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2018年02月21日
トレーナーの手本力が選手の学習効率に影響する理由を、脳科学の側面から考察
JARTAではトレーナーが選手に手本を示すことを重要視しており、ベーシックセミナーにおいても手本を示すことが選手のモチベーションを高くする理由をお伝えしています。
手本を示すことは、選手の心に火をつけてモチベーションを高める効果だけでなく、学習効率も高める効果もあるのです。
「手本を見せれば、学習効率があがるのは何となくイメージできる」と思った方も多いと思います。
今回は、”なぜ、手本が学習効率を高めるのか”を”脳科学の側面”から認定スポーツトレーナーの福原良太が解説していきます。
【そもそも、学習の効率化に影響する因子とは】
目的とする動きを自分の身体で体現するためには、”自分の身体の状況を知る”必要があります。
JARTAではこのことを内的認識力といいますが、この内的認識力を高めるためには、脳科学の観点からいうと、以下の3つが必要とされています。
・視覚と体性感覚の統合
・感覚と運動の統合
・予測と結果の統合
なかでも、トレーナーが選手に模範的な手本を示すことは、”視覚と体性感覚の統合”につながるのです。
ここで言う”視覚と体性感覚の統合”とは、トレーナーの手本を見て選手が実際に行ってみたときの感覚の違いを認識して近づけるようにすることを言います。
ミラーシステムという脳内ネットワークの活性化を活用した学習方法になります。
少し話が難しくなってきましたが、要するに、選手はトレーナーの手本を模倣するようにして身体を使っていくということです。
もしも、未熟で競技動作につながるレベルではない手本を提示してしまうとどうなるでしょうか?
それは、選手の競技パフォーマンス向上を妨げてしまうことになります。
そうならないためにも、トレーナーは提供するトレーニングにおいては選手の手本となる必要があるのです。
【手本は選手の明確な目標となる】
手本の重要さは、さきほどお話しした学習効率の向上だけでなく、選手に明確な目標を示し、上達するまでの道筋を具体化するメリットがあるのです。
上達するまでの道筋が具体的になるため、選手の自主性も引き出すことにもつながります。
これは、登山にたとえられます。
登山をするときは、頂上を目指して登ります。
初めての山を登るときに気になるのが、「どのくらい時間がかかるのか」です。
時間と自身の登山スキルを踏まえて、初級から上級まである登り道を選択していきます。
時間や登り道を考えられるのも「頂上」という目標がどこにあるかがわかっているからです。
頂上がわからないまま、ただがむしゃらに登山する勇気を持つ人はおそらくいないでしょう。
選手に手本を示すのも同様のことが言えます。
トレーニングの手本は選手にとって明確な目標となり、明確な目標があるからこそ「そこに至るにはどうしたらいいのか」を考えられるのです。
とはいえ、選手は目標を達成する途中で、
「本当に習得できるのか」
「習得したら、パフォーマンスはアップするのか」
と不安になるかもしれません。
登山のときも初めての山であれば、
「いまどこまで進んでいるのだろう・・・」
「あとどのくらいで頂上に着くのか」
などと不安になります。
そんなときは、「今どこまでできているのか」を伝えて現在の達成度を理解してもらったうえで、「具体的に何が足りないのか」を気付いてもらうコーチングをしましょう。
【まとめ】
いかがでしたか。
今回は、以下の点について書いていきました。
・良い手本がなぜ学習効率を高めるのか脳科学的に説明できる
・手本はトレーニングの明確な目標となり自主性を引き出す
選手のパフォーマンスアップのために手本がいかに重要かお伝えしてきました。
手本を示すのもトレーナーのスキルのひとつです。
そして、スキルを磨くためには、日々の鍛錬が必要になってきます。
・時間が作れない
・行動が連続しない
・周りの目を気にしてしまう
確かに、人それぞれ鍛錬ができない理由もあるでしょう。
面倒や遠慮といったものです。
しかし、選手は限られた時間のなか毎日汗を流して試行錯誤しています。
トレーナー自身も限られた条件のなかで、いかに効率よくトレーニングしていくかを試行錯誤することで、そのなかで得た方法や手段がそのまま選手にも還元できるのです。
トレーナー自身の時間を使って得た知恵は、選手に説明した時に納得してもらいやすく、信頼にもつながるため、さらに学習効率は高くなっていきます。
あなたが今よりも手本力を高めるためにできることを、今一度考えてみるのもいいかもしれません。