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2016年06月09日

サイドステップの運動構造分析とアシストトレーニング

シーズン前ですが、名古屋大学女子ラクロス部のミィーティングに参加してまいりました。
 
東海地区認定スポーツトレーナーの田中紀行です。

本格的なトレーニング時期に入る前にという事で、ケガ予防、疲労の取り方、ストレッチの方法等の基本的な講習をさせていただきました。
その際に、選手から「サイドステップのトレーニングのこつを指導してほしい」との要望があったので、今回は、サイドステップの運動構造分析とアシストトレーニングについて考えたいと思います。
 
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【間違ったサイドステップの認識】

多くの選手に共通していたサイドステップの認識は、例えば、右にステップする場合、左側を支持脚でしっかり地面を蹴るという事でした。
地面を蹴るという認識は、右にステップするのに対し反対方向の左に一旦重心を移動して左脚母趾球に体重を乗せてから蹴るという作業になります。
 
この一連の動作では、過剰に筋力を使ったサイドステップになってしまいます。
脚で蹴ることで動き出しが早い気持ちになりますが、進行方向に対して反対の重心移動が発生するため、実際の移動速度としては遅くなります。
また、蹴り脚に対しての負担が大きくなるため、繰り返しトレーニングすることでアキレス腱炎などの故障にも繋がりかねません。
 

【理想的なサイドステップの運動構造】

では、実際にどのようなトレーニングをしたら良いのかを運動構造を分解して考えたいと思います。
右へのサイドステップ

  • リラックスした構え(踵に重心を置き過剰な筋力を使わない)
  • 右脚を抜重(右方向側に落ちる、膝を抜くイメージ)
  • 右側への重心移動が始まり、重心線が支持基底面を超えるとステップ動作が起こる
  • 重心移動が大きくなり、右脚のステップと同時に、左脚で地面をプッシュする動作が起こる。
  • 左脚は伸張された大腰筋の作用で反射的に引き寄せてくる
  • 構えの位置に戻る

ポイントになるのは、脚の抜重と地面のプッシュの後に、脚を引き寄せてくる点です。蹴る意識を強くするのではなく、いかにリロード(元の構えの位置にもどる)できるかです。また、サイドステップの場合上下の重心移動は最小限が望ましく、構えの時点では常に股関節をしっかりと捉えている必要があります。
 
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【サイドステップに必要なアシストトレーニングとは?】

サイドステップの練習をより効率的にできるために、運動構造で分解した各要素を含んだアシストトレーニングを行います。その中の一例をお書きしたいと思います。
◆リラックスした構え・大腰筋の作用
大腰筋T-レフストレッチ
大腰筋はセンター形成に必要な最重要筋であり、素早い引き寄せにも必須です。
 
◆右側を抜重の意識を育てる
開側芯(高岡英夫氏提唱)、カットフォール(JARTAセンタリングトレーニング)
脱力した立ち位置から、素早くその場にしゃがみ込むトレーニングをしてみてください。
重要なのは股関節の中心を捉えること、重力を感じて膝を抜く意識を持つことです。
 
◆内外側のラインを利かす
インサイド・アウトサイドジンブレイド(高岡英夫氏提唱)
重心線と支持線の運動であるフルクラムシフトとの関係性の理解が重要であり、腰から足裏まで達する曲線状の身体意識です。上のフットサルのディフェンス写真では、インサイドジンブレイドがしっかりと利いていることがわかります。
 

【サイドステップのレベルアップ意義】

ラクロス、サッカー、バスケット等のディフェンス時のサイドステップは、単純に移動が速いというだけではなく、オフェンスの動きに対して素早く反応できる姿勢を保ちながら切り返し動作を継続的に行うことが求められます。
継続的な動作ができるよう、地面を蹴るのでなく『しっかりした構えから進行方向の脚から出し反対側の脚を引き寄せる』を効率的にできるようアシストトレーニングを併用し、脱力した素早いサイドステップが獲得できることがチーム勝利への近道と言えます。