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2014年09月05日

怪我の功名とは何かを感じた瞬間

「怪我してよかった」
心の底からそう思える瞬間なんてあるのでしょうか?私はあります。
 
そしてこの夏、そう言ってもらえる嬉しい場面に直面したのでお伝えさせていただきます。
 
JARTAトレーナーの赤山です。
 
その選手は中学1年の体操選手です。
腰椎の疲労骨折を指摘され、一時はコルセットを着用し安静を指示されました。
2月頃に治療を開始し、目標は中学入学後に練習についていけるように根本的に治療を行うことと再発を予防することでした。
 
今回は彼女と母親、私との話し合いの中で、ただ復帰するのではなく、怪我の原因を探ることとより身体をうまく使えるようにすることが共通目標でした。
 

体操競技の特性は?

怪我の功名とは何かを感じた瞬間1
日常での腰椎への負担を軽減させることはさほど難しくありませんが、それが体操競技となると話は別です。
過度な屈伸だけでなく脚の振り上げ、倒立からの開脚、宙返りや着地などの動作レベルが上がるにつれて、次から次へと課題がでてきます。
 
今回の取り組みでの大きなポイントは以下の通りです。

  • 脚と腕の捉え方を根本的に変える
  • 肩甲骨と肋骨をしっかり分離させ上肢の力みを減らす
  • 背骨ひとつひとつ動かせるような柔軟性と意識を持つ
  • おなかの硬さをとるために必要以上に腹筋(一般的な)をしない
  • 意識の持ち方で痛みが簡単にコントロールできることを体感させる

細かく上げると他にもたくさんありますが、以上を考慮しながら治療やトレーニングを実施しました。
 
怪我の功名とは何かを感じた瞬間2
 
結果は復帰初戦で種目別で1位、次の県内大会をノーミスで個人総合優勝できました。
その時の報告で母親が「怪我してよかったね」との問いかけに笑顔で微笑みうなずき返している表情は、心の底からそう感じているように私には見えました。
 
では何が変化し、試合の結果が伴い怪我を前向きに捉えられるようになったのでしょうか。
ちなみに昨年の同大会は2位でもちろんミスも数回あったそうです。
この夏は怪我の影響で新しい技の練習はまったくできず本番を迎えました。カテゴリーが上がったにも関わらず昨年までの技だけで勝負をしたのです。
 
 
本人の主観と母親からの話、そして私の仮説を含めた今回の改善ポイントは以下の通りです。

  • 手脚の支点が代わり、客観的にも主観的には手足が長くなり演技力が増した
  • 肩甲骨と肋骨の分離が出来たことで、倒立時の力感が減り倒立時の自由度が上がっただけでなく疲労度が減り耐久性があがった
  • 背骨の動きがしなやかになったことで表現が豊かになった
  • きついトレーニングだけが競技力を高めるわけではないことが理解できた(背骨や股関節・肩甲骨周囲のワークはやると楽になることを実感させた)
  • 自分の身体が変わったことを自覚でき、自信が出来たことで表情も豊かになった(以前は表情も背骨も硬く睡眠の質も悪いような選手であった)

 
また関わりが長くなるにつれて、細かな意識の持ち方を指導し彼女の不安をとれるように考えました
「こんな痛みがあればこう意識すれば楽だよ」
「ここは意識しすぎるとしんどいから何も考えない方がいいよ」
「お風呂はつかって寝る前には楽しいことやいいことを考えて寝るといいよ」
などなど、様々な変化に直面し、主観的にも客観的にも競技力が上がり、そして結果が伴ったことで彼女は怪我をしてよかったと思えるようになりました。
 
怪我をしてからのこの半年がなければ、今の結果が出せなかったと心の底から思ったのだと思います。
 
全ての選手が勝利するわけではなく、本当に怪我してよかったと思える瞬間はそうありません。
しかし怪我と向き合う選手をサポートする限りその時間が無駄ではなかったと思えるような関わり方をしたいと思っています。
 
 
「怪我の功名」
 
私は中学1年の時は成長痛に悩まされ、怪我さえなければもっと高くとべるのにと思いました。そして多くの怪我や挫折・困難が自身の経験となり今はそれが仕事をする上での財産になっています。
これも長い目で考えると怪我の功名であったと今は考えられます。
 
最後までお読み頂きありがとうございます。