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2018年12月12日

重心感知能力を高めるための3つの要素と鍛え方

スポーツにおいて、方向転換、コンタクトの強さ、スピード、バランスなどが必要となる場面は多くあります。
 
 
スポーツの局面に応じて身体を動かすためには、まずは今この瞬間の自身の体勢がどうなっているか、わからないと次の動きに移れませんよね。
 
 
今この瞬間に、自身の体勢がどうなっているのかを感知するために必要なもの、それが重心感知能力なのです。
 
 
「重心感知」というと、頭部の傾きを感知する前庭や加速度を感知する三半規管などが頭に浮かぶ人もいるかもしれません。
 
 
しかし、前庭や三半規管を鍛えてパフォーマンスアップにまでつなげるためには、相当な反復練習と時間が必要になります。
 
 
そこで今回は、重心感知能力のより効率的な鍛え方を千葉で活動している認定スポーツトレーナーの福原良太が解説していきます。

 
と、その前に「重心感知ってなに?スポーツとどう関係あるの?」と思った人もいると思いますので、重心感知能力が向上するとどうパフォーマンスアップにつながるのかを、まずは簡単に説明していきます。
 
 
 

【重心感知能力が身に付くとどうなるのか】

重心感知能力が身に付くと自身の重心操作をできるようになります。
 
 
たとえば、アルゼンチン代表のメッシ選手。
 
 
メッシ選手のドリブルは、フェイントをかけずに相手のマークを一気に振り払っていく突破力があります。
 
 
シザースやエラシコなどの華麗なフェイントは使わずとも相手を抜き去るのです。
 
 
では、メッシ選手はなぜフェイントを使わなくとも相手を抜きされるのでしょうか?
 
その答えの一つが重心操作なのです。
 
 
メッシ選手が世界屈指のドリブラーとなっている要因のひとつに、相手の反応できないスピードで重心移動を繰り出すことが挙げられます。
 
 
相手の反応できないスピードで重心移動を繰り出す物理学的構造は、過去に書かれている以下の記事を参考にしてください。
>>早くしゃがめると、早く速いサッカー選手になれる!
 
 
そして、メッシ選手の特徴のひとつでもある重心操作、それを実現するために必要なのが重心感知能力なのです。
 

 
自身の重心を操作するためには、重心感知能力が必要。
 
 
では、その重心感知能力を高めるためにはどうしたらいいのでしょうか?
 
 
重心感知能力を高めるために必要な要素は大きく分けて3つあります。
 
 
 

【重心感知能力を高めるために必要な3つの要素】

以下が、重心感知能力を高めるために必要な3つの要素です。
 
 
・筋肉の中にある「筋紡錘」というバランスセンサーが働く
・関節のなかにある関節メカノレセプターが働く
・地面から足底にかかる圧力を感じられる
 
それぞれもう少し深堀していきます。
 
 

<筋肉の中にある「筋紡錘」というバランスセンサーが働く>

筋紡錘とは、全身の筋肉のなかに埋め込まれるかのように散在している感覚器です。
 
 
筋紡錘は筋肉が伸び縮みするのを感知します。
 
 
どこにどのくらいの力が働いているのかを感知して、脳に情報を送ります。
 
 
脳に情報が送られると、重心の位置がわかり、身体がバランスを崩さないように身体に指令を送るのです。
 
 
筋紡錘は、筋肉が硬くなってしまうと感覚器としての機能が低下してしまう特徴があります。
 
 
小さな地震が起きた時に、「座っている人は地震に気が付くのに、立っている人は地震に気が付けない」というのも、地面により近い足元周囲の筋肉が収縮した状態になってしまって、筋紡錘が働きにくくなっているのも原因のひとつです。
 
 
 

<関節のなかにある関節メカノレセプターが働く>

関節メカノレセプターとは、関節のなかに複数ある感覚器です。
 
 
関節が曲がったり、伸びたり、捻られると、どのくらい関節が動いたのかを感知します。
 
 
サッカーのドリブルで話をすると、
常にボールを見ていなくてもドリブルはできますよね。
 
 
ボールを見なくてもドリブルができるのは、身体の各関節がどのくらい曲がっているのか、または伸ばされているのか、を感知することで「ボールと足先の位置関係」が把握できるからです。
 
 
いまはわかりやすいので「道具と身体の位置関係」を例に挙げましたが、関節メカノレセプターも関節の動きを感知することで重心感知能力に関わっています。
 
 

<地面から足底にかかる圧力を感じられる>

多くのスポーツは、足底が身体の部分で唯一地面と接する面です。
(ボルダリングなど一部の競技では手も使いますが。)
 
地面と唯一接している足底が、最終的にはステップする方向を決めたり、ステップ後の着地点を決めたりしています。
 
 
さらに足底は、左右前後だけでなく、身体の重心を上下したときに発生する一瞬の自重変化も感じ取ってくれているのです。
 
 
したがって、地面から足底にかかる圧(力)をしっかりと感じられた方が、重心感知能力は高くなります。
 
 
 
 
以上が、重心感知能力を高めるために必要な3つの要素です。
 
 
少し難しい話も入ってきましたが、現実問題、これら3つをひとつずつ練習するとなると時間がかかってしまいとても非効率的。
 
 
では、どうすればいいのでしょうか。
 
 
さきほど解説した3つの要素を同時にアプローチすることができます。
それが、JARTAで言う「ゆるむこと」です。
 
 
ゆるむことができれば、先ほどお話しした重心感知能力を高めるために必要な3つの要素を同時に高められます。
 
 
では、どうすればゆるむことができるのでしょうか。
 
 
ポイントになってくるのが、JARTAで言う内的認識力です。
 
 
内的認識力とは、自身の身体や精神に対する認識力のことを言い、重心感知能力もこのなかに含まれています。
 
 
では実際には、身体がゆるむために、どのようにして内的認識力を修正したらいいのかは、以下の記事がとてもわかりやすく書いてありますので、よかったらぜひ参考にしてみてください。
>>ズレた内的認識力の修正法
 
 

【重心感知能力が高くなるだけでパフォーマンスはアップするのか】

ここまで読んでくださった人のなかには、こんな疑問も出てきた人もいるのではないでしょうか。
 
 
結論から言うと、残念ながら、自身の重心感知能力が高くなるだけではパフォーマンスアップにはなりません。
 
 
というのも、対人スポーツにおいては、相手の重心も感知していく必要があるからです。
 
 
さきほども出てきた内的認識力。
 
 
「自身の重心感知能力」というのはこの内的認識力に当たります。
 
 
対して、「相手の重心を感知する」は外的認識力になります。
 
 
外的認識力とは、自身の身体や精神状態以外のものを指していて、自分以外の環境を認識する能力です。
 
 
ただし、「相手の重心を感知する」という外的認識力は、自身の重心感知がしっかりできるようになると、目線を「自分」から「相手」に変える作業だけで比較的スムーズに習得が可能です。
 
 
 

【まとめ】

いかがでしたか?
 
今回は、以下の内容を解説していきました。
 
 
・重心感知能力はパフォーマンスアップに重要
・重心感知能力を高めるためには3つの要素がある
・「筋紡錘」「関節メカノレセプター」「足底の感覚」が重要
・上記3つの要素は身体がゆるむことで同時に向上する
・自身の重心感知が高まると、相手の重心を感知する能力も高まりやすい
 
 
筋力や身体の柔軟性、競技スキルといった点のトレーニングはよく見られますが、「重心操作のトレーニング」というのは見落とされがちです。
 
 
「選手もしっかりトレーニングしてくれているし、やり方も間違えていないのになかなかパフォーマンスアップにつながらない」とお悩みの人は、ぜひ今回お話ししたような「重心」という要素を入れ込んだトレーニングもしてみてください。
 
 
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございます。