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2019年10月02日

チームにとっての休憩時間とは?

文:岡元祐樹

 
スポーツトレーナーとして様々な競技やチームをサポートしていると、それぞれに違いを感じることがある。
 
その違いの中の1つに『休憩時間の過ごし方』というのがある。
 
フィジカルトレーニングを行い、その間に5分なり10分なり少しまとまった休憩時間を設けたとする。
 
その時間、座って飲水しながら休んだり、ボールを使った個人練習をしたり、チームメイト同士でコミュニケーションを取ったりとチームによって休憩時間の使い方がまちまちなのだ。
 
個人ではなくチームに対してトレーニングメニューを構成する際、そのチームが休憩時間をどう過ごすのかを観察することは重要である。
 
それによってトレーニングの構成をその場でより良い方向に微調整するためだ。
 

 

休憩時間が必要な理由

先日、ある高校のバスケットボールチームのトレーニングサポートを行った。
 
JARTAのトレーナーとしてチームのトレーニングを実施する際、トレーニングの時間はおおよそ90分間というのが1つの目安である。
 
では90分間ずっと休みなくトレーニングをするのかというとそんなことはない。シチュエーションによって異なるが、間に休憩時間が入る。
 
そもそも休憩とは動きの質や集中力を持続させる上で必要なものである。
 
運動強度により休憩時間というのは何分ぐらいがいいのかというのは研究により明らかになってきている。
 
例えばウエイトトレーニングでは、セット間で3〜5分という長めの休憩時間を取ることによって負荷量や反復回数を高めることができ、より大きな最大筋力向上効果が望めると言われている。
 
また脳疲労の観点からも休憩時間は重要である。持続的な運動により、脳内のエネルギーとなる脳グリコーゲンが減少することが報告されているからだ。
 
休憩する時間やその意味は様々な研究によって明らかになってきている。
 
そのためトレーニング内容によって休憩時間の過ごし方もトレーナーがしっかりと決めるのが大事。
 
ということを言いたいのではない。
 
今回トレーニングを行った高校バスケットボールチームは、トレーニングの間の休憩時間にシューティング練習を全員が行っていた。
 
一瞬、「次のトレーニングがあるから休むように」と言おうとしたが、チーム背景を考慮して言うのを止めた。
 
このチームは学校の体育館が改修工事のために使えず、他校や公共施設を借りながら活動していた。
 
つまり、バスケットコートを使った練習時間に限りがあるのだ。
 
「せっかくバスケットコートが使えるから休憩の間くらいシューティングがしたい」という選手の心の声が聞こえたような気がして、次のトレーニングの構成を少し変えることにした。
 

 

チームの色にまで介入しない

例えば、休憩時間は体力回復のために喋らないでストレッチをしながら休もうとトレーナーが指示したとする。
 
するとそれは休憩ではなくトレーニングの延長であるような印象を与え、選手にとっては精神的ストレスを溜めてしまうことになりかねない。
 
休憩時間とはトレーニングの中で指導者から一時的にではあるが解放される時間である。言い換えるとチームや個人としての色が出る時間でもある。
 
「今日はフィジカルトレーニングだけだから少しでもいいからボールを触りたい」
 
「次のトレーニングもきつそうだからしっかり休んでおこう」
 
「早く終わらないかな」
 
トレーニング中とはまた違った内面が顔を出すことがある。その結果が休憩時間中の行動として現れると言えるのではないだろうか。
 
そうであるならば、休憩時間の過ごし方を観察し、休憩明けのトレーニングの構成を考えておく方がトレーナーとしては効果的かもしれない。
 
例えば、動いている選手が多い場合はトレーニングの説明を丁寧に行い、実際に動く時間は集中力を考慮して短めに設定する。座って休んでいる選手が多い場合は少しずつ心拍数を上げていくような構成にする。つまらなそうにしている選手が多ければ、トレーニングをゲーム化や競争化することで盛り上げる。
 
チームや選手の色にはあまり介入せず、その色に合わせてトレーニングの構成を変化させていくのだ。
 
もちろん、最終的にはこういうチームの色になってほしいという監督やコーチの意向も考慮する必要はある。その結果、長期的に見て選手達の休憩時間の過ごし方を良い方向に導ければ最高である。
 

準備はどこまでやっても完璧にはならない

トレーニングを立案し指導する際、自分が理想と想う流れでトレーニングを進めたい。
 
その理想形はあっても構わないが、チームは生き物であり、選手たちの内面を汲み取る努力も怠ってはいけない。
 
休憩時間はそんな選手たちの内面を垣間見ることのできる貴重な時間でもあると筆者は考えている。
 
休憩中は休憩の仕方にあれこれ口を出すことはせず、選手達の過ごし方を観察し、その後のトレーニング内容を自在に変化させられる能力も必要ではないだろうか。
 
もちろん、選手個人個人で「休憩時間でこういうことをやっておくといいよ」という指導があっても良い。
 
自分の型に選手を嵌めず、比較的自由度のある休憩時間に、新たな気付きを得られれば儲けものである。
 
そしてそこから臨機応変にトレーニングの構成を変化させることができるかどうか。
 
結局はそこまでを想定に入れた準備と引き出しが必要になってくるのだ。
 
研鑚を止めることはできない。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

 
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