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2017年02月19日
ゴッドハンドから選手が離れていくたった1つの理由
JARTA認定講師の鳴海です。
皆さんは腕の良いトレーナーとはどのようなものを考えるでしょうか?
☑どんな痛みも即座に取り除く事ができる
☑的確にパフォーマンスを上げるすばらしいトレーニングを提供できる
☑知識も技術もすばらしく、情熱もある
☑選手自身も自己管理できるようセルフコンディショニングの方法も教えている
☑選手もトレーニングの効果を実感し、成果につながってきている。
いわゆるゴッドハンドと呼ばれる方なのかもしれません。
しかしそんなトレーナーから選手が離れていくことは決して珍しくありません。
今回はその理由についてお話したいと思います。
このトレーナーには何の問題があったのでしょうか?
選手の痛みを取り除き、間違った癖や動きを整え、
パフォーマンスが上がるトレーニングを提供し、
選手に自己管理の術を伝え自立を促し、結果にもつながっている。
選手がトレーナーから自立し、自己管理の方法を身につけ、
自分の身体に目を向けることができれば、選手には当然金銭的な負担もかかりません。
すばらしい事です。一見何も問題ないように思えますが、
ここに落とし穴があります。
自立を促していくトレーナーのスタンスが不幸を生む
ここからは私自身の体験を踏まえてお話させて頂きます。
私は以前痛みを抱えてこられた選手に関わる機会がありました。
その方は肩の痛みを主訴とした社会人野球の選手でした。
痛みをしっかり取り除き、痛みが生じた原因となる動作を修正するトレーニングを提供し自己管理できるようにセルフコンディショニングもお伝えし、
その結果2ヶ月以上症状の再発もなく順調に動きもよくなってきている様子でした。
しっかり自立し自己管理もできるようになったので、
また何か問題が起きたときには連絡を頂くようにお伝えしました。
その選手はその後、自らトレーニングジムに通うようになり、
仕事の合間に自ら解剖学や運動学を勉強し、
結果として再び身体を壊しました。
しかしそのときには連絡は来ませんでした。
人づてに身体を壊したと話を聞いたので、こちらから連絡を取ったのですが、
身体を壊してから実に3ヶ月以上経っていました。
連絡をいただけなかった理由を聞いたときの、
“せっかくよくしてもらったのに気が引けて連絡できませんでした。”
という一言と、選手の沈んだように落ち込んだ表情は忘れられません。
結果としてそこで再度身体の故障は取り除きましたが、
私が連絡しなければそのまま身体を壊したままだったかもしれません。
この状況を作り出してしまったのは私のトレーナーとしてのスタンスの結果です。
何故この状況を起こしてしまったのか?
選手に自立を促すのは悪くありません。
しかし選手に自立だけを促すのは本当に良いことなのでしょうか?
自己管理の足りない所をフォローするために
困ったときに連絡をと声がけをしていても、
当人からは中々連絡できない事もあります。
現代はインターネットが普及し様々な情報があふれ、
情報を取捨選択が難しい事が多いですし、
日常生活においてもイレギュラーな出来事が起こります。
選手はその競技には精通していますが、基本的には身体や健康について、
特に痛みや動きを改善することに関する知識・経験はほとんどの方は素人、アマチュアです。
どれほど自己管理の手段や方法をお伝えしても限界があります。
それを考えると選手に自立してもらい、自己管理を促すのは当たり前の事として、
それに加えて定期的にプロのトレーナーに身体のチェックをしてもらうことは
選手の競技人生にとって、絶対に良いことでしょう。
自立・自己管理のさらにその先へ
選手の痛みを取るのは当たり前、パフォーマンスを上げるのも当たり前、
選手の自立を促し自己管理できるようにするのも当たり前、
そこからさらに一歩進んだ関わり方をすることがトレーナーには必要ということです。
そうでなければどんなに腕が良かろうと選手は離れていきます。
突き詰めると選手が離れていく理由は、
自分から選手を離れるようにしているためとも言えます。
ただ、離れるから悪いとは一概に言いません。
この事は各々のトレーナーのスタンスによりけりです。
多くの選手に携わり、決して長い付き合いとは言わないけども、
自分との出会いが何かの転換期になればよいと思って関わるのもそのトレーナーのスタンスです。
ただ、個人的な経験から意見を言わせて頂くと、
私は選手と親身になり、その縁を大事にし、選手の競技人生に長くつきあいながら
二人三脚で関わっていくスタンスの方が選手にとっても良いのではないかと思っています。
あなたのトレーナーとしてのスタンスはどのようなものですか?
トレーナーを目指したのはどんな動機ですか?
自己の選手としての無念からでしょうか。
トレーナーとしてのあなたは選手に何を提供できますか?
それは知識・技術・痛みの緩和・パフォーマンスの向上でしょうか。
では、それを提供できるとしたらどのように選手と関わっていきたいのですか?
それを突き詰めておくことは腕を磨くよりも大事なことかもしれませんよ。
最後までお読みいただきありがとうございます。