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2016年12月30日

ひとつのトレーニングから100の効果を得る方法

病院などで高齢者のリハビリテーションに関わりながら、スポーツトレーナーとしても活動している方は多いのではないでしょうか?
 
もしかしたら、高齢者の日常生活動作獲得のためのトレーニングとスポーツ選手のトレーニングを全く別物として考えていませんか?
 
スポーツ選手の行うトレーニングは高齢者には適さない…。
そもそも目的が違うのではないか…。
などと考え全く別物として考えているとしたらもったいないことです。

年齢や対象にかかわらず、トレーニングによって得られるパフォーマンスを理解し応用することで、様々な事例に対応することが可能となります。
 
今回は高齢者の日常生活動作のパフォーマンスアップに、JARTAセンタリングトレーニングの一つであるペルビックスライドを応用した事例からそれを証明していきます。
 
JARTA認定講師の松田純一です。
 

【センタリングトレーニング ペルビックスライドとは】

JARTAのセミナーをアドバンス3まで受講された方はご存知だと思いますが、ペルビックスライドというトレーニングが存在します。


 
このトレーニングの目的は大きく3つあります。
①骨盤帯のスライドの意識と動きを向上
②股関節の捉え
③大腰筋の意識と活動促進
これらが促通されることで、スポーツ動作ではラグビーなどのタックル、バスケのフェイント、野球の投球やバッティングなどの動作においてパフォーマンスの向上が期待できます。
 

【トレーニングの応用】

ではこのトレーニングが高齢者の運動療法として、どのように応用できるのかを考えてみましょう。もちろん動画のようにそのまま行うことは困難なので、ポジションを変更したり動きを誘導することは必要です。
 
今回のブログで一番考えていただきたいのがこの部分です。トレーニングの本質を理解し、応用していく思考を育てる部分です。
 
日常生活でペルビックスライドに似た動作を目にすることはないでしょうか?
 
椅子の座り直しがそうです。
 
姿勢を整えるため、椅子に浅く座った状態から深く坐り直すことは日常生活のなかで何度も繰り返されます。
 
この坐り直しには大きく二通りの方法があり、そのうち一つがペルビックスライドを応用できます。
 
ペルビックスライドを応用する方法がこちらです。
 


 
殿部にかかっている重さを左右の股関節へ交互に乗せていき、殿部を片方ずつ深く坐り直していきます。
実はこの時に前述した①~③の動作がしっかり促通されていると、大きく身体を動かし強い筋力を発揮せずとも座り直しが可能となります。フィジカルの強化というよりは”動きの質”を改善しています。
 
もう一つの座り直しの方法は、殿部にかかっている重さを足部へ移し、浮いた殿部を一気に深く坐り直す方法です。
 

 
この方法は素早く座り直すことができますが、動きが大きくなり強い筋力が必要なため、筋力の低下した高齢者では困難な場合もあります。いわゆる”フィジカルの差”が動作成功の大きな要因になります。
 

【ひとつのトレーニングから100の効果 】

ペルビックスライドを応用し、高齢者の座り直しが上達すると、その他の動作もパフォーマンスアップします。
 
例えば…
・坐位から立位への立ち上がりが楽に行える(股関節の捉え↑)
・歩行速度の上昇(大腰筋の活動が促進)
・転倒のリスク低下(骨盤帯の動きが向上し運動の幅が広がる)   等々。
 
このようにペルビックスライドが座り直しに応用できるだけでなく、様々な動作のパフォーマンスアップへと繋がっていきます。一つのトレーニングを応用することで、様々な効果を期待できます。
 

【まとめ】

今回、高齢者の座り直しを例にして、トレーニングを応用し様々な事例に対応していくことを紹介しました。「このトレーニングはこのパターンに適応される」というように固まった思考でいるとトレーニングのメニューばかり増えてしまい応用が効かなくなります。
また、普段スポーツ選手に関わることか少ない方でも、このような視点をもつことでトレーニングを活用することはいくらでも可能です。いざスポーツ選手を目の前にした時のためにも、普段から全ての人のパフォーマンスアップを考えていきましょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。