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2016年12月26日

あなたの「軸を意識して」は伝わっていないかもしれない。

選手に動作を指導する時、「軸を意識して」という声かけをしたことはありませんか?
 
ではその声かけの後、選手はこちらが意図した反応を示してくれましたか?
 
今回は「軸を意識して」というワードを例に取りながら、トレーナーに必要な感覚を言語化するトレーニングの重要性を考えていきます。

JARTA認定講師の松田純一です。
 
先月、高知でのWork Outでフローティングダウンというトレーニングを体験してもらいました。
 
その際、受講者の方に「軸を意識して」と声かけをしました。
 
少し考えてみてください。
 
あなたなら「軸を意識して」と言われたら、どんなイメージを持ち、どのように身体を動かそうとしますか?
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【集団へのトレーニング指導で忘れてはならないこと】

今回の受講者の方々は、「軸を意識して」という声かけに以下のような反応をしていました。
 
・胸を張り背筋を伸ばし上半身を固めていた。
・身体の左右中央を上下に走る軸をイメージしていた。
・自分の重心位置を感じようと上下左右に身体を揺らしていた。
 
など、十人十色それぞれ違いました。
 
どんな声かけをしても、皆が全く同じ認識や身体の反応を示すことは厳密にはありません。(似ていることはあります)
 
こちらの声かけに対する反応は、対象者の知識や経験、身体への認識力に大きく左右されるからです。
 
これは特に集団に対してトレーニング指導をする際、忘れてはならないことです。
 
こちらの意図する動きを引き出したいための声かけなのに、下手をすると皆がバラバラの動きをし始めます。
 
実は今回の「軸を意識して」という声かけで引き出したかった身体の反応は大きく2つありました。
 
1.軸が通過するインナーマッスル(特に大腰筋)の働きを優位にしてもらいたい。
2.自分の重心位置を感じてコントロールしてもらいたい。
 

【受講者の方からの質問】

受講者の方から「軸を意識するのと姿勢をまっすぐ伸ばすのは違うのか?」というご質問もいただきました。
 
こちらの受講者の方は「軸を意識して」という声かけに、胸を張り背筋を伸ばし上半身を固めてしまう反応をしていました。
 
一般的に良い姿勢と思われている「気をつけ」の姿勢を作るならば、この認識で問題ありません。
 
しかし、この反応は今回引き出したい身体の反応ではありませんでした。
 
上半身を固めた「気をつけ」ではインナーマッスルを優位に働かせることはできず、重心位置を感知することも困難になるからです。
 
このように「軸を意識して」というワードは同じでも、人により引き出される反応は全く違ってくるのです。
 
ちなみに「軸を意識して」という声かけで身体を固めてしまう方に対して、私が実施するゆるめ方の1つを紹介します。
 
動作の手本を見せながら、「海中で揺らめく昆布になりましょう」「徐々に身体の揺れを小さくして一番楽に立てる位置で止まりましょう」などと声かけをして、身体をゆるめつつ重心位置や軸を感じることができるよう誘導します。
 
ただし、”海中に揺らめく昆布”が分からない方には使えませんので注意が必要です。
 

【トレーナーは感覚を言語化するトレーニングが必要】

ここまでで、トレーナーの声かけが同じワードであっても、選手によって引き出される反応が違ってくるというのはご理解いただけたでしょうか。
 
ではこちらの意図する反応を引き出すためにはどうすればいいのでしょうか。
 
答えの一つは、「選手に伝わるように感覚を言語化する」です。
 
引き出したい動作を引き起こすための言葉を選んで使用するということです。
 
どの言葉に選手が良い反応を示してくれるかは実際に伝えてみるまで分かりません。
 
反応が悪ければ臨機応変に伝わる言葉を探さなければなりません。
 
だからトレーナーは感覚を言語化するトレーニングが必要となるのです。
 
私が実践しているトレーニング方法の1つは、”1つの現象を様々な言葉で表現する”ことです。
 
私はゆるんだ身体を作るのに、”海中で揺らめく昆布”と表現しました。
 
あなたならどのように表現しますか?
 
1つの現象につき最低5通りは表現してみてください。
 
このようなことも、トレーナーのトレーニングとして取り入れてみてはどうでしょうか。
 

【まとめ】

  • 声かけにより引き出される反応は、対象者の知識や経験、身体への認識力に大きく左右される。
  • ワードは同じでも、人により引き出される反応は全く違ってくる。
  • トレーナーは選手に伝わるように感覚を言語化するトレーニングが必要である。

 
最後までお読みいただきありがとうございました。