙腸関節や腰椎椎間関節の柔軟性も高まる効果が期待できます。
ハムストリングスが肉離れした状態でも比較的実施しやすいストレッチです。
※疼痛が強い状態では無理に行わないでください。
大腰筋T-レフストレッチの詳しい紹介の記事はこちら → https://jarta.jp/news/4899/
ハムストリングスの肉離れに悩む選手が一人でも減りますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
大腰筋T-レフストレッチは『認定スポーツトレーナーコース』のベーシックで習得できます。
→ https://jarta.jp/j-seminar/course/
スポーツでのハイスピード実現には上半身操作に向上の鍵があります。今回の記事に興味がある方は『サッカー上半身トレーニングセミナー』の受講をオススメします。
→ https://jarta.jp/j-seminar/soccer/