トレーナーがチームバランスを崩す

団体競技においても個人競技においても、そこに「人」が存在する限り、ハイパフォーマンスを実現する上で、もはや個人だけの戦いでは解決できません。

では、トレーナーはどうして目の前の選手のパフォーマンスだけを見ているだけではダメなのでしょうか?

 

これを理解することによってあなたは、「選手・チームの勝利になくてはならない存在」になることが出来ます。

今回は、あえてネガティブな事例を通して、そこから「トレーナーが持たなくては行けない視点」を学んでいきます。

 

北海道のJARTA認定スポーツトレーナーの犬尾です。

 

前回の話から、チームのハイパフォーマンスを実現する上では、「要素主義」ではなく「関係主義」の考え方が必要でした。

参照) スポーツパフォーマンスをあげる3つの要素

 

「関係主義」を使うためには、ハイパフォーマンス実現に必要な「要素」を分解・理解し、それぞれの関係性が頭の中で繋がっている必要があります。

従来、トレーナーの役割とは、選手のフィジカル・メンタルなどパフォーマンスアップを実現するために存在しますよね。

ですが、陥りがちなのが「目の前のことだけに集中してしまう」ことです。

選手のフィジカルが強くなり、個人のパフォーマンスが良くなれば、チームは勝利する訳ではありません。

 

事例

ある野球選手Aさんが、もっとパフォーマンスをアップさせたいとチームの練習以外に、プライベートでパーソナルトレーニングを始めました。

もちろん、そのAさんが元々所属する野球チームには1名トレーナーが配属されています。

 

しかし、チーム内には選手がたくさんいるため、チームで1人のトレーナーに見てもらう時間は限られています。

そのため、Aさんはプライベートでしっかりと見てくれるパーソナルトレーナーを探したのです。

 

パーソナルトレーナーは、Aさんのフィジカルを劇的に向上させ、Aさんの信頼も絶大に高まりました。

Aさんは、そのパーソナルトレーナーの言うことを信用するように、チームのトレーナーの言うことはあまり信用しなくなりました。

 

やがてAさんは、チーム内での練習では、チームのトレーナーが考案したトレーニングをどこか無意識的に、テキトーにこなすようになりました。

それからチーム内で選手同士の会話で、Aさんは「このトレーニングは、意味ない」などと批判するようになったのです。

 

トレーナーがチームバランスを崩す

 

そうなることによって、他の選手にも影響が出始め、全体的に練習の質が下がり始めました。

結果的に、チーム全体の練習とトレーニングの質が下がりました。

 

監督も、パーソナルトレーナーの存在を知らないために、どこで問題が生じたのかを把握することが出来ずに、選手の「練習の質」が下がったことだけに目を向けました。

やむ終えず、選手達のトレーニングを向上させるために、「体制・管理・規制」を強化せざるを得ませんでした。

 

「管理・体制」を強化するということは、不満・不信を呼びます。

Aさんは個人的な実力は向上したにも関わらず、結果的に、チームは試合の時に「なぜか上手く行かない」「勝てない」という事態に陥ったそうです。

これは、私がオリンピックにも帯同するメンタルコーチに話を聞きにいった時に教えてくれた実話です。

 

トレーナーが全体像を把握できていなかった

こう全体像を見ると、色々な問題点が浮き彫りになってきますが、その中で「パーソナルトレーナーが自分の担当する目の前の選手のパフォーマンスアップしか見ていなかった」ことが一因として挙げられます。

もし、このパーソナルトレーナーがチームの全体像も把握して考えることが出来ていたら、Aさんに対する言動・行動、アプローチ方法は変わっていたはずです。

 

また、チーム専属トレーナーも、もし選手一人一人の理解や信頼関係を築いていたら、パーソナルトレーナーの存在にも気付いたり、何か戦略やアプローチ方法は変わっていたはずです。

つまりトレーナーが選手と関わるということにおいて、チームパフォーマンスの関係主義的把握を出来ているかどうかは、「結果に大きく左右する」ということです。

 

次回は「良いチーム」と「悪いチーム」は何が違うのかを要素分解、比較します。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。