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2016年07月03日
意識と無意識
JARTAではパフォーマンスを上げるために「スキル」「フィジカル」「認識力」の3つの要素を考慮しながらトレーニングを行うことの重要性をお伝えしています。
認識力に関しては、自分の身体の状態を把握する能力のことを「内的認識力」、自分と自分以外の物や人との関係を把握する能力を「外的認識力」と定義しています。
内的認識力を高めるリスク
皆さんは次のような経験を選手にさせたことはないでしょうか?
・トレーニングでの身体の使い方はよくなったがパフォーマンスアップ、日常動作の改善につながらない。
・マルアライメントの改善や可動域の改善はできたが試合で意図した動きができない。
このような経験をさせた方は、結果的に「内的認識力」だけを高め過ぎている可能性があります。
今回は私がサポートしているスカッシュの選手を例に、「内的認識力」を無意識的に高め、結果的に試合でのパフォーマンスが上がった選手の例を紹介します。
認定スポーツトレーナーの井上です。
その選手の要望はプレー中やトレーニング中での右脚の不安定感、疲労感の改善でした。
実際には
「右足に体重が乗っている感じがしない」
「右足だけすぐに疲労するし、疲れが取れない」
「右足で踏み込むと体がぐらつく」
といった訴えがありました。
片脚バランステストやスクワット、ランジなどいくつかの評価を行った結果、やはり右股関節が上手く意識できないということだったので、JARTAのセミナーでお伝えしている股関節の認識力を向上させるような手技やトレーニングを行いました。
一時間程度のトレーニングで右脚の感覚はかなり改善したので、その感覚を維持できるような宿題を提案しその日のセッションは終わりました。
次のセッションで右脚の感覚を確認したところ、「プレー中も右の股関節にしっかりと乗れている」「右のお尻が使えている」といった反応でした。
無意識的なトレーニングを考える
皆さんはこの後どのようなトレーニングを提案しますか?
もっと右股関節やお尻を意識的に使うトレーニングを提案しますか?
あえて股関節やお尻を意識させないトレーニングを提案しますか?
もちろん選手のスキルや性格、認識力の高さなどにもよると思いますが私は後者を選びました。
理由は選手の言葉にあります。
選手はプレー中に右脚の感覚を十分に「意識」できています。
ですので次に考えないといけないことは、プレー中に「意識」しなくても「無意識」に右脚の感覚が高まる状態を作るトレーニングを行うことです。
右脚の感覚を高めることは「手段」であって「目的」ではありません。
意識的にもっと股関節の感覚を高めるようなトレーニングをしていたら、そこに意識が行き過ぎてパフォーマンスを落としていたかもしれません。
最初の質問で、トレーニングでの身体の使い方はよくなったがパフォーマンスアップの改善につながらないと答えた方は、もしかしたら「手段」と「目的」を混同しているのかもしれません。
トレーニングをする選手に対して私たちは次のような言葉を掛けます。
「脇をしめて引いて!」
「しっかりと床を押して!」
「股関節から身体を倒して!」
「もっと○○を意識しましょう!」
「もっと○○を動かしましょう!」
など必要以上の意識付けは、時として選手のパフォーマンスを落としてしまう可能性すらあります。
皆さんもぜひ「内的認識力」だけを高めるリスクに注意しながらトレーニング指導にあたってください。
最後までお読みいただきありがとうございます。