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2019年06月20日

ストレッチはさらに奥まで


 

文:岡元祐樹

 
 
「ヒラメ筋を単独で痛めることがあるんだ」
 
そんな経験をしました。フットサルをしていたら、ふくらはぎに痛みが走ったのです。
 
膝関節を伸展したまま足関節を背屈しても痛みはない。膝関節を屈曲して足関節をさらに背屈させるとふくらはぎに痛みが生じる。
 
腓腹筋ではなくヒラメ筋を単独で痛めたことが推察されます。幸い走ったりできる程度の痛みだったので2~3日で回復しました。
 
日頃からトレーニングをし、運動前のウォーミングアップをしていても、このようなことは大なり小なり起きてしまいます。
 
なぜこのような痛みが生じてしまったのか?
何か見落としていることがあるのではないか?
 
よくよく考えると、素早い動き出しにヒラメ筋の機能が重要であること。そして今回の痛みは防ぐことができたものであることがわかりました。
 
 

ヒラメ筋、ストレッチしていますか?

 
一般的にふくらはぎと呼ばれる部位の筋肉は下腿三頭筋という筋肉です。この筋肉は腓腹筋(内側頭・外側頭)とヒラメ筋の3つの筋肉で構成されています。
 
この筋肉を運動で痛めた場合、「準備運動不足、ストレッチ不足」と言われてしまいます。そこで『アキレス腱伸ばし』と呼ばれる下腿三頭筋のストレッチが準備運動として広く普及しています。運動前に実施されている方も多いのではないでしょうか?

 
アキレス腱伸ばしのストレッチの多くは膝関節伸展位で行われることが多い印象があります。そういった手本が多く、その方が下腿三頭筋を伸長している感じが強いからではないかと思います。
 
しかしもうお気づきとは思いますが、これだと腓腹筋は伸長されていますが、ヒラメ筋はしっかりと伸長されていない可能性があります。
膝関節屈曲位で足関節を背屈し、ヒラメ筋もしっかり伸長した方が動きの質は向上します。しかも運動前ではなく、日常的に行っておくべきです。
 

※ヒラメ筋ストレッチの一例
 
なぜそこまでヒラメ筋にこだわるのか?
その理由は素早い動き出しに関係します。ヒラメ筋の硬さによる足関節の背屈制限が、前方への動き出しを邪魔するのです。
 
前方への動き出しは、重心の前方移動がスムーズに行わなければなりません。足関節の動きで言うと背屈運動がスムーズに行われる必要があります。
 
加えて、素早く動き出すためには重心の落下運動が伴います。直立位より重心位置が低くなっていくということです。
そのため足関節の背屈と同時に膝関節は屈曲していく状況になることが多くなります。その場合、足関節背屈の制限因子は腓腹筋よりヒラメ筋の方が相対的な比率が高まります。
 
足関節の背屈運動を制限する因子は様々ですが、選手自身でもケアしやすい下腿三頭筋の柔軟性はしっかり確保しておくべきです。
その中でもストレッチが不十分になりがちなヒラメ筋に目を向けることが、パフォーマンスアップに繋がるヒントになるかもしれません。
 
 

姿勢制御に関わるヒラメ筋

 
ヒラメ筋をストレッチする。
 
しかも日常的にストレッチを行っておく理由がもう1つあります。それはヒラメ筋が立位の姿勢制御に関わっている筋肉であるということです。
 
姿勢制御というのは、立っている状態を維持する、バランスを保つための機能が働いているということです。その際にヒラメ筋が収縮~弛緩を無意識的に調整し足関節で立位のバランスをとっています。
 
人によって立ち方や立つ頻度に差はあるものの、ヒラメ筋は知らず知らずのうちに使われることが多い筋肉であると言えます。
 
言い換えると気付かないうちに疲労が蓄積したり、硬くなってしまう可能性がある筋肉でもあります。
 
そうなると、競技前の準備運動だけで競技に必要なヒラメ筋の柔軟性を確保するのは困難であると言えます。日常のちょっとした空き時間にストレッチをしておく方が効果的です。
 
筆者は自身のトレーニングを重ねるにつれて、「自分は前方重心傾向だな」と感じるようになりました。
 
前方重心とは足裏で言うとつま先の方に体重がかかっている状態です。このことは姿勢制御のために下腿三頭筋を頻繁に使うことに繋がります。
つまり下腿三頭筋が硬くなりやすい状態ということです。
そのため、運動前には腓腹筋のストレッチは充分に行っているつもりでした。しかしヒラメ筋に関しては詰めが甘かったと言わざるを得ないでしょう。
 
その結果、ダッシュを繰り返すフットサルという競技中に、ヒラメ筋を痛めてしまったのではないかと推察しています。
重心落下を利用した動き出しはできてはいたが、そのためのヒラメ筋の機能が不十分だったために痛みが出てしまったということです。
 
 

習慣になっているならチャンス

 
柔軟性の話を中心に書いてきましたが、収縮力が必要ないと言っているのではありません。
 
ヒラメ筋も腓腹筋と同様にダッシュの最後の一蹴り、ジャンプへの関わり(跳ぶ時や着地時の収縮)、ブレーキとしての作用など強い収縮力が必要なタイミングがあります。
収縮力も高めつつ、必要な時は弛緩して関節の可動域を使えるという収縮と弛緩の幅を持たせることで、スポーツのパフォーマンスは向上に向かいます。
 
もうアキレス腱伸ばしが習慣になっている選手は比較的多いのではないでしょうか?
 
それなら比較的伸長感の強い腓腹筋のストレッチだけで満足せず、身体を動き出しやすくするためにヒラメ筋のストレッチは有効です。
 
ヒラメ筋は立っているだけで硬くなる要因を抱えています。だとすると、スポーツ選手にとって他者と差をつけるチャンスだとも言えます。
 
スポーツ選手として伸びるために、伸ばせるところは伸ばすようにしていきましょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

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