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2018年11月22日
正しいフォームは選手のためではなくトレーナーのため
「そんなフォームだと怪我するぞ!」
「しっかり正しいフォームでトレーニングしよう!」
正しいフォームでトレーニングをする。
そのことを大事にしているスポーツトレーナー(以下トレーナー)は多いのではないでしょうか?
理由としては
・正しいフォームでトレーニングを行うことでトレーニングの効率が良くなる
・正しいフォームでトレーニングを行うことでトレーニングによる怪我を防げる
などが挙げられると思います。
現在あらゆるトレーニング方法があり、それらはインターネット等を利用すれば動画や画像で解説を見聞きしながら行うことができるようになっています。
非常に便利です。
しかしこの便利さの副作用として
『選手を正しいフォームに当てはめる』
ことがトレーニングの目的になってしまうことが多々あります。
関東で活動するJARTA認定スポーツトレーナーの岡元祐樹です。
今回は『選手を正しいフォームに導く』というよりは
『正しいフォームから、トレーナーの提供するトレーニングをレベルアップする』
という視点でお伝えしていきます。
【どのような力源で行うか?】
正しいフォームとはなんのために存在するのか?
自分は、選手のためだと以前は思っていましたが、現在はトレーナーの思考を深めるためにあるという側面も考えるようになりました。
競技やトレーニングで行われる『動き』には必ず複数の『力源』があります。
筋力ももちろんそうですし、重力、慣性、摩擦力、床反力、空気抵抗など様々な要素が挙げられます。
正しいフォームについてトレーナーが考えると『正しいフォームで行うにはどういった力源が必要か?』という思考まで進む必要があります。
それぞれの競技特性とも言える力源を把握し、そこからトレーニングを考えると、理想と言えるフォームが見えてくるからです。
そのフォームはインターネット上にある解説とは少し異なるかもしれません。
例えばスクワットによる下半身の筋力トレーニング。
「重心を下げていく時、膝がつま先より出ないようにする」
と一般的には言われています。
これはハムストリングスや臀部の筋肉を鍛えるための動作指導です。
ハムストリングスや臀部の筋肉はダッシュやジャンプに重要な筋肉であるため、スクワットでそれらの筋力を向上したいのであれば上記のような指導になります。
しかし逆に、大腿四頭筋によるブレーキ動作を強化したいというニーズがあった場合はどうでしょうか?
上記の指導方法とは少しフォームが異なってきます。
正しいフォームはトレーニングの目的によって変化し得るのです。
指導者がそのような柔軟な思考でないと、選手を正しいとされるフォームに当てはめ、トレーニングと競技特性を乖離させることになります。
正しいフォームにとらわれ過ぎて、パフォーマンスが向上しないということです。
【そのトレーニングで選手はどんな動きをするのか?】
とは言え、正しいフォームを知っているというのは重要なことです。
そのメリットとして
『目の前の選手が正しいフォームでトレーニングを行えない理由はなんなのか?』
と思考を進めることができるからです。
先程の力源の話と絡めると、何かしらの力源が作用していないと言えます。
その状態でトレーニングを積み重ねても、パフォーマンスアップという目的は達成しづらいでしょう。
美味しいチキンカレーを作ろうとカレーを煮込んでいるのに、一番重要なチキンがないような状態です。
このような状態の時は難易度の変更を行います。
目的となる力源を使いやすくするようにトレーニングの難易度を下げるのです。
ウエイトトレーニングであれば重りの重さを下げるとか、スクワットであれば浅めに行うとかです。
モチベーションの問題で集中力が低下している可能性もあります。
そのような時はゲーム形式にして楽しみながらできるように工夫するのも手段の1つです。
【大事なことは面倒くさい】
正しいフォームを知っている、定義できるというのはとても大事なことです。
正しいフォームを基礎知識として持っているからこそ、その先に進むことができます。
競技の動きはどのような力源を使うのが望ましいのか?
その力源を高めるためのトレーニングはどういった物が望ましいのか?
そのトレーニングを行った時の選手の反応や動きはどうなのか?
そこからトレーニングの難易度を変化させ、選手により良いトレーニングを提供することができるのか?
トレーニングの内容を考えるトレーナーには、こういった思考が必要になってきます。
正しいフォームはトレーニングを行う選手のためにありますが、トレーナーが選手をレベルアップさせるための鍛錬にも用いることができるのです。
この文章を書いている自分でも「これを全部考えるのは面倒だな」と少し思ってしまいます。
しかし以前テレビで、スタジオジブリの監督・アニメーターであった宮崎駿氏がこう言っていました。
「本当に作品に大事なことは、面倒くさい作業の中にある」
スポーツに関わる人が、スポーツによって得られるものはなんなのか?
自分は、大事なものを見失わず努力の先に成長していく姿勢だと想っています。
選手が本当に大事なものを得られるように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
トレーニングがどのようなフォームで行われるのが正しいのか?
あらゆるスポーツ動作の力源となり得るものはなんなのか?
JARTAでは選手に可能な限り最高のトレーニングを提供するために、あらゆる要素をセミナーでお伝えしています。
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