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2014年02月25日

トレーニングに科学的根拠は本当に必要か?

医療やトレーニングの現場では「科学的根拠が全て」と言われていますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
トレーニングに科学的根拠は本当に必要か?51
今回のテーマは「人間の運動と科学的研究」です。
科学的根拠。この言葉は、現代のスポーツ科学分野では非常に重みがあります。この分野では「科学的根拠が全て」と位置づけされているぐらいです。
 
しかし私は基本的には「科学的根拠がある」からといって、それが絶対的に正しいとは考えませんし、それを理由やその理論を信用することはしません。
 
今回ここからお話する内容は、あくまで「現場レベルでの話」です。学術的なフィールドでの科学的根拠は、非常に重要だと考えています。
この視点は、それぞれの目的により「重要とするものの基準が異なる」ということを、踏まえた上での記述であることをご理解ください。
 

スポーツ現場で科学的根拠を盲信しない

では「何を信用するの?」ってなりますよね。
私が信用するのは、選手本人に起こる「変化」と「結果」です。
 
もちろん、運動を階層で捉える意味で1〜3次姿勢、体軸、可動域など、ハイパフォーマンスを実現するための前提条件となる部分に関しては必ず押さえます。
その上で、「痛みがとれた」「すごく動けるようになった」など、選手本人が感じる変化を最重要視します。
 
私たちが対象とする相手には、まったく同じ身体・精神・意識の人なんて絶対に存在しないのですから、統計学的データ(過去のデータ、しかも他人の)は参考程度にしかならないはずです。
身体の状態なんて毎日どころか常に変化し続けますから。
 
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その前に、そもそも「科学的根拠」とは何なのでしょうか。
運動に関する研究をされたことがある方はわかるかと思いますが、この類いの研究はほとんどの場合、条件設定を非常に緻密に行います。
 
たとえば、大腿四頭筋の研究では体幹の要素を取り除くために、体幹部を固定したりします。
なぜなら、対象とする筋以外(ちょっとした姿勢の変化、その日の体調、精神的状態など多々)の要素が入ることで、筋の出力は簡単に変化し、非常に流動的になってしまうからです。
 
たしかに多くの方法論では「対象とする筋」だけの性質を調査するには適していると思います。
しかし多くの場合、その結果や理論を「実際の運動」にまで持ち込み、「この運動を向上させるためには、この筋肉を鍛えましょう。だって研究で関係が証明されたから。」のように言われます。
 
このような前提に基づいて構成されているのが、現在の「科学的トレーニング」です。
 
現在主流となっているスポーツトレーニング理論では、この「条件設定された中での局所的な部位の研究」と「実際の運動」と混同してしまっていることに最大の問題があります。
人間の運動は、そんな単純に考えられるものではありません。
 
人間の運動は、もっと複雑で様々な要素が空間的・時間的に関係し合い、非常に同時並列的に行われます。
姿勢や、精神状態や身体意識、記憶、栄養や気候、視線などちょっとした変化だけで、筋出力なんて簡単に変化します。それほど人間の運動はとても複雑で流動的なものです。
 
私はそれらの要素の関係性を統合して、高いパフォーマンスを再現できるようにしていくのが本来のトレーニングと考えています。
先に述べたように、科学的研究では「流動的な要素」は排除します。
 
もう一度言います。人間の運動は、単純に考えるべきではありません。
 
身体の研究というものは、ポジショニングなど非常に限定された条件設定のもとで行われ、少し条件を変えるとすぐに違う結果が生まれます。
実際の運動は、非常に多くの要因が関係しており、「AのときにはBになる」と断定できるものではありません。
あくまで謙虚に、「現時点では、この運動にこの筋肉が関係している可能性が高い」程度に捉えるべきだと思います。
 

まとめ

トレーニングと科学的根拠についてお話してきました。
私たちが関わる相手は、この世に一人しかいない人です。統計データや科学的根拠が相手ではありません。
 
「この世に一人しかいない相手の状態」をしっかり捉え、さまざまな要素の関係性の中で、問題の解決の手助けをしてゆく。
私はそう在りたいと思っています。
 
現在「科学的に効果があることが証明されている」という理由で多くの現場で取り入れられている筋力トレーニングの方法で、本当にパフォーマンスが向上しているのでしょうか。
今一度、考えてみて下さい。
 
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