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2014年02月07日
選手が本当に求めているのは痛みをとることではない
スポーツ選手と関わるトレーナーのみなさんに絶対知っておいて欲しいことがあります。
それが今回のテーマ「選手が本当に求めていること」です。
スポーツトレーナーとして選手や指導者と関わるためには、たくさん重要な要素があります。
知識や技術はもちろん、傾聴する力や人間性、さまざまな要素が試されます。
その中でも私が大切しているあるひとつの要素があります。
筋力を重視するいままでのトレーニング
先日、担当している選手からこんな相談がありました。
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筋トレ(ウエイトトレーニング)をやめて、中野さんに教えてもらったトレーニングをしていたら、チームのトレーナーから『脚が細くなってきているから、太ももの前の筋トレをしろ!』と言われたのです。
中野さんのトレーニング始めてから膝の痛みがなくなったので、今までの筋トレに戻るのは怖いのですが・・・。
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状況を簡単にご説明すると、この選手は、私のところでコンディショニングを受けて、ここ数年の膝の痛みがとれた女子サッカー選手です。
その選手にとってウエイトトレーニングが「マイナスの学習」になっていると判断したため、その時点ではウエイトトレーニングを中止するように指示していました。
まだまだ「筋の太さ」だけをいろんな判断基準にしているトレーナーはたくさんいます。
仮にこの選手が、そのトレーナーの指導でウエイトトレーニングを再開して痛みが再発したら、そのトレーナーはどう「責任」をとるつもりでしょうか。
この場面で私は、「筋トレそのものが悪いわけではなく、同じトレーニングでも、やり方の質が重要」と答えました。
そしてある時点で、ウエイトトレーニングを再開しても大丈夫だろうと判断したため、これまでのウエイトトレーニングを行いながらも「マイナスに働かない」ようにする方法を教えました。
冒頭の話のようなトレーナーからの指導場面は、レベルに関わらずスポーツ現場では本当に頻繁にあります。ちなみにこれは女子サッカーのなでしこリーグでのエピソードです。
みなさんは、女子サッカーのトップリーグでのこの出来事をどのようにとらえますか?
痛みが消えればOK?
みなさんは、スポーツ選手(またはスポーツをしている患者さん)と関わるとき、その人が求めていることって何だかわかりますか。
当然、治療者でもある私たちの前に現れる選手は、初めは「痛み」を訴えている場合が大半です。
スポーツ選手やスポーツをしているクライアントが、痛みを抱えて自分の前に現れたとき、私たちはどう考えるべきなのでしょうか。
「痛み」を解消する。
これは当然です。正解といえます。ただ、これでは非常に不十分だともいえます。
痛みの解消だけなら、私やJARTAトレーナーでなくとも凄腕の治療家、トレーナーはたくさんいますが、痛みをとるだけでは、選手たちは変われません。
結局のところ、痛みの再発やパフォーマンスの低下に悩まされることになっています。残念ながらそれが現状です。
ハイレベルなトップチームですら、そんな状態です。これでは選手はかわいそうです。
では私たちが選手と関わる際に何を考えればいいのかわかりますか?
実はそれが、もうほとんど完成された市場であるスポーツ現場に切り込んで活躍していくためのキーワードのひとつです。
「選手は、なぜ痛みを解消したいのか」を考えてみて下さい。
選手目線で考えて、痛みを解消した先には何があるのでしょうか。
選手は痛み止め注射を打ってでも出場したい
答えはパフォーマンスアップです。
選手は「パフォーマンスを向上させること」を求めているのです。いまの自分にできる最高のパフォーマンスを発揮したいから、「痛み」をとりたいのです。
それが目的であっても、手段であっても、選手にとってそれがほぼ全てだと思います。
だから選手の身体に関わる私たちも「パフォーマンスを考える」必要があるのです。
そうシンプルに考えればいいでしょう。
「明日からの練習で結果を出さないと・・。」
「来週の試合で完全なパフォーマンスを発揮したい」
「もうすぐトライアウトがあって、そこで結果を出さないと失業」
さまざまな状況はあると思いますが、選手はパフォーマンスを向上させるために、自分の最大パフォーマンスを発揮するために、ただそのために「痛み」を解消する必要があるから、あなたの前にいるのです。
だから痛みがとれない場合は、身体にとって良くないことをわかりながらも、痛み止め注射を打ってでもプレーします。
でも高校野球を引退した故障選手は、現役時代のように毎日どこかの整骨院には通ったりしません。
スポーツ現場に関わっておられる方、関わりたいという希望がある方には、こういった選手の感覚はぜひ理解しておいてもらいたいと思っています。
このような選手の気持ちを理解した上で関われるようになると、選手からの信頼は厚くなっていきます。
筋力増大や可動域の改善、片脚立位時間の向上、四肢の周径の改善など、選手にとって何の意味も持ちません。パフォーマンスが改善しなければ。
痛みや可動域・バランス機能の改善、その他諸々のことは、ただの要素であって、それ自体が「目的」になっていては、とんでもない過ちを犯すことになります。
トレーニングは何のためにするのか?
さらにトレーニングの観点からも同じことがいえます。
一流のサッカー選手の脚を見ると、ものすごく筋肉が発達しています。一流を目指したいサッカー選手たちは、彼らのようになりたいと願えば、一生懸命脚の筋肉を鍛えます。
トレーナーや指導者も、脚の筋肉が発達するためのトレーニングや練習をさせます。
さらにインナーマッスルが重要だということで、腸腰筋等のインナーマッスルトレーニング、腹横筋トレーニングなどをします。
結果として、脚の筋肉は非常に発達するでしょうが、その選手は一流にはなれず、近づくこともできませんでした。
皮肉なことに、むしろシュートの精度が落ちたり、俊敏さが低下したりしました。
「肉体改造」に失敗する例は非常に多いですが、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
それは筋肉の動きや筋肉の連動は、パフォーマンスの一部分でしかないからで、結果的にパフォーマンスのバランスを崩したからです。
「この場面では○○筋が働いて、その為には腸腰筋の働きが重要で・・・」など、写真を提示しながらとても詳細に解説している書籍などをよく見かけます。
部分に対して精密なことはとても大事です。しかし、ほとんどはそこで止まっています。
逆にいうとパフォーマンスという現象を捉えていない、つまり、現象に対しては粗雑、いい加減だということです。
これはすごく重要な問題なので、部分に対しては精密だけれど、現象に対しては現在のトレーナーは粗雑なりがちです。
繰り返しになりますが、選手はパフォーマンスを向上させたいと思っているのです。
もっと言うと、
- 上手くなりたい
- 試合に出たい
- 勝ちたい
- レベルの高いチームに行きたい
- プロになりたい
- ワールドカップに出たい
- ワールドカップで優勝したい
と思っているのです。
「誰がどのような目的で」というのは色々ありますが、上記でほぼ網羅できると思いますし、人生をかけている人もいるわけです。
選手は「パフォーマンスを上げたい」、トレーナーや指導者は「選手のパフォーマンスを上げたい」、お互いにそう思っているのにパフォーマンスが低下する。
これは非常に憂慮すべき状況で、選手のパフォーマンスに携わる立場として非常に悲しいことです。
あなたの行う選手への対応が、選手の意思を人生をへし折っている可能性もあるのです。
まとめ
選手が本当に望んでいることについてまとめみあした。
トレーナーは選手の人生を背負っているということを決して忘れてはいけません。
筋肉があろうがなかろうが、連動していようがいまいが、インナーマッスルが使えていようがいまいが、脚の振りが良くなろうがなるまいが、走りやすくなろうがなるまいが、結果としてのパフォーマンスが上がらなければ選手にとって意味がないのです。
すべてはパフォーマンスアップのために。
JARTAではこれらの問題における明確な解決策を提示します。今後のブログやfacebookにもぜひご期待ください。