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2016年09月11日

3分間で結果を出す

テニス競技においてメディカルタイムアウト(以下MTO)という制度があります。
 
MTOでは、競技者が怪我や体調不良をきたしたとき、チェアアンパイアを通してトレーナーの処置を要求することができます。
トレーナーは選手に対して初期評価を行い、必要と判断すればコート内で1回につき3分間のメディカルタイムアウトをとり、治療または手当てを行います。
 
観客の注目も浴びるコート内で、3分間以内に結果を出すためにはどうすればいいのでしょうか?
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JARTA認定講師の森宜裕です。
 
今年より関西テニス協会医科学委員のスタッフとして、関西で行われるテニス競技のトーナメントトレーナーの活動もしています。
 
トレーナーが選手の応急処置にあたる際に、競技ごとによって細かなルールが設定されています。まずはそのルールをきっちりと把握することがスタートラインです。
 
トーナメントトレーナーが行うMTOの大まかな対応手順としては、
 

  • 競技者からトレーナーの要求があったことをトランシーバーで連絡を受ける
  • コートへ向かうことをレフェリーに告げ、処置に必要な物品を確認しコートへ向かう
  • コートに入り競技者に状況を聴取し、適切に評価する(この時間は処置時間に含まれないが、3分以内が目安)
  • 競技者に評価結果を伝え、可能な処置方法を説明し相談の上、処置方法を決定する。場合によっては試合を継続するか、棄権するかを決定しなければならない
  • 処置方法が決まったら、アンパイアにMTOを適用し手当を始めることを告げる
  • 処置に必要なものを揃え、処置を開始することをアンパイアに伝え、3分間の計時が開始され、処置を実施する。規定時間内にプレーが再開できない場合は競技者に対して処罰が与えられる場合がある。

 
以上のようになっています。
 
トレーナーの動きを確認したら、様々な怪我や病気を想定し何度も何度もシミュレーションを行います。今まで活動されてきたトレーナーの方々から情報をいただくことも重要です。
 
トレーニングと違って何度も練習することができない応急処置です。
そのためイメージトレーニングはとても大切です。
 
手順だけでなく、自分がどういう態勢になるのか、物品はどのように手元で扱うのか、自分の身体を動かしながらイメージを繰り返すことで実際の場面でもスムーズに対応することができます。
 
問診ではどのようなことを聞くのか?
足関節の内反捻挫にはどのような処置方法を提示できるのか?
選手が熱中症の症状を呈していた場合、棄権させる基準はどこなのか?
 
イメージすることは多岐にわたり途方に暮れそうになりますが、この作業をサボるわけにはいきません。
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トーナメントトレーナーはトレーナールームで連絡を受けることが多いので、受傷の瞬間を見ることができないことがほとんどです。
 
ですから、評価の最初に行う問診できちんと状況を把握することが肝心です。
 
細かな傷害の評価方法は今回の記事では省略しますが、現場では、「診断」ではなく「判断」、「厳密性」よりも「安全性」です。
 
手持ちの物品と知識と技術を超えることはできません。
今ある状況の中で最良の判断をすぐさま実行することができるかが大切です。
絶対解よりも、選手の納得解を目指していきます。
 
3分間で結果を出すためにはこのような考え方も必要ではないかと考えています。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。