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2018年07月01日

スポーツは科学だ

「スポーツは科学だ」
 
これは紛れもない事実です。
ウォーミングアップにしろ、トレーニングにしろ、リカバリーにしろ、プロのトレーナーが選手に提供するからには必ず根拠と論理が必要です。
その根拠と論理の構築には【科学】は必須です。
 
これまでJARTAの公式記事や中野代表の公式ブログでエビデンスや科学的根拠に関する記事はいくつかあります。
私自身、『科学的根拠について』というタイトル記事を以前書いています。
https://jarta.jp/trainer/3187/
 
これを読んでいただければ我々が科学的根拠を軽視しているのではなく、何よりも大切なものだと考えていることはお分かりいただけると思います。
 

 
JARTA認定スポーツトレーナーの岩渕翔一です。
 
例えば、試合前に行わせているウォーミングアップが
 
ジョギング:5分
ストレッチ:5分
アジリティ系エクササイズ:5分
スピード系エクササイズ:5分
パスゲーム:10分
 
だったとします。
 
このウォーミングアップが
なぜその構成なのか
なぜ30分なのか、20分ではダメなのか
なぜその順番なのか
なぜその項目を行うのか
スピード系エクササイズをすると、しないではどう違うのか
なぜアジリティをやってからスピードなのか、逆ではダメなのか
etc…
 

 
これら全てに明確な根拠と論理が必要になります。
我々が預かっているのは選手自身であり、チームそのものであり、結果であり、それに関わる人達の人生そのものです。
これはプロとして現場に立つ者の最低限の責任です。
 
例えば、日本のスポーツ現場では試合前や練習前に静的ストレッチをなんの疑いもなくすることが一般化しています。
しかし、静的ストレッチは怪我の予防やパフォーマンスの向上に相関関係がないというのが現時点での【科学的な】見解です。
それどころか、パフォーマンスが低下するといった論文もあります。
現時点で、この2つに相関関係を見出せた論文は世界に存在しません。
 
では、静的ストレッチはやめよう。こうなるかと言えばそう単純でもありません。
こういった科学的情報があるのと同時に、日本では試合前や練習前に静的ストレッチをすることが一般化しているという文化が根付いています。
 
文化や歴史というのは軽視できません。
 
文化や歴史というのはそのものが非常に重要で尊重すべきものですし、その民族の身体特性をも変容させます。(例えば日本人はO脚が多いですが、欧米人はX脚が多いです)
 
 
そういったことを前提に、今ある科学論文を片っ端から知り、理解する。
その上で、現場でリアルに起こる現象に対し、【現時点で】最善と思われる手段を根拠と論理を持って選択する。
科学と現場の両局面からなぜそれが必要かを考え抜き判断する。
 
専門家とはそういうものです。
(もし、JARTAの認定スポーツトレーナーがJARTAで得られる情報だけを基にスポーツトレーナー活動をしていたのなら、それはスポーツトレーナー失格です)
 
 
これはトップレベルの選手でも同じです。
なぜイチロー選手は毎回打席で同じルーティンをこなすのか。
なぜ水泳選手はスタート前に肩や首、背骨を細かく揺すっているのか。
なぜ錦織選手は試合中にウィダーインゼリーを食べているのか。
 
その全てに科学を基にした明確な論理と根拠があります。
 
そしてもう一つ
 
科学は進歩するということ。
 
今ある科学的論理は全て【現時点】であり、例えば10年後には覆されている可能性は大いにあります。上記にあげたストレッチに関してももちろんそうです。
科学の世界では今日までの常識が明日には非常識になる。
昨日までの非常識が今日からは常識になるということが溢れています。
 
だからこそ我々は常に学び続けなければならない。
常に学び続け、新しい情報を理解し、取り入れ、論理と根拠を常にアップデートする。
その最新の論理と根拠を持ったアプローチを選手にしなければなりません。
 
今後、スポーツの科学化はさらに進むはずです。
 
今開催されているサッカーW杯。
最先端のテクノロジーが導入され、選手のパフォーマンスとチームの戦術はどんどん可視化され、試合中に目まぐるしく戦術が変化していきます。
また、今大会はVAR(Video Assistant Referee)が導入され、それによりセットプレーでの得点が多い傾向にあります。
おそらくこの流れは止めることはできません。
野球やテニスでもビデオ判定は既に導入されています。
 

 
要は、『これまで誤魔化せていたことが誤魔化せなくなる』ということです。
そうなると帰結するのは、本質的な身体操作と動きの質です。
 
選手やチームの動き・作戦・戦術が試合中にどんどん可視化されることで試合の大局観は目まぐるしく変化します。
その戦術や作戦の変化に対応できる柔軟な動きと身体操作、思考。
VARの導入でこれまで【ずる賢く】できていた部分を良い意味でも悪い意味でも見られてしまう。
 
 
そうなると本質的に
より速く
より強く
より正確に
 
こういった部分での勝負になってきます。
 
それがスポーツとして面白いかどうかはまた別問題ですが、トレーナーとしてはそこの部分を今後さらに突き詰めていく必要があると考えています。
 
科学の進化がスポーツと選手の進化を後押ししています。
今回のW杯はサッカーという競技そのものと、選手自身の動きを加速的に進化させるきっかけを与える大会になるのではないかと個人的には感じています。
 

 
なぜそのトレーニングなのか
なぜそのウォーミングアップなのか
なぜそのリカバリーなのか
なぜその週間予定なのか
なぜそのプレーモデルなのか
そのプレーモデルを再現するためにはどのような動きが必要でどのようなトレーニングが必要なのか
 
自分自身ができること、理解していること、知っていることが本当に最先端の情報を基にしたものなのか。
常に注意を払い、自問自答し、学び続け、新しい情報を理解し、取り入れ、論理と根拠を常にアップデートする。
その最新の論理と根拠を持ったアプローチを選手に提供する。
 
だからスポーツは科学なのです。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。