「倒立」を使っての機能評価、トレーニングの意味とは

スポーツ動作において、「倒立」を必要とする競技は非常に稀です。
体操競技やダンス以外ではなかなかみられないのではないでしょうか。

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トレーニングとして、取り入れることが多い競技もありますが、競技によっては体育の授業ぐらいでしか経験していない選手が多いのが現状かと思います。

倒立自体は、運動構造を考えるとこちらの意図する目的や方法次第で、非常に有効な評価・トレーニングになります。
JARTA認定講師の高塚政徳です。

以前、私がサポートしていたチームで、倒立を選手たちにやってもらいました。

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「逆立ちで10m歩こう」という指示をした結果、高校生50名中、2名しかできませんでした。それ以外の選手では、勢いではなく重心をコントロールしながら前に進めていた選手はほとんどいませんでした。

 

この結果は年代や競技、チームによって、差は出てくると思います。想像以上に、この課題ができなかった原因について考えてみました。

 

身体機能:脊柱−肩甲帯を中心とした上半身の機能低下

 

特に脊柱−肩甲帯周囲が適切に機能しない場合、頚部〜背部、僧帽筋上部や三角筋など表層の筋が過緊張になり、肩が十分に屈曲せず、重心がうまくのらないことで腰が引けた状態なるか、逆に脊柱の伸展が強くなり過ぎてしまいます。

 

胸椎・胸郭の伸展に伴って肩甲骨の上方回旋が出ているかがポイントになります。

 

要するに、無理なくきれいにバンザイができているか。

 

肩がすくんだ状態でしか、重さを支えることができない場合は過負荷になっている可能性があるため、局所の機能低下の問題を解決する必要があります。

 

認識力:重心を捉えられていない

立位時と同様、支持基底面内に重心を落とさなければ、姿勢を保持することができません。

 

通常の立位から、両上肢に荷重をかけて行く際に十分に重心を認識していなければ重心移動が大きすぎて倒れる、もしくは小さすぎて脚があがらないということになります。

 

JARTAでお伝えしている内的認識力の部分です。

 

重心を認識・コントロールしながら、徐々に上肢に荷重をかけていきます。

 

静止した状態から前に進むためには、重心を必要な分だけズラしながら片手支持にしていく必要があるため、より高度な重心コントロールが必要になります。

 

 

意識:適切な動作のイメージが出来ていない

 

立位保持や歩行時にも筋機能に頼り過ぎないことが、ハイパフォーマンスの前提条件になってくるのはJARTA のセミナーでもお伝えしています。

 

「上肢で体の重さを支えなければいけない」と考えた瞬間に、ほとんどの選手は力任せになってしまいます。

 

立位(下肢)の場合とは若干異なるかもしれませんが、基本的には倒立の場合も意識する部分は筋性支持ではなく、骨性支持です。

また、脚が上から引っ張られるように意識(天芯)を持つことで重心の位置も整い感覚的に上肢の負担も軽くなることが期待できます。

 

 

今回は、細かい指示はせずに実施しました。

結果的に、姿勢や動きが崩れていることに気づかない(そもそも機能が破綻していてできない選手も多い可能性)、力任せ、反動を使ってしまう、という現象が起きており、まさにトレーニングのラフ化といえる状況で行われていたわけです。

 

※ ラフとは、目的達成のためになりふり構わず、力任せに行う動きを指す。不必要な部分に余計な力が入るため、動作効率が下がり、疲労しやすく精度も低下しやすい。相対する言葉はレフ。より繊細な状態での動きであり、必要な箇所を、適切な出力で使うことが可能となるため運動効率・精度が上がる。

 

ほとんどのスポーツで、倒立をするシチュエーションは皆無ですが、単に10m逆立ちして歩ければいいという認識で行っていてはこのトレーニングは非常にもったいないです。

 

JARTAで重要視しているのはトレーニングをレフ化すること

 

非常にラフ化しやすい状況(上肢のみで重心をコントロールしなければいけない不安定下)の中で、自らの体に意識を向け(内的認識力)、適切な姿勢を保ち、重心をコントロールしながら前に進むという複数の課題を並立的に遂行する能力(アブレスト能力)を高める意図を与えることで、同じ方法でもより効果的なトレーニングに発展させることができます。

 

(私自身が倒立を実施し鍛錬している模様です)

倒立自体は、最初は思った以上に、苦戦する選手は多いはずです。

 

安全面さえクリアできれば、評価にもトレーニングにも使えます。
まずは、ご自身や周りの選手に試してみて下さい。

ケガのリスクもあるため、周囲の環境設定やバランスを崩した際の着地方法の指導などは徹底して行って下さい。

 

倒立の前段階として導入すべきセンタリングトレーニングとして、「クレーン」がおすすめです。

最後までお読みいただきありがとうございました。